思い返せば開幕前はプレーオフ出れば大成功だったわけなので、それを遙かに飛び越えて50勝したのだから超大成功のシーズンでした。
◉評価の難しいチーム
52勝したシクサーズ。それはシーズン前から考えれば大成功だったわけですが、その一方で52勝するほど強くはなかったです。後半戦の快進撃により予想も超えたけど、実力も超えた感じのフィニッシュでした。
追い抜いたのはアンテトクンポのバックス、ウォール&ビールのウィザーズ、そして総合力のヒートという3チームだと考えれば納得がいくわけですが、キャブスとセルティックスレベルかというと、まだそこまでではないという位置づけです。その意味ではセルティックスがしっかり止めてくれて、安堵している部分もあります。
一方で振り返ってみればシーズン序盤には頻繁にシクサーズをみていました。まだそんなに勝っていない頃です。シモンズがとにかく面白かったし、チーム自体もなかなか興味深かった。しかし、シーズン中盤くらいからイマイチ面白くなくなっていきました。その理由は自分でもよくわかりません。
ただプレーオフをみていて「シューターを使うチーム」から「シューターのチーム」になってしまった印象はあります。シーズン終盤になるにつれてアシスト数が増えていき、勢いが増していったオフェンスでしたが、主役と脇役の位置づけが逆転してしまった印象を受けました。
・・・・・・・・
◉TJマッコネルは最高だ!
この言葉に深く頷いてくれるファンの方は多いと思いますが、それはプレーオフで始まったことでなければ、今シーズンからでもなく、低迷していた昨シーズンからの話です。昨シーズンは僅か26分のプレータイムながらパス数はリーグNo1で、6.6アシストはロンド並でした。
シモンズがスターターになった今シーズンもベンチから変わらぬクオリティでゲームメイクすると共に、FG50%、3P44%と弱点だったシュート力さえも長所に変えてしまいました。
しかし、シーズンが進むとプレータイムを減らしていったマッコネル。4月になるとわずかに15分のみ。面白くない管理人。
シクサーズの素晴らしいパッシングゲームを築いたブレッド・ブラウンHCですが、それをコートの上で実践したのはマッコネルです。そしてベースが出来上がった今シーズンに現れたのがシモンズでした。この2人が描いていくパッシングゲームは1つの完成形とすら思わせる出来です。
シーズン前半はその要素が強く出て行き、さらにエンビートのディフェンス力が合わさることで強豪に加われるだけのポテンシャルを示していきました。この頃のシクサーズは面白かったし、シモンズとエンビートの相性は非常に良かったです。
シーズン前半のハイライトでは小気味よいリズムでエンビートがインサイドに合わせて行くプレーが非常に目立ちました。このハイライトにはありませんが、エンビートからシモンズという合わせ方も素晴らしく、その2人がパス交換することで、空いたシューター達のパターンがあるから非常に魅力的なチームでした。
そして次第にターンオーバーも減っていって勝ち負けの当落線上のチームから、勝てるチームにステップアップしました。オールスターの前後でターンオーバーは17.5→14.6と3つも減っているのに、アシストは25.6→30.1と5つも増やしています。強くなっていったシクサーズ。
パッシングゲームをしながらターンオーバーを減らしたシクサーズ。でも象徴的だったマッコネルはプレータイムを減らしていき、代わりにシューター達を増やし、コートに多く並ぶようになりました。その辺から微妙に面白みを失っていきました。面白くなくなった理由はおそらく「シューター達に打たせる」ことがオフェンスの目的になっていったからです。
シーズン前半に広くスペーシングしながらパッシングゲームをしていたシクサーズは
「シモンズとエンビートを活かす」ためにシューターがいたのが、いつの間にか
「エンビートを含むシューター達に打たせる」ためのシモンズに見えてきました。
個人的にベリネリをちょっと受け付けられなくて、イリャソバは賞賛するのはそんな理由でもあります。存在価値がシュートにあるベリネリは打つために動きまくりスペースを使ってしまいますが、イリャソバは良いプレーをするために3Pを使ってスペーシングしています。
スペースを使うベリネリと、スペースを作るイリャソバ。
シモンズはどちらにも合わせますが、シモンズ本人にスペースを使って欲しいのでした。
後付けで考えたような理由なので、ほんの些細な違いでしかありませんが、おそらくシクサーズはそんな変化をしました。シューターを使うチームからシューターに打たせるチームに。勝っているから文句は言えないのさ。だけど個人的な面白レーダーには引っかからなくなったのでした。
・・・・・・・・・・・
