U19のWCがオリンピックと同時期に行われ、しかもNBAファイナルまでやっているので、とりあえず予選3試合だけ見た感想を書きます。しかし、ちょっと長くなりそうです。前置きがいっぱい必要なので、無駄に長いため、出来るだけショートカットして書きます。
まず大前提として選手についてのクレームはしたくないし、実際に悪かったのは1人だけでした。1人なので誰かはいわないでおこう。その上で日本代表としては多くの問題がありました。もしも前回大会がトーステン・ロイブルじゃなければ、ここまで批判しなかったかもしれません。簡単に言えば「過去に戻ってしまった」ような大会でした。それも20年くらい前のHC佐古が若かったころに。
◎選手の質は高かった
「サイズアップ・ポジションアップ」をしてきたという日本は平均195cm(前回188cm)のチームでした。200cmの選手でもハンドリングスキルがあり、総じて選手のレベルは前回大会よりも高かったです。レベルの底上げに成功しているわけですが、前回は2人だった(と思う)高校生が5人もいるので、経験不足は否めなかった反面で、ポテンシャルの高さを感じさせました。
結果は結果としてみればよく、何も前回から順位が下がったからって(上がったからって)タレントの質は内容から判断すれば十分です。個人的には前回よりも個人のレベルは上がったと感じました。しかし、突出した個性がなかったことで、チームとして頼るべきポイント不足だったのも事実です。
もちろん前回は八村がいたわけですが、チームの中心にはもう1人ポイントゴッド西田がいました。この2人レベルのタレントはいなかった気がします(前回はシェーファーもいたが、まだバスケ初めて数年だった)
その前回大会ではこんな事実がありました。
日本の平均得失点差は−14.3でしたが個人のプレータイムのみでみると西田は圧巻の+6.3です。他にプラスなのはプレータイムの短い水野(韓国戦の大量リードが響いている)と八村(+1.7)だけなので、試合の大半に出ている選手でありながらプラスは、日本が健闘した最大の要因
今大会の日本に、NBAで1巡目指名される「次の八村」がいないことを嘆いても仕方がない。でも「次の西田」はどうなんだ。そんな感想はありました。それは単なるサイズアップではなく、どんなバスケットをして、どんな選手を作っていきたいのかという協会全体の方針が問われます。「次の西田」がいなかったことは、前回から求める選手像が変わってしまったことを示します。
結果として前回大会の10位を下回ることは何も悲観していません。セネガル相手に善戦したし、それぞれの試合で選手の踏ん張りはみえました。しかし、内容が前回大会とは別物になったことは問題です。つまり今回の感想は
成功したはずの17年ロイブルを否定した21年佐古
ここの継続性がなかったことが残念で仕方がないのでした。ところで「西田ってどんな選手」って気になるよね。これも前回大会で書いたことから抜粋してみましょう。
そんな西田がいると何が違ったのでしょうか。確かに得点力はあり3Pも35%決めていました。シュートを警戒させてドライブを使うパターンです。速さも高さもない西田のドライブが何故有効的だったのか。それは
常に何をするのかわからない体勢でドライブし、ヘジテーションしながら相手のタイミングをずらし、ギャップをつき、プレーを絞らせない
そんな西田にディフェンスは注目せざるを得なくなります。その間に他の4人がマークをずらしていきます。西田のアシストが少なかった事は残念でしたが、相手を引きつけスペースを作り、味方に時間を与えるプレーは1つひとつが効いていました。
西田のプレーは相手に強くプレーさせない絶妙なバランスでした。
今回の日本のPGはハーパーjr、岩下、小川の3人でしたが、みんな良いプレーをしていたと思います。なお、誰が誰だか、あまり区別がついていません。
全員、スピードがあってインテンシティあるディフェンスを行い、早いボールムーブをしていました。多分。ボールムーブしているから、あまりPG感がなかった気もするけど。
これに対して西田は全く違うタイプで、ハーフコートオフェンスでハンドラーとなり、3Pと緩急を使ってビッグマン相手にもアタックし、自分に引き付けてパスを通していきます。つまり、日本は前回大会で成功した西田タイプを育成してこなかったか、西田タイプがいなかったってことになります。ちなみに西田はPG登録されていない188cmのウイングでした。
なお、PGとしては重富が起用されており、それは今回のPGとも共通項はあると思います。別にPGというポジションに拘る必要はないって事ですが、いずれにしても「緩急を使ってピック&ロールを決めていき、ゴール下でレイアップをしっかり決める選手はいなかった」です。ポイントは「緩急」です。あとハーフコートオフェンスだな。
◎高さと速さ
では今回の日本は何をやろうとしたのか。非常にシンプルです。
トランジションを中心に早い展開でサイズ差を補う
平面のハイプレッシャーからの速攻
さて、これがNGってわけではありませんが、間違いなく想定していることが
サイズで負けるからフルコートのスピードで勝負する
ここです。もしも、この言葉がすんなり耳に入ってくるのであれば、日本バスケに騙されています。20年前ならば正しかったかもしれませんが、現代ではウソです。要するにせっかくロイブルで現代化されたのに、20年前に戻ったのでした。これが今回のU19で最も切なかったことであり、日本バスケの闇でした。
なんでサイズに対して平面勝負するのがウソなのか。何回も書いているので、読んだ記憶のあるかたは飛ばしてください。
トランジション戦術が一般化した中で、2mでもガードスキルを備えて普通に走りまくってきます。日本でも渡邊も八村も走ります。そしてトランジションのオープンアタックだと、ヘルプもなければまともに対面も出来ず、そして広いスペースがあるので身体能力の差がモロに出てきます。
難しく考えなくても「渡邊相手にトランジション勝負して勝てる日本のガード」なんて誰もいないでしょ?
