ある意味、勝利したのはアトランタ・ホークス
クレイ・トンプソンが121試合目のプレーオフにして初めての欠場。地味にケボン・ルーニーもアウト。デュラント不在の中、チームの中心6人のうち、3人が欠場。イグダラもケガの影響があり、カズンズも復帰したばかり。
通常通りなのがカリーとドレイモンドのみのウォリアーズが、カリーの活躍とわき役たちの奮闘により、ある種の感動すらある戦術的で効率的かつハードなプレーで素晴らしい試合をし、そしてラプターズに完敗したゲーム3
それはNBAファイナル史上に残るであろう凡戦であり、熱戦でもあった試合。勝ったラプターズファンも素直には喜べないであろう試合。
◉ガソルとカズンズ
序盤からカリーが決めていく傍らで、大切なマッチアップになっているのがガソルとカズンズ。ゲーム2では、ここで負けた、というか「カズンズのデメリット」をしっかりと生み出せなかったガソルなので、積極的に攻めていきます。ラプターズのチームとしての修正。
一方でカズンズがイニシアティブをとらなければ、カリーだけで攻めていく必要が出てしまうウォリアーズ。カズンズもそれを理解しているので、これまでになく「自分で攻める」選択肢が多い。
しかし、これがもたらしたものは「シュートを打たされるわき役たち」の構図。ドレイモンドとリビングストンのアウトサイドでは苦しいけれど、そこをフリーにされてしまうから致し方ない。
オフェンスが上手くいかない事。ガソルの積極性を守り切れなかったこと。早々に二桁ビハインドとなったウォリアーズ。
タイムアウトでスティーブ・カーは考え方を改めます。ディフェンスについては半分諦めて、トランジションを中核にしたオフェンスで打ち勝つことを目指し、願いをかなえてくださる言葉をかけるのでした。(嘘です)
◉スーパー・カリー・イズ・ファンタスティック・エクスピアリ・ドーシャス
それはそれは、極めて簡単なスタイル。全てをカリーに託し、全てはカリーのためにプレーする。
カリーのために動いてマークをひきつけ
カリーのためにスクリーンをかけて
カリーのためにトランジションに走り
そしてカリーをカバーするために運動量で勝負する。だからクック、マッキーニー、ボーガットを並べる。まずはマッキーニーとクックについて触れましょう。
ボーガットのリバウンドから一連の流れ。クックとマッキーニーの2人はとにかく走る。走ってコーナーを目指す。そこにドレイモンドがボールプッシュを加えます。上手くトランジションへ移行することで、フルコートにスペースをもたらしています。
レナードのレイアップミスに対してリバウンドをとったのがカリー。クックとマッキーニーもリバウンド要員です。
しかし、これが速攻になります。ラプターズの戻りも遅いわけではありませんが、クックとマッキーニーが両サイドで走り出すのが早く、このシーンではマッキーニー側はダニーが間に合っているけど、画面上ではイバカとヴァンフリートがクックに走り負けています。
この動きはカリーの運動量を減らしてくれます。自分以外の選手にマークが集まり、それもトランジションで動いてくれるので、その後ろからやってくるカリーにプレーするスペースを与えてくれます。
それにスクリーンを徹底してくれるボーガット。ズルさも売りの選手であり、カリー同様にディフェンスの背中側にスクリーンをかけるのが大好き。
何故かファールコールされないのはホームだからってのもあります。カリーはオーバードリブルっぽいシーンが結構あったしね。
まったく違うシーン。これはボールを持つカリーではなく、画面右端のボーガットとマッキーニーに注目です。
カリーがドライブを仕掛けた瞬間にイバカがヘルプに行きます。ラプターズらしい素晴らしいチームディフェンスの早さがあります。このイバカに対してボーガットはすかさずマッカウの背中側にスクリーンをかけます。
これに対してマッキーニーがポジションをコーナー側に移し、カリーからのパスアウトでフリーの3Pになりました。
ドライブ→キックアウトでコーナー3P
というお決まりのパターンではありますが、カリーの突破そのものはレブロンやハーデン、ウエストブルックほどの怖さはなく、単独アタックからのキックアウトには限界があります。
しかし、シュートが怖いのでディフェンダーはシュートを優先して守り、ドライブされても事後対応で追いつこうとします。ヘルプとの連携なわけですが、そこにボーガットが連携を遮断するスクリナーとなりました。ちなみにこの前のプレーでカリーのパスからダンクしたのも布石が効いていました。
今度はカリーのためにマッキーニーがスクリナーになります。
カリーに2人が寄ってきたので、すかさずゴール下にダイブするマッキーニーと、そこにパスが出せるジョーダン・ベル。
