リバウンドを制する者は試合を制す?

依頼テーマです。

バスケをする人なら誰もが知っている言葉

「リバウンドを制する者は試合を制す」

しかし、それは正解なのでしょうか。

A.そんなことはありません。

まるで格言のように扱われていますが、井上雄彦によって生み出され、赤城剛憲が桜木花道にやる気をださせるために使われた言葉に過ぎません。ちょっとイメージが大きくなりすぎたわけですが、ある意味、これを一般化させたのはリバウンド大好きな指導者がいるからか、ビッグマン信仰の国だからか。

WCでは解説が「シュートの半分以上は落ちるんですからリバウンドが大事なんです」みたいなことを盛んに述べていましたが、それよりも「シュートを半分以上決めないと勝てないぜ」っていうのがWCでした。そりゃあリバウンドを取れないより取れたほうが良いに決まっているけど、地味役の桜木ってのはスコアラーの流川がいて成立するだろ。ドラモンドは世界最高の選手かい?

しかし、実は命題「リバウンドを制する者は試合を制す」は偽ですが、命題の裏「リバウンドを制さないものは試合を制さない」は真だったりします。いや、少なくとも今現在は。

〇今シーズンのリバウンド下位10チーム
ウィザーズ、キングス、ホークス、ホーネッツ、サンズ、サンダー、ピストンズ、ウォリアーズ、ブルズ、キャブス

見事に全チームが負け越しています。キングスとサンズってここが解決すればジャンプアップしそうでもあります。しかし、実は昨シーズンはそうでもありません。

〇昨シーズンのリバウンド下位10チーム
サンズ、グリズリーズ、ロケッツ、ウィザーズ、キャブス、ブルズ、ペイサーズ、ホーネッツ、セルティックススパーズ

なんと4チームが5割を上回っており、ロケッツは28位ながら53勝もしていたわけです。ということで、ここに今シーズンの特徴が登場しているのです。「オフェンスよりもディフェンス」が今シーズンの特徴ですが、延長戦にあるのがリバウンド取れないと勝てない(守れない)理論です。こうして時代は動いていくのがNBA。リバウンドが必要ないくらいにシュートを決めることを求められていたのが反転してきたよ。

◎リバウンドを制すの嘘

さて、リバウンドについて「数」で語るわけですが、数は嘘をつきます。かつてリーグ全体のスピードが遅かった時代ならばまだしも高速化の中では

リバウンドが多い = リバウンド機会が多い

ということなので、単純にペースアップが数の増加に繋がっています。言い換えればペースの早いチームはリバウンド数が多くなります。これをリーグ全体で見てみましょう。

〇1試合のリバウンド数の変化
94-95シーズン 41.6
99-00シーズン 42.9
04-05シーズン 41.9
09-10シーズン 41.7
14-15シーズン 43.3
19-20シーズン 45.1

なので2010年くらいまでは変動幅が小さかったのが、ここ数年で3~4本も増えてきました。特に昨シーズンのルール変更でオフェンスリバウンド後のショットクロックが14秒リセットになったことで、より早くシュートに行くし、それだけリバウンドが増えました。

〇今シーズンのリバウンド上位(ペース)
1位 バックス (1位)
2位 クリッパーズ(6位) 
3位 ロケッツ (2位)
4位 マブス  (19位)
5位 ネッツ  (10位)
6位 ウルブズ (4位)
7位 ブレイザーズ(9位) 
8位 ラプターズ(14位)
9位 シクサーズ(18位)
10位 スパーズ(13位)

ということでマブスは4位だけど、ペースが遅い中で4位だから超優秀ということがわかります。そしてここに不思議なことが。ペースが速い=リバウンド機会が多い、なのに3・5・7・8位がいません。これがウィザーズ、ペリカンズ、グリズリーズ、サンズです。負け越しチームです。といってもウルブズとブレイザーズも負け越しているので、ペースが速いことがデメリットになっていると捉えても良いかと。

いずれにしてもリバウンド機会の違いはペースの違いでもあるので、最近はリバウンドを「数」で捉えるか「率」で捉えるか微妙です。微妙だしヤフーとかに記事が載るときに「率」を書いても伝わるとも思えないから困ったりします。まぁそれは置いといて、リバウンド率の上位をみていきましょう。

