20171106 クリッパーズ vs ヒート

4Qだけ観ようとしていたところ、リクエストいただいたのでフルゲーム観た試合です。両チームともに直近の試合を観ています。同じチームを連続してみると前の試合の反省が出てきたりします。その反省内容が判りやすいとチームがやりたい事も判りやすかったりします。
簡単に抜かれるベバリー
マーク相手はドラギッチ。働き口を与えられたようなベバリー。ヒートは全員でアタックするとはいえ、視野の広さが断トツで違うドラギッチを止めればコートをワイドに使わなくなるのでチームも機能性が落ちます。
しかし、全員でアタックするヒートなので、ドラギッチがプレーに絡まない事もチラホラ。そうやって接戦になりかけたブルズ戦は4Qになって積極的に絡み始めてアシストを量産していました。
反省かどうかは判りませんが、開始からほぼ全てのオフェンスに絡むドラギッチ。ドライブからのキックアウトだけでなく、ドラギッチが持つと周囲のオフボールムーブに対し、しっかりとパスが出てきます。動き出すドライビングオフェンス。
そんなドラギッチのドライブにあっさりと抜かれたベバリー。「あれっ?ベバリー?」と思ったらスイッチしてマークを受け渡しました。
オフボールでもオンボールでもスクリーンを多用しながらドライブでボールを動かしていくヒートに対して、どうも徹底してスイッチする作戦なのか?
グリズリーズ戦でもスイッチしてはいましたが、ベバリーならば問題なくついていけそうなシーンで粘らず、マークを入れ替えていたので、日常ではなく作戦と思われます。



とにかく酷かったクリッパーズのスイッチディフェンス。ドラギッチが下がり、ジェームス・ジョンソンが出てくると更に明確になります。マーカーはグリフィン。
まずスクリーンの逆サイドをぶち抜かれてダンクされます。味方がスイッチしない事をクレームしていましたが、そこ守らないで何を守ろうというのか?あとでジョーダンに怒られてた。
次にスクリーンからあっさりスイッチします。オフボールになったのでローテーションで戻れば良いのですが、そのまま。スイッチしたのはルー・ウイリアムス。ジェームス・ジョンソンとの体格差ではインサイドを抑えられるわけもなくあっさりと得点を許します。
そんなわけでスイッチで何を守りたかったのか不明なクリッパーズ。1Qで26本のシュートを打ったヒートですが、個人は多くても4本だけ。簡単にスイッチする上にミスコミュニケーションだらけなので、フリーを見つけて3P。5/10。
ヒートの全員アタックをいとも簡単に許してくれたクリッパーズでした。



簡単に抜いていくベバリー
しかし、ディフェンスが緩かったよりもオフェンスに意識を向けていただけの気もするクリッパーズ。色んな変化を見せてきました。
・マイボールになってからのブレイクパスが早い。
・ベバリーがPGとしてプレーコールしている。
・全員が動いてボールを回して攻めようとしている。
・ガリナリやジョーダンを活かすためにコースを空ける。
つまり戦術グリフィンをやりません。こちらは22本のシュートを打ちましたが、同じく多くて4本だけ。グリフィンは2本のみ。それもショットクロックなくなってのジャンプシュートとゴール下。
大いなる反省をしてきたクリッパーズ。



同じ全員アタックですが、それを極めてきたヒートと、この試合でやり始めたクリッパーズでは熟成度が違いすぎます。全く決まらないクリッパーズのシュート。
14点差は単に熟成度の差です。
頻繁に空けられてしまうベバリーは迷いながらシュートを打ち、
レーンを空けられたガリナリはドライブするけど、本当はキャッチ&シュートしたいし、
グリフィンはオフボールで何したら良いかわからないし、
ジョーダンはどこにスクリーン行けば良いか知らないし、
リバースは何してたかわからないし。
ただ、ジョーダンのハイピックからタイミングが合えばアリウープに繋がったりと悪い修行ではありませんでした。



ベバリーがファールトラブルでベンチに下がるとリバースがPG役になります。全員でボールを回してアタックする機会を探し始めると、今シーズンは封印されていた悪いクセが再発します。
パスが回った後にトップでボールをもらうと、そこから1on1を始めるリバース。周囲をみてないからパスする気ないし、流れを1回止めてからの勝負だからボールムーブ関係ないし。
そんなわけで戦術グリフィンからの脱却を図ろうとしたであろうクリッパーズですが、それはポジティブな反面、外でボールが回り、リバースが流れを止めるという戦術クロフォードが顔を出しました。
回しているだけで何も動きがないので、結局はガードが個人技するヤツです。ポジティブに捉えればテオドシッチ待ち。



