クラークソンとジャズ

要るのか?要らないのか?

今回のテーマはジョーダン・クラークソンです。題名には「ジャズ」とついていますが、ジャズに必要かどうか、はテーマではありません。個人的な意見は書くけどね。

クラークソンはFAなので、各チームが狙えます。いわゆる「インスタントスコアラー」と位置付けられる選手で、ディフェンスの悪さもあって全く評価していませんでしたし、キャブスに残っていたらオフの契約は散々なものになっていたでしょう。

ジャズはクラークソンを手に入れるために手塩にかけて育ててきたダンテ・エクサムに加えて2巡目指名権を2つ手放しました。そこまでして獲得したけどFAってのもマイナスなら、ディフェンス+オールラウンドな能力が売りのエクサムからスコアリングが売りのクラークソンへの変更は、ジャズのGMが迷走している証拠でもありました。

ただ、違いがあったのは戦術家クイン・スナイダーと共に過ごした時間でクラークソンにも変化があったこと。ジャズに来たことはクラークソンという一人のプレーヤーにとってはポジティブな要素だらけでした。

それはレイカーズのコーチ陣、キャブスのコーチ陣といった指導者たちの問題だったのかもしれません。ジャズに来てからの半年間(実際は1年間)で何が変わったのかを考える前に、ジャズの意味不明な部分に触れておきましょう。

◎アンチ・ロジカル

ジャズには「コンリー問題」があって、ザ・ロジカルなオフェンスシステムに対してコンリーはアジャストできませんでした。ベテランの優秀なPGというイメージから一般には理解されないかもしれませんが、コンビプレーで崩していく事は出来るけど、コート全体を見回しながらディフェンスの薄い所から崩すプレーが出来てないコンリーです。

その結果、本来は異分子の理不尽担当であるドノバン・ミッチェルがロジカル担当もすることに。最近、ナゲッツとのゲーム1を見返して思ったことは「コンリーが戻らずに、イングルスがPGやっていれば勝ったかもね」でした。ロジカルでコート全体を俯瞰でき、オフボールで崩せるイングルスに比べるとイマイチなコンリーのゲームメイク。ただし、コンリーが3P決めまくったのも事実なので、たられば、です。

さて、それに対してクラークソンはどうなのか。もちろん輪をかけて「アンチ・ロジカル」です。まぁ、でも、それは初めから予想できたことだし、クラークソンにそこを求めてはいけない。

問題だったのは「コンリーも、クラークソンも」だったことです。コート上にいるハンドラー2人が共にチームオフェンス出来なければ、上手くいくわけがないじゃん。

●コンリー&クラークソン
オフェンス 102.9
ディフェンス 116.8

その結果、プレーオフで2人同時にコートにいるときはこんなレーティングになりました。シーズンは結構よかったことにはビックリしましたが、プレーオフの印象は正しかった。ロジカルな中にクラークソンが異分子で混ざるならともかく、単にロジカルじゃないオフェンスだったよ。

ちなみにジャズは7試合トータルでオフェンスが120.3もあったので、特にオフェンスが失敗していることがわかります。さらにいうと、この2人それぞれのオフェンスレーティングは悪くないんです。

●オフェンス
コンリー 115.2
クラークソン 116.8

2人がセットでコートに出たのは5試合68分もありましたが、その間のジャズは散々。でも1人ずつなら良かったってことになります。1人ずつなのか、ドノバン・ミッチェルがいれば、なのかは難しいですが。

ロジカルなプレーが出来ないことでクラークソンを責めるのはお門違いですが、コンリーと2人が並んでしまうとジャズらしさは急激に失われていきました。この状況をスナイダーが許容し、それでも2人の個人技を主体としたオフェンスをしていたことは、不満だし、不可解でした。

●アシスト 22.4(26位)

その結果、昨シーズンは26本あったアシストはリーグ26位まで下がりました。あんなにパスを回しているのにアシストが少ないチームって意外な結果です。

コンリーが残ると思われる以上、クラークソンを残すのは反対です。でもコンリーの放出に成功したなら残しても良いかもね。いずれにしても、ボグダノビッチやイングルスがいる中で、どうしてクラークソンが欲しかったのかは謎でした。結果的にはプレーオフでボグダノビッチがいなかったから、クラークソンがいてよかったけどね。

◎ロジカルへの対応

これらの問題は「ハンドラーとしての判断力」における問題です。ムリヤリ打っているプレーも多く、どうにもね。しかし、ハンドラー以外の部分を考えていくと、ジャズに来たことでクラークソンはかなり改善しています。そもそも本質はハンドラーじゃないだろ。

