U19雑感 大会全般

U19を観ました。これまでの日本では考えられないくらいの試合が続き10位という成績を修めました。ユニバでは長谷川世代が準優勝、竹内世代がベスト4はありましたが、U19レベルの方が世代トップの選手は多いと思います。
日本の試合は全て観ましたが毎日試合するので感想を書く間も無く次の試合が終わった感じです。同じチームの感想を毎日書いても似たような内容になりがちだったでしょうが。



大会の特徴
「日本は良かったよね。決勝までいったチームとも接戦だったし、マジ強いわ。」という前にU19という事でどんな特徴があったかに触れておきます。
ほとんどの試合が接戦になる大会でした。大勝した感があるチームはアメリカ、カナダ、リトアニアくらいです。韓国の大敗はありますが。日本は大敗しなかったという点ではこれまでと違いますが、接戦というのはありがちな展開だったといえます。
アンダー世代という事もあり高さに対する耐性が低い印象もあります。イタリアなんかは異常なまでに八村を怖がっていましたが、他の試合でもやっぱり怖がっていました。アメリカ、カナダ、マリ、ドイツ、リトアニアあたりだけが高さに苦労していなかった感じです。
そしてこれは単なる高さではなくウイングスパンなども関係するので、スペインがマリに苦戦したように若い世代では慣れていない部分が大きいのでしょう。
アメリカですらドイツの高さというか長さには手を焼いていました。ドイツはガードに長い選手がいるので、思うようにパスを繋げませんでした。



接戦が多い理由は実力差が得点に表されにくいからです。実力差というかチャンスを作っても決めきれないシーンが目立つという事です。速攻が決まらないのは日本に限った事ではなく、多くのチームで発生していました。
アメリカは当然速攻で苦労しませんが、それだけでなく数的同数と判断すると速攻でも躊躇いなく3Pを打ってきます。これはリトアニアなんかも同じです。三上や杉本もそういう環境で育ってきたのですが、この舞台で発揮できるかは違う問題なのでしょう。
シュートの確率はシュート力だけでなくセレクションとメンタルの問題でもあります。そこの拙さは各チームにありました。
シュートを狙ってからドライブするというよりは、ドライブが出来ない時にシュートを打つ、みたいな姿勢です。



シュート確率
そんな点も踏まえてシュートの確率を見ていきます。
フリースロー
単純なシュート力とも言えるフリースローが70%を超えたのは韓国だけでした。かなり外した印象のある日本でも4位なのでフリースローで稼げた形です。エジプトに至っては40%とシャックに教えてもらった方が良いレベルです。
昨年のリオオリンピックでは70%を切ったのはアルゼンチン(69%)のみです。

2PFG%
50%を超えたのはリトアニアとニュージーランドだけ。日本は44%で9位。30%台も3チームいて恐ろしいことに準優勝のイタリアが36%です。これらのチームは確率は低いけど試投数は多めです。
リオでは50%を切ったのは4チーム。これらのチームは試投数も少なめなのでイージーシュートが少なかったのでしょう。

3PFG%
3Pが30%を超えたのはアメリカ、ドイツ、リトアニア、アルゼンチンの4チーム。全て対戦しなかった国です。日本は29%で8位。そして下位5チームのうち4チームと対戦しました。
こちらもリオでは30%を切ったのは3チームのみで全て早々に負けています。



つまりこれからフル代表になるに当たり、各国がシュート%をグッと伸ばしてきます。ちなみにU17からU19で確率が上がるかというとそんな事はありません。攻守両面が伸びる世代に対し、この先はオフェンス面が重要になるとも言えます。
今大会の結果を先に繋げるためには、オフェンスをどう考えるか、それをシュート確率にどう繋げるかがポイントになりそうです。
イタリアは準優勝とは思えない酷いオフェンス力でも接戦をモノにして勝つスタイルでした。さすがカテナチオの国です。
考え方は難しいですが、このままオフェンスを改善すれば世界のトップを狙えるとも言えれば、この先はディフェンス力で勝ち残るのは難しいともいえます。
韓国は比較的シュートの確率では上位に出てくる事が多いです。方向性としては学ぶべき視点は多いかもしれません。
シュート力を個人の力と捉えるのではなく、世界を見据えた時にどんなシチュエーションで決める必要があるのか、という部分です。



