サマーリーグMVPクラーク

ブランドン・クラークとグリズリーズ

サマーリーグのMVPはグリズリーズのブランドン・クラーク。これまで誰もおススメしてくれなかったビッグマンが獲得しましたが、まぁサマーリーグは主力が休むのも日常茶飯事。その中で勝ち上がったチームから選ばれる感じなので、スターへの登竜門とかではありません。

クラーク自身も途中からチームに加わったわけでして、グリズリーズがチームとして勝ち取ったような賞だったりもします。渡邊雄太が出ていた時は観ていましたが、その後でグレイソン・アレンなんかも加わって良い戦力になっていました。

そんな事情もあってのクラークのMVPですが、渡邊雄太のチームメイトであり、なんだか近しい存在にも思えてきますし、八村がエースとして引っ張ったゴンザガのチームメイトだけに、「八村はもっとやれるかも」と期待もしたくなります。

セカンドチームに選ばれた八村とMVPのクラーク。そして渡邊とグリズリーズ。そんなことをざっくばらんに書いていきましょう。

◉クラークのハイライト

まずはハイライトを確認し、そのプレーの特徴を観てみましょう。でも、その前にドラフトコンバインの数字から身体的な特徴を捉えておきます。

最大の特徴はブロックでしたが、身長が6-7しかないクラークのウイングスパンは6-8・・・いや、身長通りじゃないか。ってことで、見た目は腕の長さを有効利用している様子ですが、決してそんなことはないようです。

なお、サイズ的には八村と同じくらい(八村はドラフトコンバインに参加していないから詳細不明)のため、インサイドのビッグマンとして八村も通用する気がしてきます。なお、クラークも八村も登録はSFです。

クラークのスタンディングジャンプは34インチで、コンバイン参加者で3位と非常に優秀。そしてレーンアジリティは10.61秒で8位とこちらもビッグマン役ならば非常に優秀です。これは例えばセルティックスのカーセン・エドワーズで10.53(6位)なので、クラークはガード並みのアジリティも備えていることになります。

つまりクラークはビッグマン的な役割を担っていますが、「ガード並みのジャンプ力・アジリティを備えたスモールタイプのビッグマン」ということになります。これを踏まえてハイライトを観てみましょう。

ということで、スモールのビッグマンとしてスピードのミスマッチを有効利用できているシーンが目立ちます。少しのズレがあればリングにアタックできてしまうし、ゴール下に侵入してからもガード並みのジャンプ力でサイズの不利を補えています。まぁそんなにサイズの不利ってのもないのだけど。

八村については「ショートレンジの正確性が利点だけど、その反面でゴール下にアタックできていない。シュートが決まるかどうか判断事項になっている」という評価なのですが、まぁもちろんシュートが決まっているから良いわけです。

それに対してクラークの方はそのスピード差でリングにアタックできているという面白さ。どちらが優れているとかではないのですが、最近のNBAらしさはクラークの方が発揮できそうって事です。

ただし、その前提になっている3Pについては、セットする位置が低いなど課題もあるので、シーズンで活躍するためにはスキルレベルを向上させないといけません。その点では八村の方が優れていると思います。

◉グリズリーズの新HC

テイラー・ジェンキンズはブーデンフォルツァーの愛弟子的な感じでホークス、バックスとACとして支えてきました。その前もまたスパーズなので、安心と信頼のスパーズブランドですが、ここまで行くとスパーズの派生ブランドみたいになっています。

実際、ブーデンフォルツァーは3Pを積極的に導入するし、戦術は優れているけどポポビッチらしさはないしね。

さて、渡邊雄太には朗報になっている新HCのオフェンスでは両ウイングにシューター的な役割を強めながら、ハンドラーとビッグマンのコンビでピックプレーから崩していく流れがあります。これが偏りまくるとハーデンですが、偏っていない理由はビッグマンの役割にあります。

