イーストの優勝候補セルティックス。でも、このチームには初めに言いたい事があります。
本気で優勝する気があるのか!!
この夏の注目FAの1人にイグダラがいて、他のウエストのチームはイグダラを獲得する事で補強とウォーリアーズの弱体化を狙いました。
セルティックスは自分達の事情を優先してキャブスを強くしました。レブロンが来夏に移籍する噂はありますが、残る事もあるわけで、このままではセルティックスの時代がいつやってくるかわかりません。
ホークスは平然と不合理なトレードでライバルを強くして自分達を解体する事になりました。そこまではいきませんが、イーストでぶっちぎれそうだったチームは2番手候補に成り下がりました。
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ダニー・エインジのやり方
サンダーのプレスディGMはやり手と評価が高く、FAを獲得できないOKCでドラフトとトレードを駆使してチームを強化します。デュラントに出て行かれた以外は成功例ばかり。彼は契約最終年の選手を巧みにトレードします。タダで出て行かれる前にトレードという事です。
セルティックスのエインジGMもその方法で成功しています。優勝時のメンバーが高齢化した時に在庫一掃セールみたいに放出しましたが、そこで得たドラフト指名権と空いたサラリーキャップで効果的な補強をして、あっという間にチームの再建に成功しました。
◯セルティックスの成績推移
1213 41勝 ←KG&ピアース
1314 25勝
1415 40勝
1516 48勝
1617 53勝
スターを集めたわけでもないのに素晴らしい上昇曲線です。今年はイースト最高勝率ながらドラフト1位指名権を持つという摩訶不思議な状態でした。
しかし成功し過ぎたからか、この夏のエインジは動き過ぎました。他のチームの補強に対する焦りだったのかもしれません。現役時代から熱くなる男として有名だったし。
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夏の動きを追ってみよう。
そんなセルティックスの夏の動きです。
◯ドラフト3位 ジェイソン・テイタム
1位指名権と引換に3位指名権+来年のレイカーズ指名権をゲットしています。PGにスマートとロジアーがいるのでウイングを優先した上で来年も上位指名が期待出来てしまいます。だいぶ得しました。
◯FA ヘイワード
さらにウイングにトップFAのヘイワードを獲得。スティーブンスHCを熟知しチームプレーヤーのヘイワードはすぐにフィットするでしょう。
しかし、ヘイワードによりいくつかの調整が必要になりました。
▲オリニク退団
▲アミール・ジョンソン退団
▲ジェレブコ退団
▲エイブリー・ブラッドリーと
◯モリス(ピストンズ)のトレード
サラリーキャップを見据えてオリニクやジョンソンとの再契約は諦め、また契約最終年のブラッドリーをトレードしてしまいます。
ディフェンスの要であったブラッドリーの放出はプレータイムと来夏のトーマス再契約を考えたもので理解は出来ます。
インサイド3人を失った中で汎用性の高いモリスを得た事も悪くありません。
この時点では勿体無いけど、致し方ないかなという評価でした。クレバーな選択です。
◯カイリー・アーヴィングと
▲アイザイア・トーマス
▲ジョー・クラウダー
▲アンテ・ジジッチ
▲2019ネッツ+二巡目指名権のトレード
問題のトレードです。ここでもトーマスが契約最終年という事も関係します。マックス契約希望を表明したので、今期は安くても3年でみたらアーヴィングとサラリーは大差ありません。ケガもあるし。
しかし、足元を見れたはずのアーヴィングに大盤振る舞いです。何よりもクラウダー放出はダメよ。そしてキャブスは強くなった上に来年以降も期待出来るようになりました。
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それぞれのトレード単体には意味があります。しかし、トータルでみると見返りなしのFA移籍を恐れ過ぎ、というか強迫観念でもあるように放出しています。
そして結果的にイースト最高勝率に貢献した主力は
