サンズとネッツにみるミスと得点

題名は正しくありません。なんて表現するのが正しいのか。

好調サンズがネッツを圧倒して勝利しました。慣れてきたブッカーがインサイドパターンを起動すると、そこからパスアウトの3Pで次々と決めていくサンズの勢いがネッツを圧倒。特にウーブレイがノーミスで決め続けたのでした。なお、前半しか見ていません。

前半で68点を奪ったサンズ。その3Pは驚異の10/22と・・・うん、まぁ、良く決めたけど「驚異」は言い過ぎだよね。ってのが今回の主題だったりします。

振り返ると1週間ほど前にカイリーとネッツについて書きましたが、コメントには「ディフェンスが問題だ」みたいなことが書かれていたのですが、実際には当時のディフェンスレーティングは108くらいなので、今どきで言えばそんなに悪くありません。むしろオフェンスが107だったから、効率よく得点できていないことが問題。

まぁでもさ。110と107って100回のオフェンスで3点しか変わらないのだから、試合中にそれでもって「守れる」「守れない」を判断することは無理だよね。そして記事には書かなかったけど、ネッツの問題は

決められ始めると止まらない

ってことにありました。その理由はいろいろとありますが、細かく書きだしたらキリがないので、主たる問題である「スローダウンできない」ところにスポットを当てました。本当はテンポを落としてディフェンス優先でイージーシュートを許さない形を作って凌ぐことが大切であり、その結果としてディフェンスで耐えるものです。

一方のサンズは昨シーズンまでこの点に大きな課題がありました。タフショットを決めまくるブッカーということもあって、勢いに乗ったら止められないサンズでしたが、同時に

「勢いに乗らなかったらボッコボコにされる」

のがパターンで、それ故に成績が向上するわけがないと思っていたわけです。ルビオの加入で一番大きかったのが、スペインみたいにコントロールしてのオフェンスが増えた事。ボッコボコの時間が殆どなくなりました。今のところは。

そんな両チームの現象が上手くあらわされた前半になったのでした。ということで良い題名が思いつかなかった今回ですが、ゲームレポートではなく両チームのテーマについて触れていく試合となります。

ネッツは「守れない」のか?
サンズは何が改善したのか?

◉一方的な展開とPG

この試合の前半は大きく3ブロックに分かれます。

1Q残り4分35秒 33-13

サンズが6本の3Pを決めて開始7分半で20点差をつけました。この時点で勝負あり!と言いたくなる内容で、あまりのサンズの勢いに飲み込まれたネッツです。

1Q終了 37-30
2Q残り6分 46-44

ところが20点のリードが4分半で7点になると、2Q半分のところではほぼ互角になります。勢いよく飛び出したサンズがあっさりと追いつかれたわけです。昨シーズンまでのサンズの匂いがプンプンしてきます。

2Q終了時 68-50

ところがそこからの6分間で再び18点差とします。またも勢いに乗ったサンズ。どうなってんだって話です。ここのブロックはいろいろな要素が混じっていたので面白いのですが、後々触れてみましょう。

〇両PGの得失点差
ルビオ  +25
カイリー △31

まず興味を引くのがこの数字です。これは別にルビオがめちゃくちゃ良くってカイリーが悪かったという個人の活躍度を示しているわけではありません。ネッツはカイリーが出ている時間にボッコボコにされ、サンズはルビオがいない時間にボッコボコにされたということです。

まずルビオについてはセカンドブロックでのプレータイムが大きく影響しています。

1Q終了 37-30
サンズからみると4-17となった4分35秒の間はルビオはプレーしていません。なお、ネッツはディンウィディー中心に反撃しています。

2Q残り6分 46-44

サンズから見ると9-14となった2Qの半分はルビオはほぼ全部に出ています。ここで比較すると実は4分半で4点、6分で9点とサンズの得点ペースは同じくらいです。その一方でネッツは17点→14点と少しペースが落ちました。

1分半のプレータイムの違いながら、サンズのオフェンス機会はほぼ同じで12回(11本のFG+1ターンオーバー)と14回(13本のFG+1ターンオーバー)でした。若干のスローダウンをしたことになったサンズです。