サマーリーグ序盤でその役割を担当したのが渡邊。単にピック役になるのではなく、ボールプッシュしたり、ワイドにパスを振ったり、起点としてボールキープしたりと「ビッグマンに器用さを求める」タイプのHCみたいです。

元々、グリズリーズはモーラントとジェイレン・ジャクソンのコンビを想定していると思われ、シーズンでも使えそうな形を模索していると予想されます。それがビッグマンとしてはイマイチだけど、プレーの幅って意味ではビッグマンとしては優れている渡邊にハマっていました。

大学時代はガードの渡邊なのでプレーメイクに参加できる利点がありつつ、ウイングに回ってもシューター役をこなせます。シューターと言っても動き回るのではなくスポットシューターなので。

このシステムの良さは両ウイングに大きく開いた上に、ビッグマンがトップの位置に出てくるのでインサイドが大きく空くことです。コンリー&ガソルでも同じような形だったのですが、両ウイングがシューターじゃなかったし、ガソルがスピードなかった。

その意味では渡辺の課題はスピードで振り切るドライブが出来なかったこと。そしてクラークが優れていたのは、空いたインサイドへの突破力。これがMVP獲得の最大の理由だったと思います。

クラークの得点はキャッチ&シュートとそのフェイクからのドライブ、そしてピックからの合わせであり、プルアップ系のエースムーブはほぼありませんでした。これがインサイドが混んでいるチームだと高さ負けするでしょうし、ウイングの仕掛けが多いチームだと、インサイドのフィニッシュに顔を出すのが難しかったと思います。

渡邊に適していた役割を、大きく上回る回答で埋めたクラーク。ジェイレン・ジャクソンがそんなにスピードで振り切るタイプじゃないだけに、クラークの存在は変化もついて面白そうです。

新HC就任により、サマーリーグ序盤で結果を残した渡邊でしたが、それを上回るクラークの活躍ぶりは、ちょっと辛いものがあるのでした。

◉長かったサマーリーグ

FA解禁からスタートしたサマーリーグが半月を経てやっとおわりました。長かったね。長かったよ。トーナメントを減らしてリーグを長くした感じでしたが、そこに馬場や比江島のチャンスもあったのだからポジティブなのでしょう。

グリズリーズ単体で観ても、前半と後半でメンバーに変化があったし、途中でトレードもあったし。多くの選手を色々な形で試せるのならば、ロスター枠も柔軟にしながら次年度に繋がりそうです。

ファイナルで負けたとはいえ、ウルブズも変化を感じたチームでした。予想通りのディフェンスやルーズボールみたいなメンバーを強めたい様子で、そこにネッツのACだったプリジオーニが3Pを強気に打たせていくような雰囲気でした。

意外とサマーリーグの方が戦術的だったりします。それはシーズンに比べて相手が対策なんかしてこない事や、準備期間が短いのでプレーパターンが少ないからこそ、同じプレーが色濃く出てくるからだとも思います。

またドラフト1巡目の期待株でもなければ、ロスターに残るのが大変なわけで多少の活躍をしたところで「戦術に適していなければ意味がない」とも判断されるからかもしれません。ロスター15人目の選手が戦術理解に乏しいとか意味ないよね。

昨シーズンのサンズはココスコフによるしっかりとしたオフェンスシステムが色濃く出ており、それがシーズンになるとミスのオンパレードになったし、逆にホークスはここで作り始めた形をシーズンで深めていきました。

グリズリーズとウルブズがどっちに転ぶのかはわからないけど、新しい色を求めるチームだけに、その傾向が強かった気がします。同時にチャンスを掴みたい若手のパワーに溢れていたね。

サマーリーグMVPクラーク” への1件のフィードバック

  1. 普段サマーリーグは上位指名でてるのしか観ないんですが今年は日本人4人。動きまくったFAと合わせてかなり楽しくオフシーズン過ごせました。
    グリズリーズはモラントがまだ未知数なのですが、若手主体で楽しみです。渡邊ロスター入り叶うか、、、

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