ファイナルの可能性がある対戦カード
管理人お気に入りのリトアニアがフランスに敗れたことで、なんとなくアメリカ、スペイン、オーストラリア、そして大本命セルビアとフランスがファイナル候補かな。アルゼンチン、ポーランドは厳しい気がする。残りがブラジル、チェコ、ギリシャのどれか。さすがMVPの神通力は可能性を残しています。
今大会、全てを圧倒してきたのがセルビア。NBAプレイヤーを多く抱えるだけでなく、彼らをベンチから起用することで試合を通した強さを維持しています。そうね、「日本代表のスターターは誰にすべき」みたいな意見があるけど、スターターが誰かっていうのはあまり関係ない時代。アルバルクとそれ以外でツープラトンってのもあり。
対してスペインは苦戦しまくっています。ファーストラウンドから負けそうになるけど、ギリギリで勝利をもぎ取り、前の試合はベリネリとガリナリのイタリア相手に、大接戦を演じるとエース・ガソルが4Q残り1分で初得点を決めて勝ち切りました。
パスを回してゲームを作るけど、異常な決定力で「欲しい時に得点をとる」ヨキッチに対して、スペインの中核のルビオとガソルはゲームは作れるけど、点が取れなかったりね。4試合でヨキッチのFG成功率が80%を超えています。異常です。
◉エース・ボグダノビッチ
試合は「点を奪う」ボグダノビッチと「ゲームを作る」ルビオの違いを示すかのように、セルビアが直接的にリングにアタックしてリードする立ち上がり。ボグダノビッチはPG役をクビになったのか、ボールを運ぶこともしません。ちなみにルビオもイタリア戦ではリュリに任せるシーンが増えていたので、そういうものなのかもしれません。
ヨキッチが登場すると、さらに加速するボグダノビッチ。面白いね。ゲームを作れる選手の登場がスコアラーを輝かせるわけで、分業制なんだけど、ゲーム作るのはガードじゃないっていう。
1Q9点のボグダノビッチに引っ張られ、20点をとったセルビア。それに対してスペインはボールを回して良い形は作れるけど、打ち切れないシーンが多く、3本の3P全てをガソルが外したこともあって、13点止まり。ガソルが悪いんじゃなくて「ここでこのパスが出たら打つはず」という所がちょっと曖昧だった。大会通じて曖昧なんだけどね。
◉レアル・マドリーのPG
もう1人のNBAセンターにして兄弟NBAのウィリー・エルナンゴメスがダンク&ワン、さらにリュリによるパスから3Pと速攻が飛び出て追いつくスペイン。
ルビオよりも良いプレーをし続けているリュリー。31歳だから国内ではずっとルビオと比較されてきたんだろうね。所属チームがレアル・マドリーなので、アルゼンチンのカンパッソと同じ。この2人がPGしているチームって、NBAよりもレベルの高いゲームメイクしているんだろうな。
トランジションでリュリが自ら3Pで逆転に成功するスペイン。ちょっとずつ連携が合わなくなっているセルビアとは対照的な感じになっていきます。
ちなみにセルビアも鮮やかなボールムーブはあるけど、割とミスも多い。どうしてもヨキッチの求める動きがナナメ上みたいで、合わせが逆になってしまうことがある。しかもパスを繋いでゴール下になっても、これまでの相手よりも最後の一歩を塞ぎに来るスペインでリズムが崩れていくセルビア
ヨキッチがリバウンドからゴール下を押し込んだところでスペインのHCがしつように抗議してテクニカル。何が起きたのかはよくわかんない。ファールアピールなのか、何なのか。なお、ラプターズのACです。ラプターズのACとしてよりもスペインのHCとして有名な珍しいタイプのイタリア人。
セルビアのHCを調べてみたら、ちょっとだけブレイザーズに在籍。メインはバルサとレアルでプレーし、バルサ時代はユーロMVPの旧ユーゴスラビアの伝説的選手らしい。コーチとしては今年のユーロチャンピオンズリーグチャンピオンとか。凄まじい経歴だな。
さて、次第にスペインペースになっていきます。主にオフェンスの成功率が下がったことでカウンターを食らうセルビア。つまり今大会ここまで無双していたオフェンスが、スペインによって阻まれることに。
見事なディフェンスを見せるスペインは単に止めるのではなく、カバーリングをしてからのローテでパッシングゲームを防いでおり、パッシングのセルビアが困ってしまうのもよくわかる。素晴らしい裏パスで抜けても、最後にエルナンゴメス弟(フアンチョ)がヘルプブロックに飛んでくるし。
