◎偉大なディフェンス
しかし、本当に衝撃的だったのはディフェンス面かもしれません。1on1を止める能力はもちろん、ガードからセンターまで守れるマルチ性、そしてスペーシングが重視されるようになった現代バスケにおいて重要なコート全体への高速ヘルプ。イグダラのディフェンスは「ディフェンスが良い」というよりも「戦術能力が高い」と表現したくなるものでした。
前述のとおり、ウォリアーズがインサイド担当を置かないスモールラインナップを実行できたのは、イグダラとドレイモンドのオフェンス面での仕事が関係していましたが、それ以上にディフェンスでのポジション関係なく守れる能力が大きく、ウイングとしてレブロン相手のエースキラーをしているかと思ったら、普通にセンター相手のマッチアップでパスを入れさせない守り方で封じ込めもします。
ピック&ロール全盛期にはスイッチ対応できるディフェンダーは重要でしたが、そもそもミスマッチなのに守っているのはイグダラの偉大さであり、同時にピック&ロールの意味をなくしてしまいました。スイッチさせたらイグダラが付いてくるならばピック&ロールそのものの意味がないというね。
こうして基本的に「避けられる」ことになったイグダラですが、むしろエースキラー担当を外れてからの方が本領発揮という感じでした。ウォリアーズが始めたスペーシング・トランジション・3Pという流れは、あっという間にリーグ全体に広がりましたが、その対処に優れているのもイグダラとウォリアーズだったのは何とも皮肉なこと。
「次のパス」を見切ったスーパーローテーションディフェンス
3P時代においてはインサイドカバーよりも3Pカバーの方が重要になり、ウォリアーズのスタンスも「高さ」よりも「広さ」を守れることを重視しており、イグダラはその先駆けでした。今でもアヌノビーくらいしか見ないレベルの広範囲カバーリング。
パスが出る前に「次に危険になるスペース」をかぎ分け、長い距離を走って埋めていくスーパーヘルプは、ウォリアーズでもイグダラにしかできない芸当であり、何本ものシュートチャンスを消してきました。まさに「記録に残らないディフェンス」でイグダラがいるとワイドオープンの3P自体が消されていたのです。
あまりにも異次元過ぎたイグダラのディフェンス。マンマーク良し、マルチディフェンス良し、ヘルプ良し、ローテ良し。止めに止めて、消しに消したイグダラは単に止めるのではなく
相手のチーム戦術を破壊するレベルの個人ディフェンス
ちょっともう、どうにもならんレベルで違いを作っていたぜ。これこそが「先生」呼びしたくなる理由でした。新たな形のスーパーディフェンダーとなったキャリア後期。イグダラの見えない存在感は、見えないはずなのに目立ちまくっていたのでした。
さようならイグダラ。普通のエースから偉大すぎるロールプレイヤーとなり、現代バスケにおけるスーパーディフェンダーの先駆者になった男。
戦術理解能力の高い歴代ウイングの優秀なディフェンダーの比較見てみたいです。
イギーの他に、歴代だとバティエ、プリンス、現代だとサイブル、マクダニエルズとかのタイプが違う選手が思い浮かぶのですが、分析の視点がほしいなぁと。
視点がずれますが、現役プレイヤーで確率の高い2より、ある程度の確率の3の方が効率的というのを言っていたのは、自分の認識だとバティエが最初なんですが、このあたりの、3&Dの認識の推移も知りたいなと。