〇リバウンド率上位10チーム
シクサーズ、ヒート、クリッパーズ、バックス、マブス、レイカーズ、ネッツ、マジック、ペイサーズ、ピストンズ

うん、こっちのほうがしっくりきます。リバウンドが強そうなチームが並んでおり、ロケッツが11位まで落ちました。ちなみにマジック以下は51%を下回っておりダンゴです。大した違いではない。

特にシクサーズ、ヒート、レイカーズが登場したことで彼らの強さがリバウンドに絡んでいる匂いがしてきます。リバウンドを制したって試合を制するわけじゃないけど、確率は高まるよね。そういう堅実系の戦い方をしているのがレイカーズまでの6チームです。クリッパーズはちょっと違うか。

◎ディフェンスとリバウンド

クリッパーズの何が違うかっていうと、リバウンド率は高いけど、それがオフェンスリバウンドの高さによるってこと。ザ・ハレル戦法。かつてのウエストブルックーアダムス戦法。でもそれは例外なので、基本はディフェンスリバウンドが大切です。

ところが、このハレル戦法はちょっと大切な要素を含んでいます。いやウエストブルック―アダムス戦法のほうが理解しやすいかな。基本的に「リバウンドが強い」=「ディフェンスが強い」が成立しそうなわけですが、実際には

「リバウンドが強い」
=「リバウンドをとれるポジショニングに優れている」
=「ディフェンス時に体型が崩れていない」

この間が大切だと思います。ブロックアウトが基本っていうけどさ、個人的にはブロックアウトをするためには、そもそもブロックアウトできる体制がないといけません。そういえば草バスケで「ブロックアウトしろ」って言われてブチ切れたことあったな。「お前らが抜かれるからカバーにいってブロックアウト出来ないんだろうが!」ってね。あーヤダヤダ。変な常識にとらわれているやつ。

で、ウエストブルックがディフェンスを粉々にして、クソみたいなシューティングを外すけど、その時点でアダムスをブロックアウト出来ない状況が成立しているので、オフェンスリバウンドとり放題でした。

〇アダムスのリバウンド数の変化
ディフェンス 4.0→4.6→6.3
オフェンス  5.1→4.9→3.0

なのでウエストブルックがいなくなってディフェンスリバウンドが大幅に増えたけど、代わりにオフェンスリバウンドが大きく減りました。結果としてトータルリバウンド数があまり変わっていないっていうね。ウケるよね。

さて、この手の各論は次回へ回すとして、総論で触れて終わりにしましょう。

基本的にディフェンスリバウンド数が多いってことは、ディフェンス時に体型を崩されていないってことです。

命題「リバウンドが多い→ディフェンスが良い」と思いきや、
命題の逆「ディフェンスが良い→リバウンドが多い」が真だったりして

〇被FG%(DR率)
1位 バックス(2位)
2位 ラプターズ(29位)
3位 クリッパーズ(7位)
4位 セルティックス(27位)
5位 ナゲッツ(8位)
6位 レイカーズ(11位)
7位 ヒート(3位)
8位 ペイサーズ(9位)
9位 ブレイザーズ(25位)
10位 ジャズ(4位)

そしてこう並べると、命題の逆も真ではないわけです。ディフェンスが良くてもリバウンドが取れないチームもある。ってことで、各論ってのは各チームの考え方によってはリバウンド優先とシュートチェック優先で守り方は変化してくるよね。

ということで次回に続きます。次回がいつになるのかはわかりません。

リバウンドを制する者は試合を制す?” への8件のフィードバック

  1. リーグでも五指に入るくらいのペースの遅さとドラモンドパワーのおかげなんでしょうけど、リバウンド率ではトップ10に入っているのにぼろ負けなピストンズ。
    EFG%が高く、NETRTGも悪すぎではないのに何故ここまで弱いんでしょうか。

  2. いつも楽しく拝見させて頂いてます。久々にゲームプレビューでなく理論の話で楽しませて頂きました。

    今回の話で思い浮かんだのはロッドマンが当時のスキルのまま現代にいたらもっとリバウンドがとれたのではないか、ということです。ペースが遅くてビッグマンのサイズも今より大きいあの時代の数字ですから。それとともにIQの高さからアシストも多かったのですがこれまたパスワーク重視の現代バスケではまた増えるのではないかと。そう想定するとスモールセンターで試合に出続ければ19R10A4Pなんて化物スタッツもあるんじゃないかと思います。生産性はありませんが過去のプレイヤーがそのままのスタイルで現代でプレイした時に逆にスタッツ向上を想定出来るかというのをデータから想定して欲しいと思いました。
    別件、自分も筆者さんと同じくディフェンスカバーでブロックアウト出来ないことで逆ギレしたことあります。笑