ルビオとリュリを並べるとハーフコートもバリエーション豊かになったスペインは、そのルビオが連続3Pも決めて完全に流れを手にした2Qになりました。13点しか取れなかった1Qから劇的に改善し45点と逆襲に大成功。
基本はカウンターからでしたが、レベルの高いPGが並ぶと段違いでした。まぁでも、その中で空けられたような形になったルビオがしっかりと決めきってこそ。ゲームも作れ、点も取れ。コンボガードしろっていうことだね。
困ったセルビアもラスト1分はボグダノビッチ頼み。シュートを落としてもリバウンドで自らフォローし連続得点のボグダノビッチ。なんとか37点まで盛り上げたのですが、最後もリュリに3Pを決められて前半が終わったのでした。
◉デンバーが恋しいヨキッチ
スペインのディフェンスが成功した1つの理由がインサイドへの収縮。それをするとパスアウトしてくるのがセルビアの厄介さなのですが、ちょっと本日は気持ちよく出来ていません。ゴール下で囲まれるヨキッチ。
vsルディになったのでポストアップを仕掛けようとするも、ノーコンタクトでコントロールできず、回り込まれてのスティール&アンスポファールで止めることに。後半になってもセルビアはオフェンスペースを掴めません。どう攻略するのか決まらないわけだ。
さらにルビオがパスアウトを読んでスティール。オフェンスでもヨキッチ相手になったところでドライブからのフェイダウェイジャンパーで得点し、開始2分で14点差にします。困ったセルビア。
何が困るって囲まれたヨキッチが逆サイドコーナーにキックアウトしてドフリーの3Pにしても、まさかのエアボール。ただでさえ個人技アタックに多くのフォローで困るのに、アウトサイドも決まらないとなるとスペインの収縮を崩すことが出来ません。
スペインが徹底しているのはヨキッチがプレーしてきたら2人で囲むこと。ガソルとフアンチョに囲まれて奪われるとレフリーにクレームしてテクニカル。レフリーにクレームしまくって退場のヨキッチ。まだ後半開始3分20秒。
ヨキッチがかわいそうなのも事実で、ハンドチェックされまくっています。でも、それがコールされないのって国際試合あるある。ハードに守っているだけであって、NBAが細かいだけともいう。
頭に血が上るヨキッチあるあるのテクニカルで窮地に立たされるセルビア。アメリカ慣れしすぎているヨキッチ。どうやらマレーとハリスが欲しいのではなく、デンバーに早く帰りたい様子です。あっちの方がまだ自分を守ってくれる。
52-39でヨキッチがいなくなっちゃよセルビア。
◉スターがいなくても頑張ろう
「ヨキッチを潰す」「ヨキッチからのパッシングを封じる」
そんなディフェンスがヨキッチ不在になって機能しなくなる。なんてのは良くある話ですが、それよりもイージーパターンなので読み切れてしまうスペイン。パスアウトをスティールする回数が多すぎです。ヨキッチには複数で行くから周囲のローテは簡単ではないけど、いなくなったからローテも楽勝って感じに。
ヨキッチがいなくなった2分後には20点差に。ビエリッツァ登場のセルビア。なお、マルヤノビッチは出番がない。あんな弱点使えるか、と判断されているのかどうか。黙ってしまうセルビアファンとは逆に、あまりにも一方的になり始めたからか、セルビアを応援しているような会場。
それでもパッシングが通じないならば個人技で。ビエリッツァとボグダノビッチがほぼ個人で崩します。後センターの13番がファイトしまくるのでインサイドにコースが出来る。ビッグマンは自分で決めるだけが仕事じゃないよね。
またスペインのメンバーが落ちたのに対して、ビエリッツァがいることでベンチメンバー対決で優位に立ち始めたセルビア。トータルゲームにして、ボグダノビッチを引っ張って何とか対抗させています。
もう終わったかと思った試合でしたが、残り4分から反撃に転じたセルビア。57-46と11点ビハインドまで持ち直したのでした。
それにしてもヨキッチのプレーが悪いわけじゃないのに、ヨキッチいるとプレーが読まれてしまうってのは意外な状況でした。やっぱり個人での強引さも大事って事ですかねテイタムさん。
◉試合巧者
