ニュー・スプラッシュ・プール

昨シーズン終盤からハイスコアリングシューターとしての覚醒を始めたプール。その強みはスプラッシュブラザーズ同様に、単なるシュート能力ではなく、大きなムービングをしながら正確にシュートを打てる点にあります。それはニック・ヤングには足りなかった要素であり、念願の「3人目のスプラッシュ」と呼びたくなる理由でもあります。

オフボールムーブをしてからでも「自分のシュートフォーム」に持っていける体幹の強さを持っているのがクレイ・トンプソン

激しく動いたことでオフバランスになっても、空間認識とタッチの繊細さで決めてしまうのがステフ・カリー

プールは2人の間のような存在で、カリーのようなサーカスショットは決められないけど、クレイよりも「流れながら打つ3P」を決められる選手でもあります。

ただ、その体幹の強みを生かし、急停止からのジャンプシュートを高確率で決めるクレイに比べるとストップ系の動きに弱く、カリーほど柔らかなフローターフィニッシュは出来ません。そのためミドルレンジではスプラッシュブラザーズほどの脅威はなく、3P中心のシューティングになります。

一方でカリーよりも強いし、クレイよりも動きながらのシュートが上手いので、ドライブフィニッシュにも強みを持っています。流れながらのバランス感覚が良いからか、ハンドリングでもオフバランスから戻せるので、切り返し系の動きも上手いよね。クロスオーバー系統。

そんなわけでカリー&クレイの間くらいのプレースタイルのプールは、周囲の選手もアジャストするのが楽なようで、これまでウォリアーズにきたシューターよりも戦術適正が高いです。それは単なるシュート能力よりも大切なことで、ウォリアーズというチームではダンカン・ロビンソンよりも優秀なシューターになるでしょう。

箇条書きにすると

・ボールをもらうまでの動き
・キャッチからシュートまでの動き
・オフバランスでのシュート
・3Pが打てなかった時の連続する動き

こんな部分の強みが出ている気がするのでした。特に最後が大事なんだよね。このチームではシューターは単にシューターではなくて、エーススコアラーなんだ。

ちなみにディアンジェロに関しては、上の2つがスプラッシュと違いすぎたために、ドレイモンドとの相性が良くなかったイメージです。特にキャッチしてから打つまでのタメが独特でさ。

◎プレシーズン

そんなプールがブレークし始めたのが昨シーズン後半だったので、オプション的にしかチームプランに組み込まれていませんでしたが、プレシーズンから完全にセカンドエースとして扱われていました。ある意味で「ウィギンズをセカンドオプションとして使う」ために、ドライブやポストアップを混ぜようとしていた昨シーズンに対して、クレイのような使い方のできるプールの方を優先してきた感じです。

ってことで、開幕2試合でもっとも役割が変わったように見えたのがウィギンズだったな。昨シーズンのような個人技の出番はあるのだろうか?

もう1人変化が出た気がするのがイグダラ。かつての栄光を考えると普通に起用されそうですが、実際にはカリーしかシューターがいない状況ではディフェンダー以外の使い方が不明だったのですが、プールのブレイクによってパスを繋げるウイングの価値が高まりました。

まぁいずれにしても「プールがセカンドオプション」ってことは、チーム構成を楽にしたし、それ以上にプールに自信を与えました。オプション的に点を取るのではなく、主役としてのプレーだ。

今回の話は別にプールについて良いことを書きたいのではなく、こうして主役となったプールを1年かけて、どう見ていくのかってことを語ろうと思うのでした。

◎みんなが観ている

まだ開幕2試合なのでスタッツに意味はありませんが、具体的に昨シーズンとの違いを見るにはわかりやすい変化も出ています。そこを取り上げてみましょう。

〇FGアテンプト 9.3→16.0

ここはいいですね。純粋にスコアリングの仕事が出来たからアテンプトが増えた。プレータイムも増えたしね。問題はプルアップとキャッチ&シュートのバランスで、特に3Pはわかりやすい変化になっています。

〇3Pアテンプト
キャッチ&3P 3.9本 → 7.0本
プルアップ   1.4本 → 1.5本

ということで、全体が増えたけどプルアップは増えず、ほぼキャッチ&3Pの増加でした。といっても、ムービングしまくっているのでキックアウトを貰ったわけではありません。むしろ

チームメイトが動き回るプールを見ている

そんな印象の強い2試合になりました。プールが動けばパスが出てくるのは、まさにカリーやクレイと同じです。当然、スクリナーも用意されており、昨シーズンと比べてチーム全体でプールを生かすことに力を入れるようになっています。

