まさかのスイープ負けでシーズンエンドとなったネッツ。その大半の責任はHCナッシュにあるわけですが、その一方で普通のチームとして考えたら「ナッシュを責めるのは可哀そうだ」という状況であったのも確かです。今回のさようならネッツはナッシュ中心において、可哀そうな部分と責任が大きい部分を見比べていきましょう。
◎離脱
シーズン最大の出来事はカイリー・アービングのワクチン接種問題とホームがブルックリンだったという悲劇にあります。プロとして活動する以上はワクチン接種すべきだったとは思いますが、そこに個人の自由があるのも事実ですし、ましてやニューヨーク独自ルールで出場できないわけですから、これらすべてをカイリーの責任にもできません。ましてやナッシュにはアンコントロールでした。
また、例年通りにケガでの離脱も多く、特にジョー・ハリスを欠いたのは戦術的にも大きな痛手でした。シューターではあるものの、ドライブの巧みさやプレー判断の良さ、ディフェンス面での貢献は他のシューターにはない部分でした。ジョー・ハリスはそもそもナッシュになってから、ディアンジェロ時代のようにプレーコールが用意されての見事な連携は減っていしましたが、それでも活躍するだけの能力を持っていたわけで、エース頼みの展開でも輝けるシューターを失ったことは不運です。
そしてハーデンのトレードが発生します。
言うまでもなく、ここでベン・シモンズ問題が発生しました。「出るよ、出るよ詐欺」が行われたシモンズですが、ナッシュは本筋とは違う部分に気を遣うことになりました。注目チームということもあり、話題性は抜群でしたが、優勝を狙っているチームなのに選手が1人減ったことに違いはなく、ジェームス・ジョンソンのリリースなど、ロスター枠の問題も発生しています。
総じて選手が足りない事態が発生しており、ジョー・ハリスを除けば、やけにイレギュラーな離脱問題が発生しました。これでチーム作りをするのだからHCは大変だし、ナッシュに責任を押し付けるのは違います。可哀そうなナッシュでした。
ちなみに今シーズンのネッツは24人がプレーしました。出場試合数上位は
ミルズ 81
ブルース 72
トーマス 67
ジェームス・ジョンソン 62
残りは60試合以下です。デュラント55試合、カイリー29試合だけでなく全体として離脱や入れ替わりが多過ぎました。しかも4番目に出ていたJJはプレーオフ前にカットされているしね。ナッシュも被害者です。
◎ベテランとルーキーズ
ナッシュが見事だったのはカム・トーマス、キャシャー・エドワーズ、ディロン・シャープの3人のルーキーを活用したことです。特にエドワーズはウイングであり、ビッグであり、非常に便利な選手としてジェフ・グリーンがいなくなったロスターの中で便利屋として使いました。お気に入りのクラクストンも含めてオールラウンドで走れる若手をチームになじませるのはナッシュの上手い部分です。
ブルース・ブラウンをセンターにしたように、ナッシュはポジションの概念が低く、複数の役割をこなせる選手を好みます。この言い方は聞こえがいいですが「足りないものを埋めてくれる便利屋」を求めているし、足りないものの定義がされていないから便利屋に任せています。
一方でミルサップやグリフィンといった元祖オールマイティキャラは不遇でした。身体能力で若手に後れを取り始めたベテランは便利屋としてのアイデンティティを削がれてしまっています。特にナゲッツで控え役を受け入れていたミルサップは主張も強くないのに活用できなかったので、根本の部分で使い方が下手なわけです。
グリフィンの3P 26.2%
その象徴がグリフィンでした。昨シーズンのプレーオフでヤニス相手に見せたディフェンスはフロックではなく、実はもともとディフェンスの良い選手であり、チャージドローのうまさはリーグ屈指です。ただし、シュートを止めるのは苦手です。そして問題は3Pの確率をはじめとしてオフェンススキルにあり、センターとしては高さが足りず、ウイングとしてはシュートが決まらず、運動量不足でトップ近辺のスペースを消してしまう悪癖があります。このこともピストンズでの問題だったので、突如として衰えたわけではありません。
シンプルに言えば「過不足のある選手」なのがグリフィンで、長所も短所も持っているのだから、チーム内での役割を明確化し、使い方次第というタイプでした。若手の方が短所が少なくデメリットが生じにくいので使いやすかったわけです。同じようにオールラウンドなタイプながら、デメリットを消す作業が出来ないため使い勝手の良さが違った感じです。
同時に「選手の使い分けができていない」ことも示しています。困ったらジェフ・グリーンだった頃と何も変わっていないので、ナッシュの采配がワンパターンというか、状況判断と意図に乏しい采配でした。うまく若手を戦力にしたのに、ベテランは戦力化できていない問題はそこそこ重たかったです。
