ホーネッツが契約延長したロジアー。これがなかなかの契約なので悩んでしまいます。
年24~25Mくらいのサラリーはチーム方針をぎゅっとしぼめてしまいます。ホーネッツは前のGMがやらかした重いサラリー負担から解放されたところなのに、ここでロジアーに長い契約ってのは、ちょっと信じられないのですが、それだけロジアーに感触を得たって事なのでしょう。
これで25-26シーズンまで契約が残ります。ヘイワードが24年まで30Mを超えるので2人でキャップスペースの半分くらいが埋まります。ヘイワードが切れるとラメロのサラリーがあがるので、ここは調整可能です。
ヘイワード24年まで → ラメロ 25年から
一方で来オフがブリッジス、その次がワシントンとルーキー契約が終わります。そのため、ここから難しくなる計算です。ロジアーが稼いでいる額を考えると、ブリッジスにも似たような額で良さげなのですが、4年60Mくらいで更新する自信があるのかな。
いずれにしても、ロジアーの最終年となる25-26シーズンは
ラメロ、ブリッジス、ワシントン、ボークナイト、カイ・ジョーンズ
この5人全員がルーキー契約を終えてサラリーアップしています。だからロジアーのプレーレベルが落ちたら一気に苦しくなりそう。だから「高い」ではなく「長い」のリスクが高い契約でした。
まぁ未来に何が起きるかわからないから、現時点で考えすぎても仕方がないか。ホーネッツが過去にそういう契約をして困ってきた歴史がなければね。
◎キャリアハイ
ホーネッツに来て2シーズン目のロジアーはヘイワードとラメロが加わったチームで、次々にプレーメイカーが変化していくパターンから20.4点を取りました。多くの分野でキャリアハイを記録しています。
〇20-21シーズン
プレータイム 34.5(キャリアハイ)
得点 20.4(キャリアハイ)
FG 45.0%(キャリアハイ)
3P 38.9%
8.3本(キャリアハイ)
アシスト4.2(キャリアハイ)
スティール1.3(キャリアハイ)
ブロック 0.4(キャリアハイ)
3P成功率だけは昨シーズンの40.7%に届かなかったものの、アテンプト数が伸びており、積極的に狙いながらも確率は高水準をキープしました。この中で意外だったのはアシスト数で、プレーメイカーが増えた中でもパサーとしても機能しました。
とはいえ、20点、4アシストの選手に4年97Mは高く見えます。一方で「スタッツ以上の働き」だったので、スタッツだけで語れる選手でもありません。
キャリアハイだらけのシーズンだけど、スタッツ以上の印象度
まずはラメロやヘイワードの加入によって変化した役割を見てみましょう。185センチのコンボガードは「ハンドラータイプが増えることで輝きを増す」という変わったルートを進みました。
◎3Pアテンプト
平均8.3本のアテンプトがあった3Pはリーグ12位。9位がグラハムなのですが、基本的に3Pが多い選手はPG系統のハンドラーがプルアップを多く打つ形でした。例外はシューターのヒールド、ダンカン、ビーズリーといった面子なので、ロジアーもシューター的な選手として活躍しています。
〇3P
キャッチ&3P 5.4本 43%
プルアップ3P 2.8本 31%
そのため以前のようなプルアップは減り、キャッチ&シュートが大幅に増えました。昨シーズンはプルアップが3.0本、キャッチ&3Pが3.7本なので、この違いは明らかでした。プルアップのうち1.1本(41.2%)は「ワンドリブルからの3P」なので、チームメイトのパスを受けての3Pが大半を占めていたことになります。
結果的にプルアップが減ったことはロジアーの得点を効率的にしています。確率に大きな差があるように、プレーメイカーというよりもシューター的に振舞ったことが、ロジアーの好成績に繋がっています。それでいて本数を増やしたことはチームオフェンスが鮮やかに機能したことも示しています。
〇エリア別3P
コーナー 1.4本 → 2.1本
トップ 1.2本 → 0.9本
