オリンピック 日本vsアメリカ

女子予選2試合目

女子の布教をしろ。ってことで、ホーバスについて書いたので、アメリカ戦もみてみました。見ながらは書いていないので、展開は覚えていません。気になったことだけ書いていきましょう。

◎ハイスコア

1Qはお互いにスパスパと3Pを決めてハイスコアの展開になります。日本はハイプレスのディフェンスをしますが、ほとんど意味がない。アメリカのパス回しはレベルが違いました。

普通にパス出すときに視線のフェイクを入れまくるので、チェイスが遅れてしまい、そのうえ、個人のプレッシャーなんか関係ないので、マンマークが効きません。

「ボールを動かし、アングルを作り、インサイドにいれてターンシュート」

フランス戦はターンシュートを決められてはいたけど、その前の段階である「ボールを動かし」を阻害していたので、簡単にはパスが入らなかったのですが、アメリカはイージー。本当にイージー。「アングルを作るためにパスを回す」が出来るのもポイントです。

その上でスクリーンで引き剥がしてのプルアップ3Pが普通に出てきます。ある意味、「女子にはないプレー」だからこそ、守れていたものが、驚くほどにイージーに打ってくるので、スピード勝負は何も意味がありませんでした。これは単に「高さで負けた」ではなく、個人スキルで負けているのですが、このスキルで国内でシュートを打つサイズのある選手はいないと思うので、男子同様に

「戦術的に絶対に埋まらないディフェンススキル」

にも見えました。ってことで、ヤベーヤベー、こりゃ守れるわけないぞ。しかもバカみたいに3Pが決まっていくぞ。これは「タイムアウトで立て直さなければ!」という空気が漂います。

しかし、ホーバスは冷静でした。タイムアウトをコールすることなく、試合を進め、選手交代のカードを切っていくと、今度は日本の3Pが狂ったように決まっていきます。この3Pはいろんなパターンがありました。

・オフボールスクリーンで振り切ったところにキャッチ&3P
・ドライブからのパスアウト3P
・トランジションの流れから最後にフロントコートに入った選手が空いて3P

一番気になったのは最後の3Pです。日本はスピードでかき回したいからトランジションに持って行きたいわけですが、アメリカも警戒しており、ほぼ速攻は出来ません。ところが4人がなだれ込むとアメリカも当然のように全体が下がり、ここから日本のウイングはワイドオープンになるケースが出ています。

これが男子だとギャビンやシェーファーになり、打つのはちょっと違うだろ、ってなるわけですが、女子はそこが躊躇なく打って行きます。誰でも3P作戦といえばそれまでですが、PGの2人が上手くパスを供給していきました。

これを見ていて思ったことは「タイムアウトを取らない事で、休憩を与えずにペースアップし、アメリカの反応が遅くなっている」ってことです。1Qですが、アメリカは嫌そうにしていました。普通に対峙すれば守り切れるし、自分たちのオフェンスは成功しまくっているのに、決めた後にトランジションに持っていかれ、マークを捉まえていたのに1人が空いただけで打たれる。

もしもタイムアウトで休憩をはさんでいたら、こんなに混乱させられなかった気もします。もちろん日本はハイペースでも混乱してはいけない前提です。

ところが日本はハーフコートオフェンスに困っています。3Pばかり打っているのはそういうことだ。だからアメリカ優勢だったのですが、ここでむしろ

「個人技アタックで優位に立ったのは日本」

という現象まで発生しました。3X3でもアメリカは山本のスピードについていけませんでしたが、さらにスイッチさせられた190cmとかのビッグマンは町田と宮崎のスピードにテンテコマイ。マジでついていけないので、日本のハーフコートは3PとPGのスピードで勝負していきます。

見事にオフェンスで対抗した日本は、最後に宮崎がスピードのミスマッチからプルアップ3Pをヒットし30-28と逆転して1Qが終わります。マジかよ。守れないのにオフェンスで攻め勝ってしもうた。

◎トーンダウン

このハイペースが続くわけはないから、しっかりと自分たちのやるべきことを繰り返していこう

マイクで聞こえた限りは、そんなようなことを言って送り出したホーバス。「アメリカは」という意味だったと思いますが、実際には日本の方がトーンダウンしてしまい、以降は思ったように3Pが決まらなくなりました。

