さようならラプターズ

アフター・ラウリー0001年

チームの心臓であり、頭脳であり、顔であったカイル・ラウリーがチームを去り、新たな時代の幕が上がったトロント・ラプターズ。新人王スコッティ・バーンズを獲得し、戦力は維持したものの、その代償はあまりにも大きかったのだった。

果たして天才ニック・ナースは新たなチームをどうやって構築していくのか?

ラウリーがチームを去ることが決定的と思われていた昨シーズンのドラフトで4位指名権を持っていたラプターズ。ジェイレン・サッグスを指名し、ガードの後釜に据えると思われましたが、そこでまさかのウイング指名に動きました。シアカムもアヌノビーもいるのに、わざわざウイングを選んだのです。

その指名は当たりでした。結果を残せないサッグスに比べ、素晴らしいスタッツを残したバーンズは新人王に選ばれ、ラプターズのスカウト力の高さを示しました。その一方でシーズン後半の戦い方、そしてプレーオフでの負け方は「本当にこれでよかったのか」という疑問ももつ内容でした。

バーンズは間違いなく「当たり」だし、ラウリーに負けないスタッツを残してチームに多大なる貢献をしてくれました。

〇昨シーズンのラウリー
34.8分
17.2点
FG43.6%
3P39.6%
5.4リバウンド
7.4アシスト

〇今シーズンのバーンズ
35.4分
15.3点
FG49.2%
3P30.1%
7.5リバウンド
3.4アシスト

ややラウリーの方が良い数字ですが、これは昨シーズンのラプターズが離脱者続出でラウリーの仕事が増えていたことも関係しています。概ねスタッツだけなら互角に近いとみていいでしょう。同じポジションのシアカムとアヌノビーがいるチームで達成したことに大きな価値があります。スタッツ的にはラウリーを失ったのとバーンズの手に入れたのは相殺に近いものがあります。

しかし、だからこそ「スタッツでは表せない部分」でのラウリーの存在感こそが、今シーズンのラプターズに足りなかったものであり、結果的に大きな変化をすることになりました。ということで、今更ながらラウリーの事について触れましょう。

◎知性であり、便利屋

ラウリーはラプターズの「知性」そのものでした。

かつてのラウリー&デローザン時代とは違い、近年のラウリーは数少ないベテランかつリーダーとして、チームをリードする仕事をメインに「今、何をすべきか」をチョイスしていくコーディネーターでした。

ディフェンスを見て判断する能力の高さはNBA最高と言っても過言ではなく、優れたゲームメイカーでありつつ、ハードワーカーとしてチームに活力ももたらしてくれます。ラウリーは指示を出すだけではなく、先陣を切ってディフェンスで仕掛け、トランジションとスローダウンを明確に使い分け、リーダーとして背中で示すことでチームには共通意識が生まれていきます。

ラウリーの後継者たるオールスターのヴァンブリードですが、そのイメージと違い、ヴァンブリードはゲームメイクよりも、積極的に自分が仕掛けるタイプです。もちろん、6.7アシストとしっかりパスを供給してくれますが、ラウリーのようにディフェンスの弱点と試合の流れを読んだゲームメイクはしてくれません。

素晴らしきインテリジェンスを誇ったラプターズから知性が失われた

今シーズンはラウリーがいなくなったことで、ラプターズの戦い方は一本調子になってきました。ひょっとするとドラギッチにこの役割を期待していたのかもしれませんが、何故だか試合に出てこなくなってしまいました。

ヴァンブリードもトレントも周囲を見ないセルフィッシュなタイプでありませんが、アグレッシブに自分で行き過ぎる面がある・・・というか強すぎるので、知性よりも積極性の方が目立つチームになりました。昔のラウリーもそうだったけどね。

ラウリーのもう1つの特徴が「万能キャラ」として、ガードながらビッグマンを守るのも上手ければ、リーグ最強どころか史上最高レベルの「チャージドローの達人」としてヘルプディフェンダーとしても機能してくれることです。試合を読む力とプレーを読む力に優れたラウリーは、ガードとは思えないほど、あらゆるディフェンスの局面で仕事をしてくれます。リバウンドも多いしね。