◉シモンズかエンビートか
最終的にプレーオフではそんな一面がハッキリとでてしまいました。
ヒート戦では走り合う展開にすることで終盤に差をつけていきましたが、逆に言えばお互いに元気な時間にはヒートの方が上回りました。そしてエンビートが戻ってくると勝利はしているものの、内容的にはいないときの方が楽でした。
そして問題のセルティックス戦はシモンズが空けられる中で、ハーフコートオフェンスで有効な手立てを欠いてしまいました。動き回るシューターを抑えているセルティックスにより、自分で得点することが求められたけど、そもそもアタックするスペースを埋められていたシモンズ。実際にシモンズとレディック、シモンズとエンビートの激突なんてシーンもありました。
マッコネルがスターターになった第4戦に勝利したように、最終的にはシューターを減らして純粋にスペーシングした方が効果的でした。同時にパス交換する相手を得たことでシモンズはオフボールでも効果的に動けるようになりました。
インサイドにアタックするスペースを与えられ自ら得点することでディフェンスの狙いを外すことが出来て、唯一の勝利をあげています。
ここはちょっと大切で、極論言えば「シモンズが個人で得点すれば問題なかった」というセルティックスとのシリーズでしたが、「ドライブするスペースをシューター達が消している」シーンを何度観たことか。
動かないエンビートも含めて、シモンズはセルティックスにもチームメイトにも消されていったのでした。ミドルを打たなくても、ハンドリングフェイクで抜くのが上手くなくても、あのプレースタイルでレギュラーシーズンでは十分に通用していました。しかし、スペースが消されパス交換する相手もいないのであれば、苦しくなる一方でした。
チームの中でブレーキになったシモンズのルーキーらしさで負けたのか、それともチームが未熟で負けたのかは慎重に判断しなければ行けません。
パス交換してくれるマッコネルがいる第4戦からハイライトに含まれるプレーの質が一変しています。
・・・・・・・・・・・
◉走るシモンズと走れないエンビート
2人は相性の悪いコンビです。
しかし、前述の通りシーズン前半にそんな印象は皆無でした。走れないエンビートをシモンズの運動量がカバーしている、そんな良い関係性だった気すらします。エンビートとのパス交換はシモンズを活かしていたし。
それが最終的には相性の悪いコンビに見えてきたわけで、その答えを求めていくと「シューターを使う」のか「シューターに打たせる」のかというチームオフェンスの中での微妙な違いが浮かんでくる気がしたわけです。シモンズはチームを活かしたけど、チームはシモンズを活かさなくなった。
例えばコビントンは頻繁に消えるし問題のあるプレーもしますが、その3Pはあくまでもスペーシングしている中でボールが回ってきたときに打つ3Pです。自分が打つために動き回るわけではないので、レディックとはちょっと違います。
その結果として活躍する試合もあれば、消えている試合もあります。でもそれはロールプレイヤーとしては間違っていないのです。本当に目立つべきはシモンズとエンビート。気がついたらオフェンスリバウンダーになっていたイリャソバもそんなプレーをします。ベリネリでは苦しかった理由はディフェンスだけではありません。
極めて個人的な意見ではありますが、シクサーズは少し時間を巻き戻して欲しいのです。未完成だけどギャンブラーではなかったシーズン前半に戻って欲しい。
その頃は今に比べれば弱いチームではありましたが、チームとしての連動性、シモンズとエンビートを最大限に活かす構成、そして将来性が詰まっていました。走るかどうかではない世界で融合していたはずの2人です。
強くなる階段を飛ばしすぎたシクサーズ。強さをもっているものの「自分達は何者なのか」を理解出来ていないようなプレーオフでした。
エンビートの発言は経験不足から来る未熟なものも多いので、もう少し階段をしっかり上った方が良かった気がするのでした。それは勝ち負けではなくシモンズ&エンビートと仲間達という形を徹底すべきだっということです。
・・・・・・・・・・・
◉未熟で強いチーム
シクサーズは相反するような部分を持ち合わせたチームです。それはフロントから始まります。
エンビートやサリッチを指名し、ドラフト外でマッコネルを連れてくる優秀な一面と、サトランスキー、オカフォー、ノエルなどをムダにしているセンスも育成力もない一面。
当然のドラフト1位だったシモンズを手に入れPGにするのに、同じく当然のドラフト1位PGフルツを取りに行く計画性が足りない一面
レディックやコビントンといったロールプレイヤーを上手に集めたのに、控えセンターやディフェンス面を疎かにする一面
