プレーオフ①グリズリーズvsジャズ

ゲーム4

メンタルゲームを制したジャズ。それはプレーオフディフェンスを超えたラフプレーで苛立たせるブルックスに動じなかったコンリーだったり、決めまくるモラントにガマンしてゴベアだったり。逆にドノバンの「見えないプレッシャー」にディフェンスを変えざる得なかったグリズリーズだったり。

いずれにしてもワンプレー、ワンプレーにドラマが詰まっているシリーズ。そしてゲーム3に続いてウィザーズの後に見るので、レベルの差っていうか、この「ワンプレーの差」が際立ち、ボーっとプレーしているウィザーズに苛立ちからの癒しのゲームとなっています。

しかし、本日は「プレーオフでスターになれない」ベン・シモンズへの苛立ちを、モラントに癒してもらいましょう。プレーオフになってより洗練され、相手を困らせ、試合を決める選手になれるかどうか。それがスターなのさ。

◎ゲーム4の対策を無効化する

ファーストプレーでサインを仕込んできたタイラー・ジェンキンス。見事にJJJへのアリウープで先制します。うまいよね。本当に上手い。タイムアウト明けのワンプレーの精度が戦力不足のグリズリーズを勝ち越せるチームにしています。でも、その戦力もモラントによって「不足」ではなくなるかもしれないシリーズ。JJJもエースにならなければいけない来シーズン。シモンズかJJJか。

一方でドライブで抜け出し、vsバランチューナスの2on1になったドノバン。完全に「ゴベアへのアリウープパターン」に入り込むのですが、まさかのユーロステップにより自分でレイアップを決めます。パスだと思って下がっていたバランチューナスはしてやられた。

さらにボグダノビッチがスクリーンにきたのをみて警戒するブルックス。散々このパターンでファールドローされているので、スクリーンには早めに対応しないといけません。と、思ったらスクリーンの逆をぶち抜いたドノバン。あっけにとられてついていけなかったブルックス。

ということで2プレーでグリズリーズの対策を無効化するドノバン。他の選手には出来ないお仕事。メンタルゲームのゲーム3はドノバン用に対策を変更してきたグリズリーズが、さらにディティールを考えたであろうゲーム4の立ち上がりで逆を取られまくってしまいました。ウィザーズではありえない、ビールには出来ないプレーですね。

お互いに対策と傾向で仕込んでくるのがシリーズの流れですが、ゲーム4に向けて準備したであろうディフェンスを、お互いに無効化するプレーをしてくるっていうね。ザ・プレーオフであり、これぞプレーオフ・プレイヤー。引き出しの多さがないと勝てないんだ。

もう1人、いや、もう2人か。少し注目すべきグリズリーズの選手は、共にルーキーのデズモンド・ベインとザンビアー・ティルマン。ここではベインが得意の3Pに加えて、速攻から滑らかなレイアップでジャズの勢いに負けません。スターにはならないけど、プレーオフでも自分の力を発揮できるメンタリティとスキルを発揮しています。

ベインって大学2年生くらいまではシュートのみだったらしいけど、そこからプレーメイキングまで幅を広げてきたってドラフトスカウティングを読んだことがある。他にケンリッチ・ウィリアムスしかNBAプレイヤーのいない小さな学校だけど、こうしてワン&ダンではなく、引き出しを増やしてからNBAに来た方が活躍できるんじゃないかってね。モラントも2年生でブレークした選手だし、JJJの引き出し足りていないし。

しかし、JJJは得意の3Pでリードをもたらします。いいね。いいよ。ヤング・グリズリーズ。レベルアップするプレーオフ。今日はモラントが初めからフルスロットルで勝負する必要がなく、1Qは4点2アシストのみ。JJJが7点で、ベインが5点、チームは31点。良い感じのスタートを切れました。

ジャズはドノバンは序盤で崩しただけで、そこからはチームオフェンスが始まり、ベンチから出てきたフェイバーズがFG3/3でチームハイの6点。こちらも見事なバランスアタックであり、ゴール下ねじ込みまで発揮できて34点です。フェイバーズの使い方はもったいないけどなー。

◎エース勝負

2QになってもJJJはゴベア相手に奮闘します。ドライブはブロックされたけど、カイルのドライブに対し、しっかりとゴール下をキープしてゴベアが飛んだらパスを受けてダンク。そしてピック&ロールをしてくるクラークソンに出るのか出ないのか微妙な対応を見せ、最後はゴベアを優先し、迷ったクラークソンはフローターをミス。ヘルプでもしっかりとコースを切るし、インサイドによったディフェンスをみて3Pもヒット。

