オフの主役となったのはまさかのスパーズ
冷静になって考えればレナードがいない中で、とてもよく頑張ったのがスパーズ。内容的にはプレーオフ行ったのが奇跡な感じだけど、ひとつひとつの完成度の高さとオルドリッジのスーパーっぷり、そしてジノビリの勝負強さで勝ち残りました。
レナードは出て行ったけど、お土産にデローザンとパートルを残していったのだから、純粋に戦力アップだよ。でもESPN先生はブレイザーズ同様にプレーオフ圏外にしていた。ちなみに先生は1年前もナゲッツ躍進予想だったはず。
攻撃力 ☆☆☆
守備力 ☆☆☆☆
勝利の美酒度 ☆☆☆☆
先行投資度 ☆☆
スター選手度 ☆☆☆☆
若手有望度 ☆☆
戦術期待度 ☆☆☆☆
チーム成熟度 ☆☆☆☆☆
スーパープレー度 ☆☆
+アルファ度 ☆☆☆
◉レナード問題の影で進んだ補強
レナード問題は言い出すと切りがありませんが、オフになった瞬間から残留させたい希望はありつつも放出する可能性を否定できませんでした。噂に上がってきた主軸は「複数の若手有望株もしくはドラフト指名権」であり、それは将来を見据えた対価を得るものでした。
この時点で違和感がありました。「スパーズがそんな未知の可能性にかけるわけがない」と。
例えばイングラムやクズマは良い選手ですし、ある程度結果を残し始めているのでスパーズが「より良い選手に育てる事が出来る」と考えても不思議ではありません。しかし、ドラフト指名権となると将来を見過ぎだし不確定要素が強くなります。結果を残していないフルツなんかもスパーズからすると悩ましいはず。
そんな姿勢は流れてきた噂話でよりハッキリします。「イングラム・クズマ・ハート・複数の指名権」なんていう要求をしたとか。どうみてもレナード1人に対して要求しすぎであり、スパーズのフロントは実績が全てというような物差しをもっています。
そんなレナード問題が右往左往している間にもオフの補強は動いていきます。
マルコ・ベリネリ
シクサーズでディフェンスの大穴であることを示したシューターを獲得したのは気が狂ったのかと思いました。しかもシューターのポジションは若手も加えて人数過多。こんな守れない選手で若手のプレータイムを奪う意味があるのか?
カイル・アンダーソン→グリズリーズ
育て上げたディフェンダーをFAで奪われます。マッチする権利がありましたが4年37Mのサラリーが高すぎるので見送ることに。その動きは理解出来るんだ。むやみに高い選手を残しても仕方がない。
でも、計算できる若手は他にマレーしかいないし、残す判断しても悪くはなかったかもね。
デイビス・バータンズ
えっあれっ、4年20Mをバータンズには出すの?となったのでした。4年は嘘で2年だったので納得できる部分はありましたが、ベリネリとバータンズを合わせるとカイル・アンダーソン残せたんじゃないかという疑問です。
ダンテ・カニンガム
優秀な3&Dタイプのウイングビックマンを手に入れました。カニンガムは素晴らしいぜ、だけどバータンズ要らないじゃないか。違うタイプの選手をベンチに用意しておいて、その使い分けで勝つのがスパーズ流だったはずなのに、わざわざ同じポジションで似たような使い方の選手を被せるのか。
トニー・パーカーも「役割がわかんない」といって出て行ったし、スパーズはもう迷走しまくりじゃないか。
となったわけです。奇しくもデリック・ホワイトやロニー・ウォーカーはサマーリーグで活躍しており、パーカー放出自体は悪いことばかりではないし、契約した1人ひとりの選手達に悪い印象があるわけじゃないけど、チームとしては何しているのか分からない組み合わせだったのでした。
そして話を戻すと「若手有望株かドラフト指名権」と盛んに報道される中では、疑問しかない補強ばかりです。
ベリネリなんてシクサーズの印象から良いシューター扱いされているけど、あれはシモンズがいてパッシングするチームだから積極的な乱れ打ちスキルが効果的にハマっただけ。エンビート復帰したらバランス崩したじゃないか。若手が頑張ってオフェンス組み立てたのにベリネリが打ちまくったら意味ないぞ。
ガソルにバータンズにオルドリッジとインサイドなんて走れないメンバーばかりじゃないか。オルドリッジはともかくミスを助けてくれるハードワーカーも不在。リスクマネジメントが存在しないロスターになってしまっているよ。
現状の組み合わせとしても?
トレードで若手を加えても?
