カイリー・アーヴィングのトレード問題を考える

カイリー・アーヴィングがトレード志願したそうです。
極めて真っ当な要求だと思います。キャブスの試合を見る度に「これで満足しているのか?」と疑問に思っていましたが、やっぱり不満を抱えていた様です。
優勝を目指すチームにおいて、そんな不満を表に出さず、そしてチームのために3年も我慢したのだから、アーヴィングの要求はしっかりと受け止めてあげる必要があります。
そうでなければ戦術を見直すわけですが、ワガママキングのチームではそれは叶いません。




◯本来のカイリー・アーヴィングとは?

 

前回のクリス・ポールの記事でも触れましたが、管理人はアーヴィングを単なる1on1ファイターだと思っています。

ボールはレブロンに支配され、回された時は自分で決めることを要求される。PGの役割が変化したとはいえ、それはより幅広くなったのであり、アーヴィングみたいに得点にタスクが限定されたらPGとはいえません。

しかし、レブロンが来るまでは若い有望なPGでした。レブロンが欲しがるのはチームプレーに難点のある選手と自分のプレーに合う選手ばかりで、アーヴィングはどんどんタスクを限定されていきました。

自分が主役になれるチームに移籍したいのではなく、自分がPGでいられるチームに移籍したいのだと思います。



それではアーヴィングの本来の姿はどんな選手なのでしょうか。レブロンとチームメイトになる前年の成績と3年後の2016ー17シーズンから考えてみます。

ポイント 20.8 → 25.2
FG 43.0% → 47.3%
3P 35.8% → 40.1%
アシスト 6.1 → 5.8
ターンオーバー 2.7 → 2.5

本人が成長したというのも大きいわけですが、今の方が個人でも良い結果を残しています。特に得点力は驚異です。

 

あれっ?でもちょっと待って。

「オレはもっとチームの中心として得点したいんだ!ボールをオレに持たせろ!!」

なんてのはよくある話だけど、このケースってレブロンやラブが加入してむしろ得点増えています。序列は下がったかもしれないけど、個人の活躍度は上がっているわけです。

 

FG本数
17.4→19.7

そんなわけでシュートを打つ本数も増えています。レブロン加入から2年は少し減りましたがそれでも16本以上打っています。

かつては弱小チームで唯一のスターだったのに今よりもシュートをシェアしていたわけです。

本来は1on1ファイターではない選手だという事がみてとれます。



というわけで、どうやらアーヴィング個人の活躍度に不満があるとは思えません。レブロンHCのバスケが嫌そうです。それはどんな違いがあったのでしょうか。

チーム平均得点、FG本数
98.2点 → 110.3点
84.8本 → 84.9本

ドアマットチームからトップチームになったので得点は大きく違いますが、FG本数は同じなので確率が大幅に向上しています。オールスターのビック3で70.6点をあげています。FGにすると84.9本中52.4本をビック3で打っています。

3年前はアーヴィングも含めたトップ3人で51.8点で、84.8本中44.3本です。

つまり決められる選手にシュートを集中したオフェンスにシフトしたことになります。逆にいえば昔は全員オフェンスをしていました。効率よくシュートが決まっていくバスケはやっていて楽しいのが普通ですが、いくらなんでも集中し過ぎなのでしょう。



パス本数

アーヴィング個人
55.7本 → 51.8本
キャブス
304.9本 → 280.7本
キャブスの中でアーヴィングの占める割合
16.1%→16.2%

これだけだと単にパスが減っただけですが、かつては最もパスを回していたアーヴィングが56本程度であり16%でしかなかったのに、今は1番多いのはレブロンで19.1%の59.1本のパスをしています。

全体が24本も減ったのに、1人で60本もパスする選手が加わったわけです。

自分が中心だったパスを回すチームでもボールを独占していなかったアーヴィング。
それがパスを回さないチームになった上に独占しまくるレブロンが現れたわけだから、尚更パスが回っていないように感じるだろう。
レブロン個人とプレーするのが嫌になった気持ちも理解できます。



オフェンス時のチーム平均移動速度
4.62(リーグ3位) → 4.25(リーグ30位)

そんな全員でボールを回すチームは、リーグでもトップクラスの人も動くチームでした。それがリーグで最も動かないチームに変わったのでした。

アーヴィングの平均移動速度
4.55 → 4.32

チームが動かなくなった事に伴いアーヴィングもやはり動かなくなりました。この数字でも当時のチームでは動かない部類に入る選手でしたが、今ではスターターの中で2番目に動いています。

ちなみにリーグ全体のデータを引っ張ると486人の選手がいるのですが、レブロンは4.01で463番目なので、リーグでトップクラスの動かない選手です。



ちなみに意外なのが
今回比較しているのは13-14シーズンなのだけど、この年最もパスを回さなかったチームはなんとウォーリアーズ。それも圧倒的にパスしなかったのです。

それがどんな変化だったかというと

246.6本(リーグ30位)→317.2本 (リーグ5位)