20年前なら走らないビッグマンが多かったかもしれませんが、各国がサイズアップして誰もがトランジションもするので、単純なスピード勝負をしては負けてしまいます。一方的なトランジションならいいけど、自分たちからトランジションの打ち合いに持って行ってしまう戦い方はリスクしかありません。
実際に今回の相手を思い出してみましょう。特にセネガルは日本よりもかなり大きかったですが、フィジカルと破壊力で劣る日本がスペースの広いオープンコートで戦ってまともに勝てる相手だったでしょうか?
セネガル相手にディフェンスが通用していた時間帯は、ドン引きで守って3Pを打たせている時でした。この時はリバウンドにも備えているので、ディフェンスリバウンドのキープ率も高かったです。
それが成功していた3Qの途中でプレッシャーディフェンスに切り替えた瞬間にスペースがあるからドライブを食らい、全員が前に出ているからリバウンドでもサイズの差がモロに出てきました。ハーフコートでのシュート力不足に困っていたセネガルを日本の戦い方が助けてしまいました。
ちなみにスペインvsアルゼンチンでスペインは38本もの3Pを打ちました(2Pは28本)が、あまりにも決まらないので「アルゼンチンが打たせた」感じです。リスクもあるディフェンスでしたが、ガマン強く戦ったアルゼンチンが1点差で勝利しています。日本はこういうガマンのディフェンスが出来ませんでした。
2戦目のカナダ戦ではプレッシャーディフェンスが効き、スティールから速攻に持って行って得点できました。セネガル戦はプレッシャーは効いても得点できなかったことに比べると、日本の選手の方がカナダよりも切り替えが早い印象です。実際、カナダのHCの感想も準備が出来ていなかったことを認めています。
このプレッシャーが成功したため機能したように見えますが、リバウンド数で61-33と大敗しました。「だからサイズ差が響いたんだ」は7割ウソです。3割は本当です。高さとフィジカルに大きな差があったので、ゴール下の競り合いになれば完敗でした。だから競り合いにならないようにボックスアウトは必須で、人数かけてリバウンドに行く必要があったのですが、プレッシャーで前に出ているし、抜かれたらカバーに行くからボックスアウトなんて出来ないじゃん。
〇リバウンド
日本のディフェンス 22
カナダのオフェンス 22
カナダのディフェンス 39
日本のオフェンス 11
日本はオフェンスリバウンドはそこそこ取れていて、ディフェンスリバウンドで大敗したことになります。より「サイズが大きかった」セネガル戦は31-13とディフェンスリバウンドを70%キープできていたのに、カナダ戦は50%まで落ちてしまったのはハイプレッシャーし過ぎたからです。
平面勝負にこだわってオフェンスリバウンドを取られまくった
サイズや身体能力の差が出やすい形に自分たちで持って行ってしまった。リバウンドの弱さはビッグマンの差だけではありません。そしてもしも「ビッグマンの差」だというなら、勝てる要素はゼロなので諦めましょう。
〇リバウンド
日本のディフェンス 21
リトアニアのオフェンス 19
リトアニアのディフェンス 37
日本のオフェンス 5
しかし、問題は平均身長196センチと日本と1センチしか変わらないリトアニアにもゴリゴリにリバウンドをとられたことです。もっといえばオフェンスリバウンドが取れませんでした。
日本が「リバウンドで勝つ」のは難しいと思いますが、ディフェンスリバウンドを50%しかキープできないのは意味が違います。サイズアップして高さのハンデを減らしたにも関わらず、チームとしてディフェンスリバウンドをとる仕組みがなかったです。1つのポジショニングに拘る姿勢が足りなかったとも言えます。
