これまでの特集的な記事をチーム毎にまとめ直してみたところ、マブスだけは1回も書いたことがありませんでした。これはマズいと言うことでマブスについて書くのでした。
折角なのでマブス編は前後編になります。今回は「ドンチッチ予想」ということで、いつかそのうち「ドンチッチ結果」を書けるようにするわけです。今回は予想をアンケート方式にして、マブスのプレビュー編にも繋げます。1度で3回美味しくするズルいやり方です。
数学界では1985年に提起されたABC予想という「きっとこうであるはずだけど、証明は出来ないんだ」みたいな予想がありまして、それを数学者達は頑張って説いていきます。27年後の2012年に京都大学の望月新一教授が「宇宙際タイヒミューラー理論」という新たな理論を駆使して証明したと発表されました。しかし、「宇宙際タイヒミューラー理論」があまりにも難解すぎて、専門家達もそれが正しいかどうかを検証するのに5年もかかりまして、専門誌に掲載されたのは5年後の2017年でした。
ドンチッチについてもルーキーイヤーで1つの結果がわかるとはいえ、本当にドンチッチの価値がわかるようになるのは5年後になるでしょう。その時まだ24歳という若さです。
◉ハリソンバーンズの飛翔
本題に入る前にTwitterでコメント頂いた2つのテーマを処理しておきましょう。ひとつがこれ「ハリソンバーンズの飛翔」です。うん、よくわかんない。飛翔ってなんだよ!
ハリソン・バーンズ
18.9点 FG44.5% 3P35.7%
6.1リバウンド 1.5ターンオーバー
ターンオーバーの少なさは褒めて良い部分ですが、それ以外は何とも言い難い数字が並びます。もっと悪ければ批判できるのに。その特長はシュートレンジがちょっと面白いこと。アテンプトで並べます。
ノーチャージエリア 3.8
ペイント内 3.5
ミドル 4.1
コーナー 1.2
その以外の3P 3.1
何とも言えずバランスよく打っています。普通は「ミドルが多くて現代的じゃないぜ」とかいうのですが、そこまで多くはなくて、ちゃんとペイント内まで攻め込んでいます。ゴール下は少なめですが、文句を言うほどでもないよね。
確率もミドルで40%を超えており、3Pがもう少し決まればという程度しかケチをつけられません。かといって褒めることも出来ません。アリウープが0なのはちょっと見つめ直した方が良い。
デニス・スミスからのアシストが一番多いけど、それも0.9しかなく0.5くらいまでに4人もいて、満遍なくパスを貰っています。つまり
誰からでもパスを貰い、コートのどこからでも平均的に得点する
という「特長のなさが特徴」です。非常にバランスが良いとも言います。
そしてこれはマブスというチームを表している部分でもあります。ビックマン以外はポジションこそ違えど役割はあまり変わらず、常に全体がバランスを取って動いています。特殊なシューターであるノビツキーのアテンプトが少し多かった以外は全員アタックだった優勝時と同じ流れです。
現在は弱小チームになっているマブスですが、ビックマン以外の4人が自分で得点出来るタイプを並べるバランスアタックの象徴的なチームオフェンスを継続しています。
ハリソン・バーンズが個人力でチームをプレーオフに導くようなエースへと飛翔はしないでしょうが、このバランスアタックを実現するのには適した選手です。マックス契約という高すぎるサラリーですが、その代わりに次回の契約更新で多少お得な契約をしてくれるなら、特別なスターを好まないカーライル式には適した選手になりそうです。
なんとか飛翔になったかな?
