さようならニック・ナース

天才はどこへ行く

かねてより噂されていたようにラプターズがニック・ナースと別れることとなりました。本人が辞めるという話も、チームが解雇するという話もあったので遅かれ早かれ。稀代の天才はカナダにチャンピオンリングをもたらしましたが、この3年を考えると当然の結末の気もします。

個人的にはヴァンブリード、シアカム、スコッティ・バーンズで勝てというのは、現代NBAでは酷な要求に見えますが、そんな選手を重用したのもナースであれば、そもそも育て上げたのもナースです。ナースの手腕を評価していたとしても、リスタートするにはHC交代も必要でしょう。同じロスターで後任探したら恐ろしいけど。

◎優勝とCOY

シーズンで勝ちまくりながらプレーオフ(レブロン)で散々な目に会い続けた数年間を経て、ラプターズはニック・ナースへと舵を切りました。ラプターズが強豪になったのは次々にタレントが出てくる下部組織にありましたが、そこで育成手腕を発揮したのがナースだといわれています。実際、アヌノビーを除き、多くの主力は905を経てトップに上がっていました。

デロン・ライト 2015-2017
ノーマン・パウエル 2015-2016
ヤコブ・ポートル 2016-2017
パスカル・シアカム 2017
フレッド・ヴァンブリート 2016-2017
クリス・ブーシェ 2018-2019

ところがナースがHCになってからは下からの突き上げが弱くなりました。主力酷使スタイルが悪いのか、タレントが育たないのか不明ですが、これが近年の問題にもなっています。まぁそれはいいや。

ナースの初年度はデローザンとレナードがトレードされて始まりました。「ロードマネジメント」なる考えを年間通して採用し、常にレナードを特別扱いしながら、そのレナードをオプション的に使い、チーム戦術+レナードという構図で見事に優勝を勝ち取りました。

ラウリーとマルク・ガソルでプレーを組み立て、コーナーにいるダニー・グリーンの3Pと、コーナーからのアタックで無双するシアカム。ベンチからヴァンブリードを有効に絡ませ、インサイドを強めたければイバカでファイトさせ、飛び道具が必要ならパウエルで滅多打ち。そこにオプションでレナード。そんなオフェンスに対して、ディフェンスでも

エースキラーとしてレナードを使うこともあれば、4人がしっかりとプレッシャーをかけ、レナードを余らせる形でヘルプ担当に変更するなど、変幻自在で柔軟な戦いぶりが目を引きました。

『5人全員がプレーメイカー』といいたくなるスタイルは、シューティングチームだったウォリアーズ王朝の次の時代を作り上げる革命的なものでもありました。明確なようで不明確な役割分担ながら、どの分担でもチームとして機能していく様は戦術的な革命であり、NBAの流れを変えることになりました。

しかし、ナースが本当に評価を上げたのは優勝した翌シーズン、レナードがいなくなってからでした。

スーパーエースを失ったことで、よりチーム力の輝きが鮮明になったラプターズ。相手との関係性の中で変幻自在な戦いぶりで異様に後半に強いチームになりました。16点以上のビハインドをつけられた試合で、なんと5勝7敗という鬼畜な逆転劇を生み出しまくり、特にマブス戦の大逆転はベンチメンバーを使ってのゾーンプレスの導入した伝説的な逆転でした。

また、このシーズンはシアカムをPGにマッチアップさせたり、アヌノビーがゾーンの真ん中で3Pからリムプロテクトまで行う変態ゾーンをしたりと実に様々な『奇策』を用いました。オフェンス以上にディフェンスでの多彩さが光っており、マンマークよりもチームディフェンスの重要性を高めたともいえます。そして登場したのが

異次元のカバー&ローテを実行するテレパシーディフェンス

3P時代における史上最高のディフェンスチームといえるかもしれない19-20のラプターズ。気が利きすぎるラウリーのカバーリングやアヌノビーの異常な守備範囲に率いられ、次々とローテーションが必要になるシステムながら、テレパシーで通じ合っているから殆ど間違えないのが異様なチームでした。

これでシーズンを2位でフィニッシュし、「レナードいなくて勝率が上がる」という鬼畜っぷりでニック・ナースはコーチ・オブ・ザ・イヤーを手に入れました。ニック・ナース時代は永遠に続くと思われたシーズンでした。

さようならニック・ナース” への5件のフィードバック

  1. おもしろい考察ありがとうございました。
    最後の二年間は尋常ならざる酷使に加えて、ハマらない上に凡人には理解できない采配が多くて、フラストレーションが溜まってましたが、今回の記事を見て「そもそも意味不明な采配をバシバシ通すHCだったな」ということを思い出しました。

    この記事でもおっしゃる通り、2019-20シーズンのテレパシーディフェンス時代は素晴らしかったですが、最後の最後にプレーオフでバンブリが不要なエゴを見せ始めてBOSに敗れた記憶があります。
    優れた戦術家といえど、選手をその方向で何年もマネジメントし続けるのは難しかったのかもしれませんね。

  2. そういえばファイナルでカリーにボックスワンで守って「中学バスケ」って言われてましたね

  3. ピストンズとかマジックとかに行ったら(特殊)能力をどう生かしたらよいか迷ってる若手を使って躍進しそう

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