JBAテクニカルレポート ルビオ&ドンチッチ編

需要があるのかないのかわかりませんが第3回です。今回で終わりです。前回がディフェンス編でしたが、一部触れていない要素があり、そこにはルビオやドンチッチといった個別の対策について書かれていました。今回は「対策編」として、各チームへのアプローチをディフェンス中心に観てみます。

ただ、ディフェンス編での管理人の意見として
・スカウティングが間違っていた
・スペインが調子悪かっただけ
なんていう要素もありますので、この点も踏まえて読んでください。

また、何故かカンパッソ編がありません。これはカンパッソ関係なくアルゼンチン相手には他の2試合よりも速攻を増やし、ミスをしてはカウンターで負けたからでもあります。その意味では狙いだったトランジションが増えるほど、ディフェンスは狙い通りの形にならないことも示しています。トータルで何を優先するのか・・・速攻なんだよねー。

◎ルビオ対策

スペインのオフェンスはルビオがボールを持つとことからスタートする。2008年の北京オリンピック、17歳で鮮烈なデビューを果たした若き PG も、31歳という円熟の時期を迎えた。
NBA よりも FIBA での試合でより輝きを見せるベテランは 2019W杯では MVP に輝き、今大会でも平均 25.5 得点で得点王に輝いている。

NBAでも輝いているよ。ケガが多いだけさ。

そのルビオには、日本代表のベストディフェンダーである渡邊をマッチアップさせる戦術を選んだ。SF で出場する渡邊が PG にマッチアップするため、田中が SG のルディ・フェルナンデスに、馬場が SF のアルベルト・アバルデにマッチアップした。

まず「相手エースは渡邊がマークする」がオリンピックの鉄則となりました。これにより田中と馬場がスライドするわけですが、現代バスケでは頻繁に起こることで、気にするほどのものではありません。

ただし、これがPG富樫であれば成立しにくくなります。アルゼンチン戦でギャビンの欠場により富樫の出番が増えましたが、それだけでなくカンパッソ相手なら使いやすい面もあったのでしょう。相手のハンドラーを止めるエースキラー役はNBAでも重要になっており、その結果としてスライドして他のポジションでも守れないとPGは務まりません。

今回のアジアカップでは富樫に加えて河村をロスターにいれてますが、このチョイスがディフェンスの選択肢を狭めてしまう可能性があります。アジアでは問題ないのでしょうが、WCで2人を選ぶのはリスクを伴うでしょう。

渡邊の高さと手足の長さを活かしたディフェンスは、ルビオにも効果を発揮しているように見えたが、渡邊自身も PG のようなアジリティを持ったプレーヤー、しかも様々なパターンから繰り広げられるスクリーンに慣れているわけではない。

その一方でNBAでの渡邊はPFなので、ちょっとムリもありました。スクリーンに対してアンダーで守ってればOKのBリーグならば、渡邊はベストディフェンダーでいられるでしょうが、さすがにちょっとね。まぁルビオなら別にいいか。むしろ3P打ってくれ。

後半からはマッチアップを変え、馬場がルビオにマッチアップした。チーム全体としてはスペインに対して後半を40失点とするよいディフェンスを見せたが、ルビオ個人を止めるのは簡単ではなく、ドラッグスクリーンやピストルアクションから多くのチャンスを作られてしまった。

後半から馬場にチェンジします。おそらく渡邊をヘルプ側に残しておいた方が「ピック&ロールをチョイスしにくくなる」からです。NBAではガードがスクリーン使うのわかっているから、先に「ハンドラーのマークにつかせたい選手を、スクリナーのマークにしておく」ことがあります。

日本代表がそこまで細かい対応を出来るとは思えませんが、発想としてはこっちの方が機能しそうだし、実際に馬場のパスカットでスティール速攻なんかにも繋がりました。

この試合で最初にピストルを仕掛けられたとき、スクリーナーだった 3 番プレーヤー、アレックス・アブリネスにマッチアップしていたのは 4 番の八村になっていた。そこでスイッチするかしないかで混乱し、アブリネスをワイドオープンにしてしまうことになった。

ところが、そのNBAプレイヤーである八村のところでスイッチミスが発生します。いくら予定通りのマッチアップじゃないとはいえ、3番か4番かで混乱するなよって感じですが、練習が30分だけだったので、そんなもんです。あと八村はナチュラルにコミュニケーションミスが多いからね。

同じく 3番でプレーしていたアブリネスに対して 5 番ポジションのシェーファーがマッチアップしていた。
それを狙ったスペインは、ピストルの別アクションである、ルビオがアブリネスにハンドオフを仕掛けるプレーで、ワイドオープンの3 pt を成功させている

しかし、単純に日本のミスという以上にマッチアップミスが発生している場合は、ルビオに明確に狙われています。ここが世界一のPGたる所以であり、コートの状況を把握して柔軟にプレーを変えられるかどうかの「判断力」が問われます。