またブルックスがゴベアからファールドロー。ファールには見えないんだけど、強引にギャロップでコースを変えたことでファールを生み出した。散々自分がファールドローされているので、ちょっとやり返し、ゴベアはベンチへ下げられます。

でも戻ってきたドノバンに逆にファールドローされてしまいます。一瞬で置いてかれて追いつかない。そして同じことを2回やり、後ろから手を出して3つ目となりベンチへ。完全に抜き切られており、どうみても不要なファールなので苛立ち。苛立ち。レフリーにも何も言わずに下がりました。

ゲーム3は「メンタルゲームに勝ったジャズ」だけど、どうやらゲーム4は「グリズリーズが負ける」みたいだ。

・・・ってところでモラントが3Pをヒット。さすが。苦しくなりそうなときに救うからスーパーエース。ここからドノバンもモラントもシュートミスが重なりますが、互角の展開。突き放せなかったジャズと接戦に戻したグリズリーズ。

ただ、例によってドノバンが自分でドライブする流れから、オニールの3Pやフェイバーズのゴール下を生み出したのに対して、モラントは自分で行く時は自分で行くになっていました。ゴベアのブロックで打ち切れないとみるやパスに切り替えるけど、どこにも出せずにターンオーバー。

モラントはファールドローで得点するも、ドノバンが豪快なオフェンスリバウンドから3Pをヒット。今度はモラントがゴベア相手にドライブからのリバースレイアップ。そして長い距離のフローターを決めきります。

前半最後はエースの打ち合いになって59ー54でジャズが5点リード。ドノバンとモラントに差があったとは思いませんが、自分の突破からアシストも出来た分だけジャズがリードしたイメージでした。

まぁチーム力的にはジャズの方が上なのはわかりきっているわけで、それでも「モラントがボールを持った時はチーム力の差は関係ない」という雰囲気を醸し出しています。確かにゴベアは怖いけど、個人で上回れるなら関係ないじゃん。

3Pがないといっても、モラントがやっていることをシモンズが出来ない理由もないんだよね。駆け引きして、アタックして、ショートレンジとレイアップの上手さで決めきる。そこにキックアウトが組み合わさればなんてことはないじゃん。点の取れるアデバヨになればさ。

グリズリーズが成功していたのはコンリーにドライブされない事。それはプルアップ3Pも含めてね。コンリー自身があまり仕掛けなかったこともあり、4アシストはするものの、それはキックアウトパスでした。ゲーム2はゴベアへのアシストで輝き、ゲーム3は連携を止めに来られたからプルアップ3Pで輝き、ゲーム4はとりあえずキックアウトしています。

◎戦いは移っていく

そのコンリーのパスからボグダノビッチが3P。もう今日はコントロール役だね。ゴベアもインサイドで2本決めますが、どちらもアウトサイドからのパスでした。ドノバンとコンリーが外からコントロールしていき、時にボグダノビッチがアタックしていきます。チームとしての引き出し。

グリズリーズはカイルのパスからバランチューナスのゴール下。さらにカイルがドノバンからスティールして速攻。コンリーのドライブもカイルがブロックし、速攻でモラントのリバースレイアップ。ボグダノビッチが目立つと思ったら、グリズリーズはカイルだ。

あとゲーム3同様にカイルの方がドノバンへのディフェンスは効いているんだよね。そしたらこのプレーにタイムアウトで抗議したらしくスナイダーがテクニカル。何が気に入らなかったんだろ。

タイムアウト明けにコンリーが行ってゴベアへのアリウープを出すも、これをバランチューナスがカット。狙っていてもパスの上手さで止められなかったけど、遂に成功したぜ。モラントとカイルで決めると、今度はカウンターでドノバンからゴベアのゴール下にパスが通るも後ろから叩いたモラント。能力半端ないって。

これに怒ったゴベア。多分、決めきれない自分に怒った。ゴールの支柱をバシバシ叩いたらテクニカル。カワイそ。レフリーコールに怒っているわけでもないのにさ。これでグリズリーズが1点差にするのですが、ドノバンのパスなのかシュートなのかわからないボールをキャッチしてねじ込み&ワンのゴベア。

ってことでカイルvsボグダノビッチの後はゴベアvsバランチューナス。それぞれにモラントとドノバンが絡みつつ、戦いが全局面に広がっていきました。いいね。いいよ。そこまで出来るのかグリズリーズ。