トータルで1.6本のアテンプト増になったロジアーですが、明確にコーナーが増えてトップが減っています。チームメイトのパスを受け、両サイドから決めていく形が明確になり、ロジアーのプレーイメージそのものが、かなり変化しました。
もともとセルティックス時代もコーナーから始まる形もありましたが、今は徹底してサイドのオフボールから始まるため「ハンドラー」とは言い難く、シューターというかウイングというか。
185センチのウインガーになったロジアー
ポジション・役割は大きく変わりました。サイズがない選手でも関係ないボレゴスタイルであり、サイズのあるラメロとヘイワードというプレーメイカーがいることが、ロジアーを特殊なタイプの選手にしています。
◎ドライブ・アシスト
パスを受けて3Pを決めきるのがロジアーですが、当然ディフェンスが出てきたらドライブを選択します。このドライブがハンドラーらしいプレーになるため、オンボールプレーそのものは依然と変化がないように見えます。
〇ドライブ
10.3回
5.4点
FGアテンプト4.6
パス数 4.5
1試合に10回のドライブをするロジアーは、シュートとパスを4.5回ずつ選択しているので50/50です。なお、残りはファールドローとターンオーバーです。
そのためドライブ時はPGらしさを発揮しており、ガードを3枚並べたがるボレゴオフェンスのキーマンでもあります。この割合は12.6回ドライブするラメロと、11.3回のヘイワードも同じです。チーム全体でドライブ時はシュートとパスの判断が半々です。
ただ、ロジアーはドライブからのアシストは0.8本しかないので、そこまで効果的なパスになっているわけではありません。ドライブ&パスアウトを繰り返していく中で崩していくホーネッツスタイルであり、ロジアーもドライブ後に再びポジションをとって3Pを打っていくことになります。
それでもキャリアハイのアシスト数を記録したわけですが、これは「ロジアーが崩した」というよりは、チーム全体で崩していく中で「ラストパスがロジアーだった」という感じです。
〇ホーネッツのアシスト数 26.8(5位)
ラメロ 6.1
グラハム5.4
チームトップでも6本程度ですが、リーグで5位とチーム全体のボールムーブで結果を求めました。単純にプレータイムが長く、ボールが集まってくるロジアーにもアシストが増えたのでした。
◎速攻
ホーネッツ2年目になって変化したことの1つに速攻でのフィニッシュが挙げられます。これはチームとして大きく改善したポイントですが、理由はシンプルにヘイワードとラメロの加入によりリバウンドからのワンパスが出てくるようになったことです。特にラメロは「リバウンドに強い」というよりも「ロングリバウンドを拾うのが上手い」タイプで、ここからトランジションアタックはやりやすくなりました。
〇ホーネッツの変化
速攻 11.6点→13.6点
トランジション 16.9点→23.1点
どこまでが速攻の範囲かわかりませんが、速攻が2点、トランジションが6点ほど増えました。もともとスーパースモールラインナップを採用し、走るチームでしたが、足りなかったアシスト役の加入はチームを劇的に変えました。そしてロジアーも当然そのスタッツを伸ばしています。
〇ロジアー
速攻 2.3点 → 3.4点
トランジション 3.9点→5.1点
リーグで7~8番目に多くなった速攻でのフィニッシュ。上にいるのがヤニス、レブロン、フォックスなどのハンドラータイプに対し、ブラウン、ブッカー、ラビーンなどの仲間になるのかな。ラビーンは新シーズンにロンゾが加わることで増える予想ですが、ロジアーも負けてはいられません。
リーグトップクラスの速攻フィニッシャー
これにともないペイント内得点も6.8点まで伸びてきました。半分が速攻ってことだ。だからロジアーにとってラメロやヘイワードは欠かせない選手です。お互いの長所を生かしあうようになってきたわけだ。ヘイワードはセルツ時代からですが、当時も「ロジアーに最も多くのパスを供給しているのはヘイワード」でした。コンビプレー。