ベルって別にパスが上手いキャラではないので、チームとして練習している感じが強く見受けられるプレーです。出番の少なかった若手がファイナルの舞台で、このプレーが出来るのって偉大なことです。
◉カリーを休ませる
守れないながらもカリーを中心にしながら、カリーのために動く選手構成で反撃に転じたウォリアーズ。2Q序盤はカリーを休ませるため、カズンズを中心にしてジェレブコやクックをシューターにした布陣にします。
しかし、やっぱりピリっとしません。ピリっとしないというかファイナルの舞台で優位性をもたらすだけの個人能力もチーム力も足りないし、連携がよいってこともない。
なので、やっぱりカリーを戻すことになります。
これはかなりのファンキーなプレーコールです。リビングストンがボールを持ち、カズンズのスクリーンを使ってカリーが抜け出そうとしています。これだけなら普通なのですが、ボーガットに比べてスクリーンが下手なカズンズなので、カリーをフリーに出来ず、パスはポストアップのドレイモンドに出ます。
その瞬間にカリーは進行方向をリングに変更します。ヴァンフリートはついていますが、半身だけは抜け出すことに成功しています。
パスを受けたカリーがシュートに行くわけですが、カズンズのスクリーンが失敗しても、即カリーに打たせるプレーになっているわけです。リビングストンが直接カリーにパスをしても良ければ、ドレイモンドを経由しても良いってのは厄介極まりないのでした。
そしてカリーの理不尽さは、この状態からクイックでフローターになることです。普通は守る必要がないシュートですが、カリーならば話は別。なお、この時はシュートが外れましたが。
これだけの素晴らしいチームオフェンスを、「カリーのためのチームオフェンス」を展開したウォリアーズ。
しかし、バスケはチームプレーであり、個人プレー。チームプレーだけで勝てるならデュラントは不要だったともいえます。
「強引なプレー」でなくても、「体半分抜け出せれば決める」ような能力が足りなかったり、あるいはチームオフェンスを狙おうとしてターンオーバーになったり。
時にカリーのとんでもない3Pで点差を縮めるも、概ね10点前後で推移していき、そしてトランジションとパスゲーム、カリーの25点がありながらも前半のウォリアーズは52点に留まりました。
◉満を持してダニー
ラプターズにも苦しい部分があり、前半で3P3/4と大当たりだったダニー・グリーンが3つのファール。
さらにラウリーもカリーに腕を振り払われるとファールをコールされ、頭に血が上ります。冷静なゲームメイクと巧みなポジショニングのラウリーですが、この人は頻繁に頭に血が上り、オーバーヒートし始めるよね。
ハーフラインくらいでのイグダラのスクリーンに対して無駄にファイトしてカリーにぶつかったり、自分からクックに当たりに行ったり(なお、クックがファールコールされてしまう)
前半で3つのファールになっていたラウリー。4つになってもおかしくないのに、ムダにファイトしてしまうんだ。
後半のスタートはダニーではなくヴァンフリート。前半同様の打ち合いに持ち込むカリーとウォリアーズだけに、カリーキラーになっているヴァンフリートのディフェンスを優先したのかと。
すると、MVPモードで自分で打つシーンを増やすイグダラ。それはマッキーニーには出来ないお仕事であり、「ここにトンプソンがいたら」と感じさせるプレーでもありました。
カリーへの警戒が強い中で、それでもオフボールムーブとスクリーンでカリーに打たせた前半に比べると、カリーの存在でストレッチ出来ているから、インサイドを有効に使ったり、他の選手が攻めたり。ゲーム2でクレイがバックドアに行ったのと似たような構図です。
だけど、それはやっぱり総合的にレナードやシアカム、そしてガソルまで個人アタックを仕掛け、しかもこちらも絶好調のヴァンフリートがタフショットも決めていくので、追いつく気配にもっていけないウォリアーズ。
そこで再びボーガット、クック、マッキーニーが登場します。前半同様に走ってスクリーンかけてハードワークして。
ニック・ナースはここで満を持してのダニー・グリーン。それはヴァンフリートやラウリーではなく、ガソル&シアカム→イバカという交代の形。予想外の一手。
そして5分間で3本の3Pを決めて期待に応えたダニー。ラプターズはリードを13点まで広げることになりました。
では、何故ニック・ナースはこんな交代にしたのか。てっきりファールトラブルとカリー対策だと思っていましたが、どうやら狙いはそれだけではない様子。
まず1つには前半に起用したマッカウがウォリアーズオフェンスに対応できていない様子を見せたので嫌がったのかと。パウエルも同じなのかはちょっとわからん。
ならば7人ローテなわけですが、スティーブ・カーの交代によって「走れるメンバー」を並べてくることは理解していた中でウイング不足のニック・ナースは使いやすいダニーをベンチにしておいたわけです。ヴァンフリートだとウイングとしては起用できない。