ところでグリフィンについては、グリフィン自身が勘違いというか、主役キャラプレーをしてきたので、どうしてもロールプレイヤーになり切れない問題もあるよね。そして突如として起用されたプレーオフでのグリフィンは「オレはディフェンダー」として職務を全うし、リバウンドを取るとフリーでもボールを運ばずにデュラントやカイリーを探していました。起用されなくなったことで仕事がわかりやすくなったし集中していたわけで、そういう役割定義をナッシュが早期にしていればなぁ・・・。
◎トレード
離脱者が多くて成績が上がらず、フレキシブルな若手を好むナッシュの采配を嫌ったのもあってか、ハーデンはトレード要求をしました。当時のチームの雰囲気は最悪だったらしく、そこを修正できなかった責任こそあれど、さすがにハーデンの要求を「ナッシュが悪い」とは言えません。どう考えてもスターのワガママ。
セス、ドラモンド、ドラギッチとネッツには新たな選手が加わりました。実力者の加入はネッツの戦力を間違いなく底上げましたが、一方でチームは連携を失いました。前述の通り、ベテランよりも若手を使いたがったナッシュですが、さすがに無視できない実力者だったこともあり、すべてのゲームメイクを担っていたハーデンを失ったことも含めて、チームの土台が変わってしまったわけです。
これもまたナッシュの責任にはできません。ヴォーゲルが自分に合わない選手をロスターに加えられて困ったように、ナッシュも自分に合わない選手を加えられてしまいました。しかもシーズン中なので時間もなく、他のHCでもうまく扱えたのかは疑問です。確かに戦術に困っていたプレーオフですが、戦術を熟成する時間自体がなかったじゃないか。
ここにはカイリーの「ホームには出ない」問題もかかわってきてしまいます。時間もないけど、ホームとアウェイで戦い方が異なるのは混乱を生み出すよね。ネッツというチーム全体で見たら「その前提で復帰させたのだから自分たちが悪い」のですが、ナッシュのHCとしての仕事を考えたら不幸なシチュエーションでした。「ナッシュは悪くない」とは言わない
けれど「責任をとれ」なんて言えない。
一方でGMショーン・マークスがナッシュを選んだ理由はデュラントに慕われているからスターを上手く扱えるタイプのHCだからですが、実際には若手の活用の方が得意でベテランの扱いはいまいちでした。期待された采配が出来なかったHCと、HCに適した選手を集めなかったGM。
ナッシュが悪いのか、ショーン・マークスが悪いのか。どっちなんでしょうね。いずれにしても「スターを集めるチームだから柔軟に上手く采配を振るってね」という理由で選ばれたナッシュだけどフレキシブルな若手を好んだわけで、整合性はとれていません。
◎ドラモンドとセス
選手がそろわず、ベテランの途中加入が多く、HCとして得意ではない分野を求められたナッシュ。プレーオフになって連携のなさは目立ちましたが、この状況では致し方ないともいえます。
ところがネッツの場合は、それだけでは済まない要素がもあるからめんどくさい。
シクサーズから来たドラモンドとセスは良いコンビでした。ポイントセンター的にハイポスト近辺でボールを受けて展開できるドラモンドはシューターとの相性が良く、それまでシューターはいても生かせてないチームに新風を巻き起こしてくれました。
テンポよくプレーするセスは運動量の多い若手との相性もいいし、この2人を獲得できたことはラッキーでした。加えて言えばドラモンド、グリフィン、ブルースはピストンズのスターター3人だし、ミルズとオルドリッジはいうまでもありません。
しかし、これらの要素は加入当初こそ目立ったものの、時間と共に消えていきました。連携を作る時間がなかったことはナッシュにとって不運でしたが、持っていた連携が消えていったのはナッシュの責任です。
特にプレーオフになるとボールシェアはがたがたになりました。ブルースが得点を増やしましたが、あれは直接的にデュラントからパスを引き出したからで、チーム全体へとボールが供給されなかったことで、オフェンスパターンは減り、そしてセルツは守りやすくなりました。
セスとドラモンドは10本近くパスを減らし、ボールを持つ機会は大きく減りました。デュラントとカイリーばかりがボールを持っていたわけで、セスのテンポの良さも、ドラモンドのポイントセンターっぷりも、全て不要になったわけです。
〇プレーオフのボール保持時間
ネッツ 20.9分
カイリー 7.0分
デュラント 5.6分
幸いにして2人いたので、1人の時間はそこまで長くないですが、これだと周囲はワンタッチプレイヤーで固める必要があります。選手起用を変えるなり、メインハンドラーを変更するなり、いくらでも改善は出来たのですが、ナッシュはほぼ手を付けませんでした。
