17-18シーズンプレビュー バックス編

若手中心のバックスはプレイオフでは主力を欠きながらもラプターズに善戦し、大いなる可能性を示しました。リーグに若くて期待値の高いチームはありますが、結果まで残しているのはバックスだけです。


そんなバックスは夏に具体的な動きを見せませんでした。ローズ獲りに失敗したので何もありません。
しかし心配するファンはいないでしょう。このチームは近年稀に見るドラフトの成功で作られたチームです。2013年からの指名では毎年のように主力を得ています。

13年 アンテトクンポ 15位
14年 ジャバリ・パーカー 2位
15年 ラシャド・バーン 17位
16年 ソン・メーカー 10位、ブログトン36位

同じく主力のミドルトンはトレードで獲得していますが、ピストンズの2巡目指名であまり活躍してなかったのを引き抜いています。
これだけの眼力で選手を集められたのだから、ドラフトでの補強で十分なのかもしれません。

新しい練習場、新しいスタジアムと施設面も充実しエリートチームの仲間入りが目標になります。



シーズンの目標

バックスは長く2年連続プレイオフの出場がありません。期待されたシーズンに失敗を繰り返しています。厳しいリーグなのでステップアップしないとすぐに置いていかれます。

42勝ではありましたが、パーカーが31試合、ミドルトンは53試合を欠場しており、この2人はチーム2位と3位のスコアラーです。健康であれば!と誰もが考えているでしょう。

幸いにしてオフにはイーストからウエストに選手が流れていきました。現状維持のバックスですが周りは弱くなりました。今や上にいるのはキャブスとセルティックスだけです。

横に並ぶチームから頭一つ抜け出して50勝したいところです。



1617シーズンの成績
対イースト 27勝25敗
対ウエスト 15勝15敗

若さ故かウエストと五分なのにイーストでも五分というよく分からないチーム。ウエストとの成績がそのままと仮定すると、50勝するにはイーストには35勝17敗が必要です。
バックスはイースト6位でプレイオフに出ましたが、上位5チーム全てに負け越しました。イーストで他に負け越したのは、後半戦強豪だったヒートです。つまりイーストだけみれば強い相手に勝てないチームでした。

強豪相手に勝てるかがシーズンのキーポイントになります。それは即ちプレイオフで勝てるかという事です。



若いチームとは思えない高確率のオフェンス

若いチームといえばミスもするけど、ガムシャラに勢いで攻めるイメージですが、バックスは全く違います。

得点 103.6(20位)
FG% 47.4(4位)
3PFG 37.0%(10位)
アシスト 24.2(5位)
ターンオーバー 14.0(18位)

ミスこそありますが、コーディネートされたオフェンスをセットし、味方のアシストから確実性の高いシュートを選びます。堅実なためボールを回して時間も使うのでFG%の割には得点は伸びません。
3Pも確率の高さの割には打たないので、イメージとしては、ボールを回しアシストから確実なシュートを選択するスパーズのようなオフェンスです。

若い選手を集めてスパーズのようなオフェンスをする。しかもそのHCはジェイソン・キッドです。シュート力だけが欠点と言われた選手だけにイメージが違いすぎます。



アンテトクンポがいるだけにゴリゴリ個人で攻めそうですが全く違います。これはアンテトクンポはアイソレーションの得点期待値が0.77と低く、FG38%程度しかなく、あまり効果的ではないからです。

またピック&ロール(28位)も少なく、それはボールハンドラーの得点期待値が0.77(29位)と低いためと思われます。
バックスが多用するのはカットプレー(2位)です。得点期待値も1.3点(7位)と高いです。合わせてハンドオフも0.99点(4位)と高くなります。

これらのオフェンスはトライアングルオフェンスに似ています。ちなみに管理人はウォーリアーズはトライアングルを現代版にアレンジしたものと捉えていますが、バックスも違う形でアレンジされています。



PGブログトンの発見

そんなオフェンスをコーディネートするのにシーズン序盤は本職のPG不足でした。アンテトクンポのPGに期待していたこともあります。しかしケガ人が増えたことと、アンテトクンポ自体はフィニッシャーにした方が効果的でした。

代わりにドラフト2巡目のブログトンが台頭したことでチームは軌道に乗りました。このオフェンスを主導できる選手を連れてきた事はフロントの最大の功績です。新人王まで獲得しましたが、このオフェンスをするチームはレアなので他のチームではプレータイムもなかったかもしれません。

バックスは45°あたりに起点を作ってトライアングルで仕掛けます。自然とスクリーンではなくカットやハンドオフが多くなります。インサイドのパーカーにドライブ力がある事も大きいです。
この時にアンテトクンポはトライアングルに参加せず、逆サイドでフィニッシャーを務める方が効果的でした。ブラインドサイドからミドルラインに飛び込まれると止められません。形は違いますがジョーダンがトライアングルに参加しなかったのと発想が似ています。逆サイドが怖いからトライアングルも活きます。