◉10-11シーズン優勝時
もうひとつのテーマが優勝時との比較です。
当時の個人スタッツを並べてみましょう。
得点 | FGアテンプト | |
ノビツキー | 23 | 16.2 |
キッド | 7.9 | 7.5 |
テリー | 15.8 | 13.3 |
マリオン | 12.5 | 10.4 |
チャンドラー | 10.1 | 5.5 |
バレア | 9.5 | 8 |
ストヤコビッチ | 8.6 | 7.4 |
キッドが少ないだけで非常にバランス良く得点しています。ベンチの2人はプレータイムが少ないだけなのでアテンプト数には大差ありません。この特徴は現在でも受け継がれているみたいです。
で、これをプレーオフにしてみます。
得点 | FGアテンプト | |
ノビツキー | 27.7 | 18.9 |
キッド | 9.3 | 7.7 |
テリー | 17.5 | 12.8 |
マリオン | 11.9 | 10.7 |
チャンドラー | 8 | 4.7 |
バレア | 8.9 | 8.2 |
ストヤコビッチ | 7.1 | 6.3 |
プレータイムも変化しているのですが、それにしても一気に偏り始めました。ベンチの仕事はあまり変化していないけど、スターターの方は普通のチームくらいのバランスになっています。やっぱり最後はエースが働かないと! そしてそれを促すキッドがいたということで。
そしてプレーオフでのアシスト数は平均20.1本しかなくウォーリアーズが覇権を握る現在では非常に少ないチームになります。
当時のマブスのシーズンアシスト数は23.8でリーグ首位のロケッツと同じです。つまりはリーグで最もアシストをするチームでした。バランスアタックであり、キッドがいたよ。
昨シーズンのマブスのアシスト数は22.7本と大きな変化はありません。ところがこの数字はリーグ19位と低水準なのでした。
当時と現在では試合のペースが全く違うので、アシスト率で比較すると10-11シーズンは63.7%です。これだと昨シーズンのウィザーズを上回りリーグ3位です。
そんなわけでバランスアタックのマブスですが、それを引き出すためのアシストを増やさないといけません。キッドはいないけどデニス・スミスとドンチッチが成長することで優勝当時の水準まで引き上げることが当面の目標になりそうです。
こうしてドンチッチ予想へのひとつの問題提起が出来るのでした。マブスはアシスト率60%を突破出来るのかどうか。
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◉ドンチッチを確認する
19歳にしてユーロリーグMVPなんていう特別なことをしている選手です。NBAで言えばファイナルMVPを手に入れたようなものです。リーガとユーロリーグを合わせたスタッツがこちらから確認できます。
14.5点 FG45.6 3P29.1%
4.6アシスト 5.2リバウンド
意外とリバウンドが多いよね。ではリーガの動画を確認しましょう。
その特徴はコートビジョンの良さとシュート力にありそうです。ただしシュート力といっても3Pの確率は30%を下回っており、これはNBAにはいってからトレーニングが必要です。19歳は決まらない選手も多いから心配することはありません。
シュートにはもうひとつ「シュートバリエーション」があります。ドンチッチはステップバック3Pがお得意であり、ドライブするとフローターを持っています。時にダンクのハイライトもありますが、それ以外はシュートの際にあまり飛んでいないのでコントロールして打ちたいようです。
これだけの実績を残せる19歳はアメリカにもいないのでドラフト1位指名でも良かったわけですが、サンズやキングスのチーム事情もありつつ、アメリカとヨーロッパのバスケの違いも出てきます。一般的にはヨーロッパの方がより戦術眼が必要となり、チームオフェンスをすり込まれています。
一方でアメリカはそれを補うかのように、1つひとつのプレーが細かく設定されており、それを実行するために身体能力的な要素を問われます。
ドノバン・ミッチェルはコービーに「ボールを貰うべきポジションをディフェンスに押し出されてはいけない」みたいな指導をされていましたが、押し負けてはいけないのがアメリカで、前に出てきたら裏を取るのがヨーロッパなイメージです。
ドンチッチの課題はアメリカ的にはスピードとフィジカルと指摘されています。とはいえ身体能力には乏しいトレ・ヤングがNCAAで得点王とアシスト王を1年生で獲得したように、スキルと戦術眼で補える要素ではあります。
ドンチッチの良かった点はハイライトの中でステップバック3Pが多かったように、タイミングをずらし、ディフェンスとの隙間を作ってから打てることです。前後の駆け引きはNBAでも通用します。これが高さを活かしたジャンプシュートだと簡単に止められる可能性があります。
フローターに関しても高さではなく、タイミングと周囲の動きへのパスフェイクを駆使して打っているのでNBAでもチームと高さに慣れれば対応出来るはずです。
全般的にスキルは通用しそうで、そのベースとなるシュート力やフィジカルの部分を強化するルーキーシーズンになる予想です。
◉NBA選手と比較する
誰か良い比較対象がいないかなーと思ったのですが、昨シーズン加入したキングスのボグダノビッチのユーロリーグでの成績とNBAでの1年目を比較してみましょう。
