ブログトンの50-40-90

2巡目指名の男は偉大な記録を達成する

もうさすがにPGに飽きたので、次は何を書こうかなーとテーマだけをピックアップしているメモを見たら、結局はPGに触れることになってしまいました。それくらいインパクトのある数字を残したマルコム・ブログトン。

〇18-19シーズン
FG 50.5%
3P 42.6%
FT 92.8%

50-40-90を突破したのは、もちろんブログトンただ1人。近年でこれを達成したのは

15-16 カリー
14-15 メイヤーズ・レナード(笑)
12-13 デュラント
08-09 スティーブ・ナッシュ
07-08 ホセ・カルデロン
      スティーブ・ナッシュ
06-07 ノビツキー
05-06 スティーブ・ナッシュ

レナードとカルデロン以外はそうそうたる顔ぶれ。なお、カルデロンは良いけどレナードはプレータイムが短くアテンプトも5本未満なので(笑)になっています。

それにしてもナッシュは凄いよね。これでラン&ガンスタイルを引っ張り、大量のアシストを記録し、2年連続のMVPも獲得。正確なシューティングにパス能力が加わったカナダの英雄。そういえばカナダ代表のメンバーはやけにしょぼくなっていたね。

カリーの存在に騙されそうになりますが、50-40で難しいのは「3Pはどんなに決めても40%」ということで、FG50%を達成するためには3Pを打ちまくっているとムリなのです。なお、カリーは達成時に45%も3Pを決めていた。

ナッシュやノビツキーは3Pを打ちますが、当時は今に比べたら少なく、ノビツキーなんて17.2本のFGアテンプトのうち2.2本しか3Pを打っていません。それだけセレクションすれば確率だった上がるよね。

ブログトンは現代NBAで、しかも3P打ちまくりNo2のバックスに所属しながら見事にFG50%を達成しました。3シーズンの2Pと3Pの推移を見ていくと

〇ルーキーシーズンからのブログトン
2P 52.6% → 60.3% → 54.5%
3P 41.1% → 38.2% → 42.6%

なんだ昨シーズンの方が良かったんじゃないか、ってくらいの2Pが高確率でした。ガードで2P60%オーバーは素晴らしいよね。

そこから3Pの確率を向上させ、そして2Pアテンプトを増やしたことでブログトンはレジェンドたちに並ぶ記録を達成しました。今回はそんな内容をどうやって掘り下げれば良いのか悩みながらのスタートです。

◉PGなのかブログトン

その前にPGなのでアシスト数など、本来的な数字を見てみましょう。ブレッドソーがPGだったり、ヤニスがPGだったり、いろんな疑惑がありますが、まぁそこらへんは置いといて。

〇ブログトンの18-19
アシスト 3.2
ターンオーバー 1.4
パス数 36.6

ということでほぼPGじゃねーだろというブログトンの数字。何よりも注目すべきはパスの少なさ=ボールタッチの少なさ。かなりプレーの質が変化してしまったブログトンは、SGな空気感です。なお、だからといってブレッドソーかっていうとそれも違うのがバックスの不思議であり、ヤニスの特殊性。

さらにヤニスとブレッドソーどころかミドルトンよりもアシストは少なかったので、PGのスターターとして迎え入れるペイサーズファンは、この記事読んで期待と不安が入り混じるだろうね。

〇ペイサーズのパス数
コリソン 50.1
ジョセフ 41.4

でも調べてみるとペイサーズのPGもパス数が少ないのね。サボニスを経由しまくってはPGには戻ってこなかったりするのか。

ブログトンは完全なるゲームメイカータイプのPGで、「ディフェンスが狙っている事」とは違うプレーをチョイスするクレバーなタイプです。しかし、これは別に予期せぬトリッキーなプレーをするわけではなく、本当にただ単に「読んでいなかった平凡なプレー」をするだけ。

そして正直パスも上手くない。パスが上手いっていうのは「タイミングをずらす」(ハーデン)とか「パスアングルを作る」(トレ・ヤング)とか「視野が広い」(ウエストブルック)みたいな能力になりますが、ブログトンには何もない。ただディフェンスからすると「読んでいなかった」ところに普通のパスが出てくるだけ。

いくら素晴らしい判断力があってもNBAの世界では、これがないとアシスト数は伸びないよね。ただただ正確にプレーしてくるPGというのがブログトン。

〇ドライブ数 10.1
〇ドライブからのアシスト数 0.8

ヤニス12.5、ブレッドソー11.1なので、チームの中でドライブは割と多い方のブログトン。しかし、めっぽうアシストが少ないのも特徴です。ドライブして引き付けてパスというプレーが出来ていません。