前回大会もリバウンドでは負けまくっているのですが、重富のような小さい選手でもペイント内に相手を入れないためにボックスアウトをしていました。ディフェンスはローテーションしまくるのですが「ボックスアウトまでがディフェンス」という形で鍛えられていました。当時は「シェーファーを起用しろ」という外野の声が大きかったのですが、あくまでも八村の控えとして起用されていたのは、ディフェンスシステムとしてビッグマン1人の方が優れていたからです。(八村が合流して間もないのでローテミスも多かった)
結局のところ、サイズアップしようがなんだろうがリバウンドを取るよりもハイプレッシャーを優先しているので「リバウンドは個人で頑張れ」になっていました。本来はチームリバウンドを増やすべきなのに、個人に頼る形を徹底してきたわけです。ということで、今回の日本のバスケだと
ドラモンドが欲しい
になってしまうのでした。そんなのムリだって。アメリカだってビッグマン不足に困っているんだぜ。高さを速さで補おうとしたら「7フッターがいないと完成しない」では本末転倒。これらは選手よりもコーチ陣の頭の中の想定が問われる内容なので、非常に厳しいのでした。そしてこの部分を留学生に頼りまくっている日本の事情も見えてきます。
前回大会もスピードで守るのはキーポイントになっており、部分的には同じようなハイプレッシャーでしたが「ボールを奪う」というよりは「時間を使わせてタフショットにしていく」という目的が強かったです。ピック&ロールに対して普通に八村が前に出て守るので、インサイドが空くのですが、すかさず周囲の選手がオフボールスイッチを駆使して「ペイント内に侵入させない」ことを目指していました。運動量とスピードに連携が求められる守り方でしたが、日本らしく規律ある守り方で、出来るだけ優位なポジショニングでリバウンド争いをしていたのでした。
またゴール下の高さ勝負では勝てない一方で、スピードある選手を使っているのでロングリバウンドを制する考え方が強かったように見えてました。3Pが多い時代なので、広い範囲をカバーすることも重要です。八村が助けまくってくれていたとはいえ、八村にはない部分を周囲が補っていました。
◎緩急とスピード
ディフェンスではダメでもオフェンスではトランジションに行くのは良いことです。ただし前提条件は「シュートを確実に決めろ」です。外せばカウンター合戦になって弱みを見せ始めてしまいます。
しかし、日本はシュートに行ってはブロックされ、レイアップをポロポロ落としました。高さのプレッシャーに負けたわけですが、いくらなんでも弱すぎないか。ここはHCの問題というよりは育成全体の問題です。これが西田なら緩急とフィジカル使って、それなりに高確率で決めていました。「それなり」だけどね。
さて、今回のU19でも1人だけ段違いにしっかりと決めていた選手がいます。それが米山ジャバ。専修大学の2年生でPF登録ですが191cmしかないので、ガード陣と大差ありません。ただ余裕のダンクをしているのでバネはハイレベル。
米山が他の選手と違ったのは、フィニッシュに行く前にゴール下にスペースを作っていたこと。あるいは身体を寄せておいてシュートのスペースを作ったり、リバースレイアップを使って「ブロックに飛べない」ことを目指していました。つまり「ゴール下のフィニッシュ能力」は日本の中でも大きな差があったわけです。これは単純に大学2年生ということもあるので、より経験値を持っていました。
米山は別格としても、大学バスケを1年経験すると段違いにここのレベルが上がる印象です。ハーフコートバスケの中で、ビッグマンだけではなくディフェンス全体にブロック力があり、単純なレイアップは打たせてもらえないので、シュートへの工夫がグッと増します。それって言い換えれば
高校バスケが「走って走ってイージーシュート」をやりすぎなんじゃないの?
