反骨のルークとココスコフ

キングス最大の不安材料

プレーオフを逃したキングス。しかし、逃したという事は再整備へ他のチームよりも早くチャレンジできるという事。非常に素早かった動きは、HCをイェーガーからルーク・ウォルトンに変更するというものでした。マジかよっ!

コーリー・ジョセフ、アリーザ、デッドモンと各ポジションを補強していったキングスの選手補強は見事だったけど、果たしてHCの選択はどうなのか。レイカーズファンからの罵声が飛んできそうだ。罵声っていうか「キングスなんか敵じゃない」という嘲りか。

◉イェーガーとトランジション

躍進したとはいえイェーガーがクビになる理由はよくわかる。まずはそこから触れていきましょう。

〇試合のペース 103.9(3位)
〇速攻での得点 20.9(1位)

キングスを押し上げた最大の要因は、フォックスというリーグ最速のPGとヒールドというスプラッシュブラザーズに並ぶシューターの存在によるトランジションゲームの進展でした。

インサイドには走れるビッグマンのマービン・バグリーとジャイルズという若手コア達が躍動するスピーディーなゲーム展開で旋風を巻き起こしたと言えます。この4人を将来の中心にするなら正しい道って感じ。

しかし、バグリーとジャイルズがなかなかチャンスを貰えなかったのも周知の事実。チームが勝っていたのだからクレームにはならなかったけど、ドラフト2位ながら出遅れた感じのあるバグリーというのはチームの問題だったりします。

そもそもイェーガーはグリズリーズでスロー&スロー&スローダウンが好きなHCであり、困ったときにはザック・ランドルフでどうにかしていました。キングス1年目も同じでしたが、その戦術はキングスの現状とは真逆にあるもの。

同時にイェーガーはベテランを好み、なかなか若手に出番を渡そうとはしませんでした。これはキングス以上にグリズリーズで深刻な問題になっており、コンリー&ガソルを支えるメンバーが一向に若返らなかったし、育てられなかった。

〇イェーガーの試合のペース
17-18 95.5(30位)
16-17 95.4(24位)
15-16 93.9(27位)
14-15 92.8(28位)

選手の質の違いなどいろいろな問題があるにせよ、16年まで率いていたグリズリーズからフォックス1年目のキングスまでとにかくペースが遅かったイェーガースタイルは、何故か急激に変化してリーグでも速いテンポのチームに生まれ変わったわけです。さすがにこれは「心変わり」では片づけられない変化。

個人的にはこの変化を「フォックスとヒールドによる独断専行」だと捉えており、特にヒールドの存在は大きく、打ちまくってしまうシューターがリズムを変え、そこにビエリッツァの存在が加速させてくれました。

当初はベンチの予定だったヒールドは、ボグダノビッチのケガによってスターターになるとチームは結果を残し、イェーガー的には否定しにくくなったのだと考えています。まぁ別にヒールドを起用すること自体に躊躇いはないけど、終盤までヒールドを起用するのはあまり好きじゃなかった雰囲気。

ウォリアーズ戦の6点負けている残り18秒で3Pを決めたヒールドが怒られるというシーンは、そんなイェーガーとヒールドの本質的な問題点を示していた気がします。

相手のデュラントが仲裁に入るという奇妙なシーンは、怒られながらもヒールドがさらにもう1本の3Pを決めてキングスは追いつくチャンスを手にします。イグダラが2本のフリースローを外したことで、2点差のキングスのラストプレー。

ボールを持ったのはヒールド。明らかに3Pが打てるシーンでしたが、何故かドライブしてタフショットを打ってミスすることに。何やってんだヒールド。

しかしここにも問題が。タイムアウトのイェーガーは直前のヒールドの2つの3Pを否定し、2Pを打つように指示したとの話。直前の2つの指示無視プレーから続く「フリーなのに打たせない」という迷いを生み出しました。

基本的にこのシーンがキングスのすべてだったようなシーズン。なおプレーオフに出れなかったのは、毎回のようにウォリアーズに負けたってのも痛かったのでした。

いずれにしても試合のペースから積極的な3Pまで、ヒールドとイェーガーの根本的な考え方が合わなかったようなキングスでした。だから「ヒールドを取るか、イェーガーを取るか」みたいなオフの選択になったことは想像に難くないのでした。