ホーフォード(2年目)
スマート(4年目)
ブラウン(2年目)
ロジアー(3年目)
くらいしか残りませんでした。チーム力が売りのチームに在籍年数が短い選手しかいません。シーズンは長く熟成期間があるとはいえ、ほぼ1からチームを作り直すので今期の優勝は簡単ではありません。
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変化したチームスタイル
そんなわけでメンバー変わり過ぎて、チームのスタイルは大きく変化しそうですが、実は1617シーズンから変化していました。
セルティックスといえばディフェンスなのですが、オフェンス重視に移行しています。前年からのレーティングの変化です。
◯ディフェンス
100.9(5位)→105.5(12位)
◯オフェンス
103.9(13位)→108.6(8位)
ディフェンス志向のチームからオフェンス志向に変化しています。リーグ全体の流れではありますが、セルティックスの変化は非常に極端でした。
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リーグ全体でオフェンスに移行していますが、それは早い展開への移行です。しかし、その流れには反しています。
◯ペース
101.1(3位) → 99.3(12位)
ペースは上げるのではなく下げています。
リーグで早い部類だったチームは平均クラスまでペースを落としました。
◯速攻 16.3(6位)→ 12.4(17位)
◯スティール 9.2(2位)→ 7.5(18位)
それを象徴するように速攻は大きく下げました。その要因のひとつはスティールの激減です。
◯ファール数 21.9(29位)→ 20.6(21位)
ファールの数も減りました。メンバーはあまり変わっていないのに、ディフェンスの激しさを失った事になります。
ディフェンスからの速攻で得点するパターンは強力なはずですが計算は出来ないということかな。
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この変化をどう捉えるかは難しいです。
1つ言えるのは、セルティックスはオフェンス力で勝率を上げました。スティールからの速攻というイージーシュートを減らしたのにオフェンスを上げたのです。
これはハーフコートでのオフェンス成功に対し自信が深まり、試合をコントロールする術を身につけたと言えます。
◯得失点差 2.6(8位)
51勝以上の8チームの中で最も得失点差が小さいチームでした。少ない点差で勝利に結びつけるオフェンスチームってちょっと変わっています。
◯5点差以内の勝敗
1516 11勝14敗
1617 17勝8敗
明らかに接戦で強くなっています。偶然にも同じ試合数なので、わかりやすい比較です。
この接戦の部分で6つ勝ちを増やし、6つ負けが減りました。48勝→53勝なのでまさにここがセルティックスが強さを増した変化なのです。
ちなみにスティーブンスHCのタイムアウト明けのオフェンス成功率はリーグ屈指らしいです。データの出所は失念しました。
ハーフコートオフェンスの堅実性がチームの強みになりました。
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プレーオフでは1回戦ではブルズとお互いの良さを消し合う勝負をし、2回戦ではウィザーズとのオフェンス合戦をしました。
リーグ全体がオフェンスに傾く中で、ディフェンスに傾倒した「自分達のバスケ」に頼るのではなく、より柔軟な戦い方を身につけた事で状況に対応出来るようになったと捉えています。
自分達のハーフコートオフェンスに自信を持ち、接戦をものにする強さを得たセルティックス。
それは強みであると同時に新しいシーズンへの不安材料でもあります。前述の通り、多くのメンバーが入れ替わったので、メンタルの側面も大きい接戦の強さが継続されるかは未知数です。
接戦での勝敗が逆転すると5割チームに戻ります。
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強いよね? うん、強いよね!