以前にウィンターカップを見に行った時、高校バスケでもハーフコートバスケを展開するチームは多くありましたが、勝っているチームの多くは走っているよね。なんでかっていうと、日本トップレベルのタレントを揃え、そもそも戦力で圧倒しているから走った方が強いからだろうな。走ったらカナダが日本に圧倒したようにね。一発勝負のトーナメントでもあるので、戦力で勝っているなら走りたいのはわかる。
走るのは「日本のバスケ」じゃなくて「日本国内のバスケ」でしかない。世界の中で何をするかを考えた時に、日本国内で通用するバスケを持ち出して成功するなんことはないんだよ。
普通に日本人同士でも大学バスケみたいな戦いをしていれば、さすがにもう少しフィニッシュ力は上がると思うんだけど、フィジカルと判断力を使いながらのシュートトレーニングをしてこないとブロックの餌食になったり、プレッシャーに負けてレイアップを外してしまう印象です。もっと相手との駆け引きを日常的にしていかないと、ここは改善しないと思います。リトアニアの212cmのセンターなんて16歳なのに高さ任せではなく、ちゃんと日本の選手をブロックしながらダンクに行ってるし。
また、フィニッシュ力という弱みを補う方法論として、本来は通用しにくいトランジションアタックを選択していることが、さらに腑に落ちないのでした。
だって前回は緩急つけたハーフコートゲームで結果を残したんだぜ。なんで今回は元に戻ってしまうんだよ。それじゃあ「ロイブルのやり方は間違い」と断じたようなもので、その結果は「ロイブルの方が正しかった」だもんな。
この記事は前回の大会を見ながら書いていたのですが、ある試合のコメントに面白いのがあったので、ちょっと要約して載せます。
昔に比べてポスト動けるし、ガッツあるやつがいてディフェンスもいいから、マンツーマンもできるしプレス含めて1-2-2のゾーンを使えるようになって戦術に幅が広がったと思う。
チームとして熟成しにくい代表でアメリカの大学みたいなバスケをするようになったんが感動した! オフェンスもセットの中で個々でも積極的に攻めていけるプレーヤーが増えればまだまだ伸びると思うし、頑張って日本を盛り上げてほしい‼
これを今回のU19を見た後だと?ってなると思います。前回のロイブルU19を上手くまとめたコメントでした。切り分けると3つ
・マンツーマンもできるしプレス含めてゾーンを使えるようになって戦術に幅が広がった
・アメリカの大学みたいなバスケをする
・オフェンスもセットの中で個々でも積極的に攻めていけるプレーヤーが増えればまだまだ伸びる
「戦術の幅が広がった」
「NCAAみたいなバスケ」
「セットオフェンスが整理」
うん、今回の代表とは全く違うよね。どっちが正しいかもあるけど、そんなことよりも成功と評されていた前回大会からの積み上げではなく、ロイブルの否定みたいなバスケットになったことが非常に苦しいのでした。
◎元気な方が強い
とはいえ、日本のプレッシャーディフェンスは機能している時間帯もあったし、カナダ戦の前半はそれで互角に渡り合ったよね。だから「トランジション勝負」はダメだけど、出来るだけ走ってイージーオフェンスを作るのには賛成だし、時にはリバウンドのリスクを背負っても前に出て勝負のディフェンスをすること自体は肯定的だよ。
でもさ。「時には」じゃなくて、試合の7割がハイプレッシャーディフェンスじゃん。そんなの通用すると思うのか?
「オレ達のハイプレッシャーに世界各国はミスを連発するはずだ」
という前提でディフェンスが選択されていました。それだけ世界を甘く見ていたって事です。そもそもそんなに効果的なら、どこかの国がメチャクチャにやっているでしょ。アメリカとかちょこちょこやっているけどね。そんでもってこれも高校バスケの匂いがするよね。
普通は使いどころを定めて行うハイプレッシャーが通常戦術になっているので、カナダは時間と共に対応したし、中1日空いたリトアニアはしっかりと準備してきました。そうなったらお手上げなわけで、1試合通して通用するディフェンスじゃないよ。
もう1つの問題が「そのインテンシティで最後まで持つの?」です。
はい。持ちませんでした。ちゃんちゃん。これに関してはセネガル戦、カナダ戦と同じように後半になって失速しています。特にエネルギーが切れてから臨むオフェンスが失速します。
国際試合なので「ひょっとしてローテーションすることで最後まで持つのかな」と期待しましたが、やっぱり無理でした。もしも、これをやりたいなら、そういう選手を集めまくるべきだったと思います。
うん、まぁ、バカだよね。あんなに長時間のハイプレッシャーをするか?
