オニールとジャズ

首位に立つジャズですが、退屈なオフェンスを成立させているのがロイス・オニールだ!という記事が出ました。そもそも首位にいるのに記事にされにくいジャズなのに、さらにディフェンダーが主役っていうね。『オニールが主役の記事が掲載されるのはバスケット・カウントだけ』というくらいレア記事かもしれません。

ブログでは何回か触れていましたが、この内容はディープなスタッツが含まれており、ブログ向けなのですが、ちょっとした戦術革命でもあるので、より読まれる方に振ってみました。でも、もう少し掘り下げる要素があるので触れていきましょう。

そもそもオニールが主役っていうのは試合を見ているだけでは書けません。「チームで最も多くのパスを出している」というスタッツを調べてわかる事実があって初めて成立します。試合を観ているだけでパスが多いかはわからないし、コンリーより微妙に少なかったらインパクト薄いし。

スタッツを調べてみたくなった理由は、今シーズンのジャズは昨シーズンまでと大差ない内容ながら、とっても成功しているのが不思議だったからです。そして、いくつかの「不思議ポイント」を考えていった結果、オニールにぶち当たったというのが正解です。

逆に言えば「オニールがパスを振りまくっている」から解決した「不思議ポイント」が何なのか、ということなので、今回はそこについて触れてみましょう。何が不思議だったのか。

①コンリー&クラークソンが成立している

そもそもこの2人がいることに反対の立場であった管理人。1人ずつならいいけれど、どうしても2人が同居できるイメージが沸きませんでした。プレースタイルに違いはあれど、基本的に自分中心にボールを動かさないと能力を発揮できない選手なので、ドノバン・ミッチェルがいるチームにおいてコンリーとクラークソンの両方は不要だと思っていました。

しかし、そんな予想を覆すくらい機能しています。今シーズンは特にクラークソンの好調さが際立ちますが、それがどれくらいかというと

〇クラークソン
17.2点
FG42.1%
3P35.2%

あれっ?得点は多いけど、FG成功率低いよね。
これで好調とか言われたら、誰もが好調なんじゃないの。ってことで、クラークソンのプレーっぷりは別にして、首位を走るシックスマンと考えた時には、そんなに効率的に決めている選手じゃないんだよね。ルー・ウィリアムスみたいにファールドローするわけでもないし。

タフショットを決めてくる能力は流石ですが、タフショット打ちまくっているチームは勝てないってのは定番。だからクラークソンのスタッツを考えると、やっぱり悩ましいんだ。それでもクラークソン&コンリーで成立しているってことは、コンリーがかなり好調なんだね。

〇コンリー
16.1点
FG45.0%
3P42.1%

うーん、確かにこのスタッツは「コンリーにしては」かなり成功率が高いのですが、クラークソンと並べた時にはやっぱり確率の悪いコンビに見えてきます。どっちも自分の成功率が多少悪くても、良いパスアウトでチームメイトに打たせるっていうタイプでもないしさ。

細かく言えばコンリーをオフボールムーブさせてシューター的に使うプレーコールもあって、2人のシュート能力がより発揮しやすいような工夫がされているのは事実です。でも、そこにはやっぱりドノバン・ミッチェルが必要になってしまい、クラークソンとのコンビでは難しいんだよね。

そんなわけで3Pは良い感じだけどプレーメイク力が足りないクラークソン&コンリーのセットにおいては、誰かしらが中継役としてパスを供給する必要がありました。それがオニールだったわけだ。

個人での仕掛けを繋ぎ合わせるパサーのオニール

何もオニールが決定的なパスを出す必要はなく、オープンサイドにパスを出して1on1のシチュエーションになればクラークソン&コンリーが個人能力で何とかします。特別なパスではなく、コートを広く使い、2人がそれぞれアタックしやすい環境を作れれば良かったジャズ。

イングルスも含めてではありますが、中継役としてオフェンスに参加してくれ、しかもアウトサイドだけではなくペイント周辺でも中継してくれるオニールの潤滑油感は半端ないです。

②ゴベアーが強烈

2つ目の不思議ポイントはゴベアーが強烈な事。別に今に始まったことではありませんが、従来以上に強烈な印象があり、殆どワンタッチでのシュートを決めています。ドライブに対して合わせ方が上手くなった印象があります。

実際、ここについてはゴベアーっていうか「コンリーが連携に慣れた」感じがあります。どうもイマイチだったコンリーのパスが、今シーズンは機能しており、3Pの好調さも含めてコンリー&ゴベアーがジャズで最も多くのリードをもたらしてくれています。

とにかくゴベアーも印象として、今シーズンはオフェンス面での貢献度も非常に高いのですが、こちらもコンリー&クラークソン同様にスタッツを見ると、昨シーズンから大差ありません。アレっおかしいな。