大胆なポジション取りでオーバーヘルプ気味にしながら、突如として自分のマークに戻ったり、駆け引きをすることで見えないところで攻めにくくもしてくれます。そのラウリーに合わせて周囲はローテーションを行い、全体が動いた穴をラウリーが埋めてくれます。ディフェンスリーダーを失ったラプターズでもありました。

マンマーカーとしても、ヘルプ役としても機能する万能性
相手との駆け引き役であり、ラウリーをスイッチャーとしてチーム全体が動く

同時にラウリーはオフェンスでもPGもするし、シューターもしてくれます。これは意外と難しいもので、トップでボールを持ってコントロールする時もあれば、その役割をヴァンブリードに任せてオフボールで動き回ってかき乱してもくれます。この両者を使い分けているのは他にはカリーくらいです。大抵はオフボールが出来ない。

ガードでも、ウイングでも、センターでも出来てしまうヨキッチやレブロンのような変体形もいますが、ラウリーの特徴としてはポジションの万能性というよりも

「オンボール」の役割も「オフボール」の役割も出来る

これらのラウリーの特徴はユニット構成を楽にしてくれていました。柔軟に役割変更されるので、選手交代でバランスを考える必要がなかった。優勝したシーズンから思い出してみると

ラウリー、ダニー・グリーン、レナード、シアカム、ガソル

この形だとハンドラーはラウリーのみで、他にはレナードに託す個人技オプションでした。ただしガソルがいるのでラウリーはガソルにボールを預けておいて、オフボールで動き回る形へもスムーズに移行しています。ガソルの良さを生かしつつ、プレーメイクしていました。

ガソル ⇒ イバカ

この交代が発生すると、ラウリーは完全にオンボールのみになります。パスアウトからシュートを打つのがイバカの特徴なので、周囲のドライブをメインに組み立てることになっていきました。センターの交代だけで違いを作れるのはラプターズの強みでしたが、オンボールプレイヤーを減らせるのはラウリーの強みでした。

ラウリー、ヴァンブリード、アヌノビー、シアカム、ガソル

2年前はレナードとダニーが抜けて、そこにヴァンブリードとアヌノビーが入りました。PGなヴァンブリードなので、ラウリーの基本はオフボール担当へと変わり、チームが停滞し始めるとポジションチェンジし始めました。ダブルPGを成立させたわけです。

しかし、もっと大きいのは小さい2人でもディフェンスを成立させたことです。前述の通り小さくてもヘルプ担当を出来てしまうラウリーの便利さは「テレパシーディフェンス」と称された異次元のヘルプ&ローテへと繋がりました。ガソルが動かないのをアヌノビーが異次元の運動量でカバーし、空いたスペースをラウリーが塞いでくれています。

ラウリー、ヴァンブリード、パウエル、アヌノビー、シアカム

昨シーズンはパウエルを入れた3ガード、ノービッグも増えました。こうみると年々スモール化しているラプターズです。ここでもラウリーの能力は・・・といいたいけど、昨シーズンはただただ苦しいシーズンでしたね。タンパベイでのシーズンにならなければラウリーは残留したのかなぁ。

ラインナップの柔軟性を助けてくれたラウリーの万能性

もちろん、優勝したシーズンが最もディフェンスのバランスが良かったのですが、以降も戦力低下しながらも結果を残せたのは、ラウリーが万能だからこそ柔軟なラインナップで戦えたからです。そして、これらの要素は

ニック・ナースの柔軟な戦略を成立させていたラウリーの存在

こんなこともいえました。大胆かつ繊細な采配で試合展開を変えていくニック・ナースでしたが、それはチームに知性と殉難性をもたらしてくれるラウリーあってのものでした。

そんなことを痛いほど感じることになったアフター・ラウリーの1年目となったのです。前置き長い。

◎ノー・テレパシー

今シーズンのラプターズにおいて最大の悩みは「守れなくなった」ことでした。ラウリーがいなくなったとはいえ、センターの層が厚くなり、スコッティ・バーンズも加わったのだから、そこまで大きな戦力ダウンにはなっていないはずです。ところが、ディフェンス力の低下は致命的でした。なお、昨シーズンを参考にできるのか悩ましいので、2年前と比較します。