ここについては、ただただ信じられなかった。。逆に選手達はフィジカル的にもサイズ的にも厳しい中で、よくぞあれだけ走ったな、と感心しています。「100m走が早いんだから400m走でも最強じゃん」みたいなディフェンスで、それでも選手は頑張って200mまでは走り切った印象なのでした。
体格で負ける世界大会では、その差が際立たないようにハーフコートの戦いにしてペースを落とし、ワンプレーの精度を重視。そうしてエネルギーロスを避けておき、ラッシュしたいタイミングでハイプレッシャーへ切り替えて勝負に出る
これが普通の発想だと思うんだけどね。どうなんですかね。「ハイプレッシャーで走りまくって120-100で勝てる」と思っているんですかね?
そして100-75で負けたカナダ戦(実は前回大会も同じ得点で負けた)ですが、カナダのHCはリトアニア戦にゲームトータルでの戦い方について言及しています。ついでに日本戦は序盤にリズムを掴めなかったことも語っています。
もうさカナダのHCは「サイズのアドバンテージを生かして走る」って言及しているわけですよ。そんでもって「疲れさせて圧倒する」んだよ。リトアニア相手に。だけど日本は自分たちから「走りまくって疲れた」わけです。頭痛い。
サイズと運動能力があるカナダがやりたかったことと、日本がやりたかったことが同じだった。っていうのは、ワールドスタンダードの中で日本が唐変木な事をやっているって事です。
◎3Pか3Pか
次にハーフコートオフェンスについて触れます。日本は3Pを打てる形を作っていくのが非常に上手かったです。基本的にトランジションをしたいのですが、ハーフコートになっても準備されているのはセネガル戦で強く出ていました。
・ドライブキックアウト時にしっかりとポジションをずらしてフリーになり、そこにピッタリのパスが出てくる
・スクリーンからのスリッププレーでディフェンスを剥がしてシュートを打つ
・5人がハーフコートでコートを広く使ったランニングをして、ギャップを作っていき3Pを打つ
・PGがプルアップ3Pを決める
色々とありましたね。まぁその中で気になった悪い面もあるのですが、それは後述。ハーフコートオフェンスの中でも、スピードを使って振り回そうとしたことは評価できるものでした。1人でいいから強烈なスラッシャーがいれば、かなり違ったのも事実です。いなかったともいう。
〇FGアテンプト
前回大会
2P38.5本 38%
3P25.6本 29%
セネガル戦
2P33本 33%
3P37本 32%
カナダ戦
2P39本 41%
3P37本 27%
リトアニア戦
2P47本 38%
3P19本 32%
ペースアップした事もあって、前回大会よりもFGアテンプトが増えました。そしてセネガル戦、カナダ戦とシュートの半分が3Pです。リトアニアは「日本は3Pを打ってくる」と準備していたのでペリメーターのプレッシャーを強め、ボールを持たせて貰えず、16ものスティールを許しています。イメージとしては「3Pが少ない=スティールされた」に近いです。
とはいえ警戒されるほど3Pを打つパターンを持っていたということなので、スマートオフェンスとして悪くないようにも思えます。
しかし、スマートオフェンスは「ゴール下か3Pか」ですが、日本の場合は「3Pか3Pか」でした。ここでも米山ジャバは上手いカットプレーでインサイドに飛び込んでいましたが、チームとしては3Pは打っても、スペースを広げてインサイドを有効利用はしていませんでした。
リトアニア戦は8番小川がカウンタードライブを決めたため、そこそこの結果になりましたが、抜きまくったのは小川くらいでした。この選手がどういう選手なのか知らないのですが、「小川を出せ」という意見が結構あったので、このドライブ能力は期待されていたものなのでしょう。
場合によっては、小川を中心的にしてれば前回の西田的な役割にもなった可能性がありますが、チームとしてはカウンタードライブを装備しない状態で「3Pオフェンス」展開していたということになります。まぁ今回はインサイドが合流間もない16番と、高校1年生の17番だったので、どうしても攻め手を欠いたのかもしれません。じゃあ、なおさら小川じゃん!ってのも事実か。
加えて3Pを封じられると展開力に欠けるのでガードを増やした方が効果的でした。だから目指してきたポジションアップの意味がゼロに等しかった。そりゃあ「小川を使え」になるわけだよ。
いずれにしても「3Pを打つ」ことについては、個人技、キックアウト、オフボールムーブといろいろとプレーパターンを持っていたのは良かったです。でも、3Pを打つことしか準備されていないオフェンスだったので、リトアニアのように対処されると何もできなくなりました。
「3Pかゴール下か」ではなく「3Pか3Pか」だった
前回大会は八村がいたので、そこは大きく差し引かなければいけませんが、ハーフコートオフェンスの整備状況は大きく違いました。3Pシューターとして三上・杉本が用意され、西田と3人が3P担当、他の選手も打ちますが「3Pを打つ」ことを目的にプレーがセットされてはいませんでした。
