至高のヨキッチ~類まれなシュート力~

ヨキッチの凄みについて語る第2回

前回は『ソンボル・シャッフル』という止められない・タイミングが読めないシグニチャームーブの凄みについて語りましたが、今回もほぼ内容は同じです。

26.4点
2P60.7%
3P38.8%

惜しくもプレーオフを逃した3年前から得点力を上積みしてきたヨキッチ。マレーの離脱をはじめとして主力のケガに泣かされ、さらにディフェンス力低下に苦しむ中でヨキッチは自らの得点を大きく増やしてきました。

3Pは久しぶりに38%を超え「センターとしては」素晴らしいスタッツになってきましたが、スマートオフェンスが重要な中でアテンプトは3.3本にとどまっており、タウンズのように「効率的な得点マシーン」にはなっていないのが、ヨキッチの弱点に見えて長所でもあります。

〇5フィート以内のFG
アテンプト 6.6本(15位)
成功率   67.4%

トップセンターとして考えた時にゴール下でのアテンプトは少なく、9.5本(2位)78.8%を決めているモンスター・ヤニスと比較すれば、ヨキッチの能力は凡庸です。アスリートとして最高のヤニスとは大きな差があり、モンスター感はゼロです。とはいえ67%は立派なスタッツでもあります。身体能力で上回らなくても堅実なフックで押し込んできます。

〇5-9フィートのFG
アテンプト 4.1(1位)
成功率   60.1%

一方で少しリングから離れた距離でのヨキッチは圧倒的になります。ショートレンジの巧みさが光り『アテンプトが1位なのに成功率も1位』みたいなもので、50%切るのが普通なのに驚異の60%超えです。他にアテンプト上位で50%を超えるのが

ドンチッチ 50.5%
バランチューナス 53.4%
デローザン 50.9%
サディアス・ヤング 50.8%

こんな選手になっており、神確率のミドルを誇るデローザンと比較してもヨキッチの異常性が際立っています。身体能力がモノをいうゴール下では「トップクラス」に留まるものの、そこから先は紛れもない「リーグ最高」に様変わりします。センターではなく、全ポジションの選手で比較して最高。

◎最高のシュートスキル

どうしても『センター』というポジションに引っ張られて考えてしまいがちですが、ヨキッチについてはポジションの概念を超越しており、『史上最高のバスケットボールスキルをもった選手』として捉えるべき卓越した能力を発揮しています。最高じゃなくて最多の方がいいかもな。

それはリングから離れて行っても変わらぬ圧倒性を示していることからもわかります。8フィートごとに円形になっているショットチャートをみてみましょう。

唯一、5本しか打っていない右コーナーが赤くなっているものの、ほぼ緑で埋まっています。緑は「リーグ平均×10%以上の確率」なので、特にミドルゾーンで緑になっていることは驚異的な確率で決めているという事です。

〇成功率
 8-16FT 52.4%
16-24FT 52.4%

一部さきほどのスタッツとも被りますが、ヨキッチのミドルレンジはデュラントやブッカーと比較してもそん色ないスタッツです。ショートレンジで最高峰なのに、ミドルレンジに出てきても最高峰です。

ゴール下でトップセンター
ショートレンジで最高の選手
ミドルエリアでトップウイング級

こんなことを同時に出来てしまっている選手だとも言えます。センターの概念を変えた選手ですが、センターという概念に押し込んではいけません。ヨキッチの持つシュート能力はポジション関係なく、リーグトップなのです。

確かにスピードはないし、驚くようなジャンプもしません。しかし、アンストッパブルなソンボル・シャッフルに加えて、多彩なフィニッシュパターンを持ち合わせ、スキルだけでリーグ最高レベルに到達しています。

フィンガーロール 82.9%
フックショット  64.2%
レイアップ    65.4%
2Pジャンプシュート53.5%

このスタッツはインサイドも多いので比較しにくいものですが、ヨキッチの場合はとにかくどんな形でフィニッシュに行っても高確率というのがポイントです。ワンプレーで「目の覚めるようなシュートを決める」なんてことはなく、「難しいシュート」を決めることも多くはありません。破壊的なハイライトなんて持っていない。

しかし、とにかく多彩だから「一番良い選択をして打つ」のが上手い。難しい形に持って行くよりも、ディフェンスとの駆け引きの中でベストの選択をしていきます。それでいてハイアーチのサーカスショットを決める事もある。

3Pに関してはリーグトップレベルとはいえない能力ですが、ヨキッチの場合はフリーでうって高確率ではないし、オフボールで振りほどくような動きもなく、ディフェンスがいる実際のゲームの中で打ちに行くチョイスの上手さでもあるので、さすがに3Pまでリーグトップになられたら溜まったもんじゃない。でも、なるかもしれない。

◎あらゆるポジションから

ヨキッチのショットチャートは、どの角度からでも高確率に決めているのが特徴であり、「どの角度からでも打っている」のも特徴です。アテンプト的には右サイドの方が多いですが、実はこれは今シーズンの特徴に過ぎず、左サイドが多いMPJとバランスをとったように見えます。

