ラウリ・マルカネンは美しい

マルカネンは美しい。背筋が立つ姿勢の良さとゆっくりと流れるような動きは舞を踊るような芸術性を感じます。

でも、「美しいって何だよ」というお話。

マルカネンの素晴らしさを書くのに、どう表現すべきか考えたのです。答えは簡単で「シュートの上手いビックマン」となるのですが、それってチャイニング・フライと何が違うのか。しかも、マルカネンは3P36.2%です。

「ラウリ・マルカネンはシュートの上手いビックマンで、昨シーズンはルーキーながら3P36.2%決めました」

こんな文章を読んで、一体誰が「マルカネンって良い選手なんだな」と思ってくれるのか。かといって、細かく書いていけばそれだけで何文字も書かないといけません。試しに書いてみましょうか。

 

「ラウリ・マルカネンはシュートの上手いビックマンで、スクリーンを掛け合いながらフリーになれるスペースをみつけ、殆どの3Pをキャッチ&シュートで打ちます。連携を活用できるバスケIQは無理のないプレー選択に繋げ、効率的に得点していきました。」

まぁまぁ良く出来ました。しかし、未だに「ヨーロッパ系のシュートの上手いビックマン」というカテゴリーから抜け出したとはいえません。せいぜい「将来はミロティッチになれそう」くらいにしか捉えてもらえないでしょう。

 

そう、ちょっと違うんだ。マルカネンはもう一段階上のスターになれる器である事を示したい。

実際にマルカネンはゴール下で66%の確率で決めるインサイドの強さもあるし、リバウンドだってルーキーではベン・シモンズに次ぐ7.5本を記録している。だけど他のルーキー達に比べると身体能力では劣るし、ハイライトは3Pを決めているシーンばかり。

いろいろ書いていくと、結局の所「シュートの上手いビックマン」のカテゴリーに戻ってきてしまう。

 

最終的に捻り出したのが「ラウリ・マルカネンは美しい」という表現。それは頭の中で捉えている特徴を明確に示しているとは言い難いけど、「マルカネンのプレーをみたけど、美しいという表現はなんか分かる気がする」と感じて貰いたいからでした。

では、何故そこに辿り着いたのか。順番に振り返っていきます。

マルカネンで印象深いのはある2つのプレーでした。ひとつはポルジンギスのスローインをスティールしたシーン。もうひとつはボールを運び、バックチェンジでディフェンスをかわしながらレイアップを決めたシーン。

前者は動画を探してたけど見つからなかった。代わりにカリーvsアデバヨ、カリーvsマルカネンの動画を観てみましょう。

アデバヨはディフェンスの良いビックマンです。しっかりと腰を落として広めにスタンスを取ってカリーに対抗しています。一方でマルカネンは割と腰高でカリーのシュートに対して何回もチェックに飛んで戻って追いかけて、最後にブロックをします。

ブロックしているのは単に高いからですが、全般的に動きに躍動感がなくスローにも関わらず、カリーの動きひとつひとつに対応しながらも逆を取られず直ぐに体勢を戻して次の動きに移行し、最後まで追いかけることが出来ています。

明らかに身体能力の高さで追いかけているアデバヨとは大きな差があり、フェイクに引っかかっているけどリカバリーの速さで対応出来ていることは印象的です。

 

これらの動きを見ていくと初めに感じたのは「非常に伸びやかな動きをする」でした。しかし、もう少し複数のプレーを観ていくと「予備動作が少ないのに身体が動いている」気がしてきたのです。同時に身体能力が低いのではなく、動きに”タメ”がないからダイナミックには見えず、だけど伸びやかな動きに見えるのです。

フェイクに反応しているのにバランスを崩さないのは、上半身の姿勢の綺麗さがもたらすぶれない体軸と体重移動の速さです。俗に言う古武術的な重心移動

 

次にこのハイライトの27秒からのプレー

コーストTOコーストを決めたのですが、何ともいえない不思議な空気感がありました。キレがあるわけではないけど、非常に滑らかだった一連のプレー。この滑らかさが印象的。

しかし超絶ハンドリングもなければ、スピードで振り切ったわけでもないのに、サディアス・ヤングが何もしていないかのようにレイアップを決められ、しかも緩急をつけたわけでもないのにヤングの方が先にすり抜けてフリーで打っています。

 

滑らかは滑らか、だけどディフェンスが無力化されるのは一体何なのか。

おそらく目の前にいるディフェンダーはプレーのつなぎ目がなさ過ぎて、次に何をしてくるのかを全く読めていない。オフェンス面でも「姿勢の良さ」「予備動作の少なさ」ディフェンスに後の先をとらせない上手さがあります。それは同時にマルカネン側は最後までプレーを変更することが可能です。