スペインにはスペインの問題があって、ちょっと得点が止まり始めます。リュリが読まれ始めたのか、タフショットが増えてしまった。そしてセルビアのセンター13番がガソルを上回り始めます。ファイター。この13番は中国でプレーしているんだってさ。
スペインはリードを奪っているのでスローダウンを好みます。無理そうなら行かない。だからより崩せない。でも崩せないのに変なフォームで3Pを決めてしまうリュリ。アシストもレアル・マドリーのルディ。ナバーロいないけどリュリいるじゃん。
一方でトランジションを仕掛けたいセルビア。それをファールで止めるスペイン。ただ、次第にボグダノビッチのペースになっていきます。個人で得点を狙うならばコートにいる選手でNo1なので、トランジションの中でチャンスを作っていく。気が付いたら点差は一けたに。
ちょっとスローダウンするのが早すぎたようなスペインとみるか、個人技主体になってリズムを取り戻したセルビアと観るか。ちょっと難しいけど、オフェンスの構築に苦しむスペインはルビオとリュリをコートに残し続けます。
冒頭にも触れましたが、2人がコートにいることはダブルPGで組み立てるポイントが増えることもありますが、時にリュリがメインPGになるとルビオがウイングから仕掛けることになります。で、この方が個人技でウイングからのドライブが出てくるので単発な得点が生み出されやすくなります。
ルビオは有能なPGですが、そんなに1on1は強くありません。だけど、ウイングに回っているとスペイン流のボールムーブでパスを貰った段階でディフェンスが崩れていれば、そのギャップを使えるし、崩れていなければもう一回パスで振っていきます。ウイングからのドライブで見事なリバースレイアップのルビオ。
これはちょっと昨日のアメリカに似ていて、トップにいるPGケンバよりもウイングにホワイトとスマートが回ってミッチェルが仕掛けたほうが、発展性あるオフェンスになっていく感じ。そのうち流行するのかもね。
そんなチームオフェンスの中で個人技で崩していくスペインに対して、ガチの個人技でステップバック3Pのボグダノビッチ。こっちの方がNBAっぽいし、やっぱりルビオよりも確率が高いわ(ノッている時は)
でもさ、もう1つの違いは崩してからのシュートになるスペインの方がオフェンスリバウンドが落ちてくる可能性が高いこと。明らかに決まっていないシュートなのに、ボールが落ちてくるところにいるのはスペインの選手。そして動けていないセルビアの選手達。
ボグダノビッチの驚異的な活躍があるし、全員でしっかりとファイトして守っているのに、どうしても点差が縮まらないセルビア。
結局はろくなオフェンスをしていないのに、スローダウンで見事にやりきったスペイン。本当に見事。試合巧者としか言いようのない戦い方でした。この大会で苦戦続きなのに全勝している理由をみせつけるような。
〇FG
ボグダノビッチ 26点 9/14
ルビオ 19点 5/13
リュリ 9点 3/12
どうみても効率悪かったのはスペインのPG陣。スペインはチームでFG42%なんだよね。でもさ、81点もとっちゃった。25本のFGのうち21にアシストがついたこともあって、スローダウンしてもしつこく回して、最後はキャッチ&シュートにして、それが外れてもケガはしない。
〇スティール
スペイン 11
セルビア 7
〇ブロック
スペイン 5
セルビア 2
そして勝負を分けたポイントはここ。ディフェンスで読み切ったことと、それをかわされても最後にブロックに飛んでくるローテディフェンス。ここが機能してことで、魅惑のセルビアオフェンスを単なるボグダノビッチの個人技アタックに変えてしまいました。お見事。
ということで優勝候補の本命が破れてしまいました。その内容がスペインというベテランチームによる見事なまでのスカウティングと実行力。国際舞台でのレベルが違うぜ!といわんばかり。
退場してしまったヨキッチといい、頂点に行くにはまだまだ道のりが長いセルビアでした。
これでトーナメントの初戦はアルゼンチンvsセルビアに。貧乏くじをひかされたかアルゼンチン。そしてそれに勝つとアメリカとの準決勝の可能性が高くなります。とはいえ、アメリカはその前にフランスかオーストラリアだから、どっちも簡単ではない相手。
スペインはポーランドと。準決勝はオーストラリアかフランスってことになるので、この勝利でファイナル進出の可能性は結構あがったよね。