あらゆる角度から打てるヨキッチのシュート力はタウンズ同様に「ヨキッチにスクリーンをかける」というプレーを可能にしました。本来はヨキッチがスクリナーになるのに、時に役割を逆にしてしまいます。特にMPJとスクリーン交換するのはアンストッパブルなコンビプレーになっています。

〇オフボールスクリーンからのシュート
1.4回
EFG57.3%

回数として劇的に多くはありませんが、リーグトップの4.3回を誇るカリーのEFGが54.0%であることを考えれば、3Pは少なめのヨキッチがどれだけ高確率なのかがわかります。ちなみにダンカン・ロビンソンは驚異の66%なので、純粋なシューターに勝つのはさすがに難しい。

ピック&ロールのハンドラープレーはさすがに0.5回しかありませんが、EFGは76%もあり「やれば決まる」というか、「決まる時にプレーを選択する」ことが目立っています。ヨキッチのシュート力の高さはナゲッツオフェンスを多彩にしています。

ヨキッチのオン/オフ
〇FG 50.4%/43.7%
〇レーティング 120.2/103.4

当然、ヨキッチのオン/オフでナゲッツのレーティングは大きく動きますが、それにしても17も違うのは驚異的です。ヨキッチがいればリーグトップクラスになり、ヨキッチがいなければ底辺レベルまで下がります。

また1人の選手がいないことでFG%がここまで揺れ動くのも珍しい。その理由に2Pと3Pのアテンプト数の違いも関係します。

ヨキッチのオン/オフ
プレータイム 34.6分/14.0分
2Pアテンプト40.7本/14.3本
3Pアテンプト23.2本/11.0本

ヨキッチがコートにいないと途端に3Pアテンプトが増えてしまいます。ガード中心になることに加え、今シーズンは控えがスモールラインナップだったことが関係していますが、ミドルOKのチームが、ヨキッチがいないだけで急激にスマートオフェンスに近づき、そしてレーティングを大きく落としているのです。

ヨキッチがいると単にシュートを決めてくれるだけでなく「コートのどこからでも攻める」ことになり、ナゲッツオフェンスを止めるのは困難になっていきます。それは『効率性』とは違った良さがあり、『ディフェンスを攻略する』ことに繋がっていくのです。

「3Pかゴール下か」のスマートオフェンスは読まれやすくなってきましたが、ヨキッチの存在はスマートオフェンスから離れたオフェンスパターンを可能にし、そのうえで「より効率的なオフェンス」にしてしまいます。

現代オフェンスの常識外で『効率的なオフェンス』を構築してしまうシュート力

これがヨキッチが至高の存在であるという事。ナゲッツはいちはやくスマートオフェンスに対応したチームでしたが、シーズンを重ねるごとに様相を変えて時代の流れに反した戦術に移行していきました。それはヨキッチという唯一無二の存在がNBAの常識を変えているという事でもあります。

〇ヨキッチの3P
勝ち試合 2.7本 38.1%
負け試合 4.4本 39.6%

ヨキッチの素晴らしさは勝ち負け関係なく安定している事であり、3Pも40%近く決めています。ただ、勝ち試合と比較して負け試合ではアテンプトが1.7本も増えてしまいました。ある意味で『3Pを打つしかない』ようなディフェンスに追い込まれているわけです。

『効率が全てではない』ということを示しているかのようなヨキッチ

◎勝負強きヨキッチ

クラッチタイムでもFG50%を誇るヨキッチは、ゲームウィナーを高確率で決めてくる選手になってきました。プレータイムが長いにもかかわらず、オーバータイムになると独壇場になることも。スキルで勝負するだけにプレーレベルがスタミナと共に落ちないのも強みです。

〇ナゲッツのクラッチ
得点 11.4(1位)
FG 50.2%(1位)
勝率 18勝13敗(6位)

マレーと共に勝負強いコンビはクラッチタイムでリーグ最高のオフェンシブスタッツを残しました。止められないマレー&ヨキッチは試合終盤で更に輝きます。ただし、勝率が追いついていないように2人して終盤のディフェンスに向いていないので、ワンポゼッションごとに交代させてもいます。

3年前のヨキッチは「試合終盤でパスを選択する」選手で、それでもナゲッツに強みをもたらしていましたが、HCマイク・マローンは「もっと点を取ってくれ」と言い続けていました。それが今ではリーグ最高のスコアラーになっており、この成長力も驚異的です。

「身体能力は高いけど、まだまだ荒い」というタイプはNBAにきてから大きく伸ばすことがあります。ヤニスはまさにそのタイプだし、NBAにきてから更に身体能力も向上させているトレーニングマニアです。

一方のヨキッチは20歳でNBAにきた時点でスキルフルなセンターでした。しかし、そこから更にスキルを向上させています。初の2巡目指名のMVPとなったわけですが、評価がしにくかった以上に、身体能力面でアメリカのバスケットにフィットできるか不明だった選手が、そのままスキルを伸ばしていってトップに到達したことは驚異的な話です。

向上し続けるスキルでMVPに成り上がった

ルーキーシーズンで既にファンタスティックなプレーを披露しまくっていますが、今はむしろファンタスティックなプレーでなくても得点できるようになったことが際立っているかもしれません。シンプルなプレーでシュートまで辿り着き、タフショットを決めきれる。

