◎時代は3Pなのだよ
ジャズの特徴と言えばゴベア中心のディフェンスであり、ジャズの弱点といえばゴベア中心のディフェンスでした。特に近年は強力なオフェンスで勝ち切っていただけで、全く守れないチームへと変貌していました。
〇ブロック 4.9 ⇒ 5.1
そしてゴベアから3ウイングビッグへと移ったことで、ディフェンスは劇的に変化しています。でも、ブロック数は大差なく、ゴベアがいなくなって増えています。もう少し変化が激しいDIFF中心に観てみましょう。
〇6フィード以内
被アテンプト 27.2本 ⇒ 36.9本
DIFF △1.0 ⇒ △0.8
今やジャズのインサイドを攻めることは何も怖くありません。リング近辺の被アテンプトが大きく増えており、ゴベアがいなくなったことを感じさせます。ただし、トランジションを食らいまくっていることの方が大きいので、単純化は出来ないです。
これに対してDIFFにはあまり変化がありません。攻めこまれてはいるけど、それなりに頑張って守れています。
〇3P
被アテンプト 34.6本 ⇒ 30.3本
DIFF △0.2 ⇒ △3.0
一方で3Pは被アテンプトが大きく減り、DIFFも改善しました。ってことでジャズディフェンスはわかりやすく
ゴール下の強みよりも、3Pを止めることにシフトした
そんな傾向がみてとれます。被フリースローも19.3本から23.9本に増えており、ゴリゴリにファールドローもされています。明確な素晴らしさは消えたって事です。
しかし、大切なのは3Pディフェンスの強化が「3ウイングビッグで達成された」ということです。ゴベアがいなくなったから・・・はわかりやすいですが、かといって3Pを守る担当が増えたわけではありません。
なんだったらコンリー、クラークソン、ビーズリーとなかなかに問題のあるガードディフェンスなのに、3Pを止めているのだから意外性のある数字です。
〇被3Pアテンプト
コンリー 4.1本
オリニク 4.0本
バンダービルド 3.6本
ビーズリー 3.6本
セクストン 3.2本
クラークソン 3.0本
THT 2.9本
マルカネン 2.6本
何故かマルカネンだけは異常に打たれていないことがわかります。確率も28.6%に抑えており、極めて優秀な3Pディフェンダーをしています。
ここを除くと、やはりオリニクとバンダービルドの被アテンプトの多さが目立ちます。なおオリニクはDIFF11.3なので、決められまくってますけどね。
とはいえ、多くても4本台なので特定の選手が狙われていないこともわかります。ブロンソンなんて7.1本も打たれているからね。
頻繁にスイッチしているディフェンスですが、全員のインテンシティが高く、それでいてバンダービルドまでがPG守れるので特殊な機能性を誇っています。サンズ戦はブッカーにバンダービルドつけてたもんな。
マルカネンはAD、エリック・ゴードン、ヨキッチ、ポール・ジョージとマッチアップ相手のポジションがバラバラ。
バンダービルドもジャバリ・スミス、ブッカー、ハンター、アーロン・ゴードンとバラバラです。ややマルカネンよりはPF系統を守ることが多いかな。
オリニクについては、ケニオン・マーティンが最も多い相手だったものの、アダムス、エンビード、バランチューナス、ヨキッチ、ズバッツと基本的にセンター相手です。ケスラーも同じ。
つまり3ウイングビッグの中でセンター担当はオリニクとケスラーに決まっており、マルカネンとバンダービルドはガード相手でも関係なくマッチアップしています。この2人がサイズと機動力を兼ね備えたディフェンスをすることで、相手の3Pを大きく減らしているわけです。
マルカネンとバンダービルドのマルチディフェンスが支える3Pディフェンス
いやいや、見事なまでに2人の特徴を使い切っています。昨シーズンもマルカネンはキャブスの3ビッグにいましたが、そこではSFとしてPGディフェンスしまくっていたのですが、かわりにオフェンスの役割が少なかったので、ディフェンダーとしてプレーしていました。今はオフェンスの主役なのに、ディフェンスも奮闘しているんだから偉いよね。
バンダービルドはウルブズディフェンスの「隙を埋める」担当でした。1人でどれだけの仕事をしていたのかってね。それは今のウルブズディフェンスが困っている事なので、穴埋め担当はお手の物。
ということで、ジャズの特徴である3ウイングビッグを考えてみました。これを特徴にしたのは非常に面白いですが、どこから意図していたのかが気になるところです。
ゴベアのトレードでバンダービルド獲得
ドノバンのトレードでマルカネン獲得
フォンテッキオをFAで獲得
ボグダノビッチのトレードでオリニク獲得
最後のオリニクが決まったところで「本気でイタリア式3ウイングをやりそうだ」と思いましたが、逆に言えばオリニクがこなければ難しそうに見えました。ラストピースのようにハーディが要求したのかもしれません。
さて、予想をはるかに超えて勝ちまくっているジャズですが、予想と違ったのは
コンリー、クラークソン、オリニクを重用し
セクストン、THT、ケスラー、アバジは控え
ってことでもありました。アバジやNAW、ボルマロにはプレータイムがなく、ケスラーとTHTは試合に出ているとはいえ15分程度です。再建チームとして若手にチャンスを与えると思ったら、ベテラン使って勝ちに行ってます。
マルカネンがエースとして設置され、ビーズリーやクラークソンといったインスタントスコアラーがいるならば、5割とは言わなくてもドアマットにならないのは、ある程度の想定はありました。あくまでも40勝を目指す程度だけどね。ベテランで勝ちすぎでもある。
これだけ勝ってしまうと、さすがに若手の成長へと軸足を移すのも違うよね。どうするんでしょうね。
また、3ウイングビッグが最大の特徴ですが、これを中期に渡って続けるのであれば、集める選手も特殊になってきます。ちょうどジョン・コリンズが売りに出された情報がありますが、まさに狙いどころではある。でもマルカネンとバンダービルドを出したら元も子もない。
続けるのか、変化するのか。起用する選手も、使う戦術も、上手くいっているからこそ、微笑みながら迷いそうなジャズでした。