〇ディフェンスレーティング
104.7 ⇒ 109.9

〇被FG
42.8%(2位) ⇒ 46.2%(17位)

〇被3P
33.7%(1位) ⇒ 35.4%(18位)
〇被3Pアテンプト
38.9本(29位)⇒ 34.9本(15位)

〇被オフェンスリバウンド
10.9(26位) ⇒ 10.3(16位)

〇被アシスト
25.6(26位) ⇒ 25.3(20位)

2年前のラプターズは、なかなかファンキーなディフェンススタイルを持っており、リーグで最も3Pを決めさせないチームながら、リーグで2番目に多くの3Pを打たれていました。被アシストも多く、パスを回されて3Pを打たれています。

ただ、実際には「ディフェンスローテが凄すぎて、相手はシュートに行けずにボールを回し、3Pを打つしかない状況に陥る」ことが多いからでした。ちなみに最も多く打たれたのはバックスですが、あっちはインサイドを固めているからです。

ヘルプに出てはローテするのでリバウンドも取られまくりました。なお、バックスはここをキープします。似たような被3Pアテンプトのスタッツだけど、守り方も狙いも全然違ったわけだ。

今シーズンのラプターズはディフェンス力が低下しましたが、低下した以上に多くのスタッツが中位前後になっています。ファンキーだったテレパシーディフェンスの2年前と比較すると、なんだか「普通のNBAチーム」になってきたわけです。

特殊だったチームディフェンスが、普通のディフェンスになってしまった

これがラウリーがいなくなって「知性」が抜けた最大の影響でした。主力は残っているし、テレパシーディフェンスに適したようなバーンズやアチュワが加わったのに、全くできなくなってしまったわけだ。苦しいぜ。

〇相手のターンオーバー
16.8(2位) ⇒ 15.8(2位)

〇ディフレクション
17.0(2位) ⇒ 17.6(1位)

〇チャージドロー
0.82(6位) ⇒ 0・41(16位)

変わらなかった要素もあって、プレッシャーディフェンスでターンオーバーを促すのはリーグトップレベルだし、ディフレクションも多いです。カウンターこそ命。2年前のラプターズは「プレスでボールを奪うし、シュートミスも誘う」でしたが、今シーズンはボールは奪うけどシュートは決められているので、ギャンブル要素が高まったわけです。

ギャンブルっていうか、ボールへのプレッシャーは強いけど、ローテの速度が落ちているから奪えないとイージーシュートが増えたってことですね。コンテステッドシュート(競り合ってのシュート)は62.8本から52.1本へと大きく下がっています。

ちなみにチャージドローはトータル59回あったうち、ラウリーが34回なのでマジでラウリーがいなくなったというだけです。

プレッシャーディフェンスは健在だが、ローテ能力は落ちたため、イージーシュートを打たれている

実際、ペイント内失点も41.5から45.1へとダウンしています。戦力的にはディフェンス優先で集めているし、層も厚くなりました。今でもラプターズはディフェンスの良いチームに見えますが、スタッツは明確に落ちており、そこには「ラウリーが助けてくれていた」空気が散りばめられているのでした。

ちなみにヴァンブリード、アヌノビー、シアカムの3人が同時にコートにいると
オフェンスレーティング  112.9
ディフェンスレーティング 106.8
とかなり改善します。ここにトレントやバーンズが絡んでも、ディフェンスはそこまで変化のない数字になります。問題は「もう1人が誰か」であり「ベンチメンバーが増えると上手くいかない」なのですが、2年前はそれでも上手くいっていたことを考えると、なおさらラウリーのリーダーシップが重要だった気もしてきます。

◎アヌノビーの憂鬱

異常な守備範囲を誇り、ローテのスピードが速い上に、ほぼ抜かれることはなく、リムプロテクターにもなれるアヌノビーは、現代ディフェンスにおける「最強のディフェンダー」とすら思えます。1on1ならば、もっと強い選手はいますが、アヌノビーほど広範囲に守れてしまう選手はいません。ところが、今シーズンのアヌノビーはそこまで目立ちませんでした。それは