そしてもう1つは偶然かもしれませんが、「トランジションの連続 = オープンショットが増える」というウォリアーズが描いた構図に乗っかったのかと。こちらもオフェンスで負けない選択をしたわけです。
決めまくったダニー。だけど、マークは緩かったよね。前半からディフェンスではどうしてもついていけない、というかインサイドをカバーするにも止めきれないから、結果的にアウトサイドが空いてしまうことが多くありました。
再び登場したダニー・グリーンはスモールラインナップ気味のウイング役として、オープンな打ち合いのシューターとして、そして便利な6thマンとなりました。
◉トランジションと
4Q開始でのプレーはトランジション色を強めます。負けているウォリアーズが一波乱起こすためには必要な事です。
ジョーダン・ベルがブロックし、クックがリバウンドをとったシーン。ラプターズは2人が戻っています。
それでもクックは猛烈にプッシュしました。後半休みなくプレーしているカリーは、前半の終わりごろから疲れが見えており、ついてくる気はありません。カズンズは・・・。
それでもクック、ベル、イグダラで速攻の形にしてしまいました。
見事なトランジションだったのですが、まるでそのためにいるようなイバカもまた走りあいに参加して後ろから追いついてきました。ガソルでは無理なプレーです。
なお、イバカはこの後、カリーの3Pにファールしてしまいます。クックにレイアップ決められるなら2点で済んだのにね。
とはいえ、ここからイバカのブロックパーティーが開催されました。4Qだけで4つのブロックをくらわしたイバカ。トランジションを徹底してくる相手に対して、トランジションの中でも高さを発揮できる選手を持っていたラプターズ。
そして残り7分52秒でこの試合45点目となるフローターを決めたカリー。驚異的なパフォーマンスをみせたカリーでしたが、疲労は疲労。これが最後のFG成功となったのでした。
〇ステフ・カリー
47点
FG14/31
3P6/14
7アシスト
8リバウンド
文句のつけようがないパフォーマンスとなったカリー。そしてチームのために頑張ったサポートメンバーたち。そのプレーぶりは素晴らしいものがありましたが、やはり火力不足にしてチームのオフェンスパターンとしてのスタミナ不足。
プレーシェアをすることで勝利を積み重ねてきたウォリアーズでしたが、主力のケガによりその大前提が大きく失われながらも、それでも選手を信じてチームオフェンスをしたけれど、カリーだけは交代させることが出来ませんでした。
それを責めてはいけないし、この極限の状況の中で考えうる限りのプレーをしたと言えるウォリアーズ。だけど、やっぱりファイナルで勝つにはそれだけじゃダメなんだ。
戦力差がある試合ではあったけど、ニック・ナースもまたウォリアーズの出方に対して対応するべき選手交代をみせました。ゲーム2の修正である「カズンズを攻める」が見事に成功して得たリードを最後まで危なげなく守り切ったのでした。
◉トラビス・シュレンクの呟き
※アトランタ・ホークスGMでウォリアーズの元アシスタントGM
いつも読み応えがありながらも読みやすいブログ楽しみです
ただの誤字ではありますが突然のニックヤングは笑いました
疲れ切っているね。
ニック・ナースをニック・ヤングと書かれたのは、昨年までスリーをある程度警戒しないといけなかったヤングの不在を感じさせるゲームということですか?
新人のジョレブコ、ブレイザーズ戦スタメンになったものの全く使えないデミリアンジョーンズ、皮肉にもチームで1.2番目に使えないロールプレイヤーのみが来年の契約がまだ残っているというのが現実。
カズンズ次第になってきそうな今日の展開、見事に対策されて、テンディングもとってもらえずフラストレーションが溜まっていき、終盤は自滅していった印象です。
トンプソンは次戦復帰が濃厚、デュラント は微妙ですが、ウォリアーズはデュラント なしで王手をかけられる可能性のある次の試合を戦う勇気がありますかね?(デュラントは明日5on5の練習が予定されているそうです)
ドラマを期待しているので、1勝3敗からのデュラントで連勝。ゲーム7行きを楽しみたく。
もしくはニック・ヤングに大活躍してもらいましょう。
1勝3敗になればKDがゲームに出ることはまずないと思います。
無理して出場しケガをすれば今度こそアキレス腱を切って選手生命が終わる可能性があります。今夏FAですしリスクは取らないでしょう
ドラマは起きません
今日は点差がつきっぱなしの敗戦でも、ボロボロのウォリアーズを悲観することなく見ることができました。
これだけ戦力が削げ落ちても、戦う姿勢を失わずルーズボールへの対応など、ファイナルだからというのもありますがいつも以上に気持ちの入ったプレーを見せてもらいました。
