ゲームレポートなんて書いている時間がないぜ。でも、試合の感想よりも、こっちの方が読んでて面白いかな予想で優先
最後はオフェンス力不足で勝てませんでしたが、それを問い詰めたら可哀そうです。粘り強く、極めて粘り強く守り、そして一撃必殺みたいなオフェンスできわどい勝利を得てきたのでした。
◉若手たちの時代
マジックが勝てないと予想した理由はシンプルです。ドラフトでモー・バンバという超素材型(誉めてないよ)を指名し、同じく素材型のゴードンとアイザックを中心にしたチームを構成し、フォーニエとブセビッチはトレード候補として何かにつけては話題に上がってきました。
この数シーズンの失敗を受けて、再建モードに切り替えることは既定路線だったはず。シーズン途中でもジョナサン・シモンズを放出して、フルツを獲得しています。将来をどうするのか、それがテーマだったはず。
しかし、フタをあけてみるとDJオーガスティンのコントロールから、フォーニエ&ブセビッチで構築する従来通りの流れ。そこにベンチからロス&シモンズというのも、大きな変化がありませんでした。
バンバは起用されていたものの、ケガで離脱。なお、平均16.3分のバンバですが、47試合に出場し、その間のチーム成績は19勝28敗です。バンバが離脱した2月以降は21勝9敗と一気に勝率を上げたことは付け加えておきます。言い訳としてね。
若手の中でオフェンス面で期待されていたのはゴードンくらいですが、それでも平均16点で昨シーズンの17.6を下回ります。ベテラン達を信じてプレーオフを掴んだマジック。再建モードじゃなかったよね。
一方でマジックがプレーオフに進めた最大の要因はディフェンス力の向上。ここについては、ゴードンとアイザックの存在抜きには語れません。オフェンスではなく、ディフェンス面で中核的な役割を果たしました。
ここでも意外だったのは、よりエースキラー的役割を担ったのがゴードンで、チームディフェンスで強力に機能したのがアイザックでした。特にプレーオフでのアイザックの存在感は素晴らしかったよね。
最近のディフェンスで重要なのは、より広い範囲を的確にカバーできる能力です。それはあまり評価されにくい一面がありますが、アイザックがいることでカバー範囲が広い上にリバウンドにも安定感が出てきます。
オフェンス面での役割が小さい代わりに運動量も含めて働く必要があったディフェンス面。それは素材型のアイザックにとっては丁度良い負荷だったかもしれません。オフェンスで大きな役割を与えられても勝てなかっただろうしね。
マジックは再建に舵を切りませんでしたし、若手たちはスタッツの面で結果を残せませんでした。将来への布石は作れなかったといえます。
だけど、それはあくまでもスタッツの話。アイザックのディフェンス力は大きな注目を集めるかもしれません。それはチームが勝っていくほどに増していく注目度。勝つためにはオフェンス力が必要。
オフの課題が明確になっているだけに、どのような選択をするのか。補強って意味ではなく、フルツとアイザックの伸ばし方です。ゴードンって伸びるのかな?
◉ニコラとエバン
オフェンスの主役はオールスター・ブセビッチとフォーニエ。2人の活躍度はまぁブセビッチの方は不要だよね。オールスターだし。だけど、フォーニエについては身体能力に劣るシューターくらいの認識しかされていないかもしれません。
素晴らしいハンドリングスキルがある、ってわけでもないフォーニエですがユーロ系っぽく非常にシンプルだけど効果的なパスが出来るのが強み。それがあるから、シューティング能力も生きています。
プレーオフではゲーム1をオーガスティンの驚異的な活躍で勝利したマジックですが、実はひとつのキーになっていたのが、オーガスティンvsラウリーのマッチアップでラウリーが完敗したこと。
そこで試合終盤はグリーンが担当し、さらにラストショットの時はレナードになっていました。この構図はそのまま「ラウリーの完敗」なわけで、ゲーム2からはグリーンがマッチアップしました。
ただし、シーズンからの流れを考えると「ラウリーの完敗」という構図は少し違うものに思えてきます。ラプターズが本当に抑えたかったのはフォーニエ。だから当初はグリーンがフォーニエを追い回し、ヘルプのラウリーで対処する方向性でした。
またラウリーはディレクションして、抜かせる方向を絞り、シュートを打たせないでドライブさせ、複数人で囲むのが得意なのですが「ディレクションしたらアレ?」みたいなシーンが連発されました。つまりチームとしてオーガスティンを意識しなかったために、生じた完敗でしかありませんでした。
そこでフォーニエのマークになったラウリーは、ヘルプもしつつフォーニエを消しに行きました。一方でグリーンは個人でオーガスティン担当に。この変更が上手くいったわけですが、逆に言えばラウリーはチームとして解決したいフォーニエを止めながらヘルプっていう2つの役割をこなしたことになります。ラプターズの話はおしまい。