そもそもアメリカは3P打たせまくっていたので、もう少しケアしてきたのも大きかったです。思うようにボールムーブしなくなりました。ただそれ以上に意外にもハイペースにばてて、正確なスキルを発揮できなってしまったのが日本。というか、前半を8点差で折り返し、後半も接戦を演じた中で、ちょっとホーバスが色気を出してしまったようにも見えました。

フランス戦は接戦でもプレータイムシェアしていたのに、今日はちょっと偏っていたホーバス。町田・赤穂・林・高田の4人が29分以上プレーしました。「元気な方が強い」理論だと思ったら、普通のローテにしてしまったので、どんどんシュートが決まらなくなっていったのでした。疲れたら正確なスキルは出せないよ。

また、それ以上に運動量が落ちました。特に後半になると走れていないので、前述のようなオープンショットも減ってしまい、サコってしまいました。この言葉は当初はディスっていただけですが、ちょっと便利な言葉になってきたな。1年後にはどういう意味か分からない気がするけど。

ってことで、昨日の男子じゃないけど「接戦だけど、勝ち越せる気がしない」展開に突入してしまいます。

負けないための戦術は機能している
  ×
勝つための戦術は機能していない

こんな光景が画面から伝わってきました。自滅に近い形のトーンダウンとなってしまいました。

〇3P 10/38

決まりまくっていた3Pも終わってみれば26%なので、日本の戦い方的には勝てるわけありません。だからといって「今日は調子が悪かった」ではなく、この形だとトーンダウンしていくのは当然って感じです。このハイペースで正確に決め続けられるなら金メダルをとれる。なお、ベンチから出てきたオコエは3Pが面白いように決まっています。

実際にはきつそうなのはアメリカの方だったので、意地でもローテーションを維持していれば、最終的な3Pの確率は変わってきた気もします。もっとベンチメンバーを使うべきでしたが、それは同時にホーバスの弱点もあらわにしています。まぁわかりきっていた弱点ね。

12人のうち1人でも機能しないと、全体が機能しない

「1人でも」はウソですが、極端に言えばそういう事だ。『マギーがミスをしまくったら機能しなくなるアメリカ』なんてことはあり得ないわけで、ホーバスが目指すグローバルスタンダードが難しいものであることがわかります。

〇調子の悪かった選手
エブリン 8分 3点 1ターンオーバー
三好  2分半 0点 3P0/3
宮崎  12分 5点 FG2/9

このあたりの選手かな。でももっと長く起用するべきでしたね。特に痛かったのは宮崎なのですが、まぁ調子が悪いんじゃなくて、もともとドライブしてのフィニッシュが上手くない。そこにアメリカの高さなので、悩んでしまった感じです。とはいえ、もう1人PGをロスターに加えるのも簡単ではない戦い方なので、最後まで信じるしかなかった気がします。

ちょっとピヨったな。残念だったぜホーバス

そんなアメリカ戦になってしまいました。とはいえ、試合は4Qまで接戦が続き、最後に離される展開でした。それは日本のディフェンスが徐々に効いてきたことも関係しています。

つまり、日本の運動量も効いていた。でもディフェンスにエネルギーを使いすぎたわけだ。サボりの天才たちの凄みを感じるよね。昨日もドンチッチはディフェンスの手抜きが極めてうまかった(誉め言葉)

〇ターンオーバー
アメリカ 17
日本   10

スターターは上手かったアメリカですが、徐々にミスが出てきました。やっぱり日本のテンションについて行くのは大変。今日は17のターンオーバーのうち日本のスティールが8もあったので、最終的にはディフェンスを高く評価してよいです。だからこそ、交代が少なかったことが悔やまれるのです。どうせシュート決まっていないから、オフェンスの不調を無視してベンチメンバーで良かったような。

◎理不尽な個人

「日本の特徴はスピードだ」とばかりに、男子でも同じことをしたそうなバスケ協会ですが、そもそも女子だってあくまでも「スピードのミスマッチを作って突破」しているのであって、真正面からはぶつかれません。そしてNBAの基準はペリメーターも守れるビッグマンなので、それすらも難しい。