一方でロジアーのスタッツで伸びなかったのがリバウンドでした。理由は言うまでもないのですが、ラメロとのコンビで考えると、オフェンス時はロジアーがウイング、ディフェンス時はロジアーがガードとポジションを入れ替えられるので大きなメリットがありました。
レブロンのような選手と組ませても面白そうな雰囲気です。レジー・ジャクソンなんかも似たような形になってきています。
いずれにしてもロジアーとホーネッツにとって、ラメロとヘイワードの加入は単なる戦力増ではない変化をもたらしてくれています。新シーズンはウーブレが加わりますが、イメージとしてウーブレは「ロジアーと同じポジション」になります。ブリッジスみたいにセンターはやらないでしょ。
一方でグラハムがいなくなり、ロジアー自身はよりガード寄りにスライドされます。でも実際にはヘイワードがガードでロジアーがウイングを保ちそう。ボークナイトもいるので、ウイングのようなガードのような、それでいてPGのような選手が増えることになりますが、それこそがホーネッツのやりたいことなのでしょう。
◎ハイライト
ではここでロジアーのハイライトを見てみましょう。必然的に「3P」が多くなりますが、その3Pが様々な形で打っているのがポイントです。ヘイワードのドライブキックアウトはもちろん、ビッグマンとの絡みでコーナー近辺でのパスアウト3P、そしてオフボールで動き流れながらのコーナー3Pを決めているのが特徴になっています。
20-21シーズンは9試合で30点オーバー、そのうち3試合が40点オーバーでした。3Pが多いだけあって爆発するとハイスコアになります。一方で一桁得点も5試合あり、アップダウンは発生します。
面白いのは30点オーバーの試合が4勝5敗と負け越しており、実はロジアーがハイスコア(高確率)でも、そこまで勝率には影響が出なかったりしてさ。
開幕戦ではキャブス相手に42点、FG15/23と決めまくりながらも敗れています。
シンプルに「守れないから負けた」なのですが、多少の因果関係はあって
スピードに乏しい相手にハイスコア
サイズのあるチームに押し負ける
ホーネッツ自体がスモール志向なのでビッグマン中心のチームが相手だと、こんな現象が起きがちです。ロジアー自身は必ずしも相手がビッグな時にハイスコアになるってことはありませんが、総じて傾向としてはあるよね。
『肉を切らせて骨を断つ』を実行するのがボレゴの戦略なので、「ロジアーが高確率で決めるからこそ対抗できる」ような試合も珍しくありません。だからロジアーが活躍する時って
お互いがハイレベルに決め続ける試合
=ロジアーが輝きを放つ試合
だったりします。それ故に勝った時の爽快感というか、勝った時のロジアー感は半端じゃない。間違いなく『ロジアーの3Pで勝った』と思わせてくれます。
◎クラッチ3P
そんなロジアー感はクラッチスタッツにも出ています。ホーネッツはシーズン成績が33勝39敗と負け越していますが、その一方で接戦には強みを発揮します。
〇クラッチ
31試合
18勝13敗(6位)
得失点差+1.8(2位)
勝率5割以下なのに、クラッチ成績でトップ10にいるのはホーネッツだけでした。ちなみに11位にサンダーがいるけど、ただ単にタンクし始めてから大敗しまくっただけのような・・・。ホーネッツも大きく負ける試合が多いって事だ。いずれにしても
試合終盤の強さはリーグトップクラス
という変わった特徴を持つホーネッツ。その中でも終盤になって3Pの確率が上がるロジアーの活躍は重要でした。
〇クラッチ3P
27試合
31本
45.2%
そういえば一時期60%以上決めていたリラードが最終的には39%まで落ちてきました。アテンプトは1位で46本で成功数も1位なので勝負強さは間違いない。カリーは42本で43%とこちらも勝負強い。
ただ、3Pアテンプトしていくも外す選手は多く、ラビーン、ヒールド、バンブリード、ブッカーなどはアテンプトは多いけど、成功率は30%を下回っていきました。ちなみに逆の人としてウエストブルックは34.5%決め、ビールは24%しか決めていません。