優秀なパッシングゲームを作り上げたのに、方向性は揺れ動いているブレッド・ブラウンHCも優秀さともろさの両面を持ち合わせています。そんななかで50勝しセカンドラウンドまで進んだことは自信を与えただけでなく、来シーズンには結果を求められることになります。
正直、今の体制では苦しい気がするし、階段を踏みしめて上らせた方が強固なチームが出来ると思うのですが、飛ばしてしまったものは仕方がない。そして結果を求められるのであれば、補強で一気に優勝候補に成り上がるタイミングになりました。
・・・・・・・・・
レブロン、レナード、ポール・ジョージ・・・
フィラデルフィアということで様々なビックネームが紙面を賑わしますが、正直その殆どはチームバランスを大きく崩すものです。正しく言えばシモンズとエンビートのプレースタイルが相手を選ぶので、ビックネーム連れてくるよりもロールプレーヤーならべるロケッツ式の方が遙かに現実的です。
しかし、時計の針は進めるしかないので優勝を目指して突き進むタイミングかもしれません。このオフに何してくるのか。フロントは優秀なようでそうでもない部分をみせるので、何が起こるのか予想がつきません。
誰かカーメロの名前も挙げてよ。イーストなら悪くない選択肢だよ。ベリネリレベルに守れないわけじゃないよ。
・・・・・・・・・・
◉シクサーズは時代の中でどう動くのか
3Pを打たない元ウイングのPG
なんとも風変わりなベン・シモンズは今シーズン最も戦術的革命を起こしてくれた選手でした。それをルーキーがもたらすのだから感服です。今時3Pを打たなくてもプレーメイク出来てしまう選手が存在するだけで驚きです。ロンゾはもっとシモンズから学んだ方が良い。ウエストブルックも学んだ方が良い。
それでいてあらゆるポジションをこなせば、あらゆる影の仕事をこなしてくれます。この先、シモンズをお手本とする選手が増産されるのではないかと思うと時代が変わる気がします。
ただ、じっくり比較していないのですが、プレーオフではこの影仕事が減った印象もありました。以前はもっとヘルプディフェンスに向かってドリブルしたり、スクリナーになってインサイドにダイブしたり、オフェンスリバウンドに絡んだり。いろんな事をしていた印象です。数字に残らないので頭の中で過大評価しているだけかもしれませんが。
得点やアシストでシモンズ頼みなのではなく、役割が多彩すぎて戦術シモンズになっていく面白いシクサーズ
ちなみに15歳の頃のハイライトみましたが、普通にロングレンジから打っているし、決めていましたよ。本気でやればエンビートより決めると思います。
・・・・・・・・・
そして同時にエンビートという諸刃の剣
ポストアップすることで無類の強さを発揮するし、パスも出せるエンビート。ディフェンシブセンターとしても優秀です。一方で直ぐにガス欠するし、経験不足からかガマン出来ずに手を出してしまうシーンが目立ちます。
そんな個人としての諸刃な部分もあれば、現代バスケでセンター中心が難しいのは多彩な相手に柔軟に対応していくことです。本来はPFのアンソニー・デイビスくらい動けるのであればデメリットは殆ど消えますが、スピードのミスマッチやオフボールムーブへの対応、そして相手の長所を消していく戦略などを取り入れて行くには、シモンズのような万能型であることの方が重要な時代です。
エンビートのポストアップは間違いなく強力だし、そこからパッシング出来るシクサーズでは有効な武器です。しかし、同時にスペースを潰すことにもなります。今のところ、3Pラインの外で構えさせるパターンを取り入れていますが、それをやるならイリャソバ使えば良いし。
つまりエンビート中心と言うことは、かなり独自色が出るし、セルティックスのような相手への対応力で勝負していくことが簡単ではなくなります。時代の流れからは少しずつ離れていくようでいて、自分達が時代の中核になれるのかどうか。
良き見本としてゴベールとフェイバーズで勝っているジャズがいますが、今度は3Pの活用という点でシモンズの使い方に課題が出てきます。かといってペリカンズのように走るとエンビートはついてこれない。
だからやっぱり独自色が必要になります。シモンズとエンビートの相性はものすごく悪いようでいて、他にはない貴重なコンビにもなりえます。そんな姿もみれたのだから悪くなかった勝てない時期でした。
果たしてシクサーズはどの道を究めていくのか。
階段を飛ばしてしまったこの夏のタイミングでどんな方向に動こうとするのか。
来シーズンは興味深いチームになるのか、ギャンブラー化を進めるのか。
50勝チームなのに、まだまだ型を変えていきそうなシクサーズなのでした。
想像以上の成績を出したので、来期はやはり優勝が目標になりそうですね。
そうなると大型補強をするかもしれないですね。