どちらの時間もオフェンスが殆ど決まらなかったのですが、その分ネッツの得点を減らしていたのが2Qになります。スローダウンというほどには落としていませんが、自分たちの流れではないときにガマンしていた形です。

特に2Qになるとハリーバックが目立ちました。オフェンスリバウンドもゼロとなっており、リスクマネジメントしていたサンズです。

1Q残り4分35秒 33-13
一方で試合開始から7分半で20点差にされたネッツでしたが、17回のオフェンス(10FG+4FT+5ターンオーバー)があり、その間にサンズは33点も奪ったことになります。さすがに17回で33点は取りすぎです。

この17回という数字は決して早くはありません。「ネッツがスローダウンしなくてラッシュされた」とは言い難い数字であり、ターンオーバーが5つあったことが問題です。なお3つがジャレット・アレン。

となると、「ネッツは守れない」という提示は正しくなります。実際、ヘルプに行ったアレンによって空いたべインズが3P連発しており、ディフェンスは見事に崩壊していました。

そして5つのターンオーバーのうち3つがルビオ絡みでした。ネッツのスクリーン対策だったのか、4つのイリーガルスクリーンを生み出したサンズのディフェンスだったのです。これって「ディフェンスが良い」と言えるのかどうか不明ですが、ネッツのオフェンスが狙われていたことが20点ビハインドに繋がったことも否めません。

https://stats.nba.com/events/?flag=1&CFID=&CFPARAMS=&PlayerID=0&TeamID=1610612751&GameID=0021900137&ContextMeasure=TOV&Season=2019-20&SeasonType=Regular%20Season&RangeType=2&StartPeriod=1&EndPeriod=10&StartRange=0&EndRange=4523&section=game&sct=plot

2Q終了時 68-50

そして最後のブロックですが、6分間でネッツは13回のオフェンス機会があり、6点しか奪えませんでした。問題は決まらなかったシュートよりも4つも発生したターンオーバーでした。またもアレンがイリーガルスクリーンをしていますが、そのほかの3つはディフェンスが良かったこと以上に、「なんでそのプレーを選んだの?」という疑問が残るミスでもありました。ムサのはウーブレイを誉めるけどクルッツならやらないプレーだったな。

https://stats.nba.com/events/?flag=1&CFID=&CFPARAMS=&PlayerID=0&TeamID=1610612751&GameID=0021900137&ContextMeasure=TOV&Season=2019-20&SeasonType=Regular%20Season&RangeType=2&StartPeriod=1&EndPeriod=10&StartRange=10808&EndRange=14420&section=game&sct=plot

基本的にカイリーは関係ない案件なのですが、ディアンジェロからカイリーにPGが変わったことは、オフェンスパターンそのものが大きく変化することに繋がりました。その意味でネッツのオフェンスには、まだまだ欠点が目立つことが多いということを示すターンオーバーの雨あられがこの試合の敗戦を決定づけています。

ということで次に見ていくのはターンオーバーの変化です。

◉失点を生み出すミス

個人的には「ターンオーバー=悪」とは思わないのですが、ネッツの場合は単純に数が多すぎました。ある程度は許容できるのですが、ある程度を超えたよね。そしてこの傾向はシーズン全体にいえることでした。

〇ネッツのターンオーバー
昨シーズン 15.1(26位)
今シーズン 18.3(28位)

〇ターンオーバーからの失点
昨シーズン 17.3(24位)
今シーズン 21.1(27位)

昨シーズンも十分に悪いのですが、輪をかけて悪くなっている今シーズンです。チームオフェンスの変化はターンオーバーの増加につながっており、その結果として失点も増やすことになりました。ディフェンスの悪さよりもオフェンスの悪さを指摘したくなるわけです。

このターンオーバーを逆の数字でみてみます。つまり対戦相手のターンーバー数の変化です。

〇被ターンオーバー
昨シーズン 13.5
今シーズン 13.