アヌノビーの異常な守備範囲が不要になった

なんてことでもあります。従来のテレパシーディフェンスは異常な連携力を誇る代わりに「アヌノビーが異常だから、ギリギリ成立しているディフェンス」にも見えました。しかしチームとして普通のディフェンスになってしまったので、「そんなギリギリの守り方は不必要」になったのです。

そんなアヌノビーの憂鬱。戦術とは個人を輝かせるものであり、個人のスペシャリティが戦術を作り上げます。ラウリーがいなくなったラプターズでは、アヌノビーの異常さを信用する守り方が成立しなくなっているのでした。

ということでオフのテーマの1つですね。アヌノビーの魅力と、今シーズンの課題を語ろう。そのうちね。

◎失われた「崩し」

主力の酷使が目立ったニック・ナースですが、実はもともと主力を長く使う癖があり、シーズン前半は固定化してチームの連携を高め、シーズン後半になるとベンチメンバーも活躍するようになるのが特徴でした。しかし、今シーズンは最後まで主力酷使だったので「いつまでたっても連携が作れない」と嘆いていた気がします。気がするだけかもしれません。

シーズン序盤のオフェンスではスコッティ・バーンズとアチュワが「連携のジャマ」をしているケースが多く、インサイドの2人がスペースを潰してしまうので、アヌノビーやシアカムが困っていました。またアチュワの3Pにも悩まされました。タイミングも変だし、そもそも決まりそうにないので、何をしているのかさっぱりわからん。

この2点についてはシーズン終盤になると、かなり改善されていました。ただし、前者は少しムリヤリな解決方法であり、後者はアチュワが決めるようになってきたためです。そのため、一体どこまでがシーズンプランで、どこからがエマージェンシーだったのか、全く分かりません。何考えているかわからないからこその天才感。

シーズン前半とシーズン後半では、別のオフェンスをしていた

守れなくなったディフェンスだけでなく、オフェンスにも大きな変化がありました。簡単に言えばビッグラインナップへの変化ですが、そこには選手層の問題があったし、何よりもこのビッグラインナップに適しているであろうバントンの出番がなくなったことは、単なるビッグラインナップではありません。

バントンは6-7もあるフォワード登録ながら、ラプターズではPGをやっていました。他のウイングよりもハンドリングスキルが高いので、この役割を回された感じです。なかなかファンキーなルーキーとして活躍もしていました。

しかし、本人のFG成功率の低下もさることながら、ビッグラインナップが本格稼働すると出番を失っていきました。サイズだけで考えるなら、バントンにPGやらせるメリットは大きいはずですが、それを選ばなかったので

・そもそもロスターがビッグだった
・PFとCを並べるビッグラインナップを活用した

前者はシーズンプランですが、後者はシーズン中の変更だったと思います。それにしては大胆過ぎる変更ですが、ヴァンブリードのケガもあって結果的にそちらに流れた印象もあります。

マラカイ・フリンの出番が少ないことも含めて、ラウリーのいなくなったラプターズは「PGの仕事が不要」になっています。それはペリカンズのようにゲームメイク能力に問題があるから、いっそのこと諦めたに近いです。

〇タッチ数
415.9 ⇒ 403.2

〇ペイントタッチ
21.6 ⇒ 26.0

〇エルボータッチ
12.0 ⇒ 9.6
〇ポストアップ
8.3 ⇒ 6.5

ラプターズはタッチ数が減っており、シンプルなパス交換からオフェンスを始めることが減ったのですが、面白いのはドライブなどでペイントに侵入する回数が増えたのでペイントタッチは増えているけど、エルボーやポストアップは減っている事です。インサイドを重視したのかと思いきや、ポストに預ける回数はグッと減りました。これもパス交換減少に繋がっています。

〇パス数
292.3 ⇒ 281.2

パスの数もグッと減りましたが、ポストやエルボーの減少を考えると、そこまで劇的に減ったわけでもありません。ドライブからのパスアウトはしっかりと続いており、パスを出さなくなったのではなく、ペイント近辺の中継だけが減ったイメージです。

エルボーやポストでの中継が減ったが、ペイントへの侵入は増えた

なんだか変わった変化をしています。ラウリーよりもガソルがいなくなったことの方が大きそうにも見えますが、ガソルを使っていたのもラウリーなので、ラウリーって事にしておきましょう。