クラークソンは変わった選手で、ルーキー時代に記録した3.5アシストがキャリアハイ。そこからアシストを減らしていきました。今シーズン、キャブスにいた期間は2.4アシストを記録していましたが、ジャズに来ると1.6アシストまで減りました。つまりジャズは起点役としてのクラークソンには、期待していなかったことになります。

個人技での突破は多いものの、それはあくまでも「ウイングとして突破」するのが主体であり、起点役以外での活躍を求めた結果でもあります。そこでディフェンダーとの距離別3Pアテンプトを比較してみましょう。

●昨シーズンの3P
タイト(4フィート以下) 1.4本
オープン(4~6フィート)2.4本
ワイドオープン(6フィート~)1.7本

●ジャズでの3P
タイト(4フィート以下) 1.3本
オープン(4~6フィート)2.7本
ワイドオープン(6フィート~)2.0本

相変わらずタフショット好きではありますが、オープンショットやワイドオープンが増えました。キャッチ&シュートの成功率が40%を超えていることもあって、オフボールでフリーになったシュートが増えています。ジャズオフェンスの恩恵でもあるし、ポジショニングを考えるようになりました。

但しプレーオフになったらキャッチ&シュートが25%しか決まらなかったことも付け加えておきます。

●ジャズでのEFG 54.8%

オフボールでのポジショニングが改善したクラークソンは、これまでよりも効果的なシュートを打つようになり、50%をギリギリ超える程度だったEFGはジャズで55%近くまで向上しました。

一方でターンオーバー1.4もキャリア最小となっており、パスをもらう選手としての成長が伺えます。ただし、ジャズにトレードされる前から改善し始めてもいました。個人での頑張りもあるでしょうが、ジャズのチームオフェンスを学んでいった印象があります。

●3Pアテンプト
【昨シーズン】
コーナー 95本
コーナー以外 349本

【今シーズン】
コーナー 76本
コーナー以外 177本

また、コーナーから3Pを打つ機会が増えました。的確に空いたスペースにポジショニングしていることがわかります。「インスタントスコアラー」とは良い意味では得点能力が高いのですが、悪い意味ではチームオフェンスが出来ないのですが、ジャズに来てからのクラークソンは長い時間コートにいても機能するシューター系ウイングになってきました。

12月末に加入してからジャズ流を学び始めたため、スタッツ的には少しずつの改善ですが、最終的にはかなり変わってきたといえます。

オフボールのポジショニング
チームオフェンスの中でシューターをこなす

こんな部分が改善したことを念頭に置きながら、バブルでのハイライトを見てください。イングルスの大きなキックアウトに適切なポジショニングをし、オフボールで動き回ってコーナーでフリーになり、チームメイトとのパス交換を上手に使えるようになったことが見えてきます。

◎チェイスディフェンス

オフェンスだけ考えると「クラークソンをウインガーとして活用した」ことになりますが、何故、他のチームはそれが出来なかったのか。加えて言うとレブロンと共にプレーしていた頃は、ジャズに来てからよりも動き回っていました。判断力がアレなクラークソンにハンドルさせないのが正解ってのは、過去にも出ていた事項です。

しかし、そんな使い方でも問題になるのがクラークソンのディフェンス。フィジカルが弱いだけでなく、読みも悪いし、気負いすぎだし、ギャンブルだし。ってことで、ウインガーとして使いにくかったわけです。4年前ですが動画がありました。

ジャズに来て最も驚くべきことはディフェンスが大きく改善したことでした。以前よりも身体が小さくなった気すらするのに、しっかりとコースを切って、ゴール下でもファイトしている姿は別人。

ギャンブルをせず、粘り強く対応しているクラークソンですが、チームとしても主としてチェイス役を任せることが多くなっており、ディフェンスでもオフボールで走ることになりました。マッチアップ相手を見ると、上位から

テレンス・ロス
デリック・ホワイト
アンフィニー・サイモンズ
ベン・マクレモア
ラングストン・ギャロウェイ
ダグ・マグダーモット

こんな感じでシューター系統が多いことがわかります。ポジション的にガードではない選手も含まれており、ジャズはサイズではなくタイプでマッチアップを決めている印象です。それが身体の小さいクラークソンの「チェイス能力」を向上させた気がします。

また、粘り強い対応はスタッツとしても明確にディフェンスの改善を見せました。まぁチームの影響が強く出るスタッツなので一概に個人の向上とは言えないのですが、それでも「ディフェンスが弱点」だったクラークソンからすると驚くべき変化です。