  3. リバウンドは難しいですね。
    チーム毎にペースが違うし、オフェンスのスタイルもディフェンスのスタイルも違うのでまとめて語るのが難しい。
    この2試合キングスはデドモンをローテから外してスーパースモールで守り勝ちました。
    リバウンドよりディフェンスやスティールを重視してリバウンドは2試合とも負けましたが、平面的なディフェンスで相手エースを止めて勝ちましたね。
    REB%が上がってもスイッチの餌食が増えては良くない場面もありますしね。

  4. こないだNBA系の5ちゃんまとめサイトのコメント欄で”ドンチッチはロングリバウンドを抑えてるだけだからスタッツほどの意味はない”みたいなコメントがあって、賛同してる人も割といてびっくりしました(というか反論は1人もいなかった)
    ウエストブルックとアダムス問題でも似たような話があった気がしますが、ゴール下でゴリゴリと競り合って拾うリバウンドにしか価値を見出してない種類の人というのが意外といるみたいです。遠くに跳ねたリバウンドだろうが相手に拾われたらまずいのは同じだと思うのですが…

    1. 横からすんません。
      そういう人は生温かく見とくしかないですね。笑
      ハンドラーのロングリバウンドは価値の高いリバウンドというのを知らないんですよ。
      「誰でも取れる」じゃなくて「誰が取るか」が大事ですよね。

  5. バスケしてるとそーゆー変な事を言ってくる人いますよねー。カバーディフェンス後のリバウンドはチーム責任なのに、抜かれた奴がキレてるとかね。もーナゾナゾ。

    はてさて、考えるシリーズ 楽しいしですね。続編楽しみっす。

    オフェンスリバウンド後14リセ変更は僕の中ではけっこう影響大予想です。14リセで48分ゲームって過酷。

    今まで(24秒リセット)オフェンスリバウンドとってから残り8秒まで休憩してた国の人達ですからね、アメリカって。(ものの例えです 例え悪いけども) 

    『休憩してた』は半分冗談ですが、半分は本当にそーだと思います(オフェンスもディフェンスも)。14秒じゃーまたすぐプレーしないとですからね。疲れるよそりゃ。フロアに居てる間、休憩が出来にくいのがオフェンスリバウンド後14リセットの特徴かなと。

    ペースを荒くした方がゲームも荒れてエキサイティング!!って狙いですかね。分からんでもないけども、しんどいってそりゃー。

    48分ゲームなら24秒リセが僕は推奨派。届けアダム・シルバー

    14秒リセは40分ゲームだからこそのバランスなのでは?とって思っちゃう。48分で14リセは過酷。

    なので、過酷に対応するためにベンチを厚くするだけでは対応出来なくなってきているので、そもそものチーム作りを、ディフェンス強化型&ビックラインナップ(平面も守りつつ)型チームが増えた要因かなーとゆう予想です。

    よーは、『14秒リセットで48分ゲームやるなら、元気な方が勝つからオフェンスは効率的にスリーを使い、ディフェンスにスタミナ残そう その為にはリバウンド取れるよーな人を少し前より増やすラインナップ組もう もち平面も守れる人ね そーゆう人の価値があがっている』かな。 こじつけですかね。まぁー、僕はそう仮説しますって事です。以上なり。

    スタミナといえば、レブロンがリレーオブゲームにならないよーにボールを相手チームに渡さずゆっくり帰るスペシャリストなのは言うまでもなくNBA最高スキルの持ち主

  6. 結論を先食いするかもしれないですが、今シーズンはFBPS%が高いチームが安定して勝ってますよね。具体的にはLAL、TOR、MIL、LAC、HOU、BOS、PHIがトップ10に入ってます(MEMやNOPも入ってますが)。ディフェンスリバウンドをどれだけ取れるかっていうことじゃなくて、取ったあとどうやってゴールまで効率的に届けるかが大事になってるような気がします。

  7. アンサーありがとうございますー!!!!

    この手の記事は将来コーチングブックという形で書籍化したいです。
    よだれモノです。

    コーチ理論本は20冊くらい読みましたが、戦術論と指導論、プラスコンディショニングとかばかりで、チーム作りの戦略論として日本に一つだけの本になります、きっと!

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