ラプターズのオフェンスは両コーナーに選手を配置して置き、スペースを作って中央で3on3から始まっていましたが、ここからハンドオフを使ってコーナーの選手をトップに持ってきたり、フェイクからのバックドアカットを混ぜていきます。多彩というか「次々に連動する」のが最大の特徴でした。

また多彩なパターンを使い分けているというか「相手の弱点を突いていく」ことを優先していました。コーナーにいたアヌノビーは、頻繁にエルボーに上がってきて中継点になると、今度は空いたコーナーにガード陣が移動し、ポジションチェンジを繰り返していきます。ディフェンスの体形やマッチアップの関係を変更していく事で、スキを作っていくのが上手いチームでした。

ラウリーはオフボールで動いてスクリナーにもなれば、シューターとしてボールを受け直してきます。1つひとつでフィニッシュに辿り着くわけではなく、まずはディフェンスを動かし「崩す」ことから始まりました。今でもヴァンブリードが似たようなことをしますが、離脱してしまうと何もなくなってしまいました。

またシーズン前半はアヌノビーのようなポジションをバーンズやアチュワがとっていたのですが、それがスペースを潰す動きになっていたり、周囲と連携せずに自分だけで動いていたり。アチュワはその流れで3Pラインの外に出て変なタイミングで3Pを打っていました。ラプターズのプレーコールにある動きだけど、弱点を狙えてはいませんでした。

そしてシーズン後半になると、これらの動きはなくなりました。ニック・ナースは従来のプレーコールをやろうとしたけど、今の選手ではムリだから諦めた感じです。かわりに

ファイブアウトでドライブ&キックアウトの連続

という極めてシンプルなオフェンスへと移っていきました。1人ひとりは「ドライブか3P」なので判断レベルが低くてすみます。その代わりビッグラインナップにしてオフェンスリバウンドを強化するハードワークで足りない要素をカバーしに行っています。随分と簡素化されたオフェンスになったのです。

なお、ラプターズのオフェンスにおける最大の武器はスティールからのカウンターなのですが、その点については変化はありません。いろいろ変わったけど、ここのアイデンティティだけは続いています。

◎1を10にするシアカム

シアカムについてよく言われていた言葉です。

「0を1(崩し)には出来ないけど、1を10する(フィニッシュ)は上手い」ので、セカンドエースとしては超優秀だけど、ファーストオプションとしては弱いってね。当初はレナードがいたので2番手エースという意味でしたが、いなくなってからはラウリーやヴァンブリードの「崩し」があってこそ輝くシアカムって感じでした。

しかし、シーズン終盤からプレーオフには自らのアタックでプレーを作っていました。ビッグラインナップにしたことで、マッチアップ相手がガードになることも増え、抜けなくても押し込んでしまえば高さの利が活きたのです。

ビッグラインナップ最大のメリットはここでした。単にデカいのではなく「シアカムやバーンズが楽に打てる」ことが大切なので、PFやセンターばかりであることで、相手のマッチアップを誘導できていました。バントン起用してPGがバントンのマークに来ていたら意味がないってね。渡邊もね。

「崩し」が出来ないから「フィニッシュ力」を最大限に生かしたかった

そんな風に見えたラプターズのオフェンスでした。しかも、これの恐ろしかったのはアチュワが3P決めるし、ドライブも上手くなったことです。シアカムはPFとは思えないハンドリングスキルでガードとしてふるまうしさ。連動性は低いけど、ドライブ&キックアウトがシンプルで、個人個人のフィニッシュ力で勝負に挑んでいました。

ラウリーがいなくなったラプターズのオフェンスは、かつての特徴だった知性を失い、その代わりにフィニッシュ力が全面に出てきました。これで似たようなレーティングを叩き出すのだから、ニック・ナースが天才に思えてくるわけです。コートで行われている事象は天才でも何でもないので、昔のラプターズを知らないと「なんだこれ」程度なのですが、同じHCでここまで変わるかなー。ってくらい変化しています。

オフェンスについて、まとめてみましょう。

・ポストの中継やポジションチェンジ、パス交換による「崩し」がなくなった
・相手の弱点を利用するゲームメイクはなくなった
・ファイブアウトのドライブ&キックアウトのシンプルな形が徹底された
・「フィニッシュ力」ばかりが目立つようになった
・足りない知性を、ビッグラインナップの高さで補った