怒るグリフィン
2Qでも何も変わりません。チームオフェンスしているようで戦術がないクリッパーズ。
よく見られるのはセットされた形で、スクリーンを使い、はじめの一歩を踏み出しますが、そこからフィニッシュにどう行くか迷うシーン。
例えばジョーダン。部分的に2対1になった瞬間に動きを止めてしまいます。外から観てると「ダンク以外何が出来るんだ?」なのでリングにダイブし、空いたスペースを誰かが使えば良いだけなのですが、多分スクリーンまでしか決まっていません。
早い展開をしようと走った場面。
コーナーまで広がりフリーが出来ますが、センターライン付近でボールを持ったリバースが1つドリブルしてコーナーにパスします。このドリブル分だけディフェンスが間に合います。
それでもコーナーに引きつけたのでリターンを貰えば良いのですが、貰った場所が3Pラインの2m後ろなので、やっぱりディフェンスが追いつきます。
ロケッツやウォーリアーズならばあり得ないシーンでした。
順調に19点差まで広げられます。



そんな停滞するオフェンスに怒ったグリフィン。ボールを寄越せ!オーラを強烈に放ちます。チームとしてはボールを回そうとしますが、グリフィンに吸収されていきます。
でも、これは良い方向に。要は回すだけに陥り始めている中で、強烈にアタックしてくるグリフィンは効いています。あとは空いたスペースに他の選手が飛び込めば良いだけです。
ちなみにそれをやりそうなのは、ウィスリー・ジョンソンとリードの2人くらい。やっぱり選手構成を間違えているリバースHC。
ヒートは多少の中弛みはありましたが、これは仕方がないレベル。でも、そのせいで前半残り2秒にグリフィンのダンク、エンドからのパスをリードが猛ダッシュでパスカットして、そのまま倒れこみながら3Pを決めて5点縮められ、13点差で前半が終わります。



ヒートはやりたい事をやれた前半でしたが、そういえば初めてほぼメインキャストが揃ったような試合でした。
ドラギッチとジェームス・ジョンソンが軸になると安定するのかなと感じました。流行りのPFがPGパターンはディフェンスが楽させてくれます。まぁこの試合のクリッパーズならどこでも楽ですが。
ホワイトサイドはあんなにシュート上手い選手でしたかね。安定感ありました。ここもノープレッシャー。



グリフィンとジェームス・ジョンソン
後半に入ってクリッパーズはガリナリ→ウィスリー・ジョンソン。動くのでカットプレーでチームが活性化する事を期待。
再びチームオフェンス優先に戻るクリッパーズ、というかグリフィン。ボールを持ってゴリゴリの場面でも明らかにパスを意識したスピードでコーナーに散らします。良い感じ。
「チームでやろうぜ」という意図はみえますが、そんなグリフィンのローポストにジョーダンがスクリーン。つまりホワイトサイドを連れてきてくれたので、グリフィンは難しいシュートになるなど、やっぱりチグハグ。
グリフィンのローポストで真ん中空けておくとウィスリー・ジョンソンのカットなんてプレーが前半にあったけど、そんなスペースも潰すジョーダン。



この日のジョーダンは大差でもチームを鼓舞し、かなり話をしていたし、スクリーンも多かったのでチームオフェンスする気は誰よりもあったのだと思います。
しかし、正解がわからないのでスペースを潰すケースが多い。だからジョーダンが悪いけど、その原因はチームにあるよ。
クリス・ポールの時はもっとリングにダイブしていたイメージなので、正解を教えてくれる人がいなくなったのかなぁ、と思ってしまいます。
本来は「グリフィンを活かすためのチームオフェンス」からスタートするはずが、フォーメーションからスタートしているので、上手くいかないと想像しています。
なお、全く機能していないような書き方ですが、グリフィン起点でボールを回したり、単純なピックからチャンスを作ったりしていました。
3QはFG4/20ですが、さすがにそこまで悪くなかったです。ベバリーやリバースがイージーシュートを落とし過ぎました。決まっていれば全体も上手く回ったはずです。