レナード問題の影で進んだ補強は「?」しか浮かばない謎だらけでした。
迷走しているスパーズ
◉大逆転のデローザン
そして決まったのが例のトレードです。
【放出】
レナード、グリーン、金銭
【獲得】
デローザン、パートル、ドラフト指名権
いやー、びっくりしました。予想の範囲内で合ったものの、噂のメインだった若手有望株よりも現状で既にスターである選手を獲得しました。「イングラム、クズマ、ハート、ドラフト指名権複数」という噂は一体何だったのか。随分とまぁ一気に方針変更したものです。
そして、この動きでオフの補強が一気に説明がつくようになったのです。それが大逆転のデローザン。
まずデローザン本人について考えるとこんな特徴があります。
・ドライブ力が高い
・ミドルレンジが上手い
・多彩なステップワーク
特に重要なのは2つ目のミドル。現代的にはそこは否定され、3Pが下手な部分を弱点扱いされるデローザンな訳ですが、ここはスパーズ。ミドルレンジを中心に組み立てる天国です。オルドリッジだってダンカンだってパーカーだって、みんなみんなミドルで勝負するタイプ達。
ポンズフェイクとステップを組み合わせた得意の形はキャブスにバレバレでトリスタン・トンプソンにすら読まれたデローザンですが、その組み合わせはポポビッチが求めるスキルです。加えてスパーズには連続したオフボールムーブによりフリーを生み出し、エクストラパスを繋いでいく文化があります。
仮にそのフェイクが読まれたとしても、エクストラパスを繋ぐのがスパーズ流。デローザン本人もより動き回ってギャップを使っていくチームオフェンスになれれば、より簡単にドライブ出来るはずです。
デローザンの特徴はスパーズにピッタリ!
それが第一印象でした。特にミドルの上手いオルドリッジとの関係性は非常に魅力的。バランチューナスも連携して崩すのが上手くなったけど、シュートの安定しているオルドリッジならば、デローザンとのポジションチェンジとパス交換で効果的に機能するはずです。
イメージはパーカー&ダンカンです。
まぁこのハイライトは2人のコネクションなので鮮やかなパスが多いですが、実際にはもっとシンプルなポストとミドルの関係を多く使います。デローザンはこんなにパスが上手くないですが、それを補う得点力があります。あと大切なのはこの1年間でラプターズがデローザンにパスを捌くことを身につけさせてきたことです。
ひょっとしたら、それがなければトレードは成立しなかったかもしれません。今のデローザンはこんな感じです。意外と「ミドルレンジで一度チェンジオブペースする」プレーパターンが似ていると考えています。
大逆転のデローザン①
スパースの特徴を出すのにデローザンは適したプレイヤー
そしてこのデローザンをゲットしたことで、前述の補強のイメージも大きく変化してきます。まずデローザンで大切なことは「インサイドにドライブしたいタイプ」だということです。オルドリッジという優秀なビックマンがいて、さらにドライブする選手を加えるのだから、スペーシングするビックマンと、3Pを決める選手が欲しくなります。
カイル・アンダーソンが不要
まずこれが出てきます。リバウンドが強かったり、ディフェンスが良かったりするもののオフェンス面で3Pがないカイル・アンダーソンに高いサラリーを払ってベンチメンバーにする意味がありません。安いなら意味はあったけどね。
ドライブの邪魔になってしまいそうなSFというのは苦しいのでした。
バータンズとカニンガムを揃えた意味
欲しくなるのはストレッチ4です。そこに当てはまる2人は相性ばっちりです。2人は不要だったのがエースがデローザンならば、オルドリッジの控えも含めて2人欲しくなります。カニンガムはしっかりとリバウンドも抑えてくれるので使い勝手も良いはず。
ベリネリの積極的な3P
これも大きな意味をなします。スパーズにはシューターはいるけど、クイックシュータータイプはいませんでした。チームとしてドライブが増えるからこそリリースの速いタイプが加わる意味が出てきます。若手を育てる視点とは逆に勝つためにはデローザンの作った小さなチャンスを決める能力も必要。
それ以上に大きかったのはグリーンも放出したこと。これで人数過多が解消されました。若手が多い中でベテランシューターの枠を1つ用意したわけです。ベリネリがプレーオフで使えるかはわからないけど。
大逆転のデローザン②
オフの補強が的確な補強になっている
いやーとち狂っていると思っていたのが、デローザンにより意味をなしてしまったよ。
しかし、これらの流れには1つの欠点がありました。それはレナードとグリーンを失ったことで生じるSF不足とディフェンス問題です。加えて言えばベテランばかりでスピード不足。
それを解決するのが
ヤコブ・パートルという走りまくるセンター
でした。
パートルは尋常じゃないくらいにトランジションに参加します。陸上選手じゃないかと言うくらい、ただただ走る。ビックマンだけど本当によく走る。その代わり線は細い。
