◎コロナとラウリー
ところが3年目の20-21シーズンにナースのラプターズは27勝45敗と一気に転落します。理由はコロナによる欠場が長すぎたこと。ホームもトロントではなくタンパベイになったことも痛かったかもしれません。スタンリー・ジョンソンが61試合でチーム最多、渡邊雄太も50試合に出場しており、かなりドタバタしました。
2月まで17勝17敗だったのですが、大量に欠場者がでた3月が1勝13敗と負けに負け、挽回するにも至らなかったため、最後はあきらめた形です。ここでロッタリーを引き当て4位でスコッティ・バーンズを指名したのだから、上手くいった気もしますが。
ところが、今になってみれば勝てなかった代償は「ラウリーの移籍」としてナースには痛手になりました。優勝するチームに行きたいとFAで出ていったラウリーは、アチュワやドラギッチ(試合に出なかった)という置き土産も残したのでありがたかったですが、
ラウリーの移籍以降、変幻自在っぷりが消滅した
4年目の21-22シーズン序盤はバーンズとアチュワのポジショニングミスが目立ちました。そのうち改善すると思いきや未だに改善しておらず諦めて戦術変更しています。
ガードなのにカバーリングしまくってくれるラウリーがいないため、シアカムをPGにマッチアップさせる奇策は使いにくくなり、かつバーンズ含めたリムプロテクター陣のヘルプポジションも怪しい。アヌノビーがオフボールで2人守っているのに、オンボールで抜かれてしまう。カバーニはイケるがローテは出来ない等、テレパシーディフェンスは見る影もなく消えてしまいました。
オフェンスでも時にPGをして、時にシューターをしてと役割を変えていったラウリーに比べ、確率の低いアタックからしかプレーを作れないバンブリードの弱点が際立ち、そのうちシアカムやバーンズのハンドラーアタックが始まりました。大して抜けるわけもなく、ラプターズはミドルが増えていき、気が付けばリーグ最低レベルのFG%となったのです。
唯一、スティールからのカウンターという絶対的なオフェンスパターンだけは継続できたのですが、これがなければ悲惨でした。そんな悲惨な環境で、ナースは再び天才っぷりを発揮します。
スモール戦術のビッグラインナップ
インサイドの強さを出したくてビッグマンを並べたいHCは過去にもいたでしょう。しかし、そもそもインサイドの強さを重視しないナースなのに5人のビッグを並べました。それも5アウトでドライブと3Pを中心にしたスモール戦術なのに、起用する選手はビッグばかりという奇策中の奇策です。
誰もが想像しながらも、誰もが実現できなかった5ビッグという奇策を成立させたナースは、低い得点力をカウンターとオフェンスリバウンド、そして「ドライブから高さで打ち切る」という論理的かつ非常識な方法でチームをプレーオフへと導きました。天才は天才だった。
しかし、そのプレーオフでは選手の問題もあったとはいえシクサーズに敗れてしまいました。この結果そのものが今のラプターズの限界だったかもしれません。弱点の多いシクサーズ相手に、その弱点を有効活用する戦い方を出来なかったのは、ナースがナースであるためには大きな問題でした。
変幻自在っぷりが特徴だったナースは、各種の奇策を用いてきましたが、それは基本的に「相手に応じた戦い方」でした。これに対してビッグラインナップは「自分たちの課題を解決するための戦い方」であり、戦術的には革新的ですがナースに求められた本質ではありません。ラウリーがいなくなってインテリジェンスが足りなくなったことが、ナースを解雇に導いたといっても過言ではありません。
シーズンで勝ててもプレーオフで勝てないドゥエイン・ケーシーの後任に指名され、見事にプレーオフを勝ち抜いたナースですが、最後はナースもプレーオフで勝てないチームを作ってしまったのでした。今シーズンのプレーインはちょっと違うけどさ。
ニックナースが天才ならマイクマローンは何なんだろう…
変人かな
先生
おもしろい考察ありがとうございました。
最後の二年間は尋常ならざる酷使に加えて、ハマらない上に凡人には理解できない采配が多くて、フラストレーションが溜まってましたが、今回の記事を見て「そもそも意味不明な采配をバシバシ通すHCだったな」ということを思い出しました。
この記事でもおっしゃる通り、2019-20シーズンのテレパシーディフェンス時代は素晴らしかったですが、最後の最後にプレーオフでバンブリが不要なエゴを見せ始めてBOSに敗れた記憶があります。
優れた戦術家といえど、選手をその方向で何年もマネジメントし続けるのは難しかったのかもしれませんね。
そういえばファイナルでカリーにボックスワンで守って「中学バスケ」って言われてましたね
ピストンズとかマジックとかに行ったら(特殊)能力をどう生かしたらよいか迷ってる若手を使って躍進しそう