なんと70本も増やしています。スティーブ・カーは就任当初300本パスを回せば勝てるという話をしてカリーは感動したらしいです。(300何本かは忘れました)

3年の月日は両チームを対極へと推し進めた。



そんなわけでレブロンとプレーする事でアーヴィングはシュート機会を得て、スタッツを伸ばし、中心選手としての活躍度を大きくしました。有名にもなったし。

キャブスはレブロンがGM兼HC兼エースとなり、非常に高いオフェンス効率を生み出すチームとなりました。

その一方でチーム全員が走り回り、ボールを回し、シュートを打つ「アーヴィングに頼らないチーム」だったのが、「走らない回さない頼ってくるチーム」に変わりました。

アーヴィングは主役になりたいのではなく、PGとしてチームを機能させる存在でありたいのだと思わせるのに十分な数字だったと思います。

そしてアーヴィングの理想はそれこそウォーリアーズのようなオフェンスにあったのだろうと思われます。



◯移籍希望先から考える。

アーヴィングが希望したとされるのは、スパーズ、ヒート、ウルブズ、ニックスです。もしも自分がチームで1番の存在でありたいならば、スパーズとウルブズの名前が出てくるはずありません。

レナード、バトラー、タウンズよりも格が高いと思っているならレブロンにだって楯突けるはずです。

そしてスパーズとヒートはそれぞれパーカーとドラジッチがPGとしてボールを長く保持しながらも、常に動きながらプレーし、チーム全体にボールを供給し、どこからでもシュートを打っていくチームです。

つまり以前のキャブスのオフェンスがバージョンアップしたチームです。



ウルブズを希望したのはバトラーの存在と言われます。元々はブルズが良かったと。何故そこまでバトラーが好きなのかはよく分かりません。同じ様に地球が平たいと思っているのかもしれません。レブロンの影である自分とローズの影だったバトラーを重ね合わせているのかもしれません。

いずれにしてもバトラーはよく走ります。そしてブルズもインサイド陣も動けるメンバーを多くしています。

ウルブズでみてもそれは同じです。バトラーとウィギンズの両翼にタウンズがいる布陣でPGをしたくないなんて選手は珍しいでしょう。

さらに言えばルビオが担っていた役割はパーカーとドラジッチに近しいものがあります。バトラーが居なくてもウルブズは条件にあったはずです。



ニックスは謎です。大都会だからでしょうか?でも田舎も好きそうだし。

再建に付き合うならニックスって事なのでしょうか。自分が加入すればFAで誰か取れるからでしょうか。

しかし、ハーダウェイjrと高額契約した今、ポルジンギスと3人で成長を目指すのは些かリスキーな気がします。
ニックスの存在がアーヴィングの希望を謎にしてしまいます。



そんなわけでニックスを無視すれば、希望するチームから考えても全員が機能するオフェンスチームを好んでいるのがアーヴィングです。

パーカー、ドラジッチ、ルビオはオフェンスを主導しますが、例えばウエストブルックやハーデンのように「自分が決めるために仕掛け、ディフェンスが寄ってきたらパス」するタイプではなく、「ボールを自分で動かしながら相手の陣形を崩し、仕掛けるべき選手にパスをする」タイプです。

そして隙を見て自分が決めます。アーヴィングの超絶技巧は長くボールキープするこのタイプのオフェンスにマッチすると思います。

それがアーヴィングの希望なのでしょう。



アーヴィングがレブロンに嫌気がさしたというウワサが真実だと仮定して、その上でデータを見ていくと信憑性があります。

真実でなければ、世の中のメディアもレブロンのワガママ放題は酷いな、と思っていたのをぶちまけている事になり、それはそれで面白いですが。



そういえばファイナルの時期にレブロンは本当はウォーリアーズみたいなバスケがしたい、というコラムが公式にありましたが、アーヴィングだって割とそんなバスケがしたいわけです。

チームの中心2人が志向しているのに全く違う事をしていたのは何故でしょうか。なんでレブロンは走らないのでしょうか。味方のために走る選手だったなら、こんな事態にはならなかったと思います。

次回は実際にどこにトレードするべきかを考えます。

カイリー・アーヴィングのトレード問題を考える” への3件のフィードバック

  1. 「個人のパス数が減った→トラリク→ウォリアーズのようにもっと全体でパスを回すバスケをしたいんだ」つうのは論理の飛躍でしょ。チームレブロンから離脱してチームアービングをやりたいんだろうという意見はそのデータじゃ否定できてない

    1. これはまた随分と読みにくい古い記事を!

      でも、ちょっと移籍してどうなったか見比べるのは面白いですね。この時に指摘していたのは、アーヴィングは個人成績では不満がなく、チームのやり方に不満という内容でした。

      その意味ではセルティックスは理想的なポールシェアをするチームです。そこにアーヴィングの意味がどれだけあったのか。検証の価値ありですね。

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