さらば『フラッシュ』 ~若き48点の夜~

特別企画

今回の記事はハンドルネーム「AI3」からアイバーソン関連のゲームレポートをご依頼いただきまして、その中にあった05年ヒート戦をウェイド視点で書き直したものです。「ウェイドの記事だ!」と喜ばれた方は、アイバーソンファンの依頼者に感謝してください。

今回の題材となる試合はこちら。フルゲームみて頂いてからでも面白いかもしれません。

この試合のウェイドはキャリアハイの48点。この後、08-09シーズンに50点ゲームを3回記録しますが、若き時代に残したハイパフォーマンスになっています。そんなウェイドを「フラッシュ」バック!

◉速い、速い、速い

あまりの速さに驚愕してしまうウェイド。アイバーソンも速いけど、それは細かい切り返しを中心にしたアジリティの素晴らしさ。ウェイドの方は直線的なスピードです。メッシとクリロナみたいな違いです。

マッチアップは若き日のコーバー&イグダラ。コーバーはほぼ粉砕され、イグダラも引き裂かれています。シンプルなスピードになす術のないシクサーズは、開始早々に10点のリードをウェイドに奪われるのでした。

「ドノバン・ミッチェルはウェイドに似ている」なんて言われ方をしますが、ミッチェル好きとしては「そうかなぁ・・・」と考えるのですが、この試合を観てむしろ

「ミッチェルはこんなに速くない」

と、ウェイド視点で否定したくなったりします。管理人のおぼろげな記憶ではウェイドの大学時代をNCAAファイナル4で1試合だけ観たことがあり、驚異的な加速力でダンクをぶちかましていました。「これでドラフト1位じゃないのか」と驚いたのですが、人違いな気もする。

決してテクニカルな駆け引きで抜いているわけじゃないけど、キャッチしてのフェイクに対して反応したら最後、ぶち抜いていくウェイドは止めようがないのでした。

そこでイグダラを中心にしたディフェンス陣は、少し距離を空けて守ります。その結果、こんなショットチャートになりました。

典型的なミドルレンジシューターです。実際はシューターではないし、ミドルレンジを好んだわけでもありませんが、ドライブからディフェンスが後ろに重心をかけるので、シンプルなジャンプシュートを連発したのでした。

〇ミドル 6/13

数字的には半分以下ですが、非常に効果的に決めたウェイドのミドル。これをシーズン成績で観てみましょう。

〇ウェイドのミドル
05年 39.4%
09年 41.6%
19年 33.0%

「フラッシュ」を支えたミドルレンジ。その確率は割とそこそこの数字でしかありませんでした。ただし、現在は明確に衰えたね。

NBAのゲームが変化してそもそもミドルを打つことがナンセンスなわけで、それでもミドルでゲームを制していたウェイド。それは見方を変えれば「時代に追いついていないのに、現代でプレーできている」というカーメロとはちょっと違う構図です。神通力。

さて、試合に戻ると48点を奪った理由はもう1つ。

〇フリースロー 10/13

止められないスピード → 効果的なミドル → ファールドローという流れは、ディフェンスがスピード対策で下がり、ミドル対策で半歩前へ出てヘルプを用意したことで発生しています。

この「ファールドロー」がウェイドを最後まで支えたスキルだったといっても過言ではありません。

アイバーソンが「アジリティに優れている」としましたが、それはディフェンダーを見事にかわしてしまうスキルでもあります。一回止められたとしても、切り返しとストップ&ゴーで抜いてしまう。

それに比べるとスピードには優れていても、コースを読まれると止められてしまいがちなウェイド。同じようにスピードに優れたNBAプレイヤーは多くいたと思いますが、それだけでは通用しません。ウェイドにはファールドローのスキルがありました。

〇フリースロー数
05年 9.9本
09年 9.8本
19年 3.2本

これが2年目の時点で10本近いファールを貰っています。今年のドラフトでセルティックスが「ファールを貰うことに優れた選手を選んだ」なんて記事もありましたが、割と通用しやすいスキルだそうです。

ウェイドの場合は、3年目をピークにフリースロー数を減らしていきました。3キングスなんて事情もありますが、そこに頼りすぎるのもよくないのかもしれません。逆に近年はそこに頼ることで能力低下を上手く補っていました。神通力。

ミドルの確率自体はそこそこなのですが、ストップしてからのフェイクによってファールドローすることでトータルの効率性を補っていた印象です。

若き日のウェイドがスピードで圧倒し、そこからミドル、ファールドローと連なっていくのに対して、老し日のウェイドはファールドローのスキルとミドルのフェイクでドライブを成立させていました。

3つの複合能力がウェイドを「フラッシュ」たらしめていたといえます。

◉ヒートの事情

シャックを迎え入れたヒートは2人のエースだけでなく、エディ・ジョーンズ、クリスチャン・レイトナー、そしてアロンゾ・モーニングなどビッグネームが並んでいます。彼らは衰えもあったとはいえ、ベンチからのプレーになるなど層の厚さを実現しており、好チームでした。

しかし、プレーオフではミラクルピストンズに粉砕されます。

その最大の理由が何かは試合を観ないとアレですが、この試合からハッキリと読み取れるのは「シャックの衰え」でした。試合終盤になるにつれて存在感がなくなっていくシャック。

しかし、難しいのは「シャックはシャック」なことです。これはネームバリューではなくプレースタイル。前半からゴール下のポジション取りで優位に立つとターンシュートを押し込んでいき、破壊者ぶりはちゃんと発揮しています。