セルティックスファンはシーズンが楽しみなくらいの豪華メンバーです。スティーブンスHCは「ガードやセンターといったポジションの概念は頭の中にない。あるのはボールハンドラー、ウイング、ピックだけだ」みたいな発言をしました。
それに合わせて主要メンバーを見てみましょう。
◯ボールハンドラー
アーヴィング、スマート、ロジアー
◯ウイング
ヘイワード、ブラウン、テイタム
◯ピック
ホーフォード、モリス
こうみるとバランスとれていますが、従来のポジション概念だと、PG過多、インサイド不足です。
スティーブンス流になっている事が伺えます。
ちなみに管理人はスティーブンスのポジション概念に賛成ですが、ピックというのは言葉としては弱すぎるのと、ピック以外はビッグマンは生き残れないのか疑問です。
関係ないですがU19をみて日本流の新しいポジション概念の記事を書いたのですが、時期を逃した感があってアップしていません。
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インサイド不足
チームはボーガットの獲得に動きましたがレイカーズに敗れました。ビッグマンがいない事は大きな不安材料です。何かしらの補強はするでしょう。特にモリスには訴訟リスクがあり、ケガだけでなく人数が足りなくなる可能性があります。
ただ、このチームには強力なセンターでなくてもフィジカルで戦えるセンターが1人いれば十分かもしれません。
◯リバウンド 42.0(27位)
◯ブロック 4.1(23位)
元々弱いインサイド。1番とったのはホーフォードですが6.8だけ。その次はなんとブラッドリー6.1です。
つまりサイズではない部分でリバウンドをとる意識があるチームです。
アーヴィング 3.2
ヘイワード 5.4
新加入2人は明確なリバウンダーがいるチームでもそれなりに役割を負っている選手でした。おそらく数字を伸ばすでしょう。
サイズ関係なくリバウンドをとるディフェンスシステムを組んでいますが、強いセンター相手にどうするのでしょうか。
一方でイーストにはハワード以外には怖いセンターがいません。同じ事はキャブスもしています。頑張ろうホーネッツ。
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リバウンドの弱さはなんとかなったとしても、ディフェンス文化はやり直す必要があります。
◯被3P 33.2%(2位)
◯ペイント内失点 43.2(13位)
アウトサイドまでプレッシャーをかけますが、ペイントをやられまくるわけでもありません。チェイスとローテーションで自由にさせず、そしてリバウンドに飛び込みます。
サボりがちなアーヴィングには不安があります。
これが機能しないとインサイドが弱いだけにディフェンス全体が崩壊する可能性もあります。クラウダー、ブラッドリー、アミール・ジョンソンと地味仕事担当がいなくなったので、誰もがディフェンスしないといけません。
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PG過多
この部分は問題ないと思います。キャブス編でも触れましたが、そもそもSG的なアイザイア・トーマスとアーヴィングだし、ボールキープよりもパスをチョイスするスマートとロジアーならば問題ありません。
◯パス数 325.3(2位)
◯アシスト数 25.2(2位)
ジャズで多くのパスと少ないアシストを経験しているヘイワードはアジャストは簡単です。問題はアーヴィングです。PGをしたかったアーヴィングが本当にPGをするのか注目です。
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◯アイソレーション 5.5%(28位)
◯ハンドオフ 6.5%(1位)
相対的には極端に少ないアイソレーションと多いハンドオフ。実はキャブスはアイソレーションが1位でハンドオフが29位と真逆の選択をします。どちらもアーヴィングの役割ですので、かなりの調整を必要とします。
そんなわけで、戦術へのアジャストとしてはスティーブンスHCの元で大学時代を過ごした上にセルティックスに近いジャズで経験を積んだヘイワードに対し、アーヴィングはプレーを変えなければいけません。
一方で役割へのアジャストとしてインサイド仕事が増えそうでフィジカル的にも厳しそうなヘイワードに対し、基本はトーマス仕事なので問題なさそうなアーヴィング。
中核の2人なので戦術にも役割にもアジャストしなければいけません。
2人の代役をしそうなのは若手2人くらいです。
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期待のウイング2人 ブラウン&テイタム
16年のドラフト3位ジェイレン・ブラウンはセルティックスに加入したためにプレータイムが17.2分に留まりましたが、その分チームプレーを学ぶことになり、シーズン後半に存在感を発揮し始めました。
高い身体能力ではなくチームプレーを優先する選手になった事は今後に繋がると思います。そしてオフェンスではトーマスに次いで無理の効く選手でした。