ホワイトサイドはあまり動いていないけど、正解を理解してプレーするので効率的です。選手としてはジョーダンの方が上だと思うけど、育ってきた環境の差がハッキリと出ています。
高さで劣るのにオフェンスリバウンドを取れてしまうのは、その前にジョーダンを引き出しているから。
途中から出てきたジェームス・ジョンソンが再び目立ちます。じぁあそれが高度なフォーメーションを利用しているかというと、そんな事はありません。
高さも運動能力もありながら、ハンドリングやパススキルのあるジェームス・ジョンソンですが、グリフィンをふた回りくらい小物にした選手です。
しかし、相手がビッグマンならアウトサイドからドライブしたり、自分に引きつけてパスを大きく振ったり。ガードがマークにつけばポストアップからのドライブを決めます。
大切なのはどちらもチームとしてスペースを与えている事。ミスマッチでローポストに立てばすぐにボールがはいり、アイソレーションされます。
結局はフォーメーションがどうこうではなく、どこの強みを活かしいくかなんだ!を対比されたようなグリフィンとジェームス・ジョンソンでした。



問題の4Qへ
元々、4Qだけ観ようと思っていたのは、ここからクリッパーズが驚異的なカムバックをしたからです。それを知っていてみる4Qです。
先にヒートについて触れておきますと、クリッパーズのディフェンスはさておき、単にシュートを外し過ぎです。ドライブから崩してコーナー3Pなど、しっかりとプレーメイク出来たのにフリーのシュートを落とし過ぎました。今季困っている3P問題が4Qになって現れた形です。
そして勢いつかせた事で楽勝だった展開から異様な雰囲気になり、パニックに陥って凡ミスも発生しました。要はこんな時に安パイなプレーをするタレント不足でした。
そんなヒートの事情が大前提にあってのクリッパーズを観ていきます。



リードとサム・デッカー
全員をベンチメンバーにしたクリッパーズ。
1つ目のプレーはリードがトップでスクリーンをかけに行き、ディフェンスの動きをみてすぐにゴール下へ。ヘルプが来ないのでルー・ウイリアムスがフローターを決めます。
つまり試合を通してジョーダンが出来なかった動き。
次のディフェンスはオリニクがピックへ行くとマークのリードはブリッツ気味にドラギッチを抑える。当然オリニクはリングにダイブするけど、逆サイドのコーナーを守っていたデッカーがすぐに捕まえてパスが出ず、ドラギッチのトラベリング。
ジョーダンとグリフィンが出来なかったディフェンス。
少し後のディフェンス。トランジションの受け渡しで早いローテーションからタイラー・ジョンソンのパスをデッカーが止める。
リバウンドをとったデッカーがボールをプッシュすると既に3人がワイドに開いて走る。ルー・ウイリアムスにボールを預けると、トランジションディフェンスでマークにつききれていないスキを見つけてデッカーがリングに飛び込みイージーレイアップ。
多分、スターターならグリフィンのリバウンド後に歩いている。
タイムアウト明けのディフェンス。スイッチでドラギッチについたリードが最後までプレッシャーをかけミドルを外させる。



この後も目立つのはリードとデッカーがディフェンスでは素早いローテーションで押さえ込む場面とマイボールになるとガードを追い越して先頭を走るシーン。
14点差になってデッカー → グリフィン
えっ?なんで?と思いましたが、エースのグリフィンは走るしディフェンスも動くのでまぁ理解出来なくもない。
リード、ルー・ウイリアムス、グリフィンが絡んで、グリフィンvsタイラー・ジョンソンのミスマッチからグリフィンがイージーに決める。これ、試合当初からやりたかったシーンでは?
ヒートのミスが続いた後、ルー・ウイリアムスからディフェンスのブラインドから出てきたリードのアリウープで7点差。
もう会場は異様な雰囲気になり飲み込まれたヒートという構図でした。



残り5分半でリード→ジョーダン。
そんなジョーダンとの1on1を選択するドラギッチ。シュートは外れたけど、確実なチャンスを作ります。
ルー・ウイリアムスのフローターが決まったりディフェンスが激しくなったりで会場の雰囲気に後押しされ、クリッパーズは最大22点差を逆転します。
しかし、最後はドラギッチ&ジェームス・ジョンソン推しできたヒートが確率は悪いながらも何とか逃げ切りました。
間は割愛。