誤差程度です。これをもってディフェンスが悪くなったとは言い難いものがあります。ところがほぼ変わらない数字なのにそこからの得点には大きな変化があります。

〇ターンオーバーからの得点
昨シーズン 15.4
今シーズン 17.7

スティールが増えたこともあって、相手のミスからの得点を増やしました。実は今のネッツはこれが勝ちパターンになっていて、ターンオーバーからの得点/失点の差が勝敗に大きく関与しています。

〇ターンオーバーからの得点/失点
勝利 23.5/20.8
敗北 13.0/21.4

サンズ戦が10-33だったので敗北時に大きな差があることはあまり参考にしないでください。ただ、傾向としてはミスからの得点が勝敗に大きく関与しており、単純なオフェンス力ではない部分が重要になっています。

これらの数字はサンズの方が顕著に表れています。 ちなみに今回は2チームの数字が出てくるので背景色でわかるようにしています。サンズカラーの黄色です。赤文字にしたら読めなかった。

〇ターンオーバーからの得点/失点
勝利 27.2/14.8
敗北 13.0/21.

こうしてサンズが勝利を重ねている理由が見えてきました。ごくごく単純な話としてミスからの得点を大きく減らし、一方でディフェンスからの得点を増やしました。これをここまでの9試合全て並べると

勝利 35-6  キングス
敗北 14-23 ナゲッツ
勝利 20-20 クリッパーズ
敗北 12-18 ジャズ
勝利 29-20 ウォリアーズ
勝利 24-14 グリズリーズ
勝利 23-19 シクサーズ
敗北 12-22 ヒート
勝利 32-10 ネッツ

クリッパーズ戦が同点であることを除けば完璧なる因果関係が生じているミスからの得点/失点です。爆発力はもちながらも「取ったら取られ返す」のがお家芸みたいだったサンズですが、好調の裏には「取られずに取る」ような戦い方が出来るようになったことが上げられます。

〇ターンオーバー数
昨シーズン 15.6
今シーズン 15.6

だからといってターンオーバーそのものが減ったわけでもありません。行くところ、引くところがハッキリとしたことで勝率を向上させているのでした。そして、それが明確な対比となったネッツ戦のサンズでした。

ところで、ブッカーがインサイドに入り込むことが増えたわけですが、そこへのパスはそこそこミスになっています。しかし、ブッカーのみがインサイドという形はハリーバックがしやすいメリットもあります。ミスからの失点が減る。

また「ミカルよりもウーブレイ」な感じになった理由としても、その荒い気性と不安定なプレーとは違ってウーブレイはハードワークするタイプで、攻守にトランジションを頑張る選手です。その能力をポジティブに活かしているともいえます。一方で堅実なミカルはこの勝ち方では重要性が低くなるとも。

◉ネッツの宿題

さて、もうお腹いっぱいだし、管理人も眠いのですが、まだサードブロックの話が残っています。

ネッツは守れないというよりオフェンスが機能しない時間帯にミスが多いのが問題

正しくは少し違いますが、スローダウンしてリスクマネジメント出来ていないという意味では似たようなものです。でもオフェンス側の問題点を指摘したのに「守れないことが問題」なんてコメントを食らった件について、違う視点で触れましょう。記事を書く前に感じていたことは苦しい時間にオフェンスミスが多くなることと同時に

「3Pを連発で食らう」傾向が強い

ことでした。それはこのサンズ戦でも明確に出ています。それが「守れない」という印象に繋がっていると思われますが、連続で食らう最大の理由はトランジションでフリーになることなので、オフェンスの終わり方が・・・と言いたくなるわけです。

2Q残り6分間 22-6

そして問題のサードブロックですが、5本の3Pを打たれ3本を決められました。そのうち4本にカイリーが絡んでおり、特にタイラー・ジョンソンに3本を打たれています。いずれもシンプルなスクリーンを利用してギャップを生じさせての3Pでした。

https://stats.nba.com/events/?flag=3&CFID=&CFPARAMS=&PlayerID=0&TeamID=1610612756&GameID=0021900137&ContextMeasure=FG3A&Season=2019-20&SeasonType=Regular%20Season&RangeType=2&StartPeriod=1&EndPeriod=10&StartRange=10838&EndRange=14451&section=game&sct=plot

ルビオに対してブッカーがスクリーンに行き、マッチアップ変更でブッカーvsカイリーにするなど、モンティ・ウィリアムスは明確にカイリーを狙っていきました。その中でも特に対人以外のところで3Pを打たれたことになります。