負けたけど感動が勝る試合でした。
ウォリアーズ最初のファイナルでレブロンが2つ勝利をもぎ取ったように、カリーには現メンバーで2つとってもらってKDの帰還を待つシリーズにしていただきたいです。
本当によくこのメンバーで最終クォーターまでブローアウトされず見応えのある試合にしてくれて感動です(勝って欲しい気持ちどこ行った)
ブログからお疲れ感がひしひしと伝わってきます。何とぞ無理なさらないよーに。
前回のコメで書いた内容と真逆のウォリアーズでしたね(恥)
この試合は『スターの為にロールプレイヤーが汗をかく』でしたね。 どこのレブロンかハーデンか って感じのスター&ロールプレイヤー チームでした。
でもカズンズは信頼感ないし、これっきゃないですよねー…さすがにS・カーもやりよーがないか。
さて、怪我人が少し戻りそうな4戦目には勝負になるよーな形になるのかどーか ルーニー最後まで見たかった。怪我こわい 健康大事
3戦目を戦ったウォリアーズのロールプレイヤーは今日のファイトを忘れないで欲しいなー。次戦や来シーズンはもう1段、良いプレイヤーになって欲しい。スターにはならないで 払えないし。
いくらリング持ちでも、普段、スターに守られてるのがロールプレイヤー。『木が無くなって初めて暑さを知る』です。
でも頑張ってはいたなー 頑張っているじゃー稼げない世界だけど
ラプターズ 今年は凄いチャンスですよ。優勝するときはラッキーも必要なのがスポーツなのかなー
もしここからウォリアーズが逆転優勝したらそれはそれで神話化してヤバイけど あんまりドラマチック過ぎてもアンチ増えちゃうよ
追伸 セルティックスのGMのTwitterは何て書いてんのかな
記事の更新お疲れ様です。
やっぱりGSWはトランジションにおいて攻守に渡って機能していたルーニーがいないのがかなり響いていると思います。
なのでそのルーニーを吹っ飛ばしたフィジカルモンスターカワイレナードの勝ちです。
このファイナルはレフェリーの笛が軽くないですか?
なんかちょくちょく試合が止まるイメージです。意図的なんですかね。
ファウルコール遅かったり、何でもないのにバックコートバイオレーション吹いたり(訂正されたけど)
個人的にはレフェリーのレベルが低く感じます。
言いたいことがよくわからないんですけど
なんでホークスが勝者なんですか?
最後まで読んだうえでも結局よくわからない
ブログ主のあなたがニヤニヤしてるのはわかるんですけど
伝える技量が伴ってないから気持ち悪いだけになってるのが惜しいと思います
じゃあ読まなければいいと思います。
まあ言い方には悪意感じるけど、いろんな感想があるのはいいんじゃない?
このブログって続けて読むからこそ楽しめる要素が多いのは事実だと思うし、シーズンも終盤に差し掛かってるから、初めて読む人には多少分かりにくい部分があるのは理解できる。
ホークス関連は、このブログのドラフトの記事とか、ホークスでサイト内検索して出てきた記事を読んでみたら把握できると思いますよ〜。
ウォリアーズの王朝を崩すには、ウォリアーズのキーファクターを抜き取る必要がある。ホークスは昨夏にコンディショニングの専門家を引き抜いた。クレイ・トンプソンのケガをトリートメントした専門家だ。
とかなり直接書いたんですけどね。
どこのチームもイグダラとデュラントを引き抜けず、弱体化させられなかったけど
プレーオフ120試合全てに出場していたトンプソンが欠場したのは
トリートメントの専門家を引き抜いたホークスが引き起こした事象かもしれないって事
それにホークスの現状を比喩として加えただけなのに。
ファールはプレー影響が無いと判断されると、流される(逆にプレーが止まることが損の場合、オーバードリブルやトラベリングも同様。)。にしてもシュート外してからのコールが多いなと思います。全てのファールを取るとすぐに退場者で溢れるから仕方ないですが、超人のバスケを審判するのは難しいのだなと見てて思います。
試合後審判のジャッジは協議すると聞いたことがあるので、解説されてたりしたら見てみたいですね。
(未来の)勝者(かもしれない)ホークス
ネクストカリー、トレヤング
ドレイモンドの上位互換になれるかジョンコリンズ
次世代のGSWのように成長しそうなホークス。そこにデュラントカイリーレナードバトラーにトンプソンまできたらイーストもウェストなみの激戦が繰り広げられそう。
ロケッツがハーデン残して再構築するそうなのでこれも注目したいです。ファイナルも中盤で面白くなってきましたがオフシーズンの話題も熱い。
デュラントがくればね。イーストは4チームくらいに集中していたから、全体のレベルは落ちるんですよね。
そこにネッツの成功とホークスの再編が完了すれば、かなり勢力図はかわってきます。
あれっブルズは・・・