これがマジックには効きました。ゲーム2から殆ど攻略できずに終わったのですが、特にインサイドヘルプの部分で大いに苦しんだのです。お互いにね。
ならば本来はフォーニエの出番なのですが、これがまた苦しかった。FG35%、3P24%とチームを助けるシューティングが出来ず、平均20.4回マッチアップがあったラウリー相手に3.8点しか取れなかったことが、個人の得点以上にマジックオフェンスに拡張性をもたせてくれませんでした。
極めて上手く抑えられてしまったフォーニエという構図が、ファーストラウンド最大の肝だったと思います。2.0アシスト、2.4ターンオーバーも含めてフォーニエのもがきが、アップセットに辿り着かなかったのでした。
それは、それだけマジックにとってフォーニエの存在が大きかったという事。困るとブセビッチと2人でプレー構築していたようなフォーニエ。見た目からしてベテランだと思っていたけど、26歳なんだよね。
◉チームということ
そんなこんなで、それぞれが仕事をすることで、それも明確に役割分担されていることでマジックは強さを発揮してきました。
なんだけどさ。
やっぱり、このチームが勝っているってのは不思議なんだよね。5割勝てるようなチームには思えないんだ。目を見張るような戦術的特性もないし、驚異的な個人技もない。ロスがタフショットを決めまくるってのはあるけど、それだって毎試合の話ではないし。
例えばペイサーズやネッツには、チームの絆の強さってのもあります。ベンチを含めた盛り上がり方は、オンコートでもお互いを助け合うようなプレースタイルがあるわけです。
マジックには、そんな盛り上がりもなかったりしてさ。
で、そういうチームの勢いとか、絆みたいな強さはないのだけど、一方で誰もがお互いを糾弾するような雰囲気はないし、チームメイトへの不満を溜め込むような雰囲気もありません。
誰かがミスしても責める気がないし、あるいは自分のミスは自分が悪いと認める風潮があります。(ちなみに、これは多くのチームで「相手が悪い」という空気感を出す選手が複数人混じっています)
そう、チームの勢い、みたいな良さは感じないけど、もっと穏やかな感じで助け合いの精神みたいな空気感があるのです。ちょっとジャズに似ているかな。
その意味では、ブセビッチとオーガスティンというチームリーダー的な存在が良い空気感で引っ張ることや、フォーニエが中間的な位置づけだけどエースのように打っていく事。そしてゴードンとアイザックが支えている構図は、「丁度良いバランス」なのかもしれません。
唯一の異分子がテレンス・ロスだけど、そのロスも苦労してきたからか、ワガママにシュートを打っていく傾向はあるけど、同じように自分のミスを他人の責任にするような感じは皆無です。
フォーニエとブセビッチというユーロからきた選手が中心にいることも、自己主張ではない部分で戦える要素なのかもしれません。全員が「自己主張せずに、自分の仕事に徹する」タイプで揃っている気がするマジック。
チームの絆は感じないけど、チーム全員が同じような空気感の中で、穏やかに自分の力を発揮しています。だからこそ、粘り強いチームになったのかもしれません。チャンスを掴むと一気に噛みつくような怖さはないけど、苦しい状況でも淡々と、しっかりと仕事をこなしていくメンタリティがあるチームです。
うん、ちょっと、フルツとバンバは不安なんだよね。
◉ブセビッチはどうする
このまま同じメンバーで次のシーズンを迎えたらどうなるのか、観てみたいチームではあります。ここから大きく進化できるのかどうか。変に補強してバランスが崩れるよりも、ゴードンとアイザックの役割があるだけに、良い方向にも悪い方向にも転びそう。
ただフルツがいるので、変革の時は迫っています。まぁクリフォード継続ならベテランが優先されそうだけど。フルツは特に欠点が多いタイプだし。
チーム構成に失敗し続けてきたマジックですが、ゴードンとの再契約は興味深いもので、年々サラリーが下がる契約にしています。そのメリットは総額では高いけど、3年後が安いからFAで高額契約も可能になることです。21-22シーズンってゴードンとフルツが同じようなサラリーなんだけど。
そしてオフに契約が切れるのはブセビッチとロスの2人。気になるのはブセビッチが残るかどうかです。オールスターとなり市場価値を大きく上げただけに、どこのチームが手を挙げるのか。マジックが良いサラリーを提示すれば残りそうですが、このオフに向けてサラリーキャップを整理しているチームが多いだけに、対抗できない契約を提示されるかもしれません。