少ない時間であってもドラモンドとセスを代表格に「上手くいきそうな要素」はいくつかあったのですが、プレーオフでは殆どトライすることなく終わってしまいました。引き出しの少なさと、戦術的な工夫がないナッシュは、正しい指示を送っていたとは思えないのでした。
ハーデンがいなくなったことで、バラエティに富んだ選手が揃ってきた印象のあったネッツですが、単調すぎるプレーになったことはナッシュに責任があります。このタイプのチームを率いるのは向いていないのかもしれません。
◎ベン・シモンズと来シーズン
ナッシュには不運な要素がいっぱいありました。それは事実です。
しかし、スター選手を揃えていくパワーハウスのHCに求められる要素を何もこなせなかったのも事実です。
個性に合わせた柔軟な采配、特徴を生かした多彩なパターンの構築、オフコートでのマネジメントなどなど。そもそも論としてネッツのようなチームを率いるのは難しそうだし、そもそもHCとして優れていると感じさせる要素が少ないです。2年やっての結果なので、限界が見えたんじゃないかな。
ところが、数少ない「HCとして優れている要素」には、若手・オールラウンダー・ハードワーカー・フレキシブル・便利屋といったキーワードを持つ選手の活用がありました。ある意味で戦術的に優れていない代わりに、引き出しの多い若手が試合の中で自由に振舞って成功させるって事です。
その頂点にいるようなのがベン・シモンズ。これ以上ないくらいナッシュにドはまりしそうです。
シモンズからしても、エンビードやトバイアスといったビッグマンを並べ、ポジショニングを変えず、スペースを作る概念に欠けすぎていたシクサーズに比べると、フレキシブルなタイプが多い上にシューターも揃っているネッツは、アシスト能力を存分に生かせそうな環境です。
不満とされる勝負所のプレーについてもネッツではシモンズが担う必要性がゼロです。試合終盤はディフェンスと速攻だけ頑張ってくれればいいわけだ。これ以上ないくらいシモンズに適した環境と言えます。
3Pを打たないシモンズをコートのどこに置くのか。
センター(ドラモンド・クラクストン)と同時起用の難しさをどう解決するのか。
ナッシュらしい不安要素もありますが、ナッシュとアマレ・スタウダマイヤーを足して2で割ったようなシモンズなので波長もあるかもしれません。
どう考えても解任なのですが、今のところ続投の様子。来シーズンの失敗が目に見えるようでいて、シモンズというカードは単なる戦力としての上積み以上に、ナッシュを助けてくれるかもしれません。
幸いにして今シーズンによって期待値が大きく下がっています。軽い気持ちで来シーズンに望めば、意外な結果が待っているかもしれません。HC変えたらよい結果が出る確率は高まりますけどね。
得点力のあるスター + ハードワークするフレキシブルタイプ + シューター
こんな形でロスターを作ってきたら思いのほか機能するのかもしれないのでした。っていうか、だったらヴォーゲル連れてきた方がいいよね。せめてブレット・ブラウンでシモンズ中心のパッシングオフェンスを復活させて、ハイスコアゲームに全振りするかしたほうがいい気はするよね。
さようならネッツ。ナッシュが残るにしろ、残らないにしろ、いろんなことは忘れてしまおう。反省よりも忘れてしまおう。新しい気持ちで来シーズンを迎えましょう。
なんとなく「ベンシモンズ」で検索してたどり着いた通りすがりのものです。
ナッシュは責任があるのは勿論そうなんだけどそれよりも可哀想という印象が勝つなあ。
ナッシュがどういう手腕と構想を持っていようが結局KD&カイリーについてはアンタッチャブルにならざるを得なかったわけで(というかその目的でナッシュが御輿に据えられたわけで)、この二人が出場している時点でもうHCにはどうしようもなかったのではないかと。
移籍直後のセス&ドラモンドがいい感じだったのもこの二人が居なかったからだと思うし、かと言ってこの二人を差し置いてボール要求できてチームをハンドル出来る選手なんてそれこそハーデンくらいしか居ないんだよね。
KDとカイリーがどれだけエゴを捨てて自分の1on1主体のバスケを抑えられるかがこの体制での全てではないかなあと思う。
KD酷使にも程がありますよね。
レギュラーシーズンからプレーオフまで、怪我以外は出ずっぱり。
KD目当てのお客さんにはとても嬉しい采配?だけどね。
頑張って観戦に来たらロードマネジメントでお休みとかショックだし。
が、KD居ないと成り立たないわけでもないし、そこはナッシュが何も考えてなかったとしか言いようがないような。
何も考えていないというか、スタートダッシュはKD、苦しくなったらKD、クローズはKDみたいな。
KDが痛ましくて見ていられませんでした。
これが目立ちすぎてナッシュには同情できないです。