◉ルークとトランジション

後任になったのはレイカーズで散々なシーズンを過ごしたルーク・ウォルトン。こちらも選手とうまくいかなかったことで有名ですが、だからといってイェーガーとキングスほどの戦術的乖離はありませんでした。

トランジションで力を発揮しそうなメンバーを揃え、社長にはショータイムの権化であるマジック・ジョンソンのチームは、HCと選手の目指すスタイルはトランジションゲームでした。 唯一レブロンという存在を除けば 。

〇試合のペース 103.6(4位)
〇速攻での得点 19.3(2位)

どちらもキングスに次ぐ順位であり、やっぱりトランジションが得意技だったレイカーズ。若手コアは細かいシステムでの連携には課題があったけど、オープンな状況では自分で得点するプレーを持っており、速攻にはレブロンに頼らない得点パターンが存在していました。

ウォリアーズのACだったルークが引き抜かれた理由はある種のレイカーズスタイルの復権だった面もあり「ガンガン行こうぜ!」な戦術そのものは狙ったとおりだったかもしれません。なお、戦術マニアなコービー時代のレイカーズスタイルとは違う。

その意味では、キングスがイェーガーの後任にルークを選んだことは理にかなっているようにも思えてきます。「速攻が好きでガンガン攻めていく選手達と、それを推進するHC」の組み合わせはイェーガー時代の問題点を解決してくれる(最適とは言わないまでも)解だったのです。

散々たるレイカーズ時代を過ごしながら、すぐに次のHC職が巡ってきたルークというのは、明確な狙いがあってのキングス側の選択だったのかもしれません。あと、おそらくキングスはHC未経験を雇うのが嫌だったのだと思います。ベテランも揃えて勝負したいのに「HCがルーキーで失敗とかシャレにならない」みたいな。

◉スタイル通りが正解なのか

しかし、話はそんな簡単ではありません。ていうか、そんな簡単ならばレイカーズはプレーオフに進んでいたはずです。

トランジションに適した選手を揃え、
トランジションが好きなHCを据え、
史上最高の選手とすら言われるレブロンを抱え、

そしてレイカーズは見事に失敗した。

ルークの「指導者としての実力不足」という点を無視したとしても(本当は最も重要なのだけど)結果に結びつかなかった戦術スタイルを評価することは出来ません。

一方で若い選手が中心ながらキングスはレイカーズを上回る成績を残したわけです。その理由を「フォックスがロンゾより優秀だから」みたいなことで片づけるわけにもいきません。だってレブロンがいるチームだぞ。

「トランジションが得意な選手×トランジションが得意なHC」を「トランジションが得意な選手×トランジションが嫌いなHC」が上回ったわけです。ミスマッチの方が良い結果を残したことは無視してはいけないわけです。

キングスの戦い方の中で重要なことは
「トランジションの時間にガンガン攻めてリードする」
という部分に加えて、
「ハーフコートオフェンスをしっかりと組み立ててガマンの時間帯がある
ということだったりします。

ここでは特にフォックスが中心となって周囲を使って打たせていく事と、必要な場面ではフォックス&ヒールドが3Pではないドライブを中心にしたプレーで切り崩していきました。エース達は何もトランジションだけで成功を収めたわけではないのです。

トランジションが得意なメンバーを揃え
トランジションを中心にリードを構築しながら
トランジションが嫌いなHCによってハーフコートを重要視される

キングスで起きていたのはこんな現象。コーリーステインに合わせるパターンなんかはイェーガーらしさ満点のハーフコートオフェンスにおけるガードとセンターの合わせでした。こういう基本的なコンビプレーが合ってのトランジションゲームだったともいえます。

選手の得意なスタイル × HCの得意なスタイル

トランジション × ハーフコート

相反するスタイルだったけど、その分両者が存在しているから上手くいった面もあったわけです。前述のヒールドとの問題だけでなく、バグリーやジャイルズがミスをするとベンチに下げられてしまうなど、若手の育成面において問題があったのも事実なので、肯定しかねるイェーガーですが、実は選手と合わないからこそ上手くいった部分が大きいと感じるのでした。