ボグダン・ボグダノビッチ 16-17
14.6点 FG50% 3P43%
3.6アシスト 3.8リバウンド
ユーロリーグだけなので試合数が少ないのですが、見事に得点が同じです。一方でアシストやリバウンドはドンチッチの方が上です。シュートの堅実性でボグダノビッチが大きく上回ります。
では翌年のキングスでのボグダノビッチの数字を観ましょう。
11.8点 FG44.6% 3P39.2%
3.3アシスト 2.9リバウンド
こうすると何となく「少しずつ落ちる」くらいの感覚になります。決して大きく落ちることはありません。もっともボグダノビッチは25歳なのでドンチッチよりも完成されています。ドンチッチは成長して補うか、完成度で劣るのか。
なんとなくボグダノビッチを参考に数字をいじってみましょう。
14.5点 → 11.5点
FG45.6% → 40%
3P29.1% → 29%
4.6アシスト → 3.5アシスト
5.2リバウンド → 4.0リバウンド
これくらいが妥当な線かもしれません。3Pは伸びそうですが。マブスはデニス・スミスのプレータイムも30分以下と抑え気味にしたので、ドンチッチにもそこまで無理をさせないでしょう。
これらの数字は昨シーズンのルーキーで言えば、そのデニス・スミスとディアーロン・フォックスくらいの水準です。
デニス・スミス
15.2点 FG39.5% 3P31.3%
5.2アシスト 3.8リバウンド
ディアーロン・フォックス
11.6点 FG41.2% 3P30.7%
4.4アシスト 2.8リバウンド
まぁ妥当なラインではないでしょうか。デニス・スミスの方がアテンプトが多くなりやすい環境だったので得点やアシストは多いものの、2人の活躍はほぼ同じようなものでした。ドンチッチはプレー機会をデニス・スミスと分け合うので15点取るというのは出来すぎかもしれません。
なお昨シーズンのルーキーで言うと、スーパーエースになってしまったドノバン・ミッチェルは20点越えもFGはそこそこ。次が何とクズマですがFG45%、3P36%という高いシュート能力で16点取りました。これくらい決めればドンチッチも得点が伸びます。
一方でより高確率だったテイタムはアテンプトが少ないので13.9点止まりです。
ちなみにもう1人のボグダノビッチ(ペイサーズ)は13-14シーズンに14.8点でFGや3Pもほぼドンチッチ並みでしたが、NBAでは下積みから始まっているので比較しにくいです。
ボヤン・ボグダノビッチ
31分 → 24分
14.8点 → 9.0点
FG47% → FG45%
3P30% →3P36%
2.4R → 2.7R
1.9A → 0.9A
3Pが向上していますが、これはこの年のユーロリーグでの本人の成功率が悪く、前の2年間は40%オーバーです。シュート中心に組み立てるオフェンスとしては落ちないものの、アシストが低下し得点も減ったように自分で行く能力がないと苦しそうです。ちなみにヨーロッパだとボグダノビッチは無双している。
前述の通りバランスアタックのマブスなので、15点取るというのは出来すぎ。その代わりアシストを伸ばしたいところです。アシスト面では昨シーズン多かったルーキーとしてシモンズとロンゾがいますが、この2人のアシスト数が多い理由には似た部分があって、
・自分でディフェンスリバウンドを取って速攻にする
・アウトサイドから打つビックマンがいる
前者は非常にわかりやすいですが、後者は要するにアウトサイドに出ただけでフリーになってワンパスで打ててしまうと言うこと。凄いパスとかではなく稼げてしまうので、実はロンゾはロペスへのアシストが多い。シモンズにはエンビートとサリッチとイリャソバがいました。
マブスの場合は4人がアウトサイドに広がり、ビックマンを活かしますが、ノビツキーもいるのでアウトサイドシュートへのアシストも出来ます。デニス・スミスはノビツキーへのアシストが0.9ありました。
何人もいたビックマンも合計すると1.5近くになるので、割と稼げる環境です。そしてそこにデアンドレ・ジョーダンが加わります。ドンチッチがフローターとロブパスを同じフォームから使い分けられると非常に面白くなりそうです。
関係ないけど3位のゴベアーの守備と倒れ方危なすぎるよね。ちょっとケガしやすい理由がわかる。
そんなわけでチームとして全員アタックするし、アシスト率60%超が求められているし、そこにジョーダンも加わるしで、アシスト数はそれなりに期待して良さそうです。ヨーロッパでの成績から3.5くらいの予想と、デニス・スミスの実績から5.5くらいと幅広くなってしまうかな。
◉アンケートタイム
そんなわけで結果が出る頃には管理人含めて誰もが忘れているでしょうが、ここまでの内容を元にドンチッチ予想のアンケートを実施します。得点とアシストの予想は大体こんな感じです。
〇得点
11~12点が現実的。3Pの確率があがって15点とれればかなり良い結果
〇アシスト
4本前後。チーム全体の機能性では6本までいけば素晴らしい結果
これを元にアンケートな訳ですが得点はこんなイメージ
①残念! 10点に届かず FG40%未満
②標準的 10~12点 FG40%前後
③頑張った! 12~15点 FG43%前後
④素晴らしい! 15点以上 FG45%超
ドンチッチ予想をアンケート
1年目の平均得点はどうなるのか?