最後は簡単なようで難しい現象でもあります。小さい選手よりも大きい選手の方が3Pだってブロックされにくいよね。その代わり、細かいスキルはないんだぜ。何故かトレントまで、この波の乗っていたし、アヌノビーはちょっと困っていたけどね。

シーズン途中までヴァンブリード、トレント、シアカム、バーンズ、アヌノビーという機動力系統のチームだったのですが、ベンチメンバーで起用されるのはバーチ、アチュワ、ブシェイ、ヤングになったので、急激に違うチームへと変貌したのでした。

◎アフターラウリー

ラウリーがいないラプターズは、シンプルな構成のオフェンスになり、守ってもテレパシーのない単なるチャレンジ&カバーになりました。ただし、全員がデカいのでスイッチしようが、ポジションチェンジしようが特に影響がない形にしています。

攻守に「知性」を感じなくなり、シンプルな構成と変なラインナップで補った

こんなよくわからないシーズンでした。すごく強いロスターには見えないし、戦術的にも特殊ではないし、ゲームメイクが上手いわけでもない。ただ、シンプルなので意思統一されており、それでいてヘンテコラインナップなので相手からすると「やりにくい」チームでもあります。弱点を攻略できなくなった代わりに、ラインナップの時点でムリヤリ弱点を作ったようなものです。

自分たちが難しいことを出来ないならば、相手を難しい状況に追い込め

こんな印象すらありました。何をしているのかわからないけど、収支を合わせて勝利に持っていくニック・ナースの天才性が存分に発揮されていましたが、それだけに「強い」と感じさせることも少なかったです。

個人としての強さを見せて新人王になったスコッティ・バーンズは、この戦い方をするのに重要な選手でした。その一方で「やっぱり知性をドラフトすべきだったんじゃ」という気もしてきます。サッグスかギディを指名していたら、ラプターズがどうなっていたのか気になるところです。ということで、オフはTJマッコネルと契約しようね。

かつて「5人全員がプレーメイカー」だったラプターズは消えてなくなり、それでもまた新しい形を見せてくれています。チームの知性に限界を感じたのか「諦めた」ようなニック・ナースなのに違う形で結果を出したわけですが、果たしてこの路線を続けるのか、それとも選手の知性を伸ばしていくのか。

アフター・ラウリー0001年。それはわかりやすくラウリーの穴を感じさせるシーズンでした。ラウリーがいないものとして進むのか、それとも新たなラウリーを育て上げるのか。0002年に何をするのかも楽しみではあります。

さようならラプターズ。さようならラウリーのラプターズ。そう感じさせるシーズンでした。

◎さようなら渡邊雄太

さて、こうやって考えてみると、渡邊雄太がローテーションの一角へと成長しながら、チームの変貌と共にプレータイムを失った理由も見えてきます。

「チームに足りないアヌノビーの代役」かと思ったら「テレパシーディフェンス辞めました!」になったわけです。

果たして渡邊はラプターズに残るのかどうか。それはラプターズがどっちの道に進むのか次第な気がするのでした。次回:さようなら渡邊雄太inバスケット・カウント

さようならラプターズ” への6件のフィードバック

  1. ラウリーとドレイモンドが同じチームにいたら、
    チームのディフェンス力がかなり底上げされそうですね

    ラウリーのオフェンスでの影響力を見ても、ベテランミニマムになる頃にでもウォリアーズで観てみたい選手です

  2. ラウリーというと、いまだに意味不明なプルアップ3pを打ってケイシーに怒られてるイメージがあるのですが、ラプターズ後半期は本当に素晴らしい知的な選手に育ちましたね。

    アフターラウリー0002年、楽しみです。個人的には(シーズン中盤に試してたけどあまりうまくいかなかった)バーンズとアチウワに知性を叩き込む路線でいくのではないかと予想します。ウジリ&ナースマジックに期待です。

    1. アグレッシブすぎて意味不明なことが多かったですよね。
      ニック・ナースになって、レナードがきてから、劇的に変わった印象です。

      私も元に戻す気がするのですが、その2人が厳しそうなんですよねぇ・・・

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