CJマカラムとゲーム7

非常に面白いシリーズでした。

このシリーズが面白かった理由は、それぞれが繰り出した対策が上手く機能しながらも、その対策を上回るシーンが多々出てきたことです。

要するにマッチアップを予定通り定めて、それは明確に効いていましたが、それをも上回るエースの働きがあったということ。ディフェンスのシリーズになりましたが、かといってディフェンスのシリーズってわけではなかったのです。

〇FG
ナゲッツ 42.7%
ブレイザーズ 43.5%

〇3P
ナゲッツ 33.0%
ブレイザーズ 32.5%

御覧の通り、似たようなスタッツになっているわけですが、かなり抑え込まれています。ディフェンスが機能しまくったシリーズでした。でもレーティングをみると

〇オフェンスレーティング
ナゲッツ 113.5
ブレイザーズ 111.4

FG%はとても低いですが、ウォリアーズvsロケッツと同じようなレーティングです。現代NBAの恐ろしさってのがここにあって、これだけディフェンスが機能しながらも、しっかりと得点できるチームじゃないとこのレベルまで辿り着けないわけです。

いやー、本当に恐ろしい。ファーストラウンドで砕け散った各チームとの差を感じずにはいられません。なお、負けた中でもクリッパーズとスパーズだけが110を超えており、勝った中でセルティックスだけが105を下回りました。

「ディフェンスに抑え込まれても得点できる」

これが出来ないとダメってことで、それを意識して思い出すと何だか試合内容が理解できてくる気がします。クレイグ&ゲーリー・ハリスのディフェンスが効きまくっていたのに、ブレイザーズは得点していったよね。

ってことで、このシリーズの主役からいきましょう。

◉CJマカラム

主にゲーリー・ハリスとのマッチアップだったマカラムは、平均32回のマッチアップで7.2点でした。DIFFが△6.7なので、そこそこ苦労したって感じです。

ちなみにファーストラウンドはポール・ジョージ相手で、26.8回のマッチアップで8.2点です。どれだけゲーリー・ハリスが頑張ったかがわかります。

〇得点とFG
ゲーム1 16点 41%
ゲーム2 20点 40%
ゲーム3 41点 40%

はじめの3試合ではかなり苦労しています。ゲーム3は40点ですが60分プレーした地獄の試合でした。3Pが決まったので得点が伸びましたが、シュート力が魅力のマカラムにしては苦しみまくっているだけでなく、2ガードで何とかするブレイザーズらしさがないといえます。

ただし、それでも2勝しているってのがチームとしての強さでもあるのでした。このFG%がゲーム4から劇的に改善します。


ゲーム4 29点 FG50%
ゲーム5 12点 FG31%
ゲーム6 30点 FG50%
ゲーム7 37点 FG59%

ゲーム5はマカラムの責任で負けたようなものですが、そこを除くとFG50%オーバーとなり、ナゲッツはマカラムを止められずに沈んだという事です。

そこにあった要素はゲーム7に詰まっているので、ゲーム7だけをピックアップしてみましょう。

〇ゲーム7のシューティング

まず極めて3Pが減りました。インサイドアタックを増やしまくって大成功しているマカラムです。そもそもドライブすると高さのデメリットが大きかった選手ですが、非常に上手くすり抜ける技を手に入れています。

これをシリーズ全体と比較してみましょう。

非常にバランスよく打っている事がわかるマカラムですが、逆にゲーム7に違和感が出てきます。シュートの殆どがセンターラインに偏っていました。

これが何を示しているのかというと、まぁ偶然だと思いますが「センターラインの攻略」はキーワードです。

ゲーム7で起こったブレイザーズの勝因は「アミヌを起用しない」と「ターナーの活躍」です。コリンズが貴重な3Pをコーナーから決めましたが、アミヌがあまりにも決めなかったことに比べて大きな意味がありました。

そしてターナーはミルサップとの対決を制しています。PG的な振舞いもしながら、ドライブで切り裂いてくれました。ちなみにターナーが切り裂いた時間はハークレスが一緒に出ており、そっちにマレーになっています。

つまりコリンズもターナーも「ミルサップを引き付ける」役割に大成功してくれました。そこに加わるマカラムの「ゴール下増」と「センターラインの攻略」は確かに紐づいている内容です。

それ以上に印象的なのはコメントにもありましたが、ヨキッチ対策として、ピック&ロールからショーディフェンスしてくるヨキッチに対して、急角度で切り返してのドライブでした。

スピードのないヨキッチが上手いポジショニングでショーディフェンスするのはゲーム1からの傾向です。そこでリラードを中心に隙間を通すパスでカンターを使っていましたが、ゲーム7ではマカラムがパスではなく、自分で飛び込んでいます。

