「モラント現象」を解読してみよう

「モラント現象」とは、チームの絶対的なエースであり、唯一無二の大黒柱であるジャ・モラントが離脱してから、グリズリーズは11勝2敗と勝ち進み、復帰後は綺麗に連敗している事です。エースがいないと勝てる。割とよく聞く話ではありますが、グリズリーズの場合は勝ちすぎているので気になります。

〇レーティング
オフェンス 111.7 → 110.7
ディフェンス110.5 → 109.1

まず大前提として、昨シーズン対比のグリズリーズはこんな感じです。ほぼ横ばいとみていいでしょう。この数字を叩き出したのは「モラントがいない時期」であることは置いといて、チーム力としては昨シーズン同様のところに収まってきました。これをモラントのオン/オフで比べてみましょう。

〇モラントのオン/オフ
オフェンス 109.3/110.0
ディフェンス116.1/102.3

ポイントは2つあります。

①モラントがいてもいなくても、オフェンス力は変わらない
②モラントがいないと劇的にディフェンスが良くなる

前者は「モラントって必要なの?」となるのでエースとしての意味を問われます。見方を変えるとグリズリーズのチームとしての強さでもあります。後者は「モラント不要説」になりますが、ここで難しいのはモラント本人はディフェンス力の低い選手ではない事。にもかかわらず、ビックリするほどに変化します。

ならば代役がディフェンダーってことなら理解も出来るけど、タイアス・ジョーンズなので、いくらなんでも違いが出来過ぎです。攻守は一体であることを感じずにはいられないモラント現象は何なのか、よくわからないので調べてみましょう。

◎タイアスとジャ

まずは連勝中のタイアス・ジョーンズの成績を見てみましょう。凄まじい成績で引っ張ることでチームを改善させていたのかどうか。

〇連勝中のタイアス
30.5分
10.3点
FG42.0%
3P32.5%
6.1アシスト
1.1ターンオーバー
1.3スティール

前述の通り、オフェンス面で違いを作っているわけではない事もあって、タイアスの成績はよくありません。3Pの確率が低く、ドライブも決まっていない。

ところがわかりやすく「ターンオーバーが少ない」ことが特徴になっており、加えてスティールも多いです。特にターンオーバーについては、モラントの半分以下です。モラントも十分に少ないけどね。

ミスの少ないタイアスによってカウンターは減った

そのためターンオーバーからの失点は100ポゼッションあたり、2点くらい減りました。凄いことではあるものの、100ポゼッションで2点となると劇的な数字ではありません。カウンターが減ったことは間違いないものの、それだけではディフェンスレーティングの差を説明するのはムズカシイネ。

〇オンコート時のターンオーバー率
モラント 14.3%
連勝中のタイアス 13.3%

また、チーム全体でみるとターンオーバー率に大きな差はありません。モラントはこのうち10%くらいを占めているので、1人でミスをしており、タイアスは6.5%くらいなので半分です。よりチームメイトにプレーを促しているのがタイアスであり、それはエースと控えPGの差でもあります。

〇オンコート時のアシスト率
モラント 57.2%
連勝中のタイアス 63.0%

アシスト率は大きく上がりました。モラントが個人で決めきるとアシストが付かないことが関係しています。これだけ比較すると2人の差ですが、昨シーズンのモラントは60.9%あったことを考えると、今シーズンの問題も見えてきます。みんなでやった方がいいんだ。でもオフェンス力には違いがない。

モラントの個人技は明確なプラスにはなっていない

ここは押さえておきたいですね。マイナスにもなっていなんだけどさ。もっとプラスになってくれないと独りよがりで終わってしまうよね。大事なことは「脱皮に向かっている最中」ってことなので、個人として大きくなることを期待しましょう。

〇スティール
モラント 1.6
連勝中のタイアス 1.3

ターンオーバーからの失点以外だと、スティールの違いから考えたくなりますが、ここはモラントの方が多いくらいです。(プレータイムが違うけど)

そう考えていくと今回のテーマはどん詰まりなのですが、スティールについては2人の違いではなく、チームとして連勝前と連勝中では大きな差がありました。

〇スティール
連勝前  9.5
連勝中 11.8

〇速攻
連勝前 15.5
連勝中 18.8

明らかに増えたスティールは速攻での得点アップをもたらしました。モラントがいないときのオフェンス力が微増したこ理由は、速攻の得点アップだけで解決してしまいます。言い換えれば「モラントの個人技分が減ったけど、速攻の方が大きかった」ってことに。

さて、このスティール増は少し違う要素が混じってきます。スティールの多い選手を並べてみましょう。

〇連勝前
メルトン 1.6
モラント 1.6
ティルマン1.2
JJJ  0.9
ベイン  0.8
ブルックス0.8
カイル  0.8

〇連勝中
カイル  2.0
メルトン 1.8
ブルックス1.4
アダムス 1.3
タイアス 1.3
ティルマン1.2
ベイン  1.1

もともと多かったメルトンは置いといて、カイル・アンダーソンとアダムスの2人がグッと増えているのが気になります。ビッグマンがボールを奪う回数が増えたわけで、ちょっと今シーズンの傾向と違うじゃん。

