2021/11/2
リーグで一番苦しいチームはどこか?
それはピストンズかペリカンズだよなー。そんな印象を持っているほど、ペリカンズは苦しい。ザイオンがいないことを除いても苦しい。連動性がなく、選手それぞれがやりたいことが意思統一されていない。明確過ぎるサンズから来たHCだけに、なかなかショックな状態です。
◎グラハムとジョーンズ
ところが前回の印象と全く違うペリカンズがいました。
万能なハートが戻ってきたとはいえ、僅か数試合でここまで変われるのかってくらいの違いを見せるペリカンズ。1Qみただけで「次も観てみたいな」と思わせてくれるんだから、ビックリしちゃうくらいの変化です。ショック過ぎて、なんといえばいいのかわからない。
どんなところが、前回と違うのか。試合展開に順じて例示してみましょう。
・ポストアップしたバランチューナスへスムーズにパスがはいる
ローポストでポジションを取った瞬間にパスがはいり、しかも近いサイドとトップの選手は3Pラインの外に大きく広がり、アタックするためのスペースが保たれていました。前回はスペースがないから簡単にはパスがはいらないし、そもそも「ポストアップしたい」バランチューナスと、「スクリーンが欲しい」ハンドラーという形で、何をするのか意思がバラバラでした。
・3Pミスをバランチューナスがリバウンド
一方でボールを回したところで3Pを打つと、その瞬間にバランチューナスはゴール下にポジションをとっています。「シュートを打つタイミング」を理解しているからこそ、一瞬早くポジションを抑えており、見事にプットバックしました。ポストアップなのか、リバウンドなのか、ハンドラー側もセンター側も、お互いのプレーを理解しています。
・コーナー3Pを打った時にセーフティーに戻る
そんなリバウンド時にセンター以外は、ハリーバックしてカウンターの機会を与えませんでした。つまりはバランチューナス以外の選手も「次のプレーは何か」が共通意識にあります。
・グラハムのパスアウトから素早いキャッチ&3P
ピック&ロールで抜け出すグラハムは的確な3Pを打つだけでなく、ドライブからキックアウトパスを出すのですが、以前はキャッチしてから打つまでが遅く、効果的なパスアウトになっていなかったのですが、ハートはためらいなく打っていくので、インサイドアウトが機能しました。
そんな感じかな。チーム全体の意思統一が出来ている事で、スペーシングと「次のプレー」の予測が段違いに早くなっていました。そのため、存在感がなかったグラハムのPGっぷりが光りまくっています。強気に打つタイプなので、全体が連動している事でディフェンスが後手を踏みやすい。
ってことで、段違いに良かったペリカンズはグラハムとバランチューナスのチームになっていました。確かに、ここにNAWだと起点の時点でよくわかんないもんな。また、ハートがコーナーポジショニングでスペーシングしてくれるのと、要所に顔を出してくるハードワーカータイプのルーキー・ジョーンズも渋い活躍で助けてくれます。
守ってもクリス・ポールからスティールするグラハム、ハート・NAW・ジョーンズと並んだマルチでプレッシャーをかけられるディフェンスはサンズにボールムーブさせずスティールからの速攻を生み出せば、エイトン不在でマギーがスタートになっているのでバランチューナスがゴール下で上回りました。
いやー、ビックリ。こんなに変化するのかね。良いチームな空気を出していたペリカンズ。・・・・・・ザイオンもイングラムもいない・・・・それが理由だったらどうしようか・・・。
ベンチメンバーが増えるとオフェンスは怪しくなるものの、テンプルのスティールからカイラ・ルイスの速攻で加点し、バランチューナスはブロックで救います。ディフェンスが機能していることが、オフェンスにも力を与えているな。36-22と大きくリードして1Qが終わります。
いやー、ペリカンズは良いチームだわ。180度感想が変わる1Qだったよ。グラハムとバランチューナス、そこにディフェンスの頑張りで落ち着いたプレーになっているなぁ。
◎何を信じるのか
再び出てきたグラハムからヘイズへの合わせが決まるペリカンズ。数プレーだけど、これまでで最も生かされている感じのヘイズ。若手ばかり揃えても上手くいかないことが多く、そこにグラハムのコントロールがあることで、ヘイズも生きている感じがいます。グラハムも若いけどさ。
さて、そんな未知数の若手を嫌う傾向があるサンズ。驚くべきは1年前のドラフト10位ジェイレン・スミスを見限ったことです。3年目のオプションを破棄してしまいました。僅か1年で10位以内が見限られるのって、他に誰かいたかな?