今年のドラフト3位ジェイソン・テイタムはサマーリーグでブラウンを上回る活躍を見せました。長いウイングスパンを活かし、リバウンドでも貢献するなど、ルーキーの中で最も印象的な活躍をしました。
ウイングの人数が整理された事とディフェンス面の期待からプレータイムを得られそうです。
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ブラウンはボールハンドラーとしてアーヴィングの代役も、ウイングとしてヘイワードの代役も期待されます。テイタムの方はウイングとピックです。
広い役割を担えそうな存在は心強いですが、このユーティリティ役を若手2人に任せるって珍しい選択です。2人とも活躍はしそうですが、完璧にはこなさないでしょう。
運動能力系の2人でもあるので、いなくなった選手達が担っていた地味仕事も担当するでしょうから、かなり重要です。
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触れてなかった選手
プレビューの締めに入って気付きましたが、ホーフォードとスマートとロジアー(とモリス)に触れていませんでした。
まずスマートとロジアーの2人を残した事はクレバーな選択です。特にスマートですが、価値を高めたこともありトレード候補でもありました。
しかしスモールラインナップが殆どのセルティックスにおいてどんな相手でも守ってしまうディフェンス力はポジションの不利を減らしてくれます。
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ホーフォードはセルティックスのオフェンスにマッチしていますが、役割には苦労していました。ピック役としてスペースを構築し、オールラウンダーとしての能力は発揮しましたが、一方で1人でインサイド仕事をするのは難しそうでした。
モリスもまた同じタイプです。フィジカルがありピック役もすればシュートレンジも広くドライブもあります。まぁウィザーズのモリスの印象なのですが。
ホーフォードは活躍はしたものの期待には見合わなかったという評価ですが、似たタイプを欲しがったので、セルティックスはホーフォードの活躍に満足していたということでしょう。
2人同時に起用すればお互いを助け合えると思いますがロスターをみるとモリスはベンチにしないとローテーションが回らなそうです。シーズン中の補強も含めて使い方は試行錯誤されそうです。
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まとめ
目標 55勝 イースト2位
前年超えが目標。優勝出来たら良いね、くらい。
◆ストロングポイント◆
◯攻守に武器を備えた柔軟性
◯接戦を勝てるゲームコントロール
◯チームプレー優先の文化
◆ポジティブポイント◆
◯よりスティーブンス流になったラインナップ
◯アーヴィングとヘイワードの獲得
◯有望な若手選手
◯イーストの弱体化
◆ネガティヴポイント◆
◯キャブスの強化
◯多過ぎる新加入
◯ビッグマン不足
◯ユーティリティ担当が若手2人
順調に勝率を上げてきたセルティックス。50勝は確実に超えてくるものと思われていますが、さて、どうなるでしょうか。
どれだけ接戦を制することが出来るかなので、僅かな違いで勝率を上げることも下げることもあり得ます。
接戦に強いアイザイア・トーマスはいなくなったもののヘイワードとアーヴィングもクローザーの役割を担っていたのでメンバー的には問題ありません。
思い出されるのはプレーオフでキャブスを倒した試合。トーマス不在のラストプレーでは、その試合に大活躍したスマートが勝負すると思いきやブラッドリーの3Pで勝利しました。あのシーンはセルティックスのシーズンを表していた気がします。
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今はもう5つのポジション概念は不要なのですが、それでもスティーブンス流まで振り切って成り立つのかは疑問が残ります。セルティックスがその答えを出してくれるので、戦略的な側面でもこのチームは注目に値します。
セルティックスには5つのポジション概念でいえば、PG.SF.PFしかいません。オフェンスを考えての発想ですが、ディフェンスも補える計算があります。
ペリカンズは2人のPGと2人のCですが、5つのポジションに当てはめ直そうとしています。ペリカンズに振り切った戦術をとるHCに変えるべき、というのはセルティックスも参考にすべきです。
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アーヴィングにヘイワードといますが、個人的にはブラウン&テイタムの方が将来性を感じます。身体能力のあるヘイワードになれるか、ロールプレーヤーになってしまうのか。
コービーはスターだらけのチームでワガママにプレーして成長しましたが、レア過ぎる事例です。
セルティックスが強い分、効率的なプレーを学び、プレーオフの経験も得られますが、中心スター選手になるのが難しいのも事実です。
2、3年後の話ではありますが、先の話だと考えていると成長しません。そんな意味でもブラウン&テイタムがインパクトあるスタッツを残す事を期待しています。