ウエストのトランジションの速さは全員に走ることを求めます。それはスパーズも同じで全員がよく走ります。ベテランだからって関係ないのがスパーズ。割とイーストだと1人くらい戻るのが遅くても問題ないけど、ウエストはダメ。お馴染みのウォーリアーズだけでなく、センター・グラントなんて奇策はあるし、カペラやアンソニー・デイビス、なんならコーリーステインだって走ってくる。
そこに対抗する役割がパートルになります。走りだけなら負けません。
そんなパートルを加えたことで行われるラインナップは「ビックラインナップ」の可能性があります。フロントコートに大きな選手を並べる作戦は、時代に逆行していそうですが、誰もが足を動かすスパーズディフェンスでは割と機能しました。
SF ゲイ、カニンガム
PF オルドリッジ、バータンズ
C パートル、ガソル
もちろん常時やるのではなく、ピンポイントになりますが、この時にガソルをいれてしまうとさすがに走り負けてしまう可能性があります。それがパートルだと他の選手をフォローするくらい走ってくれます。
つまり機動力攻撃されたときに動いてブロックしてくれる貴重なセンターです。ペリメーターの1on1についてはコースへのヘルプの速さで対応するスパーズなので、余り問題視せず3Pでスペーシングされても追いかけてリムプロテクトするセンターを手に入れました。
大逆転のデローザン③
パートルが可能にする機動力ディフェンス
ベリネリとデローザンのディフェンス力は不安も不安ですが、そこを補うためのパートル獲得だったともいえます。しっかりとリムプロテクトして失点を少しでも抑え、それを上回る得点力を2人に求めることでしょう。
カイル・アンダーソンで失ったインサイドのハードワークを埋めてくれるだけでなく、いなくなった純粋なセンターでもあります。前述の通り、デローザン、オルドリッジと3人同時起用は厳しいけど、2人ずつであれば非常に役に立つ存在だし、その時アウトサイドにはバータンズかカニンガムがいるわけです。
最も重要なのは、こうなったときに「どんなユニットを組んでくるのか想像がつかない」ということです。デローザンとパートルを加えただけなのに、随分と柔軟性が増しました。負けない戦術のスパーズは相手に合わせたユニットを組むことで優位性を生み出してきたわけですが、それは新シーズンも継続しそうです。
カイル・アンダーソンはいなくなったけど、ベンチにはヤコブ・パートルが座り、違う形でのディフェンス力を発揮するでしょう。なんならオルドリッジはコーナーで3P待ちしていたりしてね。
若手有望株を補強したのではなく直ぐにベンチから大きな役割を担うセンターです。
◉デローザンありきだったのか?
こうなってくると気になるのが「そもそもデローザンありきだったのか?」ということです。ラプターズのフロントは「自分達は直前まで4番手だった」と話していますが、1番手だろうが4番手だろうが、決まったのだから実は初めからデローザンだった可能性はあります。
いくつかその兆候はありました。
・レイカーズへの過剰な要求
・クリッパーズへの横柄な物言い
・そもそもウエストとはトレードしない姿勢
前者2つはまぁどうでもよくて一番最後ですね。そもそもウエストのチームは除外していたと考えるとデローザンは有力候補になっていたはずです。イーストで他に候補になっていたのはシクサーズとセルティックスです。
シクサーズは「エンビート・シモンズ・フルツは渡さない」姿勢だったというのでスパーズからすると未確定要素の指名権とスターではない選手しか見返りを得られません。だから論外だったと思います。
セルティックスはカイリー・アーヴィングを提示したとか。これはデローザンの所に当てはめることが可能なわけですが、問題はパートルの方です。負荷条件としてテイタムやジェイレン・ブラウンを付け足すように求めたのであればセルティックスは断ったでしょう。ヘイワードの場合はサラリーバランスが合わないからそもそも無理。
つまりはスパーズが現実としてデローザンありきで補強を進めていた可能性を否定できません。
真実は明らかになることはないでしょうが、迷走しているようにしか思えなかったスパーズの夏の動きはそもそも本命とのトレード交渉が成立する前提だったのかも。少なくともカニンガムの獲得はデローザンありきだったと思います。
終わってみればスパーズの基本的な方針
・ウエストのチームを補強する動きはしない
・ダイヤモンドとしか交換しない
この2つ通りのトレードになりました。だからまぁデローザンかテイタム&ブラウンの2択だったのかもしれません。そして後者には断られたという予想なのでした。
うーん、もっとスパーズについて書く予定でしたが「大逆転のデローザン」だけで6000字を上回ってしまったので、今回はここまでにします。これ以上何を書くのかという気もしますが、まぁ「負けない戦術のスパーズ」をブラッシュアップすれば良いよね。
でもあれだな直ぐに書く必要もないかな。ポイントになるのは3つくらいかな。