本来はシーズン中に契約延長しても良かったはずですが、その選択肢を採用しなかったマジック。トレードを実行しやすいように契約期間を延ばさなかったことが、果たしてどのような結果を生むのか。
プレーオフに進んだからには、次のステップを見据えているはず。ここにきて再建モードってことにはならないよね。
性格の良さそうなメンバーを集めたことで成功した気もするだけに、どんな動きをしてくるのか。意外とケンバとか・・・はHC的に難しいか。慕っている空気感なかったしな。
プレーオフを目指していたマジックのフロントですが、はた目から見れば(10勝ってのはなくても)今シーズンの結果は望外の出来です。
その結果をフロントがどんな捉え方をして、オフに何をするのか。昨シーズンも驚きの方向転換をしたのですが、このオフの動きって想像するのも難しい。バージョンアップするならフォーニエのところですが、カイリーとか獲得できるとも思えないしね。
だからやっぱりブセビッチ次第。オールスターは大きな契約を手にして、オーランドのフランチャイズを支えるのか。それとも旅立ってしまうのか。
個人的にはあまりにも予想と離れた結果に驚くとともに、その良さがわかりにくいチームだったので、少しずつ面白い要素があり、だからといって解析するのも難しいチームでした。
クセモノというか、少し変わった強みがあっただけに、ラプターズ以外と戦ってほしかったチームでもありました。
ブセビッチは優秀な選手ですが、ちょっと価値が上がってしまったせいか、他のチームも欲しいには欲しいけど、そんなにあなたにお金は払えないって感じがします。
オフに手を上げそうなチームor(現実的に)ここに移籍すれば活躍しそうなチームってどこになりますか?
フルツはちょっとメンヘラになっているかもしれないので、淡々としているマジックでリハビリするのは悪くないと思います。
他のFAを狙って失敗したチームですかね。筆頭は若手をトレードするのを渋って、遅々として進まない、なんてことになりそうなレイカーズなんですけど・・・ウエストは辞めておいた方が・・・。
イーストだと、キャップスペースと再建を考えると良さげなチームがないですよね。
意外とホークスあたりが手を出したら面白い気はします。サラリー払っても、まだまだ若手たちが安いので痛くも痒くもありません。それでいて若手の成長にもチームの勝利にもつながりそう。残っている契約57Mのうち32Mがベイズモアとプラムリーという謎チームです。
あとはドンチッチ、ポルジンギスがいるマブス。こちらも57Mのうち31Mがハーダウェイとリーなので、余裕で支払えます。
マジックは他の対戦相手であれば、アップセットもあったように思うので本当にTORと当たったのは残念ですね。来期のステップアップに期待です
そうなんですよね。ラプターズのディフェンスが固すぎた。
久々のPO&先勝に心躍るも、ラプターズのガチガチ守備に、見ているこちらも心折られてのシーズン終了でした。
チーム上向き→センター移籍→ドアマット、の歴史が繰り返されないよう祈りたいです…言うほど上向いてないですが(笑)
プレイオフでのMCWはどう見られましたか?
個人的には残ってほしいのですが、フルツとの兼ね合いが…
MCWのハッスルプレーは心を打たれますよね。ただ多くのチームで、あのディフェンスはそんなに機能しませんでした。
ヘルプで追い掛け回すタイプのチームに行ってほしいのですが、シュート力がないからごく一部のチームにしか適応できないでしょうね。
でも3P決まったから、少しだけ株をあげたかな。
はじめまして。
マジックファンとして、どこかにこのチームについて興味深い考察をしてくれるブログとか記事はないかと探していたら辿り着きました。
今シーズンのマジックについて、Whynotさんがおっしゃっているように「仲の良さ」みたいな盛り上がりはないなって私も感じていました。ネッツみたいにベンチも全力で応援し、楽しんでいるというのではなかったです。悪い雰囲気ではないけどここまでの成績をおさめられるほど良い雰囲気があるとは思えていませんでした。
腑に落ちないなーと思っていたところ、この記事にある「穏やかな空気」っていうのでなんだかしっくりしました。確かに良い雰囲気を築くっていうのは「仲が良い」だけじゃない、適切な距離感をお互いが把握してるからこそっていうのもあるなと。もちろんキモチだけじゃどうにもならないことは分かった上で、それでも、ずっと勝てない中、これが選手たちが築いてきた一つの強さなんじゃないのかなと思えました。
最近の流行系というか、結局はシーズンを共に過ごす仲間たちなのでメンタルの重要性が高くなってますね。全体がレベルアップしているだけに特にバスケの能力以上のものが必要なのかと。
ロスなんて暴走として咎められても良さそうだけど、このチームにはそれがなく、フォーニエとブセビッチが許してくれる事がプレーしやすくなっていると思います。