3Pを“打たせる”ネッツとバックス

3P時代に浮上するディフェンス戦術

3Pが急増した5年間は、3Pに対するディフェンス組織の考え方も大きく変えてきました。オフェンスレーティングが高くなった時代ですが、それは

×3Pが決まるから向上した
〇3Pを守らなければいけないからディフェンスが崩れた

こんな図式だと思っています。このことはディフェンスレーティング1位のバックスが証明していて、圧倒的なレーティングを実現している理由が

3Pは打たれてもOKだが、インサイドは徹底して塞げ

なんていう守り方になっています。このため、数字とは違ってリーグ最高のディフェンスをしているのは2位のラプターズです。こちらはディフェンスで追い込んで追い込んで苦しい3Pを打たせているので、被アテンプトの多さに反して、被成功率はリーグトップです。

〇ラプターズ
被3Pアテンプト 38.5本(29位)
被3P% 33.7%(1位)
DIFF △1.8(1位)

最後までチェイスして決まらない3Pを打たせる

こんな守り方が出来ているのがラプターズの強みであり、ディフレクションやチャージドローに優れたラウリー&ヴァンブリード、エースを消しに行くアヌノビー&シアカムなど、複数の武器を使って対応しています。

しかし、「3Pが決まらないように守る」という言葉にはラプターズの様に「追い込む」だけでなく、「下手な選手に打たせる」という図式も成立します。ウエストブルックに打たせまくれば作戦成功なんだ。

◎DIFFと被3P%

NBAのデータは「よくぞそんなに!」と思わせてくれますが、特に難しいディフェンスのデータ化をしてくれるのは非常に助かります。よく利用するデータにDIFFがありますが、毎回「これって説明しないとわからないかなー」と悩んだりします。

DIFF・・・Percentage Points Difference

①シュートを打った選手の平均FG%
②守っているチーム(選手)の被FG%(DFG%)

②-①で求めた数字なので、+なら守れていない、△なら守れている

「シューターのシーズンFG%から、どれだけ確率が違うか」という指標なので、マイナスになるほど、そのチーム(選手)はシュートを落とさせるのが上手いということになります。

〇DIFF
バックス △4.3
ラプターズ △2.8
クリッパーズ △2.5
レイカーズ △1.8
セルティックス △1.6

これが今シーズンの上位5チームですが、当たり前ですがディフェンス力の高いチームが並んでいます。その中でもバックスは驚異的な数字となっており、非常に優秀なことがわかります。

ただ、バックスの場合はインサイド重視なので、リングからの距離によって大きく数字が変わってきます。それに対してラプターズはどこでもしっかりと守っています。

〇バックスのDIFF
6フィート以内 △9.8
10フィート以内 △8.3
15フィート以上 0.2

〇ラプターズのDIFF
6フィート以内 △3.2
10フィート以内 △2.3
15フィート以上 △2.0

〇3PのDIFF
バックス 0.7
ラプターズ △1.8

こんな理由でバックスディフェンスには明確な弱点があり、強すぎるインサイドを避けて3Pとミドルを選択したナゲッツは見事に攻略していました。

でもちょっと、不思議じゃないですか?
3P時代に、3Pに大きな弱点を抱え、しかもリーグで最も多く打たれている。だけど圧倒的なディフェンス力を誇るバックス。この理由を解いていくと、同時にネッツの特徴も登場します。

〇ネッツのディフェンス
レーティング 108.3(8位)
DIFF 
2P △2.3
3P 0.1

バックスと同じように「3Pを落とさせるのが下手」なネッツは、それでもレーティング8位と奮闘しました。今回はこの2チームの3Pへの守り方についてみていきます。

◎シュートを打つ選手の平均FG%

〇3PのDIFF
ネッツ 0.1(17位)
バックス 0.7(21位)

〇被3P%
ネッツ 34.9%(11位)
バックス 35.6%(18位)

両チームに共通するのは3Pを守れていないけれど、その割には被3P%が良いって事です。この理由は前述のDIFFの求め方に関係してきます。

①シュートを打った選手の平均FG%
②守っているチーム(選手)の被FG%(DFG%)

①と②の差で求めるのがDIFFですが、それはシュートを打った選手によって数字が変わってくることになります。
カリー(45%)に30%しか決めさせない(DIFF△15)
ウエストブルック(30%)に30%決められる(DIFF0)

前者の方がディフェンスの良いチームになりますが、結果的には30%しか決められないので同じといえば同じです。

バックスとネッツのディフェンスは後者の傾向が強く、①シュートを打った選手の平均FG%が低いのが特徴です。(表現が難しいですが、対戦相手の3Pが下手な選手が打っているということ)

〇シュートを打った選手の平均3P%
ネッツ 34.9%(1位)
バックス 35.0%(2位)

見事にワンツーフィニッシュです。つまり、この両チームは
インサイドを強く守って3Pは打たせる
という構図ではあるけれど、誰にでも3Pを打たせているのではなく、しっかりと狙いがあり

3Pが決まらない選手に打たせるディフェンス

ということになります。実はこれ、ウォリアーズの得意技だったのですが、この2シーズン続けてネッツが1位、バックスが2位になっており、アトキンソン&ブーデンフォルツァーが仕掛けた罠が成功していることを示しています。

〇被3Pアテンプト
ネッツ 34.6本(19位)
バックス 38.6本(30位)

そのうえで多くの3Pを打たれているのも特徴です。傾向的には
ネッツ「ターゲットを絞って打たせる」
バックス「フリーで打たせまくっているけど特定のシューターは抑えている」
という形です。柔軟な対応をするアトキンソンと強固な1つの戦術を作るブーデンフォルツァーらしさが溢れています。

◎バックスの場合

インサイドを強力に守るバックスは、ヘルプの意識が高く、いや、むしろ「高すぎる」ので、ちょっと工夫すればアウトサイドは簡単にフリーになれます。特にピック&ポップに関しては守り気がないレベルです。ただし、この「ピック&ポップを守る気がない」には1つの戦略があり、

ハンドラーを優先して守る
=ビッグマン(スクリナー)に打たせる

という構図が出来ています。3Pを打つビッグマンが普通になったとはいえ、彼らの多くは「ドフリーで35%」くらいの数字であり、ハンドラーに打たせるよりもマシともいえます。

このためvsバックスにおける3Pアテンプト上位には、通常のシューターではない選手が並んでいます。

〇3Pアテンプト(vsバックス)
【15本】
ジェイレン・ジャクソンJr
【12本】
トーリアン・プリンス
エリック・ゴードン 
【11本】
アーロン・べインズ
ブラッドリー・ビール 
ケンバ・ウォーカー 
【10本】
マーカス・スマート
ダニーロ・ガリナリ
マリック・ビーズリー

ビールやケンバはいるものの、他はハンドラーとしてではなく、シューターとして打つ傾向が強い選手なので、フリーにしてしまうわけです。さすがに上位すべてにスクリナータイプが並ぶことはありませんが、ビッグマンに簡単に打たれます。

15本を打ったJJJは43点を奪ったのですが、グリズリーズはピック&ロールを多用するチームではなく、単純にJJJは空いてしまった感じ。「PFが空く」のはバックスあるあるで、インサイドカバーを考えるヤニスが離してしまいます。
ただし、ヤニスの超人的能力は強引にカバーしていますが、カバー仕切れなかった場合はこうなるってことでした。JJJがヤニスを恐れずに決めた。

バックスが負けた試合では、
エンビード・ホーフォード・トバイアスで3P11/20
ポルジンギス 4/8
べインズ&サリッチ 7/15

などがあり、ビッグマンの3P次第では勝てることがわかります。なお、バックスに勝った他のチームは3P外して勝っていることが多いです。攻略は3Pが全てではないよ。

〇3PのDIFF
ブレッドソー △4.3
ヤニス △4.0
ミドルトン 3.0
ブルック 2.8
マシューズ 0.5

一方でバックスのスターターを見ると選手によってばらつきがあります。個人のディフェンス力もありますが、ミドルトンとブルックにはインサイドカバーを意識させ、ブレッドソーはチェイス役に選ばれることが多いです。マシューズは中間ですが役割はブレッドソー以上のエースキラーです。

抑えておきたいハンドラーやシューターはブレッドソーで潰しに行くので、チームとして3Pを多く打たれているけど、確率の低い選手に打たせることに成功しています。

なお、この中でヤニスだけは超特殊で、間に合わないようなポジションにいても間に合ってしまうからシューター泣かせです。もしもバックスを3Pで攻略したい場合は、ヤニスにはインサイドに張り付いてもらう方法を考えましょう。

バックスはパスアウト3Pを打たせてくれる
しかし特定のシューターは止めに来る

こんな結果として「3Pを打たれまくるけど、確率の低い選手に打たせている」構図が出来上がります。これをどうやって攻略するかは、各チームのロスター構成によってかわってくるでしょう。

シクサーズなんかは「エンビードの3Pを信じるか」が戦略の分かれ目です。管理人は信じない派ですが、ロースコアに持ち込むならそれもアリです。ベン・シモンズ問題が再燃するだろうな。