スペインは相手のマッチアップや、ディフェンスのルールを逆手に取って相手を混乱させる術を持っている。この直後のプレーでは、コーナーからのスクリーンを印象付けたルビオが、その裏をついて見事なビハインドザバックドリブルで田中を抜き去ってレイアップを決めた。試合のベストプレーの一つであった

その上でスクリーンを囮にするプレーを混ぜられています。マッチアップミスを活用され、狙い続けた形の逆を取る。日本はスペイン対策でスカウティングはしていたものの、ディフェンスの弱みを使い、同じ形から多様に変化するルビオのプレーチョイスの連続性に大いに悩まされたことがわかります。

日本は“ 5 ダウン ”がコールされた最初の 2 回はガード陣の激しいプレッシャーと統制のとれたスイッチディフェンスで、スペインの攻撃を阻止した。
しかしながら、 3 回目の攻撃ではまったく違うオプションが展開された。
「スクリーン」の声を聞いた馬場はすぐにスクリーンをかわそうと反応したが、その瞬間にルビオはスクリーンと反対方向へドライブし、スクリナーへ見事なアシストパスを成功させた。

4 回目の同じプレーではサイド PNR を予測した日本のディフェンスの裏をつくようにエルボー付近のセンターにボールを入れ、一瞬パスされたボールを目で追ったマッチアップマンの馬場を置き去りにするギブ&ゴーからシンプルなレイアップを沈めた。

プレーの詳細は置いといて、日本のディフェンスが準備して成功した要素を、あっさりと覆すプレーメイクをしていたことがわかります。ここら辺は内情を知っているテクニカルスタッフならではでもあり、日本はルビオの判断力に大いに困っていた様子です。

ピストルアクションでは、いかに日本のディフェンスが混乱に陥れられてしまったかに触れたが、マッチアップした渡邊、馬場は、個人としてはルビオの PNR を高いレベルでディフェンスしていたと考えている。

その証拠に、いくつかの PNR プレーではルビオの放つミッドレンジのシュートに対して、あとわずか数ミリのところまでのコンテストをすることに成功した。
ルビオはミッドレンジショットのスペシャリストであり、そのコンテストに対して動じることなくシュートを沈めた

いつの間にか「デローザン」になっていたルビオ(笑)ですが、それはそれとして、ルビオとしては「逆を突いているから打った」ように思えます。プレッシャーだと思ってなかったんじゃないのかな。

そんなわけで渡邊と馬場というマッチアップ担当の奮闘があり、事前のスカウティングでスペインオフェンスへの対策も準備していたけど、ルビオの判断力によって違うオプションを次々に展開されたわけです。

オリンピックでのルビオはジャンプシュートを多く打っていましたが、それはチームメイトの衰えとも関係しており、年寄りが多く運動量が足りていないのを、ルビオが個人でどうにかしていました。若い選手が増えると、ルビオに合わせて走っていたもんな。

ルビオ対策とは、ルビオを止める事なのか、それとも周囲を止める事なのか。前回のディフェンス編ではビッグマンへのプレッシャーが効いたとされており、それがルビオ対策にも繋がったという見方も正しいと思います。

次のページはドンチッチ

JBAテクニカルレポート ルビオ&ドンチッチ編” への2件のフィードバック

  1. 日本でおっきくて上手い選手が生まれるのはほぼ不可能に近い環境ですからね。
    育成年代では背の順でポジションが決まるのが当たり前で、本人がG/Fをやりたいと言っても監督は「4番か5番でプレーするのがチームのためだ」と一蹴して終わりという光景が目に浮かびます。
    大学やプロに上がる頃にコンバートしようとしても、それまでに培ってきたスキルの差を埋めるのは大変でしょうし、協会が育成年代での意識改革を促さなければ難しいと感じます。
    渡邉が高校時代にG/Fでプレーしていたことは奇跡と言えるでしょう。

    また、Bリーグも「日本で通用するバスケ」に甘んじているので、その中で国際試合で通じるような判断能力を持ち合わせたガードが誕生することはあまり期待できません。
    結局テクニカルレポートのように「個人能力を高めろ」ばりに才能ある選手がNBAを目指して海外で成長し、その成果を代表に還元してもらうことに期待するしかないように感じます。
    せめてラグビーのように協会が優秀ならまだ望みもあるんですが、バスケにはそんな雰囲気は感じられないです。

  2. 数年前から見させて頂いており、コメント欄も含めいつも興味深く拝読しています。疎いもので、テクニカルレポートというものの公表があることを初めて知りました。第三者的視点というよりも少し当事者の立場に近い立場から見た内幕的な記載もあり、非常に面白かったです。何年か前にNHKの将棋を見た際に、対戦直後に対戦相手同士がこのときはこう考えていた、または対戦相手にはこういう手もあったのでは的な感想を互いに言い合う感想戦というものの存在を初めて知って結構衝撃を受けたのですが、バスケにもこのような慣行を取り入れたら、間違いなく全体的な強化に繋がるのになと思いましたが、ブログ主様としてはどうでしょうか。

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