こうやって「気になった点」だけをピックアップして書くとキングスには大きな問題があったように読めてきますが、シーズン中のもめ事としてはレイカーズに比べれば遥かに少ないし、試合の中で起きている現象もブレブレの内容だったレイカーズに比べると、フォックス&ヒールドの積極性をしっかりと認めているキングスには一貫性はありました。

100%マッチしたわけではなかったけど、イェーガーだからこそ上手くいった部分も大きいわけです。

◉そしてココスコフがやってきた

イェーガーは確かに若手たちと合わないし、ルークのスタイルはキングスに合うだろう。しかし、だからといってチームは強くならない。

それがHC交代の第一印象。おそらくイェーガーは限界だったから交代することは否定しないけど、キングスとしては「上手くいっているトランジション」に手を加える必要はないわけで、ルークをHCにしたところで何も進化はしないわけです。リーグ1位の速攻にルークがプラスアルファを生み出せるとは誰も考えていません。

それよりもレイカーズでたびたび問題となった「ハーフコートの構築力不足」がキングスに降りかかる懸念の方が大きく、キングスの来シーズンは危ない気がしています。

そんな中で決まったのが、もう1人の「クビになったHC」であるココスコフのAC就任でした。サンズで失敗したようなココスコフですが、個人的にはあまりそういう捉え方をしていません。

〇試合のペース 101.2(12位)
〇速攻での得点 15.2(9位)

弱いながらもトランジション天国だったサンズは、もう少ししっかりとハーフコートの合わせを学ぶシーズンとなりました。11月と12月にはペースが100を切っていたのですが、結局のところ「サンズはサンズ」として耐え切れなくなって決壊しました。選手と合わなかったという意味ではイェーガーと同じかな。

シーズン前半はそれでも「ココスコフらしい」プレーが多く、エイトンを有効活用するためのスペーシングとポジショニング、そしてパスの狙い所がしっかりと定義されていました。

「ココスコフらしい」というと捉えにくいわけですが、それはほぼ「ジャズらしい」プレーです。まるっきりジャズのコピーみたいなプレーが多く、このままオフェンスが浸透すればサンズは変わるものだと思いましたが、途中から個人技任せがどんどん増えていったので、ココスコフ以外の力が働いたとしか思えないのでした。

このサンズの話は置いといて、大切なのは

ココスコフはハーフコートオフェンスを組み立てるAC

ということです。HCとしての能力で言えばチームをまとめられなかったのだから否定されるかもしれませんが、オフェンスシステムの構築については明確な理論を持っているコーチです。

同時にココスコフがいなくなって苦しくなったのがジャズのオフェンスだったので、ココスコフの存在(正確には「ACとしてのココスコフ」)は重要だったとも考えられます。ルビオの迷いとココスコフには関係があった気がするわけです。でもルビオが今更サンズにやってきた。

トランジション天国のサンズで失敗の烙印を押されながら、同じくトランジション天国のキングスにやってきたココスコフ。だからこそACとして「ハーフコートを組み立てる」ことが期待されるわけです。

◉反骨のルークとココスコフ

トランジションが好きなHC
   × 
ハーフコートを組み立てるAC

HCをルークにした時のキングスについては「終わったな」とすら思ったのですが、ここにハーフコート担当のACが加わったことで希望の光も見えてきました。

ジョセフ・アリーザという補強は、トランジションではなくハーフコート向きの補強であり、ルークが指導できるとは思えない「オフボールのポジショニング」を選手側からしっかりと補正していく動きでもありました。それはココスコフには助かる存在になりそうです。

チームの中核を担う若手たちに合いそうなHCと、その大きな弱点を埋めるためのベテラン陣とAC

ここまでの動き自体は論理的なキングスであり、GMディバッツとは思えない的確さがありました。苦しそうだったHC交代から徐々に前向きになれる補強が続いたわけで、当初からこの図を描いていたのでしょう。

ただし、そんなに上手くいくなら誰も苦労しないわけで、レイカーズでのAC分業が上手く機能していなかったと言われるルークなので、ACに戦術家タイプが座ったからといって上手く扱えるとも限りません。「限りません」っていうか、「思えません」。