が、これが出来ていないのか、それとも「ドライブする時点でカバーがいないところに行く」のかってのがブログトン。バックスがストレッチ5だったこともあって、シュートまで辿り着く前提でドライブしていました。

〇ピック&ロール ハンドラー
ポゼッション 2.7回

そしてリーグで3番目に少なかったバックスのピック&ロールだったので、PGなのに1試合で2.7回しかピックを利用しませんでした。なお決定率も低い。

つまりブログトンは普通のPG像を想像すると、かなり外れている存在です。試合を見ればリーグで最高クラスに賢いPGであることは一目瞭然ですが、その割にはPGらしい数字がない。数字的にはSGです。でもPGです。超PGです。

最近のこのブログの言葉を使うと、イメージ的には「リズムを整える」系のPGと思われがちなブログトンですが、実際にはそんなにテンポよくパスを回すこともないし、パッシングの連続をするほどボールを貰いなおしもしません。

かといってボールを長くキープしてアシストパスを出すようなタイプでもなく、淡々とディフェンスが少ないスペース側の味方にパスを出していくくらいです。

ザ・ゲームメイカーだけど、それは激しいアクションは何もなく、リズムを生み出すわけでもなく、決定的なアシストをするわけでもない。ただただ正確に、狙うべきプレーが何かを判断しているようなPGです。

そして本日の題名は50-40-90。ゲームメイクできるPGだけど、正確にシュートを決めることが出来るから、こんな形のゲームメイクでも重要視されているのです。あとヤニスの存在。

◉3Pシューター

とても40%決める選手とは思えないフォームのブログトン。1回溜めて打つ、みたいな打ち方は「きれいなフォームじゃないから決まらない」というよりも「その打ち方だとブロックされそう」に見えてきます。

〇被ブロック数 60

1試合に1回くらいブロックされている計算になるブログトン。ブロックされすぎ。しかし、3Pをブロックされたのは2本のみ。1本はショットクロックがなくなってムリヤリ打ったらブリュワーにブロックされたもの。もう1本もショットクロックがなくなる中で1on1をセルティックスのウィリアムスにブロックされました。どちらも1on1の中って事です。

〇ディフェンスとの距離別アテンプト数と確率
2フィート以内 0本
4フィート以内 0本
6フィート以内 0.7本 31%
6フィート以上 3.1本 45.7%

6フィート以内がオープンショット、6フィート以上がワイドオープンです。つまりブログトンはブロックされた2本を除いて、オープンな状況でしか3Pを打っていません。驚異的に打っていないガードの選手でしょうね。しかも打ちまくるバックスなのに。

高い3P能力を示したブログトンですが、その内訳はただ単に

「ワイドオープンを46%決めた」

というだけで、実際問題これだけなら凄くもなんともないわけです。そりゃあ決めるだろっていう。しかも高確率で決めているゾーンが左45°が多くて、あとはコーナー。得意なポイントから決めているだけともいえます。

得意なポジションからワイドオープンで打って決めている。ただそれだけ。すごくもなんともないブログトンの3P能力。だけど、やっぱりここでも凄いのは

オープンでしか打たない判断力
オープンになっているポジショニング

であり、普通のプレーを普通にしているだけなのに、ワイドオープンで打ててしまっているということ。決してカリーみたいに動き回るわけでもないし、スクリーンをかけてもらっているわけでもない。正しいポジショニングとディフェンスが読んでいない選択肢を選んでいるだけ。

なお、ペイサーズはバックスと打って変って3Pを打たないチームです。

〇3Pアテンプト
バックス 38.2本(2位)
ペイサーズ 25.4本(29位)

ということで、あまり意味がなさそうなブログトンのシュート能力に思えますが、実はそうでもないのです。

〇3P成功率
バックス 35.3%(15位)
ペイサーズ 37.4%(5位)

ペイサーズはそもそもチームとしてオープンな3Pしか選びません。だから確率も高くなる傾向が。ダレン・コリソンが超高確率で決めていた理由もここにあるので、その後釜にはぴったりなブログトン。オラディポ次第ではあるけど、強気に自分で攻めていくPGではなく、正しい判断で普通のプレーをするPGを求めていました。

〇3Pアテンプトと確率
キャッチ&シュート 2.8本 47.5%
プルアップ 0.9本 26.7%

ついでいえば、プルアップも決まりません。本当に特別な能力はないんだブログトン。しっかりとパスが回ってきて初めて意味があるし、そもそも自分でプルアップをガンガン打つわけではない。ドライブは決めまくるけどさ。