発揮しているのだけど、やっぱりゲームトータルでは衰えてしまっているわけです。それをピストンズのトランジションディフェンスにやられたと考えれば納得してしまう。

「シャックを取るのか、オレをとるのか」

シーズンが始まる前にコービーがつきつけたとされる要求は、単なる「若造のワガママ」として処理されるようなものでしたが、この試合を見ると考えも変わってきます。コービーが一足先に『シャックの限界』を感じ取っていた可能性も出てくるわけです。

成長した若造が、優勝を逃したチームで、スーパースターからエース交代を要求する

一見すると困った問題ですが、結果論で言えばレイカーズは弱体したけれど、シャックを諦めた選択は間違っていたとも言い難いのでした。

再び、この試合に戻りシャックのショットチャートを見てみましょう。と思ったけど9本しか打っていないので、05シーズン全体にします。

さっきのウェイドを考えた時に、「中外」のバランスがとれているエースコンビですが、「サイド」については同じ左サイドばかりになっています。

ヒートはフロアバランスをとるのですが、言い換えればエース2人が打開することを前提にした1on1を多く作っていました。他の選手はシューター的な役割が多い。

そして翌年になるとゲイリー・ペイトンと白チョコさんを獲得します。つまりPGの補強でした。

「シューターのチームは勝てない」というのがプレーオフの定番でしたが、ヒートはシューターのチームではないものの、ウェイド&シャックに対してパスアウトから打つ選手だけでなくゲームメイクする選手を加えたことで意味を成したわけです。

06年のシャックはキャリアで初めてリバウンドが10本を下回り、チームは7つも勝ち星を落とすのですが、プレーオフでは見事に勝ち上がったのでした。

◉次回はノビツキーかな

そんなわけでウェイド視点の05年でした。ゲームレポート形式だとアイバーソン視点になります。

2年目のウェイドをエースにしながらも、分厚い戦力で59勝を挙げたヒートでした。それがまさか19年までプレーするとはね。スピードが武器の選手としては非常に長い選手生命だったかもしれません。

そしてこの流れだと当然、「さらばノビツキー」だってやるのでしょう。いつやるかは決めていませんが、まぁ優勝したシーズンから引き出すんだろうな。ジェイソン・キッドもいるんだよね。ウェイドも。

でも、それよりも若き日のノビツキーの方がよいかな?完成する前のノビツキーって興味あるし。

さらば『フラッシュ』 ~若き48点の夜~” への7件のフィードバック

  1. ウェイドにはクロスオーバーと豪快なダンクが印象的だったのでミドルの多さは意外でした
    試合を見てると確かに結構打ってるんですが不思議な感じです

    ノビツキーのマブスはPGがナッシュ、デビンハリス、キッドの誰がいた頃かでいろいろ変わってそうで面白そうです!
    どの時期か楽しみにしてます!

  2. 北京五輪のウェイドが1人だけ早送りされてるぐらい速くて、こんなん誰も止められないだろと思ったのを覚えています

    管理人さんはスピード、ミドル、ファウルドローの3点をウェイドの武器として指摘されていましたが、1番は大舞台やここ一番での勝負所での強さ、神通力が最後まで衰えなかった事かなと思いました

    ヒート時代はレブロンとの合わせが上手く、晩年はPG的な動きをすることもあり、速い展開と運動量と3Pが支配する現代のリーグで3Pや運動量がないなりに、重い時間帯、特に終盤でのスターぶりを発揮することで上手く生き残ってきて凄いなと思います

    ノビツキーも昔は結構ミドル打ってたような気がしますけど晩年はほぼ3Pでしたし、プレーも上手く変えて生き残ったのでしょうかね
    次回も楽しみにしてます

    1. ファールドローが上手い選手だとPGでキープってのも意味が出てくるんですよね。
      もう少しパスが上手ければ、PGとしてのプレーが出来たかもしれません。

      オリンピックは反則クラスでしたね。
      そしてNBAではスピードだけではダメなことがわかる国際試合でもありました。

  3. 若い頃のウェイドはドレクスラー的に観てたなぁ~と思い出しました。
    ドノバンはフランシスっぽく感じてます。
    この時代はまだゴリゴリディフェンスも残る時代、エースは効率性よりもアテンプト能力や身体能力、クラッチ力が求められてましたね。
    ま、今もそれは求められてますが更に効率性も求められてる。

    エース論に置き換えるとカリーにはクラッチ力が足りない、ドノバンには効率性が足りない、カワイは全てをバランスよく備えたバランス型?

    そういえばスラッシャータイプって殆ど求められなくなりましたね。唐突(笑)

    当時シャックの衰えは感じなかったけど、でも直ぐにウェイドのチームだったですね。でもシャックの加入で優勝したのも事実。
    今考えると流石ヒート、脇役の質が高かったのもポイント。まだ記憶には残ってるな。

  4. ウェイド大好き特に06年優勝前後からビック3までのプレーが大好きなので、そのころの試合の記事が読めてうれしいです。Aiファンの方ありがとう(T_T)
    データではなくファンの印象で語ると、ウェイドはとにかくプレーに華がありました。一動作一動作ごとになんかいちいちかっこいい。そして勝負強い。
    記事にはないですが、ユーロステップ、ステップスルーをあれだけ高速で大股でやる選手はウェイドだけじゃないですかね。かっこいいけど見るたびに絶対壊れるなと思いました笑
    今はカワイレナードがMJに一番近いと言われていますが、初優勝した時はウェイドもMJの再来だと言われていたんですよね。とりとめもないコメントすみません。記事がんばって下さい。

  5. 2006年がファール数のピーク。2006年のファール数はマブスファンとしてはトラウマものでした…

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