言葉よりも映像の方がわかりやすいので探してみました。リンクを後述します。



それでは何故、アンテトクンポをPGにしたかというとウエストブルックの役割に似ています。自分でリバウンドをとり、ボールをプッシュして速攻に繋げるためです。

この発想はキッドの現役時代そのものです。アンテトクンポはキッドを知らなかったそうですが。

ファストブレイク
バックス 13.8点(13位)
アンテトクンポ 5.4点(6位)

チームとしては多くないもののアンテトクンポ個人は高い数値を残しています。あのサイズとスピードで大きなストライドステップで来られたら止めようがありません。



キッドHCは個人の能力を的確に活かせるオフェンスシステムで若いチームに高いFG%を残させました。システム徹底オフェンスは相手に読まれててもディフェンスの配置をみて適切なプレーを選択出来るかが肝です。それを可能にしたのがブログトンでした。

一方でどこかで分かっていても止められないプレーを出す必要もあり、それがパーカーの役割です。パーカーの不在はプレイオフで大きく響きました。ケガ前の状態に戻れないのであれば、設計を見直す必要があると思います。

そんなブログトン、アンテトクンポ、パーカーを中核に設計されているオフェンスの解説動画を見てください。。英語ですが言葉わからなくても映像だけでなんとなくわかるはずです。

・アンテトクンポのための速攻システム
・キッド式トライアングルオフェンス
・ブログトンの能力
・アンテトクンポのブラインドカット
このあたりがポイントの動画です。

バックスオフェンス動画

これをみるとブログトンで勝てるようになった理由がよくわかります。映像ではデラベドハだけスクリーンしてますが、単に他にやる事ないからだと思います。



オフェンスの課題

かなりデザインされたオフェンスは熟練度を増す事でより効果的になるでしょう。しかしまだ行方不明になる選手がいます。目立ったのはソーン・メーカーです。モンローにはもっと期待していた点も含めてセンターの居場所に困る傾向にあります。カットプレーしたいのにインサイドで邪魔されても困ります。

またミドルトンを中心としたアウトサイドの確率向上も期待します。このアウトサイドシュートを増やしていきたいところです。バックスはミドルトンの43.3%を筆頭に5人が40%超えの超高確率チームでした。
その割にチーム確率が悪いのは1番打っているテレトビッチが34%なのとアンテトクンポが27%のせいです。テレトビッチは戦術理解の問題もあり40%近く決めないとプレータイム失います。

センターが行方不明になる事と本人が3Pが苦手な点から、アンテトクンポをセンターとして使う案もありかと思います。もちろんセンターのプレーをするわけではないのでスモールラインナップです。本職のセンターを外してアウトサイドに人数をかけ、空いたインサイドにアンテトクンポのカットプレーを増やす。ケガ人が戻って来れば当然考えられる選択肢になるでしょう。



また問題は研究された中でどう得点していくかです。上位チームに弱かったのは、相手のペースにハマりやすいからでもありました。
ハーフコートでしっかりデザインされているわけですから、リズムを掴むためにキッドHCらしく速攻を増やす事も求められます。

動画ではアンテトクンポの速攻がありますが、この時の周囲の動きもかなりデザインされています。しかし、パーカーくらいしか得点できていません。

確かにガード陣にはインサイドでもフィニッシュ力に疑問のある選手が多いです。しかしシュート力はあるため、アンテトクンポがキックアウトの判断を早く出来るかが重要になりそうです。



ディフェンス

失点 103.8(9位)
被FG% 45.8%(18位)
被3P% 35.3%(9位)
ブロック 5.3(6位)

トップクラスではありませんが、ディフェンスも上位に入ります。高さのあるチームだけにブロックの脅威があります。

ディフェンスリバウンド 31.6(28位)

しかし何故かリバウンドだけは異様に弱いです。アンテトクンポは強いですが、モンローにしろメーカーにしろセンター陣の、それもリバウンドがメイン仕事のはずなのに弱いです。



求められる頭脳

その理由の1つにバックスの特徴があげられます。バックスはユーティリティ性のある選手を好みます。その最高峰はアンテトクンポです。ミスマッチをなくし柔軟な運用を可能にします。ウォーリアーズに似た考えです。
それを利用し激しくローテーションするゾーンディフェンスも組み込みます。NBAはディフェンス3秒もあるので、常に状況判断が求められ、適切に相手を捕まえてポジショニングする必要があります。

しかし若きインサイド陣は特にこれが苦手でポジションを確保できず、追いかけるのに精一杯でリバウンドに備えられていない傾向があります。
高さ・能力以上に頭脳が求められるのがバックスです。



ちなみに超意外ですがバックスに移籍してきたスペンサー・ホーズは逆にプレータイムあたりのリバウンド数を増やしています。サンプル数が少ないので偶然の要素もありますが、判断力が活きているかもしれません。
オフェンスでもFG50%超のホーズ。前述の通りアンテトクンポのカットプレーのためにストレッチ出来るインサイドプレーヤーは戦術的に貴重です。