◉2Pを伸ばしたもの

シュートの半分以上がレイアップのブログトン。ほぼゴール下まで飛び込んで流れたまま打ち切ります。おそらく止まったらブロックされるくらいの身体能力ってのもあります。

そういえばハイライトをまだ貼っていなかったので、ここらで確認してみましょう。

普通のドライブですけどね。まぁ見事なものです。唯一の特徴としては、PGとしてはフィジカル負けしないというか、バランスを崩さずに飛び込めるので、フィニッシュ時に無理なシュートが少なくなっています。逆に苦しい時は打たないからでもありますが。なお、前述のとおりブロックも食らいまくっています。

ブログトンの2Pは54.5%なので、まぁほどほどです。17-18シーズンは60%だったのでトーンダウンしています。3Pの確率が良くなったとはいえ、FG50%を達成するためには3Pばかり打っていたら無理でした。

確率そのものは落としても2Pを増やしたことが、大記録達成の要因になるわけです。ブーデンフォルツァーがやってきたことで、リーグで最もストレッチされたチームになり、ブログトンはレイアップで得点を増やすことに成功し、それが50-40-90の達成に貢献したことは言うまでもありません。

でも数字をみていると、意外な部分で得点を伸ばしていました。

〇速攻での得点 1.7 → 2.4
〇セカンドチャンスの得点 0.9 → 1.3

たかだか0.4~0.7に過ぎないわけですが、これがPGなのだから、特にセカンドチャンスの増加は面白いものがあります。ガードとしてはそれぞれリーグ31位と44位と、特筆すべき能力ではありませんが、普通だったブログトンの割には多めの数字です。

〇リバウンド
オフェンス 1.0
ディフェンス 3.5

変態ウエストブルックの存在と、それに続くベン・シモンズの登場で麻痺してしまっていますが、ブログトンは割とリバウンドの強いPGです。ディフェンスでのカバーリング能力の高さが光っているし、オフェンスリバウンドも増やしてきました。普通だと思いきやブログトンは

万能タイプのPG

だったりもします。そもそも2巡目ルーキーながらポジションを奪ったのも、ジェイソン・キッドのわかりにくい戦術をただ黙々と、淡々とこなしている賢さと、キッドの全てを要求する戦術についていけるだけのオールマイティーさがあったからです。PGにリバウンドも取らせるってのがキッドっぽいよね。ロンゾはタイミングが悪かった。

50-40-90を達成できた理由のひとつがリバウンド。抜群の身体能力なんて持っていないけど、全てを標準レベルでこなせる中でプラスアルファをもたらしてくれました。イージーな2Pを増やすこともまた大記録達成には重要な事だったのです。

◉ペイサーズのリーダーになれるのか

50-40-90という極めて特殊なスタッツを記録した、極めて普通な選手のブログトン。しかし、普通だけど普通じゃない選手でもあるのです。

忘れてはいけないのはフリースローが90%を超えている事。ここだけは普通では出来ません。カリーをも超える確率で沈めていったブログトンの「変わらないプレー」というのは大きな特徴です。

特別なプレーをしないブログトンは見方を変えると「同じプレーを同じように繰り返せる」ような強さがあり、フリースローの時もブレない姿勢で淡々と決め続けています。まぁ同じポーカーフェイスでもベン・シモンズは・・・ね。それがシュートの正確性に現れるってわけじゃありませんが、同じ軌道で打っている感じがブログトンらしい。

ペイサーズのエースはオラディポ。ただ、チーム的にはオラディポをエースに据えつつも、長い目で見ればマイルズ・ターナーを中核に置いた形でチームを作っています。高い能力と正確なシュートをもつターナーに足りないのは「同じプレーを同じように繰り返せる」強さ。

つまりはブログトンと真逆なわけで、あれだけシュート力があるなら、相手をKOするまで3Pを打てばよいのに、何故か途中でやめてしまいがち。

ペイサーズはPGとビッグマンというチームの屋台骨を支えるポジションに、真逆のメンタリティをもっていそうな選手を加えたわけです。明るく陽気なターナーとポーカーフェイスのブログトン。ともにワガママなプレーをする選手ではないだけに、相性も良さそう。

現在のペイサーズのプレースタイルと合致していそうな50-40-90のブログトンの能力は、バックスよりもマークが厳しくなる中で発揮してもらう必要もあります。ヤニスがいない中で戦術的に優れたブログトンが本当に同じクオリティを発揮できるのか。

そしてペイサーズが求めているのは、そんなコート上での影響力以上にリーダーシップというロッカールームでの存在感。強力に引っ張っていく必要はなく、ただ2巡目からでも新人王をとったメンタリティとハードワーク、チームに尽くせる姿勢などなど。

