ヨキッチの進化は語りにくい

◎多すぎた状況判断

ナゲッツのチームとしての変化は、ヨキッチ個人の変化にも繋がります。17-18シーズンからの3シーズンでタッチ数とFGアテンプトの変化を見てみると

〇タッチ数
86.2 ⇒ 93.5 ⇒ 97.2

〇FGアテンプト
13.5 ⇒ 15.1 ⇒ 14.7

ヨキッチは他の選手を圧倒するほどのタッチ数を誇るようになりましたが、その一方でFGアテンプトはあまり伸びていません。シュート1本を打つためのタッチ数が減ったとも言えます。また、リーグトップのタッチ数になったヨキッチですが、ボールを持っている時間は非常に短いのも特徴でした。

〇ボール保持時間
 3.1 ⇒ 3.6 ⇒ 3.9

〇1タッチあたりの保持(秒)
 2.1 ⇒ 2.3 ⇒ 2.4

ちなみにドンチッチは、95.8回のタッチで8.9分。1タッチあたり5.6秒でした。ヨキッチがボールを持つ時間がいかに短いかがわかりますが、一方でヨキッチ単体で見ると1回あたりのボール保持の時間が伸びています。それは見方を変えると

簡単にパスを出す機会が減った

なんてことでもあります。今から思い出すと「昔のヨキッチは、もっとダイナミックでファンタジーなパスを出していた」と感じていますが、ヨキッチを見始めた当初は今のように『インテリジェンス』が最大の武器とは感じず、ただただ多彩で見ていて面白い選手にとどまっています。初めの頃はフリーの選手に次々にパスを通してしましたが、今のヨキッチはフリーの選手には出さず、ディフェンダーを動かして、その次にフリーになる選手に出している印象もあります。

18-19シーズンに初めてプレーオフに進出し、翌年はカンファレンスファイナルまで進みましたが、この頃のヨキッチは
自分で得点することを求められている
ボールを貰ってシンプルにプレーしすぎない

こんな傾向が出てきました。結果的にはFGアテンプトは微増に過ぎないので、特に後者が面白い特徴になってきました。

ディフェンダーに対する嫌がらせのようなプレージャッジ

ヨキッチは3Pを打てば40%決まるのに、打たずにドライブし、かといって自分で打ち切らずにキックアウトする。じゃあキックアウト3Pを打つかと思ったら、ローポストのヨキッチに戻し、そのヨキッチが逆サイドに展開し、3Pフェイクからドライブしてゴール下のヨキッチに戻す。

そんなメンドクサイことをナゲッツ全体がやっていたし、メンドクサイを成立させるのはコートの中央に起点のヨキッチがいるので360°にボールが展開されるからでもありました。PGポジションの選手ではドライブ⇒キックアウトまではできるけど、リターンを貰うってのが、ポジショニング的に難しいんだよね。なんでもありのヨキッチだからこそできるローポストでの貰いなおし。

いずれにしてもヨキッチはリーグで最も多くのボールタッチを記録しながら、ボールを持つ時間は短く、かといってシンプルなプレーチョイスはせず、何度もボールを貰いなおし、コートの様々な位置からプレーメイクを繰り返すことになりました。それは同時に

リーグで最も多く、短時間での「プレー判断」を求められたのがヨキッチ

「求められた」のか「ヨキッチがそうした」のかでいえば後者でしょうが、卵か鶏かは別にして、ヨキッチほどのプレージャッジをしてきた選手はいません。単なる回数ならばレブロンやハーデン、ドンチッチにヤングの方が多いでしょうが、彼らよりも短時間でジャッジしてきたし、しかもボールを貰う位置がバラバラ。

そして「チームメイトもしつこい」のが、他のスーパースターとの違いでもありました。だってレブロンのキックアウトパスをもらっておきながら3Pを打たなかったら、その選手に存在価値はないじゃん。『自分で決めるか、ディフェンスを引き付けてキックアウト』がレブロンに必要なジャッジですが、ヨキッチの場合はキックアウトの次も次もある。

ヨキッチのインテリジェンスはこうして磨き上げられていったのだと思います。リーグの誰よりもジャッジすることが多かったヨキッチ。強引にねじ込む強さも高さもないし、だからといって必殺ソンボルシャッフルの連打もせず、常にいろんなプレーを混ぜていく、その時その時で適切だと思うプレーをチョイスしていく。この繰り返しが異次元のインテリジェンスを作り上げたんだろうね。

ヨキッチの進化は語りにくい” への2件のフィードバック

  1. いやー、しつこいですね、ナゲッツのオフェンス。
    え、これ普段から練習してるの?っていうような合わせもあったり、ヨキッチを中心に多彩なオフェンスパターンに驚きました。
    かと言って常に特別なことをしているわけでもなく、相手からすると「あー、またそこ空けちゃった…」というパターンが多いのがイヤらしい。
    ヨキッチに得点させる、という回答がありそうで、スポルストラーは明確にノーと言ったように、そんなに簡単ではない攻略。
    相手目線で見てたら、もうどうしたら止められるのか分からないオフェンスでしたね。
    どこからでも得点できる、空けても締めても得点できる、そんな柔軟性のある、かつ叩き伏せる強さを感じました。

    1. しつこいんですよね。
      しつこさに負けて開けてしまう感じです。

      これに耐えられるのって、逆に現代だと珍しいんですよね。サクッと3P打つのが正解の時代なので。

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