日本と対戦した国
上記の通り、日本の対戦国はシュート力が低めでした。一方でそれなりの点差にされたカナダとスペインはそこそこのシュート力です。
個人的に韓国戦に注目していたのですが、それは世界の強豪国と競えた中で、アジアレベルでは楽勝できるかという点からでした。
準優勝したイタリアと接戦だから日本もトップレベルだ、という三段論法が通じるなら、イタリアに負けたリトアニアに大敗した韓国に対して日本は少なくとも楽に勝てるはずです。しかし、追い詰められてからの初めてのユニットで勝つ展開でした。
強いチームと戦えた事は収穫でも、そこに自分達の強さだけでなく相手の拙さもかなり関係していた事は見逃す事は出来ません。イタリア戦は八村のクラッチ連発で接戦にはなったものの、スペインとカナダ戦も合わせて負けて然るべき内容でもありました。同じ負けでもプエルトリコには勝ってもおかしくなかったです。



エジプトは今大会を象徴するような国でした。日本のプレーは良かったと捉えていますが、エジプト目線でみるとドフリーの3Pを外しまくりリードを奪うチャンスを潰し、FG32%しか決まらない日本に36本のフリースローをプレゼントしてくれました。
試合運びもフィニッシュもメンタルも未熟な形です。なお、ビハインドでの難しい3Pは決めていたので単なるシュート力とも違います。
やはり国際大会の緊張感もあり、若い世代の経験不足が多くの国で見てとれました。



プエルトリコは登録上は平均195センチですが日本と比べても大きなチームではありませんでした。杉本と三上が3Pをしっかり決めれたことや増田が速攻をフィニッシュ出来たことと高さやフィジカルはかなり関係していたと思います。



日本の今大会はスペイン→マリ→カナダ→イタリア→韓国→エジプト→プエルトリコと毎日特徴が全く違うチームとの対戦を繰り返しました。最後の韓国、エジプトとプエルトリコは日本にもいそうなスタイルでしたが、初めの4試合は日本では経験できないようなスタイルでした。アジャストの面でかなり苦労したと思います。
一方でシュート力で振り回してくるタイプのチームが少なかったのはラッキーでした。全体的にシュートが入らないチームが多い中で、日本のディフェンスは収縮が早くインサイドで楽には打たせない姿勢はハッキリと現れていました。増田なんかはゴール下のリバウンドの戦いで無力でしたが、ヘルプの速さは素晴らしかったと思います。
韓国に楽勝出来なかった要因は韓国は外からのシュートを決める事を意識していたからとも言えるでしょう。



ちょっと長くなりそうなので、日本については次回に触れたいと思います。まぁほぼマリ戦の感想と変わりませんが。
こうしてアンダー世代の世界大会を比較すると、世界は物凄く遠いわけではない気がしてきます。
世界というとNBAを想像します。この大会でもアメリカやカナダに追いつくのは簡単ではありません。しかし、そうではなくて各国をみていけば、例えばエジプトやプエルトリコならば八村の存在がなくても戦う術を見出せそうです。それに勝ち切るという視点で重点的に伸ばすポイントを見定める事も出来ると思います。今大会でいえば、それは速攻のフィニッシュとコーナーの活用あたりにありそうです。同じシュートでも自分が動いて打つのと待って打つのとではかなり違います。
カナダやイタリアには優秀なウイングがいましたが、日本のウイングは増田しかいませんでした。これは個人の力が足りないぜ!というよりも上手い選手をウイングに置かないチームが多い事に起因すると思います。八村だってウイングやれません。
大きくて上手いと将来を考えてガード、みたいな発想が行き過ぎている気がします。NBAで通じる高さじゃなくても国際大会で戦うためのウイングの育成は重要に見えた大会でした。
またマリはスキルが低すぎましたが、同じアフリカでもアンゴラはマリより小さいですがスキルもあり、身体能力の高い相手とどう戦うのかのチャレンジになれそうでした。こういう相手との強化試合を通して慣れていく事も必要だと思います。
1番の問題はアジアで安定的に勝つ事ですが、韓国戦では単純に個人が優れたユニットを変えざる得なかった(水野、杉本、西田、八村、シェーファー)事は逆にいえば、まだまだ世界の中でどう戦うのかに伸び代がある気もします。
エジプト、プエルトリコ、アンゴラと常に互角に戦える戦術システムでアジアでは安定して勝てる、そこが当面目指すポイントになりそうです。欧州や遥か先のアメリカは後回しにしてしまいましょう。
※プエルトリコが弱いような書き方ですが、個人技は高いです。でも高さやフィジカルに優れたわけではないので、比較的戦い易いかと。

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