普通な能力で普通のプレーをする特別なPG

ブログトンは来シーズンも50-40-90を達成できるのか。2年連続となればスティーブ・ナッシュ以来の大記録達成です。

ブログトンの50-40-90” への9件のフィードバック

  1. ブロングトンは僕的に、凄く優秀な『影選手』ですね。裏まわしとゆーかね。光があたり、『サーカスショット決めてこい』っ要求されたら違うとは思うんですが、これからそーゆーとこも成長するのかどーなのか。

    『優秀な影選手』とはいえ、50-40-90クラブ入りは立派。あっぱれ です

    静かなドノバン・ミッチェルタイプと勝手に思ってます。高倉健スタイル

    逆手逆脚レイアップうまいなー。僕も練習しよーっと。

    パス先を探さないのもいいでしょーね。突如、パス先があったらパスするくらいで。勉強なります。

    どーしてもマヌー大先生やナッシュのよーなボールさばきに目がいっちゃいますが、ブロングトン先輩を見習いたいです。

    あとバックスは2巡目で取れたブロングトンですが、キープ出来なかった事が吉と出るか凶と出るか… 生え抜きだったから、他を切ってもキープして欲しかったなぁー。ヤニス ミドルトン(生え抜きだっけ?) ブロングトン の3人でメインやって欲しかったのが本音です

    とはいえ、バードがいる渋いチームのペイサーズなので、ブロングトンが『影選手』のトップに更になるのか、楽しみっす

    1. ブログドンとは下交渉をしたうえでトレードしていると思うので、致し方なかったのでしょうね。ブレッドソー残留を選択して時点で想定されていた未来でしたが、ヤニスの影としては貴重な存在だったと思うので残念です。
      特別なプレーをしなくても、これだけの事が出来るっていうのはとても勉強になりますが、このレベルの判断力何て身につかないんですよね。

  2. ブログドンは数字で判断出来ないですよね。THE PGです。この間のヤングの時も名前が出ましたが、プレー振りはストックトンに通じる所があると思います。バックスのシステムによるムーブしてるから、スタッツや断片的に見るとそうは思えないかもしれませんが。ブログドンはバックスのスターターの中で一番判断力が良くて、相手の良いディフェンス等でオフェンスが停滞した時に、隙をついたドライブの回数が多いと思います。今期バックスでガードのバックアップを勤めたジョージ・ヒルは正に同タイプです。ブログドンとヒルはバックスのシステムの中では欠かすことの出来ないものでした。システムの根幹は当然ヤニスで、システムのミソはロペス、そしてシステムの柔軟性の隙を埋めるのがブログドンとヒル。彼らに求められるのは判断力。そう、昔沢山いたタイプのPGに求められていたものです。ヒルがバックスに来る前にキャブスで残した数字は50.40.85です。スターターとして。
    ブログドンもヒルもストックトンも決して高さも身体能力も高くない、そういう選手がこの数字を残すには判断能力の高さが求められると思います。これが出来る選手が多いチームは強いと思います。数字上は強い選手が多くても勝てないチームはこれが出来てない事が多い。若手チームは勿論ですが代表的なのはウルブス。長くなりましたけど言いたいのはブログドンは非常に良い選手だということです。チームのシステム通りに動いている時と自分の裁量で動いている時とのギャップが少なくスムーズ。だから結果的に効率性が高い。

    1. 丁度スパーズ時代のヒルをみていたのですが、トニー・パーカーの相棒としてSGしていました。今のPG達はひょっとするとSGスキルを身につけないと本当に良いプレーが出来ないのかもしれません。それは自分がメインじゃなくても活躍するスキルかな。

      戦術があって、それを徹底するバックスの中で、良い意味の裏切りが出来るブログドンだっただけに、ちょっとオフェンスが怪しいチームでどんな判断力を発揮するのか楽しみです。

      1. 確かにそうかもしれませんね。ただそこはチームメイト次第かなと。ブログドンやヒルはヤニスとプレーしてるから幸せになれた。イングルスのいるジャズにルビオいらねぇってなるのはルビオがSGの要素が無いからですかね。
        ボストンはテイタムとブラウンだからカイリーは幸せには慣れなかった。ウイングのバランサーは大事ですね。
        いにしえのブルズのピッペンの存在は見直されるべきかと。ヨキッチとやれるマレーは幸せ。ナゲッツのガードは皆SGっぽいですよね。
        10aしてもラスやハーデン、ウォールの抱える問題はその辺ですかね。

  3. ペイサーズがブログトンに加えて正統派PGのマコネルを取った理由もこの記事の中にありそうですね

    1. シュート打ち続けるメンタルがあれば、今でも勝てますが、そのメンタルがないので勝てる日がこない気がします。

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