開幕のレイカーズ戦では試合開始から3Pが決まらず苦労したプールですが、何よりも素晴らしかったのは「決まってなくても打つのが仕事」とばかりに、めげることなく打ち続け、そして後半になると確率が上がったことで、レイカーズを突き放すことに成功しました。決まらないと打つのを辞めがちなウィギンズとは違うぜ。

でも、2試合の平均得点はウィギンズと同じなんだよね。確率が追いついていないって事だ。シュートそのものは間違いなく上手いけど、チームメイトがみているってことは、ディフェンスも観ているんだぜ。オプションで点を取ることと、主役で点を取ることの違いを良い意味でも悪い意味でも感じる2試合でした。

◎シューターは勝てない

もはや死語となった「プレーオフでシューターは勝てない」という言葉。それを覆したのはウォリアーズ。ウォリアーズが優勝するまでは常識だったし、ウォリアーズ以後に優勝しているラプターズ、レイカーズ、バックスの3チームもシューターのチームではありません。

「シューターは勝てない」の例外はウォリアーズだけ

プールの3Pが何%決まるか、なんてことは既に興味がありません。シュートは間違いなく上手いので、普通にやれば40%決まるよ。でも「40%決めるのが難しいマークをされる」ようになって一人前。スネルみたいに決めても誰も評価しないじゃん。

迎えた開幕2戦目のクリッパーズは、まさにそんなディフェンスでした。ディフェンスそのものはレイカーズの方が強いんだけど、常にマンマークのプレッシャーでフィジカルに戦ってきたクリッパーズの守り方は、次第にプールを削っていきました。

〇後半のプール
4点
2P2/7
3P0/2
1アシスト
3ターンオーバー

FG成功率以上にターンオーバーが物語っている後半の苦しさ。プレーオフみたいな試合になった中で、まさに「シューターは勝てない」を経験させられたような試合でした。あまりにもフィジカルなコンタクトが多いので、次第に正確なプレーが出来なくなっていったぜ。

こうなってくると、サイズもスキルもあるウイングの強みが活きているわけだ。ポール・ジョージは明らかにコートで一番怖い選手であり、ウォリアーズは単にハンドラーとして怖がっていたのではなく、シュートモーションまで持っていかれると、力強く打ち切られるため「シュートの前に止めろ」をせざる得ませんでした。ダブルチーム。

一方で消耗が激しくなると、正確なスキルを出すのは難しいし、そもそもお互いに個人のマッチアップが白熱するから、楽なシュートを打つことは出来ず、シューターエースのプールは消えがちだよね。シュートを打っても決められない。

なんて、そんな場面でも決めてしまうのがカリー。この試合の終盤も「それを決めるのか」という3Pで勝利をもぎ取りました。ちなみに実際のプレーオフでも、終盤に試合を決めるタフ3Pを沈めるのはクレイじゃなくてカリーだよね。オフバランスでも決めきってしまうやつ。

プールは消耗戦となるプレーオフの局面でも、タフショットを沈められるのか?

「結局はサイズ・フィジカル・スキルを持ち合わせたウイングが勝つ」ってのが定番の中で、明らかに細くて小さいカリーが優勝してきたのは、削られ消耗しても関係ないシュートスキルを持っていたからでした。

プールがシュートが上手いことは知っている。だけど、シューターエースならば消耗戦の中でも決めなければいけない。

うん、まぁ、でも、シーズンの中でクリッパーズ戦みたいな状況は、そんなに出てこないよ。クラッチタイムに1本決める、とかじゃないからね。個人マッチアップの激しい戦いを試合開始から繰り返し、そして消耗戦になってきたときに決められるかどうか。そういう選手になれるのかどうか。試される機会はかなり少ない。少ないけど、開幕2試合目で経験できたのは財産かもしれません。

なお、去年のプレーインもそんな感じだったけどね。

そんなわけで「シューターで勝てる」を証明したカリーは、単にシュートが上手いのではなく、それ以上の強さを持っているからこそ偉大なわけです。3年目のプールに同じことを求めるのは早いけど、40%決めるよりも強いシューターになれるかどうかが大事な気がしているのでした。

ニュー・スプラッシュ・プール” への2件のフィードバック

  1. プールはドライブのキレがあるしインサイド付近までいけば決めきる力もあると思うのでストップしてのミッドレンジかドライブしてからのパスが向上すればより怖くなるのかなと思いました。まあそれができる選手はオールスター選手なきもしますし高望みかもしれませんが。

    1. どうしても焦ってしまいますが、まだ3年目なので、今シーズンは今やっていることを安定して続ける事かなーって気がします。
      削られる機会も多くなるでしょうが、そこで決められるかですね

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