クラッチ3Pとしては8番目に多い31本も打ちながら、45%を記録したロジアーは驚異的な成功率です。28本のグラハムも43%決めており、ホーネッツは試合終盤になって高確率で3Pを決めていくのが特徴のチームでした。
試合終盤での勝負強い3Pこそがロジアー最大の武器
これこそが「今シーズンのロジアーは別格」と感じさせた最大の要因でした。ロジアー様様な勝ち方が多かったホーネッツ。
パサー役のラメロとヘイワードが加わったことでスコアラーに徹することが出来、そこで平均20.4点、4.2アシストのロジアーは、スタッツで言えば4年97Mは考えてしまうサラリー提示でしたが、勝負強く試合を決めてくれるからこそ「ロジアーは欠かせない戦力」と評価されたのです。
スタッツ以上の印象度。それもタフな3Pも決めていくからロジアーはホーネッツのプランに欠かせない戦力として飛躍したのでした。
◎ポジションレス
ロジアーは「ファーストオプションではないがスコアリングエース」という代表的な選手になってきました。あくまでもアシストありきのプレーではありますが、3P能力の高さとパスを受けてからフィニッシュに持っていくスキルの多さ、そしてドライブからのパスアウトでオフェンスの一部になれる事。速攻を走り切るスピードから得点を稼いでいきました。
ここから更に得点を伸ばそうとすると、チームオフェンスから離れていく危険性もあるのでベストなバランスを作り上げたシーズンだったと捉えています。
ホーネッツ1年目と2年目で、ロジアー自身が大きく伸びたわけではありませんが、ハンドラーになれるウイングのヘイワードと、ウイングになれるハンドラーのラメロが加わったことは、ボレゴらしいポジションレスなオフェンスに繋がっていきました。役割分担ではなくオールラウンダーの集合体で成功したホーネッツの中で、ロジアーだけは役割をスコアリングに寄せていったのも面白いね。
サイズがないことが懸念材料で、グラハム、ロジアー、モンクを平然と並べ、さらにブリッジスとワシントンを組み合わせることも多かったホーネッツですが、新シーズンからは全体のサイズが上がります。
ラメロ/イシュ/ワナメイカー
ロジアー/ウーブレ/ボークナイト
ヘイワード/マクダニエルズ
ブリッジス/ワシントン/イワンドゥ
プラムリー/カイ・ジョーンズ
主力にルーキーが加わり、中心PGだったグラハムがいなくなったことで作り直しの部分も多いですが、他にもサマーリーグで活躍したウイングとビッグがいて、懸念のディフェンス面が改善されることが期待されます。
全体にスピードがあったからポジションレスオフェンスが成立していただけに、サイズアップで長所が失われては元も子もありません。ロジアーについては「ハンドラー化して得点効率が落ちる」なんていう可能性もあります。
歯車の一部ではあるけれど、試合を決める個人の輝きを放つテリー・ロジアー。積極補強のイーストの中でホーネッツをプレーオフまで引っ張り上げることが出来るのか。
ラメロ・ヘイワード・ボークナイトを起点にして、ウィングからロジアー・ウーブレ・ブリッジスが狙い、ダイブやダンカースポットからプラムリー・カイも狙っていく形は魅力的ですね。
モンクがセールス価格でLALに移籍してしまったのは痛手でしたが、結局ウーブレを連れてきたので、サイズアップの意味でトータル若干のプラス。おまけに棚ぼたでボークナイトとカイをドラフトで獲れたのもツキがあるというか。
他チームの動向に大きく左右されているようで、実は理想的な補強ができている不思議なチームだなぁと思いました。強いかどうかは分かりませんが、先行きが気になる存在です。
こうやって分解してみると、ラメロが特別優れたプレイヤーだったと言うより、ホーネッツにハマるのがラメロだった、という事なんだなぁ
来季はポイントセンターのプラムリーも加入することによって、プレイメーカーが一枚増えることもロジアーにとってプラスですね
楽しみです