八村の動きに対して積極的にオフボールで動き回り、ギャップを使ってミドルを打ちまくるのが増田の役割でした。パサー役がPG(重富・水野)と西田でドライブ担当がマーフィーと西田でした。要するに何でも屋の西田と役割定義された4人という組み合わせ。
他の国と比べても3Pが少なく、かといってゴール下に飛び込めまくるわけでもないので、ミドルレンジを活用したオフェンスをしていました。それは選手個人が持つ武器を利用して多様なオフェンスを展開しようとしていたわけです。なんだかんだいってもインサイドでは勝てないわけで、勝てる武器をみんなで使おうぜ!みたいな。
そして今回の小川の件なんかも含めて感じることは選手の個性が出てこなかったです。みんなしっかりとプレーしていたけど、個人として印象に残ったのはセネガル戦の山崎イブ、米山ジャバくらいかな。それは他の選手がダメだったわけじゃないし、小川だけでなく部分的にはそれぞれに良いプレーがあったよ。挙げたらキリがないだけでね。ただし、
選手の個性による使い分けがなかった
という感じがしたのでした。2017年は「あいつは、こういうプレーをしていた」が印象に残り、今回は「チームとして3Pとトランジションで勝負していた」だけが残っています。何故か4年の間に失われることになった多様性。
カナダ戦後の佐古HCのコメントなのですが、試合内容を見ていると、このコメントの意味がわかりませんでした。なのでトム・ブラウン方式でディスッてみたのですが、具体的にピックアップすると
「追いつきたいとメンタル的にオフェンスに集中してしまって、逆に走られてしまいました。
積極的に良いシュートを打っていくことを取り組んでいるので、3ポイントシュートの確率が悪い日があることは覚悟しています。ただ、100点取られてしまう展開になったのは早打ちの部分があったと思うので、その辺りは選手にしっかり伝えていきたいです」
気持ちがオフェンスに出ていたし、3Pを打つパターンをしていたけど、それが「早打ち」になって、カナダに走られてしまった。のが敗因だそうです。ハイプレスからのトランジション勝負を挑み、3Pを打っていくオフェンスを構築し、でも早打ちはダメだそうです。もう、どうしたらいいんですかね?
◎ロイブルへの思い
なんだか悪い所ばかりな書き方になっているかもしれませんが、良い部分はいっぱいあったけど、悪い部分は「なんで悪いか」を書かないとダメなので、どうしても分量的には悪い部分が多くなるだけです。では、ここまでのことを「良かったこと」「悪かったこと」「課題」に分けてみましょう。
【良かったこと】
選手のレベルは高い
ハイプレッシャーディフェンスは効果的
3Pを打つ形が多彩に構築されている
【悪かったこと】
選手の個性が発揮されていない
攻守に単調な戦術
リバウンドをキープする仕組みがない
【課題】
インサイドフィニッシュ
プレッシャーディフェンスによるスタミナロス
(ワンプレーの精度不足)
ハッキリ言ってしまえば悪かったことは「HCが佐古ではなく、ロイブルなら解決していた」のです。だからこそ残念で仕方がないというか、もったいない21年大会になっています。ただ、NBAじゃなくて育成段階なので佐古のHCとしての能力不足を責めまくっても仕方がなくて、そんなことよりも
日本は進むべき方向性を間違えた
ってことが問題です。サッカーではW杯後にレポートというか、反省事項がまとめられるのですが、あっちはあっちで違う意味で進む方向を間違えていますが、それは置いといて「17年大会から4年間かけて何を目指してきたのか?」といえば「3Pとハイプレッシャーディフェンス”のみ”で勝負できるチーム」になったってことです。ついでにいえば「7フッターがいなければ勝てない」です。
前回大会を見ていると部分的には今回と同じことは多くて、ゾーンからのハイプレスはしているし、速攻のミスはあるし、レイアップも落としています。でも、大きく違うのは前回はカナダ戦以外は80失点未満に落としており、特にイタリア戦は57-55とロースコアに持ち込んで、惜しくも2点差で敗れました。このイタリアが最終的に準優勝している非常に強いチームでしたが、あと3歩くらいまで追い込めており、強豪相手に勝ち切るために求めたのはペースダウンして、攻守にワンポゼッションの精度を高める事でした。
ロイブルが作ってきたのは「ワンポゼッションの精度」であり、今回の日本はそれがなかったのでした。トランジションを増やして攻守を早めていけば、当然のようにミスは出ます。それを「気持ち」と評してしまうのは全く違うぜ。
繰り返すと17年大会が3勝4敗だったから、今回より良かったわけではありません。日本が選手の個性を生かしてワンプレーに拘ったプレーをしていたから良かったし、次の世代に繋がっていくプレーをしていました。でも、バスケ協会として違う方向を向いてしまったのでした。
あとさ「気持ちで負けた」のであれば、気持ちの強い選手を集めろよ。自分たちで招集しておいて「気持ちが弱いんだー」と叱責しているのはどうかしているぜ。もしも日本中を探しても気持ちが強い選手がいないなら、その時点で試合終了だよ。
ということで結論は「ロイブルをアンダー世代のHCに戻せ!」なのですが、次回に続く・・・のかな?