2014年に13.2点、3P41.6%、8.3リバウンドを記録してから下降線を辿っていたホーズですが、2年目でフィットすれば数字を伸ばすかもしれません。

補強していないバックスですが、ホーズが20分10点6リバウンドくらいの働きを見せてくれる事に期待しているかもしれません。



新戦力

新戦力がいないバックス。それでもドラフトで当てまくった実績があります。ブログトンなんて他のチームだったら埋もれたかもしれない選手を発見しちゃいます。
指名したのはDJウィルソン。サマーリーグハイライトをみると、他の派手な活躍をするルーキーに比べたら見劣りします。それこそ日本人なら八村いけるんじゃね?と言いたくなるくらい。

しかし、この選手はアウトサイドもあるPFで能力よりも判断力でプレーします。つまりは頭の良さを評価し、チームへのフィットを優先して指名したと思われます。ユーティリティ性と戦術理解度を優先したクレバーな指名です。

時にはボールをプッシュすることもあるので、アンテトクンポの控えが良いところではありますが、複数の役割をこなせる事からPFタイプを3人並べるようなユニットに向いているかもしれません。高さのあるスモールラインナップです。



若いチームでありながら、戦術的に戦うバックス。ケガのパーカーが戻る事が最大の補強となります。オフで選手のアップグレードはしなかったものの、戦術的な厚みを増す方向に動いた傾向があります。シーズン途中から加入したホーズとルーキーのDJウィルソンは共にチームにいなかったタイプの選手です。

それはチームの強みであると同時に不安材料でもあります。



何故、5割なのか。

ここまでみていくとバックスが5割程度の勝率しかない事が不思議です。FG%で相手を上回り、ターンオーバーも劣りません。リバウンドは2本くらい少ないだけです。

では、大勝するけど接戦に弱いかというとそんな事もなく、接戦でも5割前後です。

その逆にFG50%超えた試合が28試合ありますが、なんと20勝8敗です。シュートを半分決めてるのに7割を切る勝率しかありません。酷い時は相手に倍近いフリースローを与えて負けています。

同じ様なFG%のウィザーズはオフェンス力で7つ多く勝っています。FG50%超えた試合は25勝3敗で格上のキャブス、スパーズ、ラプターズとの確率合戦で負けただけです。



開幕から12月まで5割ペースだったチームは1月に調子を落としました。それを3月に取り返しました。

1月
5勝10敗 得点103.8 失点108.9

3月
14勝4敗 得点102.7 失点100.6

つまりバックスはディフェンスの安定性を欠くチームです。ディフェンス力がないのではなく、あるけど不安定です。

「若くてオフェンスが安定しない」
「オフェンスは水モノだからディフェンスが安定を産む」

そんな話はよく聞きますが、バックスの場合は戦術的なオフェンスで比較的安定して戦えているけど、同じく戦術的なディフェンスは不安定な結果を生み出しています。上記の通り瞬間の判断力を求められるので理解が足りない選手の穴を突かれることが原因と考えられます。

上位チームに弱いのも、相手のオフェンスが洗練されているため、より早い判断を求められる事に由来すると推測されます。



まとめ

目標50勝。上位チーム相手の勝ち越し。

◆ストロングポイント◆
攻守に戦術的でアンセルフィッシュなスタイル
ユーティリティ性を揃えた柔軟なラインナップ
フロントとHCのスカウト力

◆オフのポジティブポイント◆
戦術幅を広げそうなルーキー獲得
メンバーキープによる戦術理解増
イーストライバルチームの弱体化

◆オフのネガティヴポイント◆
選手のアップグレードなし
リバウンドへの補強なし
オフの評価 +10点
(練習施設が充実したことへの得点)



攻守にデザインされたシステムはキッドらしくないですが、高度な判断力を求めるシステムはキッドらしいチームです。一方で判断力に乏しい選手は不要なチームです。アンテトクンポの運動能力に騙されそうですが、このチームの本質は戦術面にありました。
就任当初はスターのいなかったチームがオーナーの意向でネームバリューに釣られてキッドをHCに据えたと思いきや、非常に良い仕事をしています。ドラフト2巡目指名権2つとHCという非常に珍しいトレードした価値は十分にありました。



バックスは50勝するポテンシャルはあるけど、勝ち続けるメンタリティはない気がします。それがディフェンスの不安定さに出るというのは、「オフェンスの調子が良い時ほどブロックショットに跳んじゃってフェイクに引っかかる」なんて事かもしれません。「調子よくボール追いかけた故にリバウンドに入れない」とかね。

でもそれを繰り返して50勝に到達出来ないとあっという間に後ろからシクサーズに追いつかれます。それがこのリーグの怖い所。

関係ないけどロスターにはゲイリー・ペイトン二世がいます。細身ですが父親譲りのしぶといディフェンスは一見の価値があります。リバウンドも取るのでPGの2番手に昇格してくれないか期待しています。ブログトン同様にバックスなら活躍できそうなタイプです。

次回はそんなバックスの当面の目標にしてライバルのウィザーズになる予定です。



わかりやすいので動画紹介をつけてみました。本当は自分で編集した説明動画を作りたいけど編集ソフトも録画ソフトも足りない。それ以前にパソコンが壊れたまま放置している。
なんとかしたい夏です。


###

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA