泣きっ面にレナード
ラプターズは素晴らしい。本当に素晴らしい。いくら優勝したチームとはいえ、ファイナルMVPとシューターがいなくなったチームが何の問題もなく好成績をあげているのだから素晴らしい。
そして前日にはレイカーズを破りましたが、さらにラウリーとイバカまで欠場している始末。苦しい状況の中でダニー・グリーンと会った翌日にカワイ・レナードとの再会。泣きっ面にレナード。
チャンピオンリングを運んできてくれたことでラプターズファンはレナードの事を恨んでいないでしょうが、その理由の1つには現在のチーム状態が良好であり、オフェンス面はともかくディフェンスではアヌノビーが代役を務めてくれていることが大きそうです。
ところが開始早々にレナードの指がアヌノビーの目をクリティカルヒット。涙を流し痛がるアヌノビー。泣きっ面にレナード。苦しい戦力状況のラプターズはアヌノビーまでいなくなります。泣きっ面のニック・ナース。
◉ノー・ノー・レナード
ダニー、レナードだけでなく、ラウリー、イバカがケガで更にアヌノビーまで負傷退場したラプターズ。ところが1Qはクリッパーズを僅か15点に抑えます。一体何が起こったのか?
アヌノビーと交代で登場したのはランディ・ホリス・ジェファーソン。有意義な補強と思いきやプレータイムがないガードも守れるPFが突然の出番を貰ったのは何故か。それはラプターズのゲームプランに関係していました。
RHJが担当するのはレナード。カバー&ローテがしっかりしているラプターズではオフボールのディフェンスは、スペースを埋めに行くのが通常ですが、RHJはレナードとの距離を空け過ぎず、3Pラインの1m外まで追いかけました。
チームディフェンスが出来ずに怒られていたRHJですが、キラーディフェンダー役ならば問題ないわけです。アヌノビーよりも顕著な守り方をしていたことが、明確なミッションを与えられて登場したことがわかります。
何でも出来るレナードですが、その最大の強みはフィジカルコンタクトの強さ。それが同じようにコンタクトに強いRHJによって特徴を出しきれなかった感じです。このレナードが止まるとクリッパーズは一気に停滞しました。
実際、クリッパーズのスターターはレナードを除くとべバリー、シャメットとプレーメイク力が高い選手ではありません。試合開始直後こそトランジションから得点しましたが、レナードを封じておけば、あとは自慢のカバー&ローテで防ぎきることに成功しました。
〇クリッパーズのスターター
オフェンス 103.7
ディフェンス 94.7
レーティングの悪さは織り込み済みだったと思われるニック・ナースの戦略があたってリードを奪ったラプターズでした。ただし、ルーはFG3/4です。プレーメイカー増やされるとタジタジ。
なおシアカムがFG1/5とクリッパーズは持ち味を発揮しました。ラプターズの控えセンターのボウチャーがまさかの3P連発で23-15とリードしたに過ぎなかったことは忘れてはいけません。
◉悪夢のベンチコンビ
2Qも23点だったラプターズですが、あっさりとプラン崩壊して36点を奪われました。クリッパーズの嫌らしさであるディフェンスチームからのオフェンス志向への切り替え。そう、得意技がさく裂します。
〇クリッパーズのフリースロー 28.1本(2位)
1Qはたったの1本しかフリースローが打てなかったクリッパーズ。RHJがブロックしてインサイドにいれさせず、ガソルとシアカムのコンビがノーファールでリムプロテクトしていきました。
しかしクリッパーズのオフェンスチームといえばルー&ハレルの悪夢のベンチコンビ。ルーはFG1/4と決まらないものの、ドライブしてファールを貰って6本のフリースローを打てば、シュートを外してもハレルが拾って押し込みます。それぞれが8点ずつ奪いました。
ルーのスピードとシュート力は止めにくいものの、そこだけに焦点を絞れば、そこまで止めきれないものではありません。ところが、ハレルが動き回ってかき回してしまうから、ディフェンスがルーに注目しきれません。しかもパスを出してくるルーなので、どうにも後手後手。
なお、レナードは3本のフリースローこそ決めるものの、得点はそれのみ。ラプターズの狙いは継続して成功していました。ただし、レナードも4アシストと自分が止められたが故にパスを振ってルー、ハレル、ハレルでした。
〇ルー&ハレル
プレータイム 252分(チーム1位)
オフェンス 113.2
ディフェンス 107.2
クリッパーズで一番長い時間コートにいるコンビがベンチから出てくる悪夢のルー&ハレル。そして明らかにオフェンス力不足ながら高いディフェンス力を発揮していたスターターに比べると、守れてはいるものの基本的にはオフェンスで差をつけていくのがルー&ハレルのお時間です。
ラプターズが展開したディフェンス戦略にアンサーしたクリッパーズのオフェンス戦略。36点中22点がベンチメンバーだった悪夢のクリッパーズベンチでした。