◎ネッツの場合

同じようなディフェンス戦略をとっているネッツとバックスですが、中身は全く違います。それは被3Pアテンプトをプルアップとキャッチ&シュートにわけるとはっきりしてきます。

〇被3Pアテンプト
【キャッチ&シュート】
バックス 27.4本
ネッツ  22.9本

【プルアップ】
バックス 10.6本
ネッツ  11.3本

バックスはキャッチ&シュートを打たせる
ネッツはプルアップを打たせる

こんな構図が浮かび上がってきます。バックスはビッグマンに3Pを打たせることに特徴がありましたが、ネッツはプルアップ3Pに対する守り方が特徴になっています。守り方っていうか「打たせる」ってことだけど。なので確率も比べてみましょう。

〇被3P%
【キャッチ&シュート】
リーグ平均37.0%
バックス 36.7%
ネッツ  36.4%

【プルアップ】
リーグ平均33.9%
バックス 32.9%
ネッツ  32.6%

そもそもプルアップの方が確率悪いんだから、プルアップを打たせてしまえ!

みたいなデータ主義がネッツにはあり、その上で確率も落としています。もとい「確率の悪い選手にプルアップ3Pを打たせて」います。ただし、もちろんこれには限界があるし、そもそもプルアップで「誰に打たせるか」を誘導することは難しいです。

今シーズン、ネッツ相手に最も多くのプルアップ3Pを打ったのがリラード。60点を奪われています。止めようがありませんでした。

他にもドンチッチに3P5/8を決められ31点を奪われました。同じようにハンドラーにプルアップ3Pを決められて負けた事になります。しかし、リラードとドンチッチには大きな差があります。

〇プルアップ3P
リラード 32.1%
ドンチッチ 40.1%

今回の主題は「3Pを打たせるネッツ」であり、「3Pの確率を落とせていない(DIFFは悪い)けど、3P%が低い選手に打たせている」なので、ネッツ的な観点では

リラードに打たせたのは間違い
ドンチッチに打たせたのは正解

というのがアトキンソン流の守り方です。ドンチッチには予定外に決められてしまっただけ。共に大量得点を許しましたが、ネッツはvsリラードとvsドンチッチで違う守り方をしており、判断力の高い2人にディフェンスの状況に応じて適切なプレーチョイスで攻略されてしまっただけです。

守り方の違いはピック&ロールに表れています。同時にリラードとドンチッチが攻略した方法も考えましょう。

①リラードにはショーディフェンス+オーバーでチェイスして3Pを打たせない
→シール+逆を行くドライブで攻略

②ドンチッチにはショーディフェンスなし+アンダーでチェイス
→ハイピックからスピードに乗ったドライブで攻略

こんなことをされてしまいました。文字ではわかりにくく、仕方がないので動画を作ったよ。ところがアップロードしたら編集にずれ、テロップが消えてた・・・まぁいいや。なんとなくわかるでしょ。そんでもってPGの「判断力」の重要さもわかります。

アトキンソン・ネッツが「相手によってディフェンスを変える」ことで戦っていたことは重要で、1つの強固な戦術を構築してくるブーデンフォルツァーとの違いを明確にしてくれています。

昨シーズンはPFだらけのチームでスモールラインナップを有効利用しましたが、今シーズンはPFがいなかったのでスイッチ戦術が取りにくかった一面があります。また相手によって変えていくのはカイリーが・・・

アレンとジョーダンのスターター論争もありましたが、基本的にアレンはどっちも対応できる選手なのに対して、ジョーダンはショーディフェンスとそこからのローテが下手な選手なので、使いにくかったのも事実です。「相手に応じた対応」が出来ない選手が増えてしまった。

ネッツが「何を狙ったディフェンスか」はアレンのポジショニングをみると割とわかりやすいです。ただ年々アレンも固定化された役割が増えてきているのでルーキー時代の方が面白かったなー、なんて思ったりもします。ポストムーブとかしてたよね。

ちなみにこんなネッツのディフェンスはダニエルがまとめてくれています。初めからこれを見ればOKなんですが、リラードとドンチッチの凄さも伝えたかった。

なお、今回はグラント・ウィリアムスの時と違って、ネッツ1位、バックス2位から紐解く方法を考えていたら、ネッツの解説をされていました。次回はさようならピストンズだけどウッドの動画がアップされていた。似たところを狙いすぎだろ。

◎弱点を持つ守り方

3P時代にインサイドを強固にしたバックスのディフェンスはヤニスという超特殊なモンスターによって構築されている側面が大きく出ています。そこには弱点が存在するので、どうやって攻略するのかが注目されます。