 

この2つのプレーを合わせて考えた時にマルカネンの特徴として

・予備動作が少ない

・姿勢が良く体重移動が早い

・プレーの繋ぎ目がスムーズ

そんな結論に辿り着いたのでした。それはまるで空手の演武だったり、日本舞踊、太極拳のような遅くて簡単なようでいて、ひとつの動作に対して身体の各部位が正しく連動している難易度の高いものです。

 

そんな印象を抱くと、ハイライトにある連続した3Pシュートも少し違うものに見えてきます。

パスを受けてから打つまでの一連の流れもまた膝を曲げるような予備動作が少なく、パスを受けた腕も力感なくリリースポイントに動いています。ムダがないから実はボールを貰ってからシュートまでがかなり早い。

これらはポストアップからのターンシュートとスピンムーブの選択でも同じで、予備動作がなく上半身の動きは最低限のため、何をしてくるのか読めない特徴が出てきます。

 

マルカネンのプレーは全般的に「ディフェンスの対応が悪かった」気がしてくるものが多くあります。

超絶ハンドリングもないし、多彩なフェイクもない、スピードあふれるドライブでもなければ、トリッキーなムーブでもない。高さがあるとはいえ、あまりにもアッサリと決めてしまうのは「マルカネンは凄い」という印象を抱かせないものでした。しかし、連続してみていくと

「ディフェンスに反応させない」ことこそがマルカネンの真骨頂

な気がしてきます。それではハイライトを観てみましょう。

格闘技の国である日本ではこの「予備動作がない」ことの重要性はよく知られています。構えの位置からタメることなく身体が動いてくるからバランスを崩すこともなく、背筋の張った上半身と腰高のようでいて重力を利用した体重移動は次の動きへの反応を早くし、伸びやかな身体の動きに繋がります。

次の動きが読めないことは目の前のディフェンダーにはより苦しく見えるでしょう。外から見ている以上にマルカネンは止めにくい選手なのではないでしょうか。

そこに1つひとつの動作に繋ぎ目がなく、非常に滑らかな動きをしていくのだから、単なる「シュートの上手いビックマン」にカテゴライズするのはちょっと違う。もう1つ上のスターになれる素質をもっているということを示したい。だから捻り出した言葉が

 

ラウリ・マルカネンは美しい

よく「ダンスをするようにプレーする」という表現を使いますが、マルカネンの場合は「演舞のようにプレーする」のです。上半身の姿勢の良さと予備動作なく伸びていく身体、バランスが崩れず次のプレーに移行するスムーズさ等々。

豪快なダンクや素晴らしいハンドリング、周囲を置き去りにするスピードなど将来性を感じさせる主たる要素を持ち合わせていないのがマルカネンです。ポルジンギスのユニコーンブロックのように、単なるシュートの上手いビックマンではない才能をみせつける武器を紹介するのは難しい。

だけどラウリ・マルカネンには「滑らかでムダのない美しいプレー」という武器がある。

 

美しさを武器にもう一段上のステップへ進む新シーズン

これからのゲームレポートの中でも「美しい」という言葉で端的に表現したいプレーは、ディフェンスからすると何をすれば良いのか読むことが出来ないプレーなのです。

 

 

ラウリ・マルカネンは美しい” への4件のフィードバック

  1. FA補強も含めて今シーズンのCHIにはプレイオフ進出のチャンスがあると期待してるのですが管理人さんはどう思いますか?

    1. ブルズ全体を書くのがひとつのテーマになっています。
      それをまとめると、こういうマルカネン1人に文字数を費やすのが難しいので、ショートスタイルにして記事を増やすことにしました。

      期待値はかなり高いのですが、ダンとラヴィーンのところが結構な問題だと思っています。

  2. 古武術バスケの甲野善紀先生の話を思い出しました。
    重心は高く常に不安定であれば動きやすく、重心が低く安定させてしまうとかえって対応出来ないそうです。
    科学的要素が強くなってきた各種現代スポーツの中で、逆に原始的(直感的?)な身体の使い方が出来る選手が少なくなってきているのかも知れないです。その科学的には説明しづらい有効さを評価するときに「美しさ」って言う表現になったのかなと思うと面白いですね。

    1. 古武術の方がどちらかというと科学的なんですよね。今は普通にトレーニングの中で筋肉を使うのではなく、効率的に動かすためにヨガ的なものも流行していますし。
      スポーツするには筋肉で動こうとするのが自然なので、多分マルカネンはかなり意識して動いていると思います。ディフェンスはともかくオフェンスに関しては特に。

      ムダは省きたいけど、どうしても省けないものです。武術も如何にムダを省くかの追求で進歩してきたのだと思います。

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