〇ゴベアー
得点15.1 → 14.7
FG69.3% → 65.0%
OR3.4 → 3.5
アシスト 1.5 → 1.2
ターンオーバー 1.9 → 1.6

なんなら昨シーズンより悪くなっているゴベアー。プレータイムが3分ほど減っているので、その分下がっているともいえますが、概ね活躍度というか使われ方に変化はなさそうにみえます。

それがオニールの件が絡むと、今シーズンのゴベアーの印象が良い理由が見えてきます。ゴベアーのパス数は47本から23本と半減しており、それだけボールをもらう機会が減りました。これまでハイポストあたりでボールを受けて判断の悪いプレーをすることが多かったゴベアー。っていうか、基本的にワンステップで押し込めないとプレーパターンがないので、リングから遠い位置で持たせちゃダメ。

つまりゴベアーの印象が良くなったのは、パスを受ける機会も出す機会も減ったことで

悪いイメージのプレーが極端に減った

ということになります。同じ中継役でもゴベアーがパスをするか、オニールがパスをするかじゃ大違い。それよりも出来るだけ押し込む機会を増やしたいじゃん。

さて、このゴベアーの件については、もう一つ不思議な現象があります。それがジャズ唯一の補強だったフェイバーズ。2年前はゴベアーよりもフェイバーズの方が機能していたのに、今シーズンの機能しない具合は予想できないレベルでした。

③効率が悪いフェイバーズ

〇フェイバーズ
5.9点
FG63.9%
0.8アシスト

さすがのFG成功率を誇っていますが、プレータイムが短いとはいえ6点もとっていないのは寂しい。ただそれ以上に「ゴベアーの代役」感が強く、ロブパスの押し込み能力が低いよね。高さが違いすぎるから当然だ。

そもそも2年前はゴベアーよりも効率的だったのは、ゴベアーには出来ないプレーを多くやっているからでした。単純なピック&ロールからのダイブでも、シュートパターンが多いからディフェンスの空いたところを狙えるし、ゴール下までいかなくてもシュートを打てます。

加えてフェイバーズはインサイドのプレーメーカーにもなれるので、パスアウトからのアシストもあった。今シーズンもゴベアーに比べたらいろんなプレーが出来るものの、そもそもセンターがその役割をしなくてよくなった事情が、従来のフェイバーズのイメージに比べて活躍できていないのかもしれません。

インサイドで経由するプレーが減って「良くなった」気がするゴベアー
インサイドで経由するプレーが減って「悪くなった」気がするフェイバーズ

多分、根本にある理由は同じなのだと思います。スタッツ的には大差なく「気がする」だけっていうのもポイントです。個人が大きく改善したのではなく、チーム内の役割調整でスムーズな連携が増えてきたゴベアーと、減ってしまったフェイバーズ。これらについてオニールがキーマンになっているわけですが、他に同じ役割になっている選手っていないよね。イングルスかな。

〇オニールのオフェンスレーティング
オンコート 118.8
オフコート 109.8

ジャズで最も良いオフェンスレーティングを誇っているオニール
ジャズで最も悪いオフコートレーティングなのもオニール

オニールがコートにいるかどうかでジャズのオフェンスは全く違う効率性になります。昨シーズンのジャズのオフェンスレーティングは111.8なので、オニールがコートにいないなら、昨シーズンと似ているってことかもね。

7.3点、2.5アシストの最重要オフェンシブプレイヤー

信じらないものを生み出しているオニールとジャズなのでした。

オニールとジャズ” への4件のフィードバック

  1. なんとなく、17-18シーズン、ラスメロジョージ体制OKCのロバーソンを思い出しました。
    シューティングイップスが継続中でボックススコアも全然なのに、なぜかon court時のoffrtgが高くて驚いたのを覚えてます。実際はトランジションが増えるだけだったのかもしれませんが、結構中継役もやっていたような印象がありました。

    1. あの時のロバーソンは、かなりの本数のパスを受けていましたね。
      中継役というか、ラスのサポート役ですが、マークされていないからこそ苦しくなったらロバーソンに渡していた気がします。

      ウィザーズは何でロバーソンと契約しないんだ!

  2. ウィザーズロバーソン本当見たいです(笑)
    再建に行くならビールは出るでしょうし、今シーズンの残りだけなら負担もありませんし、ちょっと試してくれないかなあ、なんて。

    10dayの後音沙汰ないっぽいですが契約しようと思えば可能ですよね?

    1. トロイ・ブラウンを放出してしまうのだから、よくわかんないですしね。
      ディフェンスに力を入れるといいつつ、そのための工夫は何もないし。

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