クリッパーズを振り返る
レポートを依頼された理由もよく分かったこの試合でのクリッパーズ。前回の反省と、この試合で試されていた事も含めて振り返ります。
◯早い展開をしようとしてもグリフィンしか走らない。戦術不足。
→ ベンチメンバーは走るよ。特にデッカー&リード。そして決めたアーリーオフェンスはロケッツコンビの連携。
◯チームオフェンスしたがるけど、フィニッシュの形が決まっていない。
→ヒートみたいにグリフィンのミスマッチを作れば良いのでは? リードはブラインドサイドに隠れて飛び込むよ。
◯守れない。特にインサイドの機動力不足
→デッカー&リードはガードまで守れるよ。ヘルプも早くて、ローテーションできる。
そんなわけで前の試合ではジョーダンを代えた方が良いとしましたが、それが明確に出たような4Qでした。
本当はデッカーを出したいけれど、グリフィンを下げる必要はありません。ただし、ガード不足。ルー・ウイリアムスに長時間は危険です。



何もわかってなさそうなリバースHC
4Qの流れを生み出したのはデッカー&リードですが、そんな2人を簡単に交代させるリバースHC。おそらくその目にはルー・ウイリアムスが得点した事しか映らなかった模様。
数試合みただけでリードの方が良いと思う人は多くいたはずですが、プレータイムの短さはリバースHCが気がついていない事を示しています。デッカーはプレータイムすら貰えない。
「チームオフェンスしよう」がテーマだったと思いますが、3Qまでの感想は急に新しい事を詰め込みすぎ。というか、それをやりたければトレーニングキャンプからやらないと。
クリッパーズに否定的な事ばかり書いた感じですが、否定的なのではなく、突然いろんな要素が盛り込まれて処理してたらこうなりました。
新しい取り組みをして、自分達を進化させることは良い事なのですが、いくらなんでも完成度が低すぎます。一方でメンバー変えれば成功しそうです。
やりたい事をやるためには痛みを伴う事も必要。痛みはジョーダンとリバースです。あと新しい事を試すのに15ターンオーバーも少な過ぎる気が。
そんなわけで4Qの驚異的なカムバックは、それはそれでクリッパーズの謎を深めてくれました。



ちなみにシーズン前の管理人の予想はガリナリのアウトサイドを利用して、インサイド無双を狙う事でした。
ベンチメンバー+グリフィンは相性良さそうなので、ローテーションの組み方でそんな時間を長くして、スターター+デッカーでインサイドをジョーダン1人にすればどうかな?と考えました。
今のままではジョーダンは全く良い所なしです。ジョーダンにスペースあげれば、かなり怖いと思うのですが。
ジョーダンはグリフィンのスペースを潰していますが、グリフィンのためにジョーダンが困っているのも事実です。

20171106 クリッパーズ vs ヒート” への3件のフィードバック

  1. 観戦記ありがとうございます。
     私のレベルではなかなか理解できない部分はありますが、「HCはおそらくその目にはルー・ウイリアムスが得点した事しか映らなかった模様」というのは腑に落ちました。同時に「息子はガードのくせにFTが下手」というのはだいぶ矮小化して映っている模様。
     本当にこのリバースHCは有能なのか、無能に見えるけど、それならばどうやってボストンでタイトル獲ったのか、常に謎です。

  2. こちらこそ勉強になりました。4Qだけでは読めなかった流れでした。
    リバースHCがボストンで優勝出来た理由はかなり不思議だったのですが、同窓会企画でガーネットやピアースの会話から、チームを纏めるのが非常に上手いHCなのだと感じました。
    ピアースとアレンという積極的なシューターの存在がハマったのだと思います。ピアースのいるクリッパーズはひと味違いましたし。
    まぁティロン・ルーも優勝していますからね。メンバーさえ揃えば、優勝に必要な能力は「戦術<チームを纏める」なのだと思います。
    リードなどを連れてくるのに、ジェリー・ウエストが関わったのかが気になっています。

  3. 当日、観戦に行った友人によると、最後に親父が絶好調のLuを息子と交代したとこから、会場は大Booingだったらしいです。そして「親子共々トレードだ〜」と叫んでいたそうな。

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