そんなわけでゆーつーぶをチェックしてみましょう。注目すべきはナゲッツのビッグマンに対するマカラムの抜き方です。ピックでマークを一瞬剥がした後で、外側に膨らむのではなく、切り返していくシーンが非常に多くなっています。

センターラインの得点が増えた理由は、ピックの後で切り返すことを狙っていたからです。ナゲッツのディフェンスの基本対応は

ショーディフェンスで時間を稼ぐ
→マークが少し遅れてでも追いかける
→全体がローテしてロールマンをカバーする
→オフボールスイッチでマークを戻す

こんな感じがメインでした。シーズン当初に「インサイドへの収縮が早くなった」と評したのは全体のカバー意識の早さでした。代わりにコーナーが空きやすいのでサンズに狙われました。サンズにってのがウケますが、当時はココスコフが頑張っていたってのもあります。

なので「全体がローテする」のがナゲッツのチームディフェンスの良さになるわけですが、ここで「切り替えしてインサイド」にされるとカバーの方向がズレたともいえます。

ナゲッツのディフェンスは良かったが、それを上回っていったマカラム

これがシリーズを決めた要因です。しかし、言葉にすると簡単な要素は、リラードには出来ませんでした。その理由がなんなのかって話もあります。

〇リラード
25.1点 
FG41%
3P29%

3Pが決まらなかった。決めさせてもらえなかったのがリラードのFGを悪化させましたが、マカラムは3Pを打たずに切れ込んだわけです。そしてリラードもまた同じようにビッグマンをすり抜けるプレーをしてしました。

しかし、リラードはこのプレーで攻略しきれたとは言えず、マカラムとの違いがありました。選手としてはリラードの方が上ですが、ともにナゲッツディフェンスに苦しみ、そして攻略法を見つけながら、マカラムだけが攻略しきったのは何故なのか。

それを考えるのに、シリーズ通してマカラムが高確率で決めたゾーンが参考になります。15フィートから19フィートのシューティング。

いわゆるミドルレンジですが、その中でもショートレンジのフローターではなく完全にジャンプシュートになるレンジです。マカラムはこれを65%決めました。リラードは35%です。

現代的には否定されるゾーンのシューティングになりますが、大切なのは「ナゲッツディフェンスを攻略」するためには、「ビッグマンのショーディフェンスにアタック」する必要があったこと。

しかし、ゴール下まで侵入しまくればブロックされる危険性も高まります。もちろんレブロンやヤニスなら話は別。マカラムには無理な話です。

前後の駆け引きをする中で、ミドルゾーンからのジャンプシュートはビッグマン達には手を出しにくいシュートです。これを止めようとするとカウンターで抜かれてしまいます。

実際にマカラムはこのゾーンで一瞬のストップ&ゴーをしています。緩急ってやつですが、マーカーを背中で捉えつつ、ビッグマンの動きに合わせてシューティングパターンを変化させています。

このプレーが成否を分けたし、これを決められるマカラムだからこそ3Pなしでゲーム7の大活躍が生まれました。

◉まとめる

なんか、もうここまでで1つの記事で良い気がしてきたので、終了です。時間もあるので。

現代NBAではシュート能力が大切

といいますが、これを結果を持ち出して「シュートが決まった方が勝った」と言い出す人もいますが、決めたほうが勝つなんて当たり前の話です。大切なのはそこに至る過程がなんなのか。

カリーの特徴は「シュートフェイクでおびき出せる」ってことです。普通の選手ならフェイクとして成立しないプレーがカリーならば成立します。

あるいはリラードのあのブザービーターでは、「ロング3Pを身に着けることで、よりフロアをオープンに出来る」ことを意識して練習したという記事もありました。

いずれもシュートが決まることではなく、決める能力があることでプレーに拡張性が生まれます。

ミドルシュートを決めているチームが勝っている

これもたまに言われる話ですが、今回のマカラムの件も最終的にここに落ち着くものの、大切なのはそこに至った過程です。あくまでもミドルシュートは

ナゲッツディフェンスを攻略するために必要なシュート

であったということです。というのもミドルシュートといえばデローザンですが、ファーストラウンドのデローザンはナゲッツを攻略できたのかって話です。

FG49%だったデローザンですが、平均22点でした。同じレンジから50%決めたことで、ゴール下でも68%決めています。ある意味、効果的に攻めることが出来た数字です。

これはこれで素晴らしいし、止めきれないプレーだったわけですが、攻略的に狙ったプレーってわけではないと思います。単にデローザンの特徴。

ターナーPGやハンドラーとしてのマカラムなど、ブレイザーズが時間をかけて複数のパターンを構築した『チームとしての経験値』によってナゲッツを上回ったと評したシリーズですが、マカラムのプレーぶりは「攻略するための複数の武器」をもっていたということでもあります。