まぁあと単純にラプターズはベンチメンバーが弱い。そりゃあスターターが2人と6thマンが抜けたら当然です。せめて頑張ろうRHJ。頑張ろうっていってもオフェンスは元々ね。
ちなみに残り3分でラプターズが4点リード。そこからシャメット、ズバッツ、ズバッツ、べバリー、べバリーでした。ルー&ハレルじゃないっていうのがミソであり、その間はラプターズを2点に抑えたので本当はディフェンスで奪ったリードでした。
◉レナードを得たRHJ
3Qは再びクリッパーズを22点に抑えたラプターズ。それはバックファイアーでレナードからボールを奪えば、レナードからシャメットへのパスに触ってターンオーバーを促し、レナードのFGをまたも1/3に抑えたRHJ。
3つのターンオーバーを犯したレナード。RHJの見事なキラーディフェンダーぶりは、ラプターズを観てこなかったクリッパーズファンからすると当然のようにチームの中核に見えたはず。
しかし、これまでシーズン通算で19分しかプレータイムを得られなかったRHJ。レナードという“消すべき相手”を手に入れたことで、この試合だけで29分のプレータイムを手に入れました。水を得た魚。レナードを得たRHJ。
さすがに1Qの内容が頭にあったこと、シャメットがファールトラブルになったことでルー&ハレルの登場が早くなったことで、1Qほどの惨状にはならなかったクリッパーズ。すぐにルー中心のプレーメイクでレナードのミスはありつつも、それなりに取り返しました。
しかし、3Qはターンオーバーからの失点が11もあったことでどうしても守り切れなかったクリッパーズ。ちゃんと守れているのだけど、ミスから失点しているからね。それはまぁ致し方ないか。
そして残り1分でクリッパーズ1点リードからの攻防。ラプターズのゾーンディフェンスに苦しみ始めたクリッパーズはハレルのオフェンスファール、ボール運びで不注意なターンオーバーとチャンスを潰すと、マット・トーマスの3P、ドライブミドルで5点リードにしたラプターズでした。
オフェンスで役に立たないようなRHJだったけど、ターンオーバーからの得点を生み出したのだから大いなるオフェンス面でのプラス。だけど、点差を生み出したのはシュート力にのみ期待されたマット・トーマスでしたとさ。
〇マット・トーマス
FG70.6%
3P66.7%
17本しかアテンプトがないとはいえ、今シーズンの成績は笑えてくるぜ!
◉戦略と戦略
4Qに何が起きたのか。極めてシンプル。誰が考えても納得。
〇4QのFG
シアカム 1/6
ヴァンブリード 1/7
要するに疲れたのです。凡ミスするヴァンフリード。この試合45分半も出ました。後半は一度もベンチに座らず。またもキレを失ったヴァンフリード。延々とコートに立ち続けるわけですが、ロードマネジメント大丈夫なのかね?
より深刻だったのがシアカム。こちらは数字に表れないリバウンドでのボックスアウトなどが出来ない状況に。そしてそこを狙ってきたようなドッグ・リバース
〇クリッパーズの4Q
ハレル 12分
ジャマイカル 12分
ハークレス 12分
レナード 9.5分
いやいや、このラインナップおかしいだろ。必殺ビッグ・スモール・ラインナップを発動したクリッパーズ。それまでスピードと高さで暴れまわっていたシアカムに対抗していく4人を並べてしまったのでした。
〇レナード、ハレル、ジャマイカル、ハークレス
オフェンス 106.8
ディフェンス 92.0
+14.8のレーティングを記録していたディフェンスラインナップは本日も4Qで力を発揮し、疲労困憊のヴァンフリード&シアカムに率いられるラプターズを僅か10点に抑え込みました。
主軸がどうにもならないことで周囲も何もできなかった(なんせ今シーズンはそもそも何もさせてもらっていない)ことでFG16.7%を記録。あまりにも外すからカウンターでレナードも得点できたクリッパーズが、接戦なのだけど自慢のディフェンス力で危なげなく勝利を掴んだような試合になりました。
〇本日のレナード
12点
FG2/11
11リバウンド
9アシスト
9ターンオーバー
ほぼ完ぺきだったレナード対策を施したラプターズ。その戦略性とケガ人がいてもカバーできてしまう高い戦術遂行能力は驚愕しました。やばいね。チームの中心が2人移籍して、3人ケガしているのに、戦略実行能力が半端じゃない。
そんな対戦相手を読みきったラプターズの戦略に対して、自分たちのもつ豊富な戦力を多彩な形で生かした戦略で勝利したクリッパーズ。ディフェンスチーム、オフェンスチーム、そしてビッグスモールラインナップによるスーパーディフェンス+ルーという組み合わせ。
まだポール・ジョージがいないんだぜ。どんだけ選手がいるんだよ。しかもディフェンスの良いウイングだらけ。RHJはPGも守るPFだけど、ハークレスなんかPG専用ウイングディフェンダーだからね。意味わからん。
名前出てこなかったけどパトリック・パターソンもいるんだぜ! 誰も求めていないか?