〇チームのディフレクション
16.1 ⇒ 19.1

〇連勝中のディフレクション
ブルックス 3.0
カイル   2.9
メルトン  2.7
アダムス  2.2

同じく大きく増えたディフレクションもカイルとアダムスが目立ちます。インサイド陣のディフェンススタッツ向上が目立ったわけで、これをモラントとタイアスの差というのはムリがありますね。どうやら謎の現象が起きているようです。

モラントがいないとカイルとアダムスのディフェンス力が目立つ

◎カイルとアダムス

〇ディフェンスレーティング
カイル+アダムス 96分 83.6

連勝中は素晴らしいディフェンス力を発揮したグリズリーズですが、特にこの2人が同時にコートにいると見違えるほど守れるようになりました。じゃあ連勝前はどうだったんだろ。

〇連勝前 185分 120.8

うーん、謎ですね。じゃあ、ここにタイアスとモラントを加えてみましょう。

〇+モラント
177分 121.5

〇連勝中+タイアス
78分 86.0

なかなか面白いですね。実はこのトリオで起用することが多いタイラー・ジェンキンス。ベインやメルトンも含めたユニットそのものがディフェンス力を上げているので、ここまでの大きな差が「トリオの相性」なんてことはありませんが、モラントがいなくなってカイル+アダムスのスティール数が目立ったことは相性としかいいようがない。

では、モラントとタイアスのマッチアップデータを見てみましょう。そこの違いがトリオの違いのはず。マッチアップ回数が多い選手とFG成功率を並べます。

〇モラント
ベバリー 10点 67%
ヴァンブリード 11点 80%
ペイトン 7点 50%
ハーブ・ジョーンズ 4点 50%
ディアンジェロ 11点 56%

〇タイアス
ブラッドリー 6点 67%
サイモンズ 11点 57%
ダンカン・ロビンソン 5点 40%
マキシー 7点 43%

うーん、ちょっと比較が難しいですね。全体的にタイアスの方がシューター的な選手を追いかけており、モラントがPG相手に守っています。マッチアップ的にはそんな感じなので、今度はDIFFを比べてみましょう。マイナスの方がディフェンス力が高いってことね。

〇DIFF
モラント/タイアス

3P +5.7/△1.1
2P △4.3/+4.8

わかりやすい差が出ました。基本的にモラントの方が良いディフェンダーなのですが、3Pチェイスに関しては明らかにタイアスが上回ります。この違いが非常に大きく出たわけだ。試合の印象も含めて、この現象をまとめると

3Pを止めるタイアスとインサイドカバーのカイル+アダムスが機能した

「モラントが万能に守りすぎている」と言い換えることも出来ます。モラントがいると役割が被り、ディフェンス能力の高いカイルとアダムスの特徴を活かせていなかったかもしれない。ガード陣が3Pを止めて、インサイドは任せた方が良さげ。でも、それをするにはモラントはオフェンスでスタミナを使いすぎかもしれない。

ところで「万能なモラント」がタイアスになったことでバランスは改善した反面で、どうしても弱くなる部分もあります。それがリバウンド。モラントとタイアスは違うもんね。

〇リバウンド
モラント 5.5
タイアス 2.6

でも、この差が響くことがなかったのが連勝中です。連勝前と比較してみましょう。

〇リバウンド
チーム 46.0本 → 48.8本
アダムス 7.8本 → 10.6本
モラント 5.6本
JJJ  5.5本 → 4.7本
カイル  5.3本 → 5.6本

JJJは何やってんだ、って話もありますが、モラントがいない分はアダムスがカバーしてしまいました。ウエストブルックにリバウンドを譲っていたアダムスを思い出さずにはいられませんが、いずれにしてもモラントの万能性はなくても大丈夫なようでして・・・。

タイアスがPGになったことで、オフェンスはスローダウンが増えました。またモラントに対してスクリーンに行ってはオフェンスリバウンドに絡んでいたアダムスは、3Pが増えたことでダッシュの繰り返しが減り、ディフェンスへの貢献度が高まった気もします。そんな面もありそうですが、いずれにしてもモラント抜きだとカイル+アダムスのディフェンス力が目立つようになったのでした。

◎グリズリーズスタイル

オフェンスに関してはレーティング的には大きな違いはなかったものの、その中身を見ると明確な違いもあります。これが今シーズン的な問題も含めて、なんともいえないんです。

〇連勝前⇒連勝中
FG 93.3本 → 90.1本
3P 35.5本 → 32.8本
FT 19.2本 → 23.8本

ドライブ能力が高く、もっとも多くのフリースローをゲットするモラントがいなくなったことで起きた現象が

3Pが減って、その分フリースローが増えた

というわけのわからなさ。ちょっと今シーズン序盤の「ファールコールしない」レフリー問題にも見えてきます。ちなみにモラント復帰戦のサンダー戦は13本しか打てなかった。

また、フリースローが多くなれば、ディフェンスもしっかりセットできるので、ディフェンス力アップも納得は出来る。ただ3Pが減るってのも面白いよね。モラントが打ちまくるならともかく、ドライブからキックアウトしすぎってことなのかもしれません。悩ましい。

