取扱説明書「ドノバン・ミッチェル」

⑤論理のパサー

ジャズに来たコンリーは期待通りに、ルビオとは雲泥の差がある3P成功率を残します。むしろグリズリーズ時代よりも遥かに安定して成功率が上がっており、ジャズのシューターオフェンスにフィットしました。

ただし、2Pに関してはルビオと大差なく、本当にシューター寄り(プルアップは多いけどね)のプレースタイルなので、見た目としては「ルビオが決められなかった3Pが決まるようになった」でしたが、見えにくいゲームメイクの部分では大きな差が出ていました。

また、ボグダノビッチがPFになったことでイングルスやオニールを含めて高確率シューターがコートにワイドに広がり、ダイナミックで論理的なストレッチ3Pチームになりました。

〇3Pアテンプト
18-19シーズン 34.0本
(コンリー加入後)
19-20シーズン 35.2本
20-21シーズン 43.0本
21-22シーズン 40.3本

こうみると初年度は大したことないのね。次第に研ぎ澄まされた戦術へと進化していき、いまやスナイダーのバスケは3Pになっています。ルビオ時代はそんな印象なかったのにさ。

この3Pが増えるにつれて、わかりやすく減った要素もあります。それが何故かパス数なんだ。

〇パス数
18-19シーズン 311本
19-20シーズン 296本
20-21シーズン 289本
21-22シーズン 266本

今ではすっかりオニールがパス中継役になりましたが、ルビオ時代は普通にルビオがチーム最多のパスを記録し、そこからチームとしてもリーグトップクラスのパス数を誇っていたのに、3年が経過した今ではリーグ最低レベルのパス数です。

3Pの増加に反してパスは減り、1つひとつのパス判断が重要になっていった

よく言えばプレー精度があがり、悪く言えば個人の判断力任せになっていきました。ところがコンリーはアシストは稼ぐ割に、あまりゲームメイクをしてくれず(グリズリーズ時代の終盤もそんな感じ)、次第にドノバン起点が増えていきました。

〇アシスト/ターンオーバー
18-19シーズン 4.2/2.8
19-20シーズン 4.3/2.7
20-21シーズン 5.2/2.8
21-22シーズン 5.3/3.0

平均25点が普通になっていった一方で、アシストも5本を超えながら、ターンオーバーは抑えており、起点としての判断力が明確に向上してきました。昨シーズンのターンオーバー3.0がなければ完璧だったのにね。

41.3本のパスから5.3アシストと、少ないパス数で効率よくアシストを稼いでいますが、細かいところを通したり、イマジネーション溢れるマジカルなパスをだすというよりも

ダイナミックなキックアウトパス
ドライブで自分に引き付けての裏のスペースへのパス

この2つのパスが目立つので、一発でワイドオープン3Pを作ったり、ドライブからゴベアのアリウープに繋げます。もともとのパスセンスというよりはチームオフェンスのルールの中で的確な判断をしており、ディフェンスの動きに合わせてのジャッジです。

この辺が棒立ちシューターと、押し込むしかないゴベアというチームの問題も作ってしまっているんだけどね・・・

ところでYouTubeでドノバン・ミッチェルのパスを検索すると、出てくるのは「ゴベアへのパスを拒否」のハイライトです。この動画の面白いのは「なんでパスしたくないか」がハッキリと示されるからで、他のチームメイトもパスしなくなっていきます。なお、途中で唐突に広告入るので気を付けてね。

パスキャッチ能力が低い
ダンクにいける距離以外はボールを貰っても意味がない
でもポジショニングも悪く、ジャマをすることも多数

正直、この動画みてゴベアにマックス払う気にはなれん。どんなにディフェンス力があっても、基本的なことが出来ないから戦術適正が狭すぎます。

ここでアトキンソン産駒でゴール下のスペースを作っておくことを仕込まれたアレンのハイライトも貼っておきましょう。ガーランドとアレンで60点取った試合です。同じくゴール下専門に見えてリングから距離のある所でパスを受けてもOKなのがゴベアとの違い。

まぁこれは相手がウィザーズだからっても事実なので、ゴベアの酷いハイライトと、アレンの良いハイライトで比べさせるミスリードです。でも、事実としてもパスを受けてフィニッシュに行く能力・・・「パスを受ける前のスペースの作り方とキャッチ能力」はゴベアとアレンでは段違いです。

