◎爆発力のナゲッツ?
17-18シーズンに46勝をあげたとき、ナゲッツはリーグ屈指のオフェンスチームでした。高いアシスト率と高いターンオーバー率というわかりやすいパッシングオフェンスは、ヨキッチの才能が遺憾なく発揮されており、そこにマレーやハリスのオフボール能力・サーカスショットが混じり、次の時代を担うオフェンスチームとなりました。
『爆発力』で打ち勝つライジングチーム
リーグ6位の得点は、リーグ7位の3P成功率とリーグ8位の3Pアテンプトが大きな武器になっており、ある意味で非常にわかりやすい構成でした。
ところが翌シーズンに事件が起こります。ナゲッツが優勝へと辿り着いた理由は『爆発力』から急転換した18-19シーズンにあったといっても過言ではありません。
〇失点
17ー18 108.5
18-19 106.7
世はまさに「トランジション&3P」時代となり、各チームがペースアップしてオフェンスに傾倒していく中で、その急先鋒だったはずのナゲッツは、何故か急にペースダウンしてハーフコートオフェンス中心のディフェンシブチームへと移行しました。
6位だった得点は20位に落ち、54勝28敗は今シーズンに塗り替えるまでのヨキッチ・ナゲッツの最高勝率でした。爆発力で打ち勝っていたのに、ディフェンスで制するチームへ急転換。それでしっかりと勝ち切る。意味わからんよね。
何故、ディフェンスが改善したのか?
この理由が「?」だったのも当時のナゲッツの不思議なところで、主力はほぼ変更がなく、マレーのディフェンスは酷かったし、プラムリーと同時起用しないとヨキッチのディフェンス問題も大きく出てしまいました。モリスとビーズリーが台頭してきたけど、どっちもフィジカルに弱いしさ。
唯一、クレイグが加わったことでウイングディフェンスが強化されたのみならず、1人オールコートマンツーで相手ガードをいじめるなど、ハリスと合わせて局地的な強みは生まれましたが、それがチームカラーそのものを覆した理由にはなりません。あぁクレイグってスッカリNBAに定着したんだよな。
〇ターンオーバー
17-18 15.0
18-19 13.4
〇オフェンスリバウンド
17-18 11.0
18-19 11.9
〇ターンオーバーからの失点
17-18 18.7
18-19 15.0
一方でナゲッツのオフェンスはターンオーバーが減り、当然のようにターンオーバーからの失点も減りました。オフェンスリバウンドが微増したことも含めて、明らかに「オフェンスの終わり方」に修正がはいり、ミスから失点することと、リバウンドからカウンターを食らいにくくなりました。
ナゲッツのディフェンスが改善したのは「ディフェンスが良くなった」よりも「オフェンスが良くなった」ことで実現されたように見えました。
その一部に含まれているのが「なかなかシュートに行かず、しつこくボールを回してディフェンスを動かす」ことでした。見事なパスワークでワイドオープンを作っても、さらにアタックしなおして・・・というのを繰り返すようになりました。
〇ショットクロック別FG
15秒以上 30.5本 ⇒ 28.0本
7~15秒 35.9本 ⇒ 44.3本
7秒以下 15.3本 ⇒ 17.4本
それまでアーリーオフェンスが多かったのに、ハーフコートが増え、7秒以下になるまで打ち切らないことも増えました。スタッツでは表現しにくいほどに「しつこくボールを回す」のが印象的で、フロントコートでのタッチ数は245から255に増えました。10のタッチ数の差じゃ大したことないんだよな。でも、本当にしつこくなった。
面白いことにハーフコートが増えてボールを回すナゲッツは、フリースローのアテンプトが減りました。それだけディフェンスの密集地帯には侵入せず、ボールと人が動いてイージーシュートを増やしたということですが、回しすぎてタフショットになることも多いという不思議なチームでした。
いやー、しつこいですね、ナゲッツのオフェンス。
え、これ普段から練習してるの?っていうような合わせもあったり、ヨキッチを中心に多彩なオフェンスパターンに驚きました。
かと言って常に特別なことをしているわけでもなく、相手からすると「あー、またそこ空けちゃった…」というパターンが多いのがイヤらしい。
ヨキッチに得点させる、という回答がありそうで、スポルストラーは明確にノーと言ったように、そんなに簡単ではない攻略。
相手目線で見てたら、もうどうしたら止められるのか分からないオフェンスでしたね。
どこからでも得点できる、空けても締めても得点できる、そんな柔軟性のある、かつ叩き伏せる強さを感じました。
しつこいんですよね。
しつこさに負けて開けてしまう感じです。
これに耐えられるのって、逆に現代だと珍しいんですよね。サクッと3P打つのが正解の時代なので。