3Pを連発されるネッツディフェンス

代表的なのでカイリーについて取り上げたものの、実はこれまで守れていたジャレット・アレンが暴走したり、予想通りジョーダンがついていかなかったり。あるいはそこのディフェンス力を高く買われていたクルッツの出番が減り、そもそも機動力重視のPFがいなくなり・・・といくつかの変化が出ています。

そして実は数字的にはカイリーは守れていて、ところがこれまで守れていたジョー・ハリスやラベート、ディンウィディの数字が悪化して・・・とディフェンス側もシステムが崩れています。

個人的にはカイリー、プリンスについてもローテを理解しているのか気になっているところで、そこが遅れているから次の選手が苦労しているようにもみえます。

いずれにしても、ディフェンス面はネッツの宿題であり、時間と共に変化する成績と連携を観てから継続して気になったら取り上げてみましょう。宿題、宿題。

サンズが圧勝した試合でしたが、中身を見るとお互いに一方的な時間帯が交互に訪れました。しかし、悪い時間を長引かせるとともに、良い時間に一気に得点したことでサンズは勝利を掴んだのです。これを出来るようになったのがサンズが変化した最大の要因であり、世界一のPGであるリッキー・ルビオと新HCモンティ・ウィリアムスがもたらした勝利への道筋だったのでした。

まぁそしてディアンジェロ・ネッツ贔屓の管理人としては、そういうゲームマネジメントと戦略性で勝利を掴んでいたようなアトキンソンが苦労しているのが新鮮でもあるのでした。

ヘイワードについて書く予定だったのに、この記事書くのに3時間以上かかってしまった。時短ブログにしていたのに失敗したぜ。

サンズとネッツにみるミスと得点” への6件のフィードバック

  1. 管理さんの素晴らしい分析と労力には、素直に感嘆するしかありません。大変お疲れ様です。

    ネッツ戦は、ダイジェストだけしか見ませんでしたが、全体的に3Pが好調で勝ってたのかなぁーと。(ルビオとキャメロン)
    最近のルビオは良くシュート決めてくれる😁

    サンズファンの中では、カシミンスキーの不調(こいつのせいでセカンドユニットの火力不足)が心配ですけど。管理さんの話を見てると、ディフェンスではタンーンオーバーの時の戻りとかで、それなりに働いてくれてるのかなぁ?

    セカンドユニットの火力不足は、果たしてエイトン復活で解消されるのか…カーターの魔法は解けたのか…😢、キャメロンは八村より優秀だ!(サンズにとってね!)と自分は信じてます(笑)

    1. キャメロンが悪いとか、八村贔屓ではなく、PFの方が良かった感じは否めない。PJワシントンとかさ。
      そんな不安を拭いたいようなキャメロンの得点ラッシュでした。
      でも取っても取られ返されるのがサンズだったのに!

  2. ダイジェストしか見てないんですがネッツのオフェンスは連動性がえらく少なくなってる印象受けます。大体カイリーが個人技で決めてるっていう…。上手くいくまでまだまだ時間かかりそう。がんばれアトキンソン。
    それにしてもBOS好調でネッツがこの状況だとカイリーは変なレッテル貼られそうだなって思います。

    1. それぞれケンバ、ディアンジェロと実力あるPGと交換されただけに、いやでもカイリーの問題は際立ちます。しかも、どっちにいてもコートにいるときにはチームは優位だというのがね。
      個人の対比ではなく、どんなPGが必要かという比較対象としては重要なのだと思います。でも、ケンバとディアンジェロが全く違うタイプのPGだけに、やっぱりカイリーが問題!と戻ってきそうな。

  3. 言語化するのが難しいのですが、カイリーのオフェンスは、意識的にアシストすると考えてる時はパスが出て、それ以外はパスがでないので、他のオフボールムーブを殺し、停滞していると感じます。
    また、リードが作れそうな中盤に個人でプレーし、タフショットとなり、結果接戦を作ってしまっているなーと。

    1. パス出した後に動かないので、スペース生まれないんですよね。バトラー なんかもそんな感じで、かなり好みが分かれますし、チームシステムを左右しちゃいます

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