一応、日本が目指してきたというサイズアップ・ポジションアップについても触れてみたいんだけどさ。知ってたけどリトアニアはサイズアップさせた良いチームだよね。サボニスみたいなスキルの高いビッグマンを輩出しているわけだしさ。
ロイブルさんについて調べてみたところ23歳でコーチキャリアをスタートさせ2011年にはドイツAリーグのCOYを受賞した、コーチキャリアをしっかりと積み上げてきた人でした。「スポルストラみたい」というのは言い過ぎですが、キャリアをコーチ一本で積み上げてきた人物は流石だと感じました。逆に名選手が名監督と限らないなんてことはバスケ、サッカーなどをみても明らかなのに佐古さんに代表監督を任せた意図が分からなくなりました。ロイブルさんを前任にしていたことを考えると余計に謎です。選手のレベルアップは嬉しい限りですが、チームを作る上ではちゃんとしたHCを選ぶことが一番重要だと感させられたU-19でした。
ロイブルからの変化だったから痛すぎです。
まぁこれは佐古じゃなくて、日本バスケ全体の問題なんですよね。
ロイブルと一緒に仕事して、違う道を選んだのが個人ならいいのですが、実際には協会全体なので厳しいです。
試合は全く観てないですけど、「トランディションいけ!でも早打ちするな!」の指示出すHCってすごいですね・・・どーせーゆーねん。どういう風に選手に言い聞かせるのかも気になります。
前回がうまくいったのなら、別のHCにするにしてもなぜ戦術をしっかり落とし込めるHCにしないのか。戦力が劣るって思ってるならHCはちゃんと選ばないと・・・戦力があるチームは適当なHCでもある程度勝てると思いますが・・・
うーん、このブログを読む限りでは、勝てるかどうかは別にして、もっと面白いゲームが出来そうに思うのですが、今後どうなっていくんですかねー。やっぱり日本のバスケ協会に問題が?
勝てるかどうかは、どっちでもいいんですけど、見ていてツマラナイっていうさ・・・
トーステンがアンダーをクビになった理由は、、、東野氏の技術委員長就任が全てです。レジェンド佐古賢一の扱い方を考えたときに、東野氏の技術委員長就任は、最悪のタイミングでした。ラマスを招聘できたことと、アンダーの一気通貫システムの構築に佐古賢一を抜擢したことの功罪は、プラスマイナスで言えば、ギリギリプラス、と言えるかなぁ。
東野氏で無ければラマスは連れて来れなかったでしょうが、アルバルクのルカが代表監督で良かったのに、とも思います。安藤誓田中馬場竹内譲が見せた代表でのアルバルクアタックに象徴されるように、日本人の特性をよく理解しているコーチです。そこがトーステンと共通していると思います。ルカがHCで、トーステンがアシスタントとアンダーを担当する世界線が確実にあったはずですが、、、
53歳と49歳、同年代のヨーロッパ出身レジェンドコーチを国内で飼い殺しにしている現状に、もはや怒りを覚えます。オリンピック終了後、新体制の検討に入った時が、この2人を抜擢するラストチャンスでしょう。外から連れてくる必要は間違いなくありません。日本を好いてくれている、この2人にこの先10年を委ねることが、最良だと考えます。
佐古賢一は、内田篤人のように、協会契約のモデルコーチでどうでしょう。選手としての実績、カリスマ性、オーラは抜群です。不定期でトップからアンダーまで全ての代表合宿に参加し、日本代表の心構えを説くのが1番向いていると思います。
アンダーの一気通貫システムの構築なんですが、実際にはラマスとは一気通貫じゃないんですよね。
それが問題かな。協会の強化部は同じ人がやっていると、過去みたいなことになるので、佐古の良い悪いじゃなくて、変更したほうがいいと思っています。
子供が入っている中学バスケのおじいちゃん顧問が試合中に叫んでいる内容と、U19の佐古HCが試合中に叫んでいる内容がほぼ同じですわ
何だかなぁぁ
今大会のチームは選手の表情も暗い様な気がします
それが「気持ちで負けている」ってことで。
佐古コーチの悪い批評が目立ちますが、育成年代のHCとしては、いま評価すべきではなく、4年後の日本代表にu19メンバーが何人入ってるかが大事かと思います。
