Ｕ１９ワールドカップ　ベスト８

●ザ・リーダー

昨年のＵ１８にはリーダーがおらず、１世代下の川島が大黒柱でしたが、１年が
経ってグローバルアカデミーで経験を積んだジェイコブスが見違えるような進化
を見せ、リーダーシップを発揮しています。それはチームを分かりやすくしたし、
ブラジル戦やエジプト戦くらいまでは、川島以外は「ジェイコブスにパスを出す」
ことばかり考えているようにすら見えました。それでも成立させたんだからジェ
イコブスをほめよう。

基本的にジェイコブスのプレースタイルは変化していないのですが、昨年のＵ１
８ではアジアレベルでもフィジカル負けが多く、特にフィニッシュはリングから
逃げるようなシーンが多くみられました。早々にケガで離脱したわけですが、そ
れもフィジカルの弱さにすら見えた。

それがドライブからのフィニッシュ、ユーロステップからのフィニッシュと全て
リングに向かっていく形になり、またパスを受けてからモーションの小さい３Ｐ
はディフェンスがブロックするのが難しい形になっています。フィジカル面の改
善と共に、強い相手に対してどうやってフィニッシュにいくのかが大きく改善さ
れました。

もう少しジャンプシュート系を打って欲しいと思っていますが、総じて自分の長
所を試合の中で活かしていく事が上手くなっています。日本にいたら高さでどう
にでもなった部分が、グローバルアカデミーでは通用しないから、細かいスキル
を改善させたんだろうね。

しかし、何よりもぶれない姿勢が良い。試合の中で劣勢であっても、自分がやる
べきことは変わらないという姿勢は日本が安定して戦えている理由でもあります。
外れても外れても関係なくシュートを打っている川島と共にエースキャラの２人
がぶれないことで、ハーフコートオフェンスは機能しているといっても過言では
ないでしょう。

●ロールプレイヤー

２人の主役とＰＧ以外はロールプレイヤーで固めているのは、代表としては非常
に面白い形です。というか、これがフル代表だったらブーイングされそう。昨年
からチームの中心だった「気が利きまくる」小澤はもちろん、武藤と何よりも内
藤が便利になっているのは驚きました。内藤ってそういう選手だったのか。

しかし、初戦のブラジル戦ではあまりにも消極的過ぎました。それがハンガリー
戦になるとジェイコブス１５点、川島１０点で勝てたのだから、ビックリしたぞ。
この試合は岡田がパスを散らすようになったことも大きく、ロールプレイヤーを
置いたのだから、もっと展開しないと意味ないよね。

ＰＧには不満が大きかったですが、言い換えるとＰＧが展開しないとダメな構成
にもなっており、現代的と言いつつもジェイコブスと川島ではプレーメイクに難
があるので、ロールプレイヤーの輝きはチーム全体の問題にも見えます。パサー
不足なんだよな。

ローポストで川島がボールをもって１ｏｎ１を決めたシーンでは、川島がパスを
受けた瞬間に小澤がカッティングし、パスがこないとみるや振り返って湧川にス
クリーンと連続したオフボールのプレーはディフェンスを引き付けることになり、
川島がイージーに１ＯＮ１出来ました。こういった仕事は小澤しか出来ないので、
ロールプレイヤーの中でも別格ですが、このオフボール担当を重視していること
そのものが、このチームの強さでもあります。３Ｐさえ確率良ければ素晴らしい
選手なんだよな。

そしてハンガリー戦では遂に川島をベンチにおいても成立するようになりました。
それだけハーフコートのチームオフェンスでどうにかなるようになったわけです
が、去年のＵ１８アジアカップを考えると信じられない進化だわ。これぞアンダー
世代ならではの試合の中で成長している感じ。

個の突破力は２人いれば十分で、他の選手は正しいポジショニングとオフボール
でのプレーメイクに参加し、攻守の切り替えなど際の速さと、マルチなディフェ
ンス。非常にわかりやすい現代バスケな役割分担です。それで勝てずにスター軍
団つくるチームもありますが。