でも気が付いたら10点差。ドノバンがドライブをねじ込み、さらに&ワンで引き離してしまった。ちょっとモラントにとって運が悪かったかもしれないのは、前半にフェイバーズがよく、しかもゴベアが連続ファールしたので、フェイバーズが長めに出ている事。これがリムプロテクトではなくコースに入ってくるから、止められるシーンも。

そしてまたドノバンの3Pにブルックスが飛び込んで4つ目。もう完全にメンタル負け。諦めるしかないところで、行ってしまうからファールドローされる。だってゲーム3のドノバンは3P2/10だよ。そこは諦めるしかないじゃん。諦める価値があるじゃん。ちなみに今日も最終的には2/7でした。実際には3Pファールドローしているからもっと気持ちよく決まっているけどね。

この後、ゴベアが出てくるとJJJも出てきてゴール下にスペースを作ってもスピードで奮闘しカバーしました。そしてモラントが決めることで追い上げたのだけど、クラークソンが2つの3Pで10点差のまま4Qに突入します。

◎メルトンまで

タイラー・ジェンキンスの指示は「キックアウトを使え」でしたが、これをモラントとJJJで見事に両コーナーに散らしていきます。ドライブとキックアウトが繋がっていなかったモラントがここにきてHCの指示通りにプレーしている。スコアラーではなかった強み。

するとスペースが空いてきたので、メルトンがドライブからJJJのダンクをアシスト。お見事。ジャズのような論理性で崩していったHC&エース。これでJJJが3P決めていればさらにゴベアを困らせることが出来たのだけど、伸びしろだね。でもJJJはゲーム3からマジで頑張りを見せているよ。

リズムに乗ったメルトンは3Pを決めれば、ドライブでゴベアの上を通すハイレイアップ。アレンがドノバンをブロックした事もあって4点差に縮めます。さらにゴール下のゴベアにパスが通るも、バランチューナスがブロックして、そこからメルトンがカウンター。実際にはバランチューナスがブロックしたのはボールじゃなくてゴベアの顔面でしたが、ホームだし、1試合に1回くらいは許されるミスジャッジ。

ということでメルトン中心にグリズリーズペースなのですが、ちょこちょこドノバンにファールドローされちゃいます。難しいラインなんだけど、ブルックスも同じようにファールドローしていたので、それはもうレフリーがそういうレフリーってことだ。

それでもまたメルトン。トランジションで突然のプルアップ3Pを成功させ、残り5分半で2点差まで行きます。粘るぜ。本当に粘るぜ。しかも今日はメルトンだぜ。ジャンプシュートのミスも、メルトンが自分でプットバック。

〇メルトン
15点
3P3/6

ゲーム3まで3P2/10だったんだけど、関係なく強気に打っている。メルトンに救われるなんて考えもしなかったけど、信頼して起用したタイラー・ジェンキンスの勝利。ところでティルマン、クラーク、ウィンスローは使わないんだね。

◎残り4分

追い上げるグリズリーズでしたが、ここでモラントのドライブをコンリーがスティール。そしてオフェンスエントリーすると会心の3Pをヒット。続いてボグダノビッチも3Pで残り2分半10点差に押し戻されてしまいます。

モラントはドライブするも打ち切れずにコーナーへキックアウト。ブルックスの3Pが外れるもバランチューナスがプットバック。

とはいえ点差は大きいのですが、プレッシャーをかけて8秒オーバーギリギリに追い込んだところでジャズがタイムアウト。しかもタイムアウトあけにオニールがパスを出せず、再度タイムアウト。これで1分半残してジャズはタイムアウトがなくなります。グリズリーズはシュートを決めればプレスディフェンスに行き、タイムアウトがないから追い込みやすくなりました。

ダンクに行ったモラントがファールドローし、フリースローなので最高のシチュエーション。勝負のディフェンスでしたが、コンリーに運ばれて、ハーフラインのドノバンへ。時間を使ったドノバンはドライブからゴベアにパスを通し、ファールドロー。これをゴベアが決めて、残り45秒8点差でゲームオーバーでした。

〇モラント
23点
2P7/14
3P1/7
12アシスト

あー、全然気が付かなかったですが3P外しまくっているね。そこは大きな反省点ですが、このシリーズ最多の12アシストをしました。これまで散々「もっと得点取りに行け」と書きましたが、シリーズもゲーム4だし、ゲーム3の内容を考えても、ボールを散らすのは良かったと思います。3Pさえ+2本決めていれば、ほぼ30点12アシストでしょ。完ぺきじゃん。

ドノバンが強いのも得点力に加えてパスを出せるからだし、モラントも得点一辺倒のタイプじゃないし。3P問題は今に始まったことではなく、トレーニングを積んでいくしかないしね。今日は「マストウィン」ではあったので、スターの壁をこじ開け切れなかったけど、それはもう要求が大きくなりすぎているのかもしれません。

うーん、3P1/12でこのプレーが出来るなら、ベン・シモンズだって出来るんじゃないの?