ペースアップして、トランジションで個人勝負するのは、代表で組織だけで勝つことの限界を感じていて、海外とガチンコでぶつかって経験を積むためで、勝敗は度外視してるかと。
前回u19で、ある程度組織的にやって、今回そこから代表に選ばれたのは2人だけだし、日本代表としても今まで国内組で組織を作ってアジアで勝てないのを打ち破ったのも個人(八村、渡邊)だし。
サイズアップやオールラウンダー化はnbaや世界のトレンドで方向性は間違ってないと思うし、精神論のところは個人で打開するには必要なことだろうし、どんどんやってもらいたいと思ってます。
育成年代からプロでやってる海外と違って、日本にとってw杯は課題を見つける貴重な機会だと思うので、あまり細かい戦術にこだわらず、ブロックガンガンくらいながら行って欲しいです。
うーん、数年後にNBAに何人行くか、ならともかく、誰が代表にいるかになると、単なるセレクションの問題ですよね。
ずっと同じHCがやっているので、そりゃあ代表に選ばれるのは当然で、そのほかの選手が多くなったら、各チームの指導者がよかっただけでは。
問題は佐古ではなくて、一気通貫といっているのに、世界で通用しない戦い方を選んでいる事です。
精神論とかではなく、日本がやるべきバスケが、ロイブルと全く違うし、ラマスとも違う。
協会全体の問題です。
レベルは全く違いますが、自分も格上とやるときはディレイゲームを徹底してロースコアに持ち込みます。
ハーフコートゲームですね。
格上相手にトランジションゲーム挑んでハイスコアに持ち込むのって普通に無謀ですわ。
国内で強いチームがやっていることを日本の代表になってしまうと厳しいですよね。
アップセットするチームの方が向いている気がします。
第一高校、井手口先生がウィンター優勝して日本は社会人になると練習しない。第一スタイルのバスケが日本が目指すべきバスケ、みたいなこと言ってて頭痛かったです。
第一は留学生でリムプロテクトとリバウンドを制圧できるのが前提で、そこから能力高い選手を走らせてOF、DFともに運動量で圧倒するバスケ。
(そもそもハーフコートになっても留学生でペイントの点も取れてしまうんですけど)
インサイドが弱点かつバックコートも選手のサイズ、身体能力で負ける代表で同じことしても上手く行くはずなく。
カナダ戦のように日本代表はアジアレベルでもDFで圧力かけられてリバウンドとトランジションで能力差を強調され圧倒されてきた歴史があります。
センターに帰化選手入れて、昔の日本バスケやれば勝てると言う考えはあまりに残念に感じてしまいました。
今の若い子はサイズ、能力ある選手も増えてきたんで同じことしてても、以前よりは多少結果がでるかもしれないですけどね、、、
まぁこれでしょうね。おおもとの原因は。ラマスのACが秋田のコーチですが、強いチームが正解ではないですよね。
カナダのHCが言っていることが全てで、これに対して日本がどう考えているのかですよね。
日本が小さいから早い展開で疲れさせるカナダの意見に、どう回答するのか。
みんな上手いだけに、能力任せでぶつかっていくしか選択肢がないのが残念です。
心の底から頷きながら読みました。これでも失望感をかなり抑えながら書かれたのでは、とすら思います。
ここ数年、YouTubeにスキル動画があるし、中学まではクラブチームの育成もあり、個々のプレーヤーのスキルレベルやIQはかなり高くなっているように感じます。
ところが、高校バスケがそこをぶった斬っている。
全く勉強しようとしない指導者が、文字通りぶった斬っている印象です。
あとは育成事情が似ていらように見えるラグビーが、世界的なコーチであるエディさんで大きく変化したことを因数分解して、バスケもチャレンジしてほしいな。
はぁー(ため息)
そうですね。高校バスケの問題だと思うんですよね。
大学バスケは一気にフィジカルが上がるので、高校の欠点を補いに行くイメージがあるのですが
学校単位でやっていると特定の指導者が固定しがち。
そりゃあ戦力が強い方が勝つに決まっていますし。