それくらい1年で結果を残せるかを重視しているわけだからペリカンズと考え方が違うよね。シャメットを加えられたことも大きいかもしれない。
そんなサンズですがエイトンだけでなく、サリッチも不在だからインサイドが薄い。ジェイレン・スミスは使われない。さらにペインもいなくて、ベンチメンバーになると従来と違う雰囲気になります。中心にいるのはエルフレッド・ペイトン。長くボールを持ち、あまりプルアップ3Pを打たないPGは、クリス・ポールっぽいな。ミドルのないクリス・ポール。
そのペイトンがボールを持ってコントロールする時間が長く、あまり流動性が生まれませんでしたが、1Qラストに飛び込んだペイトンが自ら決めて、悪い流れを断ち切りました。
なーんて思ったけど、2Qになってクリス・ポールが出てくると、再びパスカット連発されてカウンターを食らいます。点差が開いていくよ。いつもと選手が違うからか連係ミスが多く、特に「エイトンに渡せない」ことでのミスが多そうです。ペイトンが持ちすぎに見えたのは、パスの出しどころに迷っていたからかもしれません。
意思統一されていなかったペリカンズが劇的に良くなって、意思統一されていたサンズが合わないという皮肉な展開の前半です。1on1を挑もうとしたブッカーがグラハムにスティールされ、最後はバランチューナスのフックで19点差。連携関係なく、単にグラハムとバランチューナスに困っているともいうな。
「なんとかしなければズルズルいってしまうぞ」と奮起するように、ブッカーはギアを上げます。強気にアタックしてファールドロー。ミドルも決めて追撃ムードにすると、ファールが増えたペリカンズによってボーナススローで稼げます。
さらにソフトになったディフェンス相手なので、ドライブからパスアウトでクラウダーとミカルの3Pが決まって反撃したサンズ。ミスからカウンターされるのは変わらなかったけど、ペリカンズのハーフコートオフェンスはグラハムがベンチに下がると機能しない事もあって、59-48と11点差にして前半が終わります。
〇前半のスティール
ペリカンズ 13
サンズ 4
13スティールって普通じゃないね。ミスの多かったサンズと、ボールを奪い取る気持ちの強かったペリカンズ。サンズからすると「ミスさえ減らせば勝てる」し、ペリカンズからすると「ディフェンスを頑張らないと勝てない」でもありました。
◎どっちがミスをするのか
ブッカー担当として奮闘していたジョーンズが、ボール運びからそのままドライブするサインプレーで先に点を取ったペリカンズですが、そのジョーンズにバランチューナスのエルボーかなんかが入って俯いてしまいます。そしてこのまま試合に戻ってこず、これが試合の流れを大きく変えてしまいます。
目立ったのはカミンスキー。バランチューナスが遅れ始めた事もあるけど、カバー要員がガードばかりになり、ピック&ロールで引き出されると明らかに弱くなってしまいました。さらに前半はサンズのミスが目立ったパスですが、横から手を出してきたジョーンズがいなくなったことで、殆どミスが発生しないぜ。
ペリカンズはディフェンスからのトランジションがないと、ハーフコートオフェンスはそもそも確率良くないので、徐々にサンズが追い上げていきます。そしてこれまでの逆にスティールから最後はカム・ジョンソンがダブルクラッチで&ワンを決めて3点差。なんだか一気にサンズが迫ってきました。
しかしセンターがマギーにスイッチすると、ゴール下の攻防に時間をかけてしまったため囲まれて潰され、テンプルのコーナー3Pにバランチューナスがマギーを置き去りにして走ってのダンクで再び11点差に広げます。
前半の時点で「エイトンへのパスがないのが」にみえたけど、後半になってカミンスキーで改善し、マギーで失敗するというわかりやすい展開です。ハンドルしまくってスティールもされているマギー。
マーシャルがブッカーの速攻をチェイスダウンブロックするなど、良いプレーも飛び出したので、このままペリカンズが二桁リードで終わるかと思いきや、グラハムとバランチューナスが両方ベンチに座ると混乱が始まり、意図がわからないオフェンスが増え、そこからサンズにカウンターを食らってしまいます。
両チームがわかりやすくミスからのカウンターに苦しんでいる試合。3Q終わって82-76とペリカンズのリードは6点に縮まってしまいました。サンズの内容を考えると二桁リードはしておきたかったね。
◎鉄板