もともとグリズリーズはファールゲットせずに、ショートレンジを決めていくスタイルでしたが、それがモラントにハマっていた印象です。ところがタイアスになって、自分ではドライブしないけど、周囲にパスを散らしてファールドローが増えた。シンプルにディフェンスが間に合わなくなってきたわけだ。

ある意味で「モラントのキックアウトから、しっかり3Pを決めていけば問題ない」はずだし、実際にオフェンスレーティングはそんなに変わらない。でも、攻守の切り替えとディフェンスには大きく響いていそう。

3Pやミドルではなく、ショートレンジを多用するのは「確率が高いからカウンターを食らいにくい」という面もあるので、結果的にはフリースローとショートレンジは似たような意味の気がします。そしてバランチューナスがいて強かった理由でもあるし。

モラントをどうするのが正解なんだろう?

「タイアスが正解」だとしたら、この先にモラントに何をさせるのが正解なのでしょうか。ディフェンス面はわかりやすくマンツーの意識を高めることです。それは良い。

オフェンスは「ファールドローしよう」ならば、それはチームの中でモラントが一番多いプレーだからね。キックアウトパスもしているし、強引さで勝負しているわけじゃないし。ってことで難問かもしれません。

◎タイアス

ルビオがキャブスを勝たせるセカンドPGをしている中で、今度はタイアスがグリズリーズを勝たせてしまいました。ウルブズファン涙目。

本人のFGは低いし、個人としてディフェンス力が高い選手でもないけど、起きている現象はキャブスとグリズリーズは同じなのも面白い。

ただ、ルビオは「時間と点差をコントロールするのが上手い」「局面で決定的なプレーをする」ような選手であるのに対して、タイアスのゲームコントロールはちょっと違う気もします。

モラント離脱期間が10勝2敗ですが、それだけ買っていたのは接戦に強いのではなく、大量リードを得る上手さでした。タイアスのゲームメイクはディフェンスで耐えてから、爆発力をもたらすものでした。自分でゲームをコントロールするというよりも、流れを掴んだところで一気に攻め切るような形です。

一方で昨シーズンのプレーインからプレーオフにかけて、モラントの個人能力が必要だった理由は、際どい戦いの中で、しぶとく得点を奪っていく事でした。本人のFG%が高くないことも含めて、爆発力って感じじゃない。接戦を勝ち切るのがモラントかもね。

ってことで、タイアスとはスタイルが違うPGであることも目立ったモラント現象でした。モラント個人の成績が大きく向上している今シーズンですが、必ずしもそれが正解とは限らない怖さ。面白い現象だったけど、ワラエナイ現象でもありました。

◎セカンドユニット

おまけですが、モラント離脱時にタイアスがすたーたーになったわけですが、グリズリーズはベンチメンバーが強くなりました。さらに謎。

〇連勝前 → 連勝中
プレータイム 20.7分 ⇒ 19.1分
得失点差    △4.6 ⇒ +7.4

「モラントからタイアスになってスターターが良くなった」だけでなく「タイアスがいなくなってベンチメンバーが良くなった」だもんね。怖い怖い。

ティルマンでディフェンスが安定したり、いろいろあったのですが、スゴイ話だよね。いろんな相性を考えてしまう難しいモラント現象でした。

「モラント現象」を解読してみよう” への3件のフィードバック

  1. いろいろ不思議な「モラント現象」ですね。なんか試合観てるとモラントはTOの仕方が悪いのかなとも思います。
    何はともあれ、モラント離脱で、タイラージェンキンスが本領発揮し、スケジュールにも恵まれて貯金を作れたことは、これからのシーズンをすごい楽にしてくれました。今後は、多少負けてもいいので、モラントの個人技をオフェンスのプラスにして、POで戦えるチームがみたいですね。
    因みにタイアスがいなくて、ベンチがよくなったのは、ベイン君のハンドラーとしての成長とティルマンのプレータイム増が大きいです。ベイン君をMIPに!!

  2. お疲れ様です。
    モラント現象については、とても興味を持って見てます。まぁまだこれからですよね。
    MENはちょっとGSWみたいだなって。
    ディフェンスは誰もサボらないですよね。収縮も早い。リバウンドも意識高い。
    オフェンスはみんなで動き回って、どこからでも攻めてくるので相手は大変そう。
    かなりの運動量だと思う。若さって素晴らしい。

    最近コロナとかの影響で、不思議なメンバーの謎チームがよく出てきますけど、試合見てみるとなかなか面白いんですよね。
    みんな試合に出たかったんだろうなぁ って思わせるインテンシティの高さとか。もちろんハズレも多いけども。

  3. グリズリーズのディフェンスで1番大切なのは、ディロン・ブルックスです。
    ブルックスはオフに左手首を骨折してシーズンインした時は、アクティブではなかったんです。モラントが怪我する少し前に復帰はしましたが、いつもの調子ではなくモラントが怪我した後から調子が上がってきました。
    モラントの居ない間、モラントが居ないからとかジョーンズによってスローテンポになったとかより大きいのがディロンの調子が上がったことだと思っています。

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