●DIFF △0.5
●被FG% 43.7%

キャリアで初めてDIFFがマイナスになりました。つまりリーグ平均よりもシュートを落とさせるディフェンダーになったわけです。マジか!
被FG45%を下回ったのも、もちろん初めて。レイカーズ時代は48%くらい決められていたので、この3年間で一気に改善してきたと言えます。こうして相手のシュートを落とさせるようになったわけですが、それ以上に被アテンプト数がぐっと減りました。

●被FGアテンプト 7.3本

これもキャリア最小。24.7分のプレータイムはキャリアの中でみても少ない数字ではありませんが、被アテンプト数が減ったというのは「ディフェンスを狙われにくくなった」「ボールを持たせなかった」ということでもあります。

スピードがあり、小回りが利くクラークソンに適した役割を与え、粘り強い対応を学ばせたスナイダー。個人の向上は素晴らしかったと思います。また、そもそもジャズは「ゴベアーに追い込む」形を得意としているので、チェイスした結果としてゴール下に侵入されても問題ないという事情も大きかったと思います。

リングから6フィート以内の被アテンプト数は1.9本でキャリア最小。とにかくゴール下を狙われないことがクラークソンを大きな改善に繋げたと思います。

オフェンスでウインガーとして活用し、ディフェンスでチェイス役として活用する。個人の改善とチームのバランス。オンボールにおける相変わらずの部分が目立つ一方で、オフボールのところを絶妙に向上させてきました。

◎FAだよ

クラークソンを残すことに反対するというよりは、コンリーとセットで残ることに反対の管理人。クラークソンに10M払うなら、フェイバーズにオファーしようぜ。とにかくディフェンス、それもペイント周辺を守れる選手を連れてこよう。

基本的にはイングルスをPGにもっていって、ウイングかフェイバーズ系統を補強すればジャズとしては悪くない形です。このパターンならクラークソンを残す意味も大きくなります。全てはサラリーが高すぎるコンリー問題。

クラークソン自体もウイング系PGのいるチームが理想的。そういうチームを求めても良いわけですが、おそらく本人はジャズというチームにもう少し残りたいんじゃないかな。これだけ改善してきたのだから、移籍してしまうのは勿体ない。

オーナー交代によってロスターの作り方にも影響が出てくるでしょう。そもそもジャズはコンリーとゴベアーの契約がラストだから、動くタイミングでもあります。ジャイルズ連れてきてオフボール強化するとかね。

クラークソンの行き先は、いろいろとありますが、こうやってオフボールでもプレーに参加でき、ディフェンスも穴にならないとなれば、高すぎたサラリーに見合った選手になり始めるでしょう。でも判断力の低さと安定しないシューティングは変わっていないけど。

ってことでメンドクサイから予想はなし。息の長い選手になりたければ、ジャズで戦術をもう少し学ぶことをおススメします。

クラークソンとジャズ” への8件のフィードバック

  1. コンリーとドラモンドをトレードしたい。
    どうですかキャブスさん、ガーランドとセクストンの教育役に。もしドラモンドがフィットしたら、ゴベアの代わりに残すことも出来るし。

    1. いやー、考えたこともなかったですが、確かにコンリーのトレードに困ったらアリかも。
      ゴベアの重要性の高さを考えると、プレータイム分け合うのも良さげですね。

  2. コンリーをバックスにトレードしてイリヤソバとかdjウィルソンとかをもらうとかどうなんでしょう…

    1. バックスとのトレードは、もれなくブレッドソーかミドルトンがついてきます。
      各チームがバックスとのディールでネックなのがここですね。

  3. 6thマンとしての地位が固まってきた元LALヤングコアで、制限なしFAは初めて。UTAに残るのが正解に思えますが、突破力を必要とするチームは欲しいでしょうし、年齢的にもあと2,3年がプライムタイムなので本人も迷うでしょう。個人的にはLACがルーとビバリーを放出したあと、MLEを提示して掻っ攫うような気がしますが、本人が優勝したいと強く思うなら、それもアリだろうなと思います。

    1. でも突破力をあてにして獲得すると、そこまで上手くいかないんですよね・・・
      ルーはシュート、パス、そして何よりファールドローがあることで、あの活躍だったので、クラークソンは武器が足りない。

      実はレイカーズの方が面白いんじゃないですか。
      ヴォーゲルとしても既に改造されている選手なら安心ですし。

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