なお、これは2年目のハイライトです。

さて、クラッチでも得点面で強みを発揮しているヨキッチですが、本当にすごいと思うのはここではなくて、試合の中で「流れが変わるポイント」に実行するプレーです。プレーというか「シュートを決める」ということ。

ヨキッチはボールを持つ回数の多さに対して3.1回のターンオーバーはエリートスタッツですが、トリッキーなプレーを好むので「やらかすミス」は出てきます。特にパスの場合はカットされてカウンター速攻を食らってしまいます。

〇速攻での失点 13.4(23位)

そのため速攻を食らう回数が多いのはナゲッツにとって大きな悩み。上位チームでありながら速攻の得点よりも失点の方が多いという困ったチームになっています。

ただ、ヨキッチはそういうミスをした後のプレーでは高確率でシュートを決めます。「ここは大事」という時に得点できてしまうのがヨキッチが持つ最大の武器かもしれません。

ポイントセンターとしてパスが多く、ボールを持ってもシュートよりもパスに行くのがヨキッチだけに、大事な場面でもマークが集中しているわけではなく、もしもダブルチームに来たら簡単にアシストしてしまうのがヨキッチですが、年々「大事なところでは自分が打つパターンのオフェンスをする」ことが増えてきました。

特にマレーとヨキッチのツーメンゲームは鉄板ですが、ある意味で普通の展開では隠していることも多く、本当に必要な場面になったら使ってきます。

連続ミスを生み出さないヨキッチは、あらゆるポジションからシュートが打てるし、そのプレーはチームオフェンスとしても、個人としても「ディフェンスが対処するのは難しい」プレーになっており、しかもヨキッチはコートのどこからでも高確率で決めてきます。

3Pよりも2Pが多いこともアドバンテージになっていて、例え効率性は落ちても「相手に流れが活きそう」なときは、40%決まる3Pよりも60%決まる2Pの方が「60%の確率でラッシュを生み出さない」わけで、より安定したシュートになることもポイントです。

相手に流れが傾くのを止めきるオフェンス

これがヨキッチで最も印象的なプレーです。試合には流れがあり、効率的に点を取ることよりも、相手にペースを渡さない事は勝敗を大きく左右します。ファンタスティックなプレーに目を奪われがちだけど、ヨキッチの凄みは安定して、どこからでも決まるシュート力を武器に、ナゲッツを試合巧者にしていることなのです。

「試合終盤の勝負強さ」とはひと味違う「勝負に勝つための強さ」を持っているヨキッチ。それを可能にするシューティングスキル。ヨキッチの得点力はスタッツ以上の効力を発揮しているのでした。

至高のヨキッチ~類まれなシュート力~” への6件のフィードバック

  1. データが表す通りヨキッチの一番の強みは5~9フィート以内 の フィンガーロールですよね。だから一瞬でも横に並ばれるとヘルプが意味をなさないですし、オフェンスファウルも誘えない。特に

    PnR => ショートロール は必殺。かといって
    アンダー なら マレーのプルアップ3
    ヨキッチにダブルチーム なら 完璧にさばかれる

    システマチックでありながら毎回相手の裏をかくヨキッチマレーのPnRが大好きなんですよね〜。ついでに言うとヨキッチマレー以外の3人のカット&リロケートも素晴らしくて、常に3人がトライアングルを回す様な統制された動きが見てて気持ちよかった。

    ただ今シーズンはハリス、グラントが抜けてミルサップもPTが減った事でヨキッチのポストアップ起点が増えた(それがMVPに繋がったのは事実ですが)気がしていて、好きなバスケそれじゃないんだけどな〜って個人的にはモヤモヤしたり、、、

    ハリスグラントクレイグヴァンディー帰ってきてくれ~~~

    1. 確かにメンバー変更で「致し方なく」ヨキッチが輝いた感じもありましたね。
      ナゲッツはオフボールとポジショニングの良い選手を集めないとヨキッチを生かせないですね

  2. ほんとにヨキッチって勝負強い印象ありますね。管理人さんも言われてますが、クラッチ含めて勝負所でいい仕事するイメージです。
    マレーとのコンビで優勝して欲しいけど、個人のディフェンス力が足りないような・・・それでもチームである程度守れるのは戦術力がみえますが。
    マレーがケガしていても、ウエストでも、来シーズンも間違いなくプレイオフだろうなと思わせてくれるのは、ヨキッチがスペシャルすぎるからですね。ケガに強く試合中の強度が変わらないのも非常にいいですね。来シーズンもMVPだ!!!

    1. 理想はMVPを取らなくていい程度の活躍なんでしょうけど、マレーがいないとムリでしょうね。

  3. 僕の中でヨキッチは、NBAにおけるティム・ダンカンという特殊な存在の現代版といった感じ。
    クールな表情で異次元なことをサラッとやってのけるビッグマン。
    マレーの怪我がなかったら昨季はファイナルだったかもなぁ。

    1. マレーのケガは残念ですが、去年と今年、それぞれ行ける時に逃した感じ強いです。

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