シーズン序盤に快進撃を見せウエストトップを走っていたウルブズ。1月は敗戦が増えており、そろそろ対策を講じられるようになってきましたが、それもまた修行であり、競った試合でも自分たちを忘れずに戦いきる経験も大切です。だって、ここに問題を抱え続けてきたのがウルブズだしさ。
そんな中、バックスはグリフィンを解雇しました。新たなHCのポテンシャルを信じられなかったわけですが、HC未経験者がHCとして成長することを信じられなかったということでもあり、あるいは選手との関係性を構築できなかった人間性の課題でもあります。少なくともフィンチはフロントや選手との関係性を構築できており、諦められるような状況ではないということです。
フィンチが就任してからのウルブズは期待されたほど大きく勝ち越すことはなく、その間にキングスやグリズリーズが成長を見せ、ナゲッツは優勝したことで、取り残されている感はあります。その一方でタウンズのケガがありながらもプレーインを勝ち上がり、プレーオフの常連へと積み上げはしました。隣の芝生は青く見えるわけですが、自分の家の芝生だって少しずつ青くなっているぜ。
しかし、采配の点で言えば「脳筋」と揶揄されるほど柔軟性がありません。決められたローテで戦い(タウンズが頻繁にファールトラブルになるけど)スターターとクロージングは同じラインナップです。相手の出方に合わせたアジャストは期待できないし、たまに出てくる手段はハンドラーを投入して「どうにかしてくれ」です。
そして戦術的にはツインタワーがコートの真ん中にいてスペーシングの邪魔をしていたり、オフボールの出の仕掛けがなかったりと、ディフェンスの硬さがなければ・・・あれっフィンチなのに「ディフェンスが硬い」だと!
ちょっとフィンチがACだったころを思い出してみましょう。
ナゲッツのACとなったフィンチにはヌルキッチ、ヨキッチと続けざまにユーロスタイルのビッグマンが入ってきました。ヌルキッチとのトレードでプラムリーがやってくると、ヨキッチ&プラムリ―というツインタワーが始まります。
今でこそ『史上最高のポイントセンター』として認知されているヨキッチですが、まだ『ポイントセンター』が生まれる前の話であり、ヒート王朝からウォリアーズ王朝へという流れからペース&スペース、スモールラインナップ、3P戦術が確立されていく課程でしかありません。
フィンチはダントーニ直前のハーデン&ハワードのロケッツでもACをしていましたが、センターにスターを抱えながらハイペースのオフェンスチームを作り上げるのが上手く、「7セカンドorレス」をビッグマンを使って実現する戦術家っぽくなっていきました。
それはカズンズ&ADのペリカンズで1つの現代戦術として認知された感があります。カズンズがいなくなってもハイペースは続いたし、ランドルやミロティッチまで入れてシュート・ビッグ・ハイペースというスモールラインナップへの対抗系を作り上げたともいえるかもしれません。
そしてラプターズへと籍を移すと、その後のビッグラインナップ・・・の前にウルブズへと移動したわけですが、ウルブズの2年目にはゴベアがやってきて再びツインタワーになりました。まるでアンチ現代のようなビッグマンを使ったバスケは、気が付いたら現代的なバスケになりましたが、
現代のビッグマン起点スタイルの構築にフィンチの貢献度は極めて高かった
といえます。ゴベアとタウンズは現代的なツインタワーじゃないけどさ。ところが、その認識をされないのはフィンチがACだっただけでなく「勝てなかった」からでもあります。ナゲッツもペリカンズも「勝てない」といわれるのは心外だけど、優勝は出来なかったからかな。優勝というか安定感か。
フィンチのチームは
ハイペースらしく守れないチーム
でした。そこにビッグマンが絡むのでスモール相手にトランジション対決で勝負しているのも相性の悪さがありました。ツインタワーで守れないというのは、何のためのツインタワーなのか、よくわからなくなるしね。
当時のペリカンズはホリデーとADがいたのに守れなかったし、その後のナゲッツはペースを落としてオフェンス力は落とさず、守れるようになって優勝したしね。そして、致命的に守れなかったはずのフィンチのバスケもまた今シーズンになって
『ディフェンスで勝つ』へと変化
しました。それもフィンチとは思えないくらいオフェンス力を犠牲にしてさ。
現代バスケにおけるオフェンスセオリーの1つを作り上げた戦術家
信念のような自らの戦術を勝利のために犠牲にした采配
本当のところはフィンチしか知らないけれど、ザ・オフェンスなACだと思っていたのに、ディフェンスで勝ち切っている今シーズン。これを「脳筋」といってよいのか、ここに「HCとしての成長」はないといえるのか。少なくともチームとしてのディベロップメントは3年目でハッキリと出ているわけです。