ということで、シーズンの1試合ではあるけれど、ケガ人が戻ってきた中で、なんならファイナルで観たいくらいの面白き対戦カードでした。クリッパーズの良さ、ラプターズの良さそれぞれをしっかりと事前学習して7戦シリーズをみてみたいのです。
何というかLACは横綱相撲感が凄いです
色々試しながらそれでいてまだ奥の手があるような
やっぱり厚みが他とは違いますね
あともしお時間があれば昨今話題のロードマネージメントについてのご意見聞かせて下さい
ロードマネジメントは運動量が増えた事で、体重の重い選手には厳しくなり、それが進むと筋肉量の少ない選手が増えてきて、ケガのリスクが高まった感じですかね。
その意味では致し方ないのだと思います。ただ、ロードマネジメントするなら日程緩和の意義が減り、シーズンが長いことによる違うリスクも!
前回のサンズ・ウルブズの記事でも感じた『オフェンスとディフェンスの繋がり』をまた意識して読めた記事でした。ほんとに重要。チームの人全員にこの記事読んで欲しい
ラプターズは本当よくやってますよね。頭が下がる思いとはこの事。
ロースコアーゲーム(両チーム90点台のゲームや、更には110点いかないゲームスコアーを見たらロースコアーゲームっだったんだなぁーって思います。慣れって怖い。 昔はたまーーーに80点代後半で決着とかNBAでもあったのは気のせいかなぁーと思っちゃいます)
ハイスコアーチームを押さえ込めるディフェンス強化型チームの対等はまた新しい時代なんでしょーーね。『得点』への対抗策が『更なる得点』だったのが、『守りきれるディフェンス力』に以降してる気がします。(だからラプターズが去年、優勝したじゃん)
レイカーズもディフェンス強化型でいけば未来ある気がするけども。ロケッツはそれでも『更に更に得点』路線でいって欲しいなぁー。ダントーニはそれがダントーニであり、ハーデンはレナードじゃないし。
かつてと違うのがハイスコア=オフェンスの戦いとは限らなくなったことですね。ペースが早いだけっていう。クリッパーズは特にそんな感じ。
タフショットを決める選手が優秀だったのが、タフショットを打たない選手が優秀になってきたので、非常に尺度が難しくなってきました。
今季のラプターズはシアカム、アヌノビーの成長を観れればいいかなぁと思っていましたがかなり善戦していて嬉しい限り。チャンピオンになった経験が活きているのか。上記2名に加えてヴァンブリートもプレイオフですっかり化けましたし、今季は再建モードもありえたと思うんですがこの好調が続いたらウジリはトレードデッドラインまでに何か動くんだろうかって思います。
サンズもそうですが若手が活躍してるチームを見るのは気持ちがいいです。キングスはどこへ消えた?
ガソルをどうするのか? でしたが、好調ならばこのままってのもアリですから、ウジリの選択は注目ですね。
もう完全に育成型チームとなり、ニック・ナースの戦術をこなせるかどうかが選手に求められてきました。戦術をこなせればヴァンフリートになれるわけで。
ラプターズのそんな台所事情でもPT0分のスタンリー……
相当な戦術出来ない星人なんでしょうね。ペリカンズも放出したわけだし。
一気にボストン対マブス、ラプターズ2試合、キングス対ブレイザーズと観ましたが、ラプターズはほんとに総合力高いですねぇ。
RHJ、ブーシェ、トーマスとすんなり戦力になる辺りに組織力を感じました。
そしてクリッパーズの層の厚さは異常ですね。ハークレスとかいなくなったブレイザーズはキングス戦でボロボロでしたよ。余ってるなら貸してやれと。笑
ラプターズはパウエルはどうなんですかね?一人馴染んで無さそうに見えて、独立したムーブでいいアクセントとも見えるし。ボストンでいうテイタムなんですがそんなに華麗なムーブでは無いですが。アヌノビー、パウエル辺りにまだのびしろを感じるのが恐ろしいです。
パウエルってラプターズで浮いてると思うのですが、それでも重用されてますから、これはこれでOKなんでしょうね。不思議ですが、でもパウエル役をやれるベンチメンバーは他にいないので。