— whynot! (@whynot_jp) August 9, 2018
アシストはこんなイメージ
①何しているんだ! 3本以下
②及第点 3本~4.5本
③オフェンスの中心 4.5本~6本
④チームを勝たせる 6本以上
ドンチッチ予想をアンケート
1年目のアシスト数はどうなるのか?
— whynot! (@whynot_jp) August 9, 2018
◉チームの目標
さて、マーク・キューバン的にはドンチッチを獲得したことで「もうタンクはしない」ということですが、デアンドレ・ジョーダンを手に入れたこともあり、確かにベースは出来てきました。将来性があるという意味ではない。あとはここにFAになったアンテトクンポを合流させるのが将来の目標なのかな。
デニス・スミス、ドンチッチ
バーンズ、マシューズ、ノビツキー
ジョーダン
ていうか、カーライルって「自分がHCの限りはノビツキーはスターター」って発言していた気がするけど、誰を落とすんだろ?
マブスのガード陣ですがヨギ・ファレルは出て行き、バレアはもうひとつ年を取ります。2人のFGとアシストはこんな数字です。
ファレル 42.6% 2.5A
バレア 43.9% 6.3A
主にこの2人のプレータイムがドンチッチに譲渡されていくわけです。それを踏まえてチームの数字がどう変化するかが最後のドンチッチ予想になります。
17-18シーズンのマブス
FG 44.4%
アシスト率 59.4%
管理人の予想は「FGは向上し、アシストは低下する」です。
FGについてはここまでの内容通りドンチッチ本人では落ちそうですが、デニス・スミスの成長とジョーダンで上がる可能性を否定できません。45%を超えてもおかしくないです。
アシスト率についてはドンチッチはファレル以上にアシストするでしょうが、バレアが低下してしまうことと、ドンチッチが自分で打つパターンがマイナスに作用する気がします。
つまり両方とも本人の成績とチームの成績は逆に作用する予想です。
ドンチッチ予想をアンケート
個人成績は正直、どうでも良い。それよりもチームがどうなるのかが重要です。基準になるのは昨シーズンのチーム成績
17-18シーズンのマブス
FG 44.4%
アシスト率 59.4%それぞれ上がるのか下がるのか。
— whynot! (@whynot_jp) August 9, 2018
さて、これで何とかマブス特集が出来たよ。唯一何も書いたことがなかったチームでした。珍しくルーキー予想なんてものをしたけど、1年前のベン・シモンズほど確信を持った予想は出来ないね。シモンズも活躍すると思ったけど、予想以上だったし。
ルーキーはどんなプレーするかわからないので、新シーズンの楽しみですが「このルーキーのために試合を観る」というのはドンチッチの他にはトレ・ヤングとマービン・バグリーを予定しています。
ヤングの方はチームの中心であり、他にもハーターやスペルマンがいます。ホークス自体が生まれ変わるのでチームは勝てなくても楽しみにしている要素がかなりあります。スタッツを稼ぎやすいのでトレ・ヤングは新人王候補だと思うのですが、全く人気無かったね。
バグリーに関しては新人王はない気がしていますが、その才能というか優勝するために必要な要素をもっとも備えている選手だと思っています。ペリメーターでも守れそうなスピードに、チームメイトに指示を出すリーダーシップ、サイズのハンデが関係なくハードワークを備えており、スキルレベルも非常に高かった。
ホークスとキングスはそれなりに書くことがありそうですが、マブスは果たしてどうなるのでしょうか。ドンチッチ予想だけで終わってしまったりして。
ハリソンバーンズの無茶振りに応えていただき、ありがとうございました笑。
ウォリアーズ時代の歯車を綺麗に回す役割からエースへ、というような移籍だったので彼の飛翔(スタッツアップ)=マブスの飛翔(プレーオフチーム)かな、とマブスというよりハリバンファンとして期待を込めてお願いしました!
が、今オフの補強と台頭してきたガード陣の存在もあり、元の役割へと戻って行きそうですね…
ただあまり注目されてませんが優秀なSFであることは間違いない!と思いたいところですw
SFが強いところが結局上位に食い込んでいるので、今年は噛み付いていただきたい!
見た感じの役割は似ていますが、ウォーリアーズでは「空いたスペースを埋める」ことで歯車を回していましたが、マブスではそれ自体がエースの役割になっています。だからエースである事は変わらないし、マブスの選手はそれ以上を求められないということです。
デニス・スミスはちょっとドライブ系のイメージが強すぎますが、ドンチッチも含めてポジションこそ違えど、全員が歯車を回すことを求めるのがカーライル流というのが、バーンズを通してわかりやすくて良かったです。