4Q始まって2分でサンズが逆転します。弾薬が底を尽きた感のあるペリカンズ。グラハムのプルアップ以外には攻め手がないぞ。それに対してクリス・ポールのミドルに同じモーションからマギーのダンクをアシスト。さすがにグラハムとクリス・ポールじゃパス能力に違いがありすぎる。
その差を埋めるためにもバランチューナスを戻すと、さっそくリバウンドで仕事をし、NAWの3Pで再逆転。でも、クリス・ポールのパスからミカルの3Pに、カミンスキーのゴール下&ワン。3Qからずっと同じ形に対処できていないぜ。
ツーメンゲームを仕掛けるクリス・ポールに対して、何が正解かはシチュエーションによって違うけど、バランチューナスは駆け引きが苦手で、出る時は出る姿勢がハッキリしています。しかし、ボールを奪いに行くほどのプレッシャーは出来ないので、「引き出される→ゴール下へパス」の繰り返し。かといって、空いたカミンスキーをカバーするウイングも足りない。ところでこれってイングラムにできるのかな?デュラントなら出来るけど。
で、手玉に取られまくるバランチューナス。クリス・ポール、クリス・ポール、クリス・ポールのサンズ。サンズっていうか「もう鉄板で決められるよ」というクリス・ポールの判断でノンストップのオフェンスになります。
〇4Qのクリス・ポール
12点
FG5/5
6アシスト
なんだこのスタッツ。判断間違えず、ミドルを全部決めたクリス・ポールは偉い。偉いけど、それくらいイージーだったぜ。
ペリカンズはNAWの3Pで粘りを見せるも、バランチューナスはゴール下ミスにドライブ時にボールを叩き落され、勝てると思っていたインサイドで負けてしまいます。グラハムの3Pも決まらないので手詰まり感がスゴイ。点差はついてなくて、クラッチ勝負なんだけど、何かが起きるとしたら3P連打くらいしか無さげ。
一方で接戦が続いたのはサンズもアウトサイドを落としたから。それでも残り2分で5点リードの場面で、またもクリス・ポールのツーメンゲームから、パスを受けたカミンスキーがブッカーへパスアウト。ここで3Pを沈めたエースにより8点差になると、あとは一方的でした。
結局ブッカーも4QがFG4/4と両エースの集中力に、カミンスキーが加わってサンズが逆転勝利を得たのでした。とはいえ、ザイオンもイングラムもいない中で立派な試合だったぜ。終盤に両エースで勝負すれば勝てた・・・かな?
◎サンズみたいだな
全くサンズらしさがなかった前回までに反して、「サンズの元ACがHCになったよ」と感じさせる試合でした。ワンプレーをしっかりと組み立て、役割分担も出来ている。さすがにタレント差があったし、まさかのカミンスキーのディフェンスに苦労したバランチューナスでは勝ち目がなかった。
それでもイングラムとザイオンがいない中で、ここまで戦えるようになるとはね。マジでビックリ。効いているのは昨シーズンのマーシャルに続き、今シーズンはジョーンズが出てきたこと。どっちもサンズと似ている上級生のルーキーじゃん。時代は上級生だよ。カイラ・ルイスとヘイズが戦力になるのが先か、諦められるのが先か。
サトランスキーがいれば、もう少し何とかなった気もしますが、グラハムの3P2/10ってのが厳しいというか、それを決め続ければ主役になり切れるんだけど、外されると急激にチームオフェンスが組み立てられないよね。それでも、グラハムを中軸にしたことで、形になってきたぜ。
ってことで、マジでビックリのペリカンズ。次回を見るのも楽しみになってしまったし、イングラム問題があるんじゃないか疑惑も出てきてしまった。ジョーンズくらい守れれば、チームは勝てるはず。
サンズは欠場が多いので、今週見ていく必要があるのかわからん。とりあえず、ペイトンになったことで安定感があるけど、シャメットが苦しそうなのは、いろんな要素があるなぁ。それくらいでいいかな。ファイナルに進んだチームが、前半をミス連発で苦しんだけど、終盤に流石の強さを発揮した試合でした。点差以上に勝てる空気が充満していた。
シャメットが苦しい理由は何なんでしょう?シャメットの特長もよく分かっていません。。。動き回ってキャッチ&シュートだけなのか?それともある程度ハンドルも期待できるのか?よく分かりません。。。
ペリカンのカイラとヘイズはもう少し待つとしてNAWはそろそろ仕上がってほしいですね。昨シーズンはエース二人が並ぶとDFが……ってなってたのでそれが一番気になるところ。