また、結局のところルークにしろココスコフにしろ「試合中の采配」という部分では未知数というか、「全く結果を残せていない」事実があります。若くて走れるメンバーを揃えているわけですが、だからこそ「采配力」ってのは重要です。

走り勝てる相手なのか、それとも相手に合わせたユニット構成にする必要があるのか

試合ごとに違うであろう局面に、ベンチに座る期待できるベテラン達。でも主役は若手なので、的確な選手起用とモチベーション管理も求められます。そこには期待したくても期待できないしさ。

ルークとココスコフ

30しかないHCの席を手にしたものの、共に挫折した2人。それでもすぐに次の職を手にしたことで、何を反省し、何を変えていくのか。

反骨の2人が率いるヤング・キングス

プレーオフに手は届くのか?

反骨のルークとココスコフ” への3件のフィードバック

  1. アリーザはココスコフの下でプレーしていて、ルークとはレイカーズ時代同僚だったんで、選手とコーチ陣を繋ぐ役割が期待されてそう

  2. ココスコフの組んだオフェンスセット自体は結構面白いものが多く、サマーリーグやプレシーズンは楽しく見られたのですが、いざシーズンに入ると選手たちの迷いが見られて上手くいかずにブッカーのアイソだらけになったシーンがたくさんありました。若い選手たちがなかなか我慢できない感じではありましたが、ブリッジスにガン無視されてたり信頼を得られていない雰囲気でしたね。采配だけでなく若い選手とのコミュニケーションでちょっと不安を感じます。

  3. まぁ実際はレブロン離脱前はPO圏内だったレイカーズですが、その後の失速が大きかったと思います。
    「レブロンが居たのに」ではなくて「レブロンが居ない時に」駄目だったなぁという感じがしてましたね。
    あとイェーガーはハーフコートオフェンスでよい影響をもたらしたとは思っていません。彼はスローペースとトランジションへの取り組みかた以上にハンドラー至上主義が強いと思います。
    ボギーの重用、スリーガード、この辺りはそういった表れだったなと。
    トランジションへの変更に関してはZ-BOをシーズン初めから使わなかったという点、フェレル、メイソンというベンチガードのプレー振りが、ちゃんとトランジションという方向性に向いて一致していた点。
    ビエリツァを加えて重用していた事からも、トランジションオープンスリーオフェンスに移行する手筈だったことを伺わせます。

    全ては今年に向けての流れとして自然であり偶発性は感じられません。あくまでボギーの怪我からのヒールドだけがその点な訳ですが、じゃあボギーが居たらZ-BOを使ったのか?と考えるとそうでは無いし。
    ヒールドスターターに関してだけは偶発性を感じる余地は大いにあります。そしてそれによる勝率の影響は大きかったとも思います。
    しかしチーム全体のトランジション化に関しては偶発性よりも必然性の方が感じられました。少なくとも私には。
    ハンドラー至上主義は結局勝ちきるゲームコントロールをしたいし学ばせたいという思い。現代の主流なヒールドのスリー等はクラッチタイムではイェーガーには良くは感じられなかったのかと。その時間帯ではじっくり攻めてシュートセレクションを良くするという、ある種の古典的発想を善としたいたように思います。その部分での意識の解離現象が例のシーンかと。
    で私の考えでは今年鍵を握るのはフォックスだろうと思っています。
    キングスの唯一の成功体験はJWillからビビーへの交代。これで推し進められました。今シーズンの成績、スタッツ当時のキングス躍進初年度とそっくりです。それからビビーへの変更に繋がっていった訳ですが、当時を身をもって知ってるメンバーがフロントに沢山いますし、監督のルークもそれを見ています。
    まぁビビーのような素晴らしい勝負強さは期待しなくとも少なくとも彼の成長に掛かっているのかなと。ヒールドはよくも悪くも機械的に決められるシューター。パスの受け手。ボギーは遅すぎてタフショマンにしか慣れないのは明白。
    ルークとココスコフに関してはもうやってみてからしか解りません笑。
    良いとは決して思わないですが両方とも世間がいうより悪いとも思っていないのが個人的な現状の思いですね。

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