なんてことは置いといて、じゃあディフェンス面はどうだったかというと、やっぱりアメリカの個人にはどうにもならない面がありました。「ルビオ、ドンチッチ、カンパッソに通じるわけね―ジャン」がアメリカが相手だと如実に出てきました。

〇スー・バード
27.5分
3点
FG1/8
6アシスト
2ターンオーバー
2スティール

得失点差+15

伝説の40歳スー・バードはすごかった。1試合目もシュートが決まらず、この試合も全然決まらない。だけど、得失点差は圧巻の+15でした。こんなに外しまくっているけど、ゲームメーク力はレベル違い。男子の日本代表に呼ぼうぜ。スー・バードがいるとプレスはどうにもならない。いかんて。

「シュートの入らないルビオみたいだ」というプレーをしていました。それってルビオじゃん。笑
プレスに出てもワンパスで裏へ。ダブルチームを仕掛ける間はなく、タッチパスでさばいていく。うひょー。

ちなみに男子の話で「田中よりも富樫の方がPGだから・・・」はわからん。単に富樫の方がシュート決めているだけじゃん。そもそもディフェンスのデメリットが嫌なわけでさ。でも「田中よりもスー・バードが・・・」ならわかる。シュート決まっていなくても、PGとしての構成力と落ち着きは段違いだった。
でも女子は「そもそも日本にスー・バードは生まれない」の前提のバスケなので、それはそれで問題ない。男子にスー・バードは欲しいけど、女子にはいらない。そのバスケでは絶対に勝てないし。

ってことで、男子同様に女子も、ここにある戦術力の壁は分厚かった。これを打ち破る準備をしているホーバスはスゴイけどさ。全てが上手く回らない限りは勝てない相手でした。

〇ブレアナ・スチュワート
15点
FG6/10
13リバウンド
6アシスト

WNBAの2タイムス・ファイナルMVPは191cmのパワーフォワードですが、マジでガードみたいなプレーを平然としてくるじゃん。13リバウンドとって、3本の3Pと6アシストだもんな。現在26歳ですが、26歳くらいのレブロンってこんな感じなんじゃ?
30歳を超えて「PGやりまーす」とか言い出しそうなスキルフルビッグマンでした。特に両サイドまでちゃんと見えているのがスゴイ。いやいや、サイズアップ・ポジションアップとかバカなこと言ってないでさ、サイズ関係なくオールラウンダーに仕立て上げないとなぁ。

ということで、やっぱり理不尽な個人がいたよ。ホーバス理論が破壊されてしまったぜ。まぁホーバスがこれで諦めて、次に対戦する決勝トーナメントではローテーション徹底の運動量アタックを遂行するしかないぜ。ホーバス自身が「貴重な経験」といっていたけど、ファイナルでもう一度アメリカと戦うのを見てみたいね。

◎オプション不足

そしてこれは不満ではない話として、結局のところ、アメリカは日本の運動量アタックに苦戦はしていたのは間違いなく、スー・バードがいなければ、もっと良い戦いになった気もします。サイズではない部分での優位性を生かして勝機を探すわけだ。

ところが「同じ戦術で押し切ることはできない」というバックス理論なのか、非バックス理論なのかわかんないけど、この状態も出てしまった試合でした。女子なら押し切れるかと思ったら、「困ってはいるけどアジャストしたアメリカ」って感じでした。

それが3P成功率に出ていたわけで、唯一最後まで通用しそうなのがスピードのミスマッチだっただけに、これを使えるガード以外のオプションアタック要員が1枚欲しくなります。でも、そんな選手がいたらスターターとして利用されるよね。だから、なんというか、矛盾みたいな状態でもあります。

ちなみに男子の場合は金丸や富樫が「オプション要員」として使われています。あくまでもオプションであって、メインで使うには厳しい人材。でも長所があるから利用価値がある。こういう部分も男女の差としてあるのかもしれません。

ちょっとステファニーが欲しくなったアメリカ戦でした。オプションには適した選手であり、PG以外からのアタック力が欲しい試合展開でした。

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