「3Pとゴール下」は戦術的に優れており、これを意識しないチームは勝てません。しかし、だからこそ「それしかない」のでは、競り合うプレーオフの中で、それもゲーム7まで続き、手の内をわかり切った中ではパターンの多さは大切です。

ディフェンスの戦い

となったシリーズだからこそ、攻略するための武器に優れたマカラムの存在感は際立ちました。サイズ的に他のスター選手ほどのプレー能力を持たないマカラムですが、その代わりにパターンの多さでは立派なスーパースターです。

緊迫するからこそ輝くマカラムのスキル

それを堪能したゲーム7でした。

CJマカラムとゲーム7” への3件のフィードバック

  1. 昨日の管理人さん返信コメントを読み返していて、この記事の内容も併せ、シュートの豊富さやチームの連携でディフェンダーが躊躇っている、ブロックは高くないだろう、そのことをマカラムもカリーも認識してるから、打てる、と踏んで思いきり良く打っていく、こんな旨ですね。

    ただ、クリス ポールのジャンパーやフローターに飛び掛かってぐっと手を伸ばして来て、そこを越して決めますから、パスアウト等他オプションの脅威以上の特殊能力みたいに感じるんです。レブロンの蹴散らしダンクは理解できるんです。体が強い。デローザンの意味不明ステップ逆足フローターの方がよほど理解不能理不尽というか。あんなショットを強いたら守りの勝ちですよ。

  2. 「攻略するための複数の武器」
    このフレーズすごくスッキリしました。
    対してレナードを観ていても76を攻略してる感がなくて、ただそれでもとにかく決めきってしまう理不尽さを感じていました。
    あの理不尽さってあれはあれで攻略と呼んでいいものなんですかね??

  3. ここまでもつれにもつれたゲーム後のデータなので、ロケッツ対ウォリアーズの時みたいなクレイ様とゴードン殿の相性的なものが無くたって、腑に落ちます。

    管理人さんの考察もしかり。

    ただ、そのデータや最後の最後までやり続け、結果を残す事がどれ程タフで計り知れない恐怖か

    エースの孤独 勝ったら凄い 負けたらあいつが外して負けた

    僕なら守っている側(負けた側)でも攻めている側(勝った側) どちらにしろ、ハゲます 

    それくらいお互いにアスリートとして人として究極に研ぎ澄まされた『勝負』のよーに感じます

    勝負の醍醐味であり怖さであり

    プレーオフの7戦目で、相手もそこをケアが遅れてもしてくる戦いの中で、それでも、なおそこが突破口だと信じてチームのためにやり続ける事は『チームプレイとしての個人得点力(突破力?)』でありマカラム(エース)がフロアーにいる意味ですよね

    その積み重ねがチームのエースとしての『信頼貯金』な訳で

    他チームから入ってきたエースとの融合の難しさでもあり、ローマは1日にしてならず…みたいなことわざ的な まぁーなんでもいいっす

    スーパーチームや、今年、色々とあったチームも『成熟度』は大切な部分として重要視して欲しい

    割と長いこと主要メンバーが変わらずでも『成熟度』が上がんないチームもあるわけで簡単には成熟しないのもまた事実

    多人数でやるチームスポーツですから

    現代NBAのもう浸透しきった『スリーとゴール下』はチーム戦術ではあり

    個人突破力とゆーか個人戦術力とゆーかは、今も昔も変わらず『来るとわかっていても囲まれても遠くても決めきる多彩さ』はエースとしてのお仕事なんだなーと再認識。 テイタム…今のままじゃーJR兄さんやジャクロおじさん一派になっちゃうぞ ハーデンもその系統なんだけどなんかちょっと違う

    以外と真面目にチームの為にプレー選択してるのが垣間見えるからかなー ハーデンは 

    そのためにも、フロアーバランスを崩さないよーに『エースを配置し過ぎない』よーにも気を使わないといけないんですよねー。

    集めたらからはいどーぞ

    じゃないでしょーに

    そこからの取捨選択は、選択肢が多すぎても難しいのだから

    ウォリアーズなんかは、多分わかっていてカズンズも入れて実験しとりますが3人でも飽和状態気味と言われたら、確かにそーだなーと思えてくるし

    なんでも『バランス』重要ですがそれが難しいんですよねー

    バランス重視 し過ぎると 変化の乏しいチームになってしまうし

    なんでも『し過ぎ』はダメとよくばあちゃんに教えてもらったなぁー

    『無くても困らないけどあった方がより安定感が増す』からと、ついつい、バランスを崩してでも『増やしがち』になるのが人間ですが、

    究極なシチュエーションにおいては『バランスのためにあえてカットする』は勇気のいる決断ですからねー

    長くなりすいません 書いてて楽しくなっちゃって 日記でした

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