1:50あたりのルビオ→アレンは、ルビオはゴベア相手には使えず、フェイバーズにはガンガンやらせていたプレーです。ドノバンもフェイバーズの方がやりやすかったのですが、出戻りした頃にはゴベア仕様のロブパスだらけになっており、高さがないフェイバーズは苦しみました。

これは別にフェイバーズの責任でも、ゴベアの責任でもありませんが、ジャズが「同じことしかできない」チームへと進んでいった証拠でもありましたとさ。いずれにしてもドノバン・ミッチェルは3年目以降に

「論理的なパス判断をする起点役」へと進化していきました。

この進化は少なくとも選手個人としては大きな成長でした。ジャレット・アレンやモブリーというゴベアよりも優れたフィニッシャーがいるキャブスなので、3Pを決めるウイングさえいれば、ドノバンの良さは出しやすくなるでしょう。

しかし、この進化により失われた要素もあります。

次は3年目以降の欠点 ⇒

取扱説明書「ドノバン・ミッチェル」” への9件のフィードバック

  1. 西ではグリズリーズの次にジャズをよく見ていましたが、アダムズとゴベアのIQの違いが前シーズンは如実に表れてましたね。
    スクリーンで棒立ちすら出来ずにちょくちょく動いてファウルとられるゴベア、パス受けるとお手玉しがちなゴベア、小学生みたいなおふざけでコロナ感染を拡大させたゴベア、そりゃ愛想も尽きるわ。
    しかしドラフトギャンブルやるよりも柱としてドノミチだけ残して再建する方が安全確実だと思うんだけどチームが先に愛想尽かされたのかなぁ。

    1. 相手がスモールになったときに、オフェンスで何もメリットを生み出せないのが致命的でしたね。
      IQなのか、スキルなのか。なんなのか。

      ドラフトギャンブルは、エインジがセルツで味を締めちゃったんでしょうねぇ。

  2. ゴベアだけいなくなってもPOに絡んできそうだったので、ドノバン君がいなくなって、やっとジャズはPOに絡んでこないと安心しているMEMファンです。
    「エースがファーストラウンドから全力ではPOは勝ち切れない」っていうのを踏まえて、昨季のモラントはファーストラウンドは抑え気味にしたのだと思っています。ただ、今年はルーキー増やしすぎて、戦力落としすぎたと思っているので、どうなるやら心配です。

    ドノバン君の最近は、ハンドラーやりすぎてる感があったので、ガーランドとうまいことやって欲しいですね。キャブスのHCをあまり信じていないのでそこが不安ですが・・・

    1. キャブスのHCさんは、コンリーをこんな風にした原因でもありますしね。こんな感じじゃなかった気がするのに。

      普通にアヌノビーやマルカネンみたいな選手とドノバンを組ませたら面白そうでしたが、今って再建時なのかな?

      モラント君はケガをしないように。

  3. コンリーと4年契約を結んでサラリーダンプでフェアバースを放出したのがキツかったですね。

    あとダニーエインジやんちゃすぎ。

    1. 1年は殆ど動かずに、突然やんちゃしすぎるから困りものです。

      なんだかんだとイングルスの件から一気に、でしたね

  4. ルビオがサンズに居たシーズンのブッカーとほぼ同じ役割が当てはめられそうなんですよね。
    5年ほど前は、加速力で突破するミッチェルと、体幹の強さでシュートをねじ込むブッカーっていう印象でしたが、どっちもオフェンスの引き出しが増えることで持ってるスキルが似通ってきているように思えます。
    どちらもルビオと組んでた時期はアイソレーション担当で、ルビオがいない時期にオフェンスの起点としてPG寄りの技術を身に付けていってたのも似てますね。

    1. 確かに似ていますね。
      次にきたのが、クリス・ポールとコンリーの差なのか、それともエイトンとゴベアの差なのか。
      なんかちょっとずつサンズの方が上だなぁ。

      良いSGエースを育てるにはルビオを取れって事ですね

  5. おもしろい記事でした!自分はドノバン3年目以降は見なくなったのですが、プレーはきれいになったけど面白くない、みたいな印象でした。プレーオフだけは見ましたが。1年目とかの3.4コーターの、なんだか理由もわからずディフェンスをぶっ壊していく感じのドノバンがまた見れるとしたら、めっちゃ嬉しいですね〜。ドノバンはもっと自分勝手にプレーしてほしいなあという感じがあります。

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