〇デローザン&オルドリッジコンビの機能性
~パーカー&ダンカンになれるのか~
〇ディフェンスシステム
~スパーズの特徴とビックラインナップ~
〇柔軟なユニット構成と若手の成長
~マレーは自立するのか。若手はローテーションに加わるのか~
自分の意見を書きたいスパーズファンの方いませんかね?コメント欄とかTwitterとかメールくれればそのまま載せて楽ちんなのですが。
スパーズの続きはまた今度
Happy Birthday, @DeMar_DeRozan! pic.twitter.com/r8USxlgpio
— San Antonio Spurs (@spurs) August 7, 2018
ちなみに、この内容だったらトレード直後でも良かったといわれそうですが、ショートバージョンでは書いていたので「そのうち続きを書けば良いか」くらいでいました。
ドライに考えれば良いトレードだったと思います。その内容はこれね。
なお、「マイナーチームのファンは記事に飢えている」というお話を聞いたこともあり、そして題名検索にチーム名をいれてもヒットしないものもあるので、管理人が書いた記事をチームで分類したページを作りました。
いつも更新楽しみにさせてもらっています。
パーカー、レナード、ダニグリら2014の優勝メンバーがいなくなっていく中、ベリネリとの再契約はほっこりしました。(チームに貢献できるかは別として……)
ベルタンズにはマットボナーのようなパスの中継と3ptをやってもらいたいんですが、なかなか難しいものなんですかね。ディアウもそうでしたが、IQの高いストレッチフォーが欲しいところです。どっちか復帰してくれないかな………。
あとはポポヴィッチの後釜が誰になるのかですかね。ベッキーハモンなら女性初のHCでしょうか。
まぁ勝っているときはロールプレイヤーが良い選手にみえるものです。結局はデローザンが活躍してチームが勝てば自然と良い選手になるでしょう。
そのIDは偽スパーズファンだな 笑
確かに納得のいく内容ですね。後はデローザンが西で通用するエースになれるか次第。頑張ってほしい
個人スタッツが落ちるのはスパーズのシステムに責任があることにすれば大丈夫!
ナゲッツとロケッツの記事も予定されてて興奮しました!楽しみです!
そんな所まで良く気がつきましたね。
そして忘れられているペイサーズ!
ポンプフェイクがポンズフェイクになってて笑いました笑
マイナーチームファンとしてチーム別検索は嬉しい限りです!
もっとデンバーとミルウォーキーは日の目を見て欲しいんですが如何せんメディアの取り上げ方が小さいのが悩みです。
ナゲッツについては一杯書いていたつもりが少なくって逆に驚きました。
バックスとナゲッツってチームカラー違いすぎじゃないですか。
図々しくも、チーム展望のシリーズだけでもチーム名のタグをつけるとかで記事を検索しやすくなりませんかというお願いを書こうとしてたのでこれはありがたい。
今回のデローザンで大逆転みたいに、意味不明な補強してる(HC招聘とかも含めて)と思われてるチームでも、あの選手と裏で交渉しててもしも獲得してたら大逆転だったのに…!みたいな事って結構あったのかなと思ってしまいますね。
補強失敗チームにちょい足しで魅力的なロスターに!とかを考えるのが結構好きなので、今回の記事は特に興味深かったです。
翌年のFA選手のために、同じエージェントの選手を雇ったり、仲良しの選手を雇ったりはあるあるですしね。
エース同士の交換は珍しいケースなので、ばっちりハマった感が面白かったです。
管理人さんがおっしゃっていたようにスパーズの予想順位が低すぎます。
デローザンとパートルの加入を考えたら、昨年よりもむしろ強くなっています。
強くなったのは間違いない。問題はジノビリで相当勝ってきたので、それが継続できないと苦しいことですね。
暑い中更新お疲れ様です。
ファンとしてはレナードを中心に考え過ぎて、しばらく起こってることを俯瞰して見れなかった。
でも時間がたって、昨シーズンのラプターズのハイライトを見てたら、
「…スパーズにとってプラスしかないぞこのトレード」
と気付けた時にwhynotさんのこの記事が来て、もう優勝したかのような気持ちになりました(勝手)
問題はデローザンがプレーで大逆転を起こすことが少ないことです・・・。
マレーにどう得点を取らせるか、楽しみではあります。マレーがミドルの確率を上げていることが前提ですが。デローザンはそれなりに結果を残すと考えていますが、キャブスの23番もウエストに来たので、トラウマを出させないように、プレーオフであのチームと当たらないことを今から祈ります。
デローザンにはミルズの方が合いそうなので、マレーはデローザンがベンチの時にメインハンドラーになる気がします。25分のプレータイムでデローザンと同時なのは10分くらいとか。
その時間は3Pが得意な選手も組み込みつつも、マレー本人にも3P打たせていくのかなと。