いわゆる「プレーオフに弱い」という戦い方になっていて、スカウティングによって攻略法が明確で、慣れと共に攻略される可能性があります。
だけどチームにそんな都合の良い選手はいるとは限りません。レナードやジェレミ・グラントがいれば出来るけど・・・みたいな。それでいてバックスはオフェンスが強烈なので「3P決められてもオフェンスで上回れるからOK」という図式なわけです。

一方でネッツの方はシーズン中から相手によって戦い方を変えるので「プレーオフに強い」戦い方です。選手は戦略的に戦う事を学んでいくわけです。
だけど自チームに戦術レベルが足りない選手もいるし、リラード&ドンチッチのように相手の方が優れた判断力を持っていると破壊されてしまいます。こうなるとどうやっても勝てません。だからデュラントに頼ろうぜ。

結局は選手の質と量に左右されるわけです。中断期間を経てヤニスが元気になったバックスは、3Pという弱点をヤニスが強引に埋めてくる可能性が高い。

バックスをどうやって攻略するのかは、攻守にヤニスをどうするのかにかかっているのでした。

プレーオフではスーパーエースが戦術を破壊するか
フリーにされた選手が予定外に決めまくるか

なんて要素も必要です。中断期間はエースがフル回転する充電期間になりました。それに加えて「予定外に決める」だけのトレーニングを積んでいて選手がいるかも注目です。

あぁちなみに「アトキンソンはニックスに向いていない」という理由も今回に含まれています。戦術レベルについていけそうにないロスター構成しているので。ピンソン?あいつは判断力ないよ。

3Pを“打たせる”ネッツとバックス” への6件のフィードバック

  1. いつもブログ拝見させてもらってます。
    この所の某コーチとの話題被りは笑ってしまいました‪w

    ピストンズはブルースブラウン始め、要所に面白そうな若手が複数いるので楽しみなのですが、期待外れに終わるだろうなと思ってしまう自分も…

    次回も楽しみに待ってます!

    1. 3回分くらい記事を書き溜めている最近ですが、アップしない間に同じ話題になるときついですね。
      何を話題にするか宣言しておこうかな。

  2. 3Pを守らなきゃ!で崩壊したってのはホントにそうかもしれませんね。
    GSWは何よりそのゴール下の確率、HOUはミドルの徹底排除が3P思想より先にきてるのだと思います。
    5年でどんどん煮詰まってきてるこの流れですが、各チームが3Pとゴール下の効率性を落とさせる事に注力してる中POに関してはミドルレンジゲームが復権するんじゃないかなぁ~なんて。
    GSW王朝が一旦終わり、昨シーズンにカワイがMJを思い起こさせた流れが今年はどうなるのか楽しみです。

    1. バックスはミドルトンにミドルレンジ打たせまくっていますから、オフェンスでは変革の必要性を感じているんでしょうね。
      あとバックスのディフェンス相手にはミドルを決められるかは勝負にもなります。インサイドに収縮するチームなので、意外とミドルレンジにもディフェンダーが立っていて、打ちにくかったりしそうです。

  3. お疲れ様です。
    とてもわかりやすかったです。毎度のことながら、要点をわかりやすく伝える管理人さんには感心しています。
    ネッツのプルアップ3Pの話で思い出したのは、カリーらが台頭し始めのころに現地の解説陣がこぞってプルアップはバットショットと言っていたことでした。
    当時は、確率悪いしそうだよなーと思って聞いてましたが、数年たった今、戦術的にプルアップ3Pを打つ選手も多数出てきて、NBAのスピード感はすごいなと思います。
    昔と違ってネッツの場合はプルアップ3Pを打たれる相手を考慮するというところがキモかと思いますが、昔の常識に回帰することもあるのかなと思いました。

    余談ですが、解説陣の話でもう一つ思い出したのが、GSW台頭のときにトランジションの3Pも酷評してました。レイアップにいくべきじゃないか!と。
    これに関しては、個人的には今でもレイアップに行けるときはいくべきだと思うんですが、やはり3Pを狙うべきなんですかね?
    もちろんトランジションの状況にもよるとは思いますが。

    1. 速攻はレイアップの方が良いのは事実ですが、ディフェンダーがいた時にでも強引に行くのはアメリカらしさですね。

      ・カリーは強引にレイアップよりも3P打った方が効率が良い
      ・トランジション3Pはワイドオープン
      こんな事情からカリー特性なんだと思っています。だから試合の中では「あれっ?」みたいなシーンもありますね。ここで3Pの意味はあるのかっていう。

      基本ラインはディフェンダーがいて打てない可能性があるくらいなら3P打ってトランジションを繰り返したいゲームプランもあるので、総合的にはOKなんでしょう。今年の様に選手の質が落ちたら非効率なプレーなのは確かです。

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