ヨキッチとシモンズとカニングハム

◎リメンバー２０１８

２０１８年のシーズン最終戦。ナゲッツはウルブズと「勝った方がプレーオフ」という実質的なプレーインを戦い、オーバータイムの末、敗れてしまいました。

〇ヨキッチ
３５点
ＦＧ１４／２５
３アシスト
１０リバウンド

この時点で勝負強く、必要な時に点を取れる選手であることを示していたヨキッチ。しかし、この頃はミルサップ的には不満があり「エースなんだから点を取れ」という旧式カルチャーとの対立もありました。ナゲッツは今よりも大胆なパッシングをしており、ヨキッチと相性の良いマレーやギャリー・ハリスと魅力的なオフェンスは展開していましたが

「チームメイトもヨキッチみたいになる」ような現象は起きておらず、それぞれがヨキッチからのパスに合わせ、そしてサーカスショット・ブラザーズのフィニッシュも目立ちました。

なお、唯一ヨキッチになっていたのはプラムリー。今ではポイントセンターの端くれみたいな立ち位置ですが、ヨキッチに感化されたようなプレーだったし、特にハリスのオフボールムーブにパスを引き出されていたようでもありました。

同じ２０１８年。ヨキッチ以上に「チームを変えてしまった」選手がいました。それがベン・シモンズ。この時点ではナゲッツよりもシクサーズの方が新興勢力として期待もされれば、魅惑のパッシング＆３Ｐオフェンスで、より現代的なチームとして注目を集めました。

〇２０１８年のシクサーズ
パス数　３４４（１位）
アシスト数　２７．７（２位）
キャッチ＆３Ｐ　２５．０（２位）
平均移動速度　４．４２（３位）

豊富な運動量とパスワーク、誰もがシューターとしてスペーシングもすれば、カットプレーもする。
スペーシングすればシモンズからパスがでて、動けばシモンズからパスがでる。
ボールを持っても仕掛ける必要はなく、シモンズに戻せばリターンが届き、走りだせばシモンズからワンパス速攻が生まれ、シモンズについていけばトランジションが構築される。

「チームメイトを変えてしまう力」でいえばシモンズは圧巻でした。当時で言えばヨキッチはあくまでも「マレーとハリスと相性が良い」程度の話でしたが、シモンズに関して言えばＪＪレディックやＴＪマッコネルは別としても、サリッチとコビントンは急激に評価を高めたし、ベリネリやイリャソバの有能性はシモンズで輝きを増しました。

エンビードだって、この頃はガラスなだけで「走れるセンター」だと思われていたもん。

〇エンビードの平均移動速度
１７－１８シーズン　４．０４
１８ー１９シーズン　３．８９
１９－２０シーズン　３．７７
２０－２１シーズン　３．７９
２１－２２シーズン　３．７３
２２－２３シーズン　３．５７

面白いほどにチームメイトを変えてしまったシモンズですが、２０１７－１８シーズンの凄まじいまでの影響力に対して、翌年以降はトーンダウンしていきました。もちろん、チーム方針が変わったことが最大の理由であり、シモンズの責任にはできないし、ナゲッツがヨキッチを信じたように、シクサーズもシモンズを信じれば問題はありませんでした。

その僅か２年後には両者に大きな差が開きます。

ナゲッツはカンファレンスファイナルへと進み、優勝するだけの力をつけてきたことを示しました。最大の理由はヨキッチではなく、マレーの大きな成長で５０点ゲームを連発してファーストラウンドを勝ち上がるパワーとなり、セカンドラウンドではＭＰＪが試合を決める３Ｐを決めたこともありました。

シクサーズはシモンズが欠場したファーストラウンドで４連敗。平均１７．５アシストという数字はシモンズが加入した１７－１８シーズンのシクサーズからすると遠いところへと移動してしまった感じです。シモンズがいなければ機能しなかったのも事実ならば、シモンズがいたところでチームオフェンスよりも個人アタックが増えているチーム事情も事実でした。

そして翌年にシモンズは大戦犯としてブーイングに包まれ、追い出されるようにシクサーズから出ていき、今では１７－１８シーズンから見る影もないプレイヤーになっています。

「チームメイトを変えてしまう存在」という意味ではヨキッチ以上の可能性を秘めていたシモンズでしたが、ヨキッチが個人としてもチームとしてもディベロップメントを繰り返す一方で、シモンズは個人としてもチームとしても停滞し、そして今シーズンにはあまりにも大きな差が開いてしまいました。

キングを継ぐプリンスといわれていた男
新たなる世界最高のプレイヤーとして至高の男

似たようなスタートラインに立っていたにも関わらず、大きすぎる差がついた５年間でした。