個人的にはレブロンは論外、ポール・ジョージとレナードはありなんじゃないかと思います。2人とも3rdオプションを受け入れるかわかりませんが。
シモンズとエンビードで優勝を勝ち取ってほしいし、ジョージとレナードは1stオプションでこそ輝くと思います。観たい気持ちと受け入れたくない気持ち半分という感じです。
素晴らしい所感ですね、同感しました。
シモンズ&ヱンビードを諦めず昇華する事が、76ersの未来。脇を固める事も必要だけどビッグネームより先ずはチーム作り再構築が必要。その意味では今回のPO進出は有意義なものであったはず。来季が楽しみなチーム№1ですね。
良いコンビだと思うのですが、シモンズの考え方ひとつで悪いコンビにもなりますね。
長期政権を作りたければ、特にエンビートをレベルアップさせることを優先すべきですね。ビックネーム獲得すると勘違い君になりがちです。
シューター以外にどんな選手がいるべきか考えないといけません。
管理人さんの「15歳のシモンズは~」のくだりで少し考えが揺れましたが、オフにシモンズはミドルを練習するものだと思ってました。ミドルレンジを打つようになるシモンズが迷わないプレースタイルを取れる戦術を期待したいですね。ジョージやレナードを呼ぶなら、いっそエンビードとフルツをセットで放出して思い切ったチームに舵を切ってくれると気持ちよいと思ってしまいます。
ミドルを打たない事と、確率が悪いことは違いますからね。
まぁ1試合に2,3本打っても良いとは思いますが。
シモンズのプレースタイルでチームの流れを生み出しているので、そこのマネジメント次第で伸びる方向性が全く違いますからね。
いっそエンビートは出してもいいんじゃないかと思う一方で、
シモンズ&エンビートがさらにステップアップしたらどれだけ魅力的なチームになるだろうかと思うと難しいですね…。
優勝を目指すといっても今の段階でロケッツ、ウォリアーズに照準をあわせるのは時期尚早な気がします。
そこなんですよね。もう一段階踏んだ方が良さそうな部分は。
ただ今オフの方が大物ゲットする期待があるという難しさです。
エンビート諦めるのは1、2年待っても良いですし。
レブロンを取れば、ロケッツのダブルPGシステムのように、夢の「ダブルレブロンシステム」を作れるかもしれませんね。
常にレブロンかシモンズがいたら、プレーメイクは安定するし、レブロンはもうちょっと年齢相応に休めるし。
エンビードはスーパースターになれる素質があると思いますが、有償目指すためにレブロンとシモンズの脇役になってもらって。
レブロンからすると、シューターが多くて、ラブ以上に中で働けるエンビードがいて、自分の代わりを務められるシモンズがいるというのはとても良い環境に感じるのではないでしょうか。
そして、早い段階でレブロンを取れば優勝したい中堅・ベテランズがシクサーズにジョインしたがる可能性も!?
でもレブロンってそんなに良いわけじゃなくて、パッシングゲームを止める可能性があります。
だからチームとしては作り直す部分が大きくなるでしょうね。
一方でエンビートを脇役にしやすくなるのは、大きな利点です。
終盤でも展開によってはベンチに置いておきやすくなるし、チームは柔軟性を保てます。
レブロン獲得したら優勝は義務なので、ブラウンHCで良いかも考えなければいけません。
たしかにシモンズが軽やかに捌いたり、スクリーンをかけたりして生み出すパッシングとは全然異なりますね。
個人的には、ダムダムからのプレーメイクとか明らかな1on1よりも、パッシング、スクリナーになってからのポップorダイブの流れのなかでボールを持たれた方がレブロンは怖いと感じてるのですが…
レブロンをウィングとして使いこなせるHCとPGがいるチームの方が良い気もしてきました。
レブロンはオフボールで動かないので、シクサーズがパッシングチームだからと動けるようになるかは予想もつきません。
だから賭けになりますね。レブロンをコーナーで待たせるというのは簡単ではないですよね。それくらい思い切れるのかどうか。
レナードを連れてきてエンビートを3rdオプションにするのが理想かなと思います。
エンビートが3rdオプションを受け入れないと思いますが…
結果論になってしまいますが、もしフルツではなくテイタムを指名していたらどうなっていたと思いますか?
テイタムは抜群にシクサーズにフィットしたでしょうね。オフボールで動いてシューター役にもなれれば、空いたスペースにドライブで切れ込めます。
それでいてシモンズ同様にポジションレスなので柔軟な起用が出来ます。サリッチのグレードを上げたような存在なので、理想的な補強になるはずです。
一方で本当に活用できるかはHC次第なので、試合終盤でも大活躍するような姿がみれたかはわからないですね。