〇JJJ
21点
2P6/8
3P3/10
6リバウンド

さすがにチームメイトのレベルアップが止まってきましたが、JJJはゲーム3に続いて頑張っていたよ。こちらも3Pがもう少し決まればゴベア対策として有効でした。今シーズンもケガで欠場だらけ。戻ってきても納得できるプレーはなく、チームがプレーインから変わっていく中で取り残されていました。

それでもタイラー・ジェンキンスは起用し続けたね。ティルマンでウォリアーズ戦を勝ったのに、ジャズに負けてもJJJなんだ。だからJJJはこの経験をチームに感謝し、成長でアンサーしないといけない。そんな感じ。まだシリーズは続くので、ゲーム5でゴベアをいじめられるくらいにレベルアップできるのかどうか。

〇ドノバン・ミッチェル
30点
2P6/15
3P2/7
FT12/13
8アシスト

シュートは決まってないんですけどね。13もフリースロー打っていた。それ以上にシリーズ最多の8アシストです。モラントと同じ感じで、自分にマークが来るから散らしていった感じです。

ん-ー、あとなんだかんだいって、本人は否定するだろうけど、ゲーム2と3よりも気楽にやっていたね。2勝して気持ちの余裕と、3試合目で試合勘が戻ってきたからかも。いつもの悲壮感すら感じさせるプレーオフモードというよりは、シーズンモードって感じでした。

ということでジャズは11点しかとらなかったコンリーと、24点とシリーズ初めて20点オーバーで復調してきたような気もします。つまりはかなり通常営業に戻ってきたようなジャズ。さすがにゲーム4で力の差が出てきたし、でも試合を終わらせないメルトンまで含めた頑張りのあったグリズリーズでした。

対策も出尽くしてきて、何かを行っても、さらっとかわせてしまうドノバン&ジャズでした。だから、さすがに飽きてきたね。ゲーム5でサクッと終わらせてくれるのか。それともJJJがグリズリーズを更にステップアップさせるのか。

プレーオフ①グリズリーズvsジャズ” への7件のフィードバック

  1. やっぱりなんだかんだロイス・オニールが随所に光っているように感じたGame4でした。モラントのマーク、パス、リバウンド、スリーとよくやってるように見えます。  

    サラリーがベルタンスの半分ってほんと???

    1. そうなんですよ。
      オニールは全局面に顔を出してくるので、スタッツ以上に効きまくってて

  2. 文脈への影響は無いかも知れませんが、ゲーム4のモラント3Pは1/7のようです。

    1. あざっす。スタッツ見間違えですね。
      さすがに、そんなに外した記憶なかったので。

  3.  モラントについてですが、ハーデンの緩急の使い分け、パス、ドライブ、ジャンパーの使い分け、精緻なシュートセレクション、とウエストブルックの身体能力、及びアイバーソンのアジリティといったストロングポイントを出来るだけ合体させようというのが、彼のplayerとしてのdestinationのような気もしてきました。
     カリーやトンプソン によって3Pが従来以上の注目されたように、ハーデン、そしてモラントを通じ、今後フローターが今まで以上にハイライトされるような感じもいだきますが、」どうでしょうか?

  4. 試合は興奮するし、一度は追いつきそうになって、ファンとしては、楽しいのですが・・・そろそろ飽きてきましたね・・・
    ティルマンとクラークは、JJJに任せる(信じる)で理解できるんですが、ハンドラーもできて、ディフェンスも期待できるウィンスローは使ってもいいんじゃない?とも思ったり、逆に言うとそれくらいしか工夫できるポイントが無い気がして。
    まぁ明日のゲームが、今後の成長につながることを期待するしかない!!
    そろそろ大差で負けそうですが!!!

  5. ジェンキンスHCが映るとなんでボグダノビッチが私服着てる?と思うくらい似てると思う。 より:

    特にGame4のJazzはRS通りのテンションで淡々と進めてるなーと思ったら、プレータイム、ローテーションもRSと同じだったと。
    意外と熊さんとの差は大きいのかも。

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