さようならサンダー

2022/3/8

「さようならシリーズはやるんですか」と聞かれましたが、そもそも全チームはやってないよ。プレーオフで負けたところで感想をまとめて書くのが一般的です。稀に気になったチームについて書くけど、プレーオフに進めないチームは書いても仕方がないことが多い。

というのは方便で、実際にはプレーオフになると忙しいからですね。1年前は仕事しないで見ていたけど、今年はそれが出来ないのでファーストラウンドが不安だし、さようならシリーズには手が回らないだろうな。

さて、今回はバックス戦を見ながら、残り17試合となったサンダーについて書いていきましょう。最近はプレーオフチームを見たいけど、調整中みたいなロスターで戦っていることが多く、いまいち心が揺れないので、だったらプレーオフに出ないチームを見よう。ついでに「さようならサンダー」にしてしまおう。

◎1つの大成功と・・・

今シーズンのサンダーは1つの大きな成功と、複数の小さな成功を手に入れ、失敗らしい失敗がないシーズンでした。

大きな成功は、もちろんギディです。オーストラリアから来た細身の若者は、NBAにアジャストするのに時間がかかると思っていたけど、極めて早期に大事な戦力となりました。特に重要だったのがリバウンドの強さと、そこから始まるトランジションアタックで、3ガードのサンダーシステムに適合する素質と、新たな武器をもたらしてくれました。

3ガードの一角として機能するオールラウンドな能力
リバウンド&トランジション能力で新たな武器をもたらす

ファンタスティックなパス能力が目立つギディですが、それよりも戦術適応能力の方が大事です。若いチームがベースを作る段階で迷うって厳しいよね。なんの違和感もなくチームに溶け込むことができたし、SGA離脱すると明確にギディのチームにしていきました。

もちろん、弱点もあるので、まだまだ成長が必要です。ただいろんな使い方が出来るし、いろんな選手と組み合わせられるのだから、チームの方向性を狭めずに進めるのはメリットが大きい。そしてカニングハムを欲しかった理由も見えちゃうね。

さて、問題は「大きな成功は1つ」ってことです。

シェングンを指名しなかったことを嘆くサンダーファンもいますが、出来ればもう1人の核となる選手が欲しかったシーズンでした。ドルトのように成り上がりでもいいから、もう1枚の中核選手が登場すれば、サンダーのシーズンは成功だったと言えますが、残念ながらそこまでではなかったね。

それらは言い換えれば「他のチームではプレータイムを貰えたかわからない」レベルの選手が試合に出ていたって事でもあります。ポクシェフスキーをはじめとして、この経験を糧としてジャンプアップしてくれれば「良いシーズンだった」といえますが、それは来シーズン以降になってみないとわからないね。

一時はスターターの座から滑り落ちてしまったベイズリーなど、ドルトレベルに中核的な位置づけに上がってきた選手はいませんでした。それがとっても苦しいし、だったら「中途半端に勝たずに、タンクしろよ」と嘆かれてしまわけだ。

◎小さな成功たち

一方で今シーズンも何人もの小さな成功がありました。次々に出てくる若手たちは、それぞれが中核にまでは上がれなくても、期待したくなるプレーをしました。今年の新顔達でも

ロビンソン・アール
トレ・マン
アーロン・ウィギンズ
ディアキテ
クレイチ
サー
ウォータース

などなど。管理人のお気に入りは最近になった登場したクレイチですが、とにかく次から次へと若手が登場してきます。ここにマラドン、ポク、ジェローム、ロビーなども絡んでくるので、小さな成功は本当に多い。

しかし、指名権ヤクザが牛耳るオクラホマなので、ドラフトでも次から次へと有望株を獲得することが出来ます。最近の成功例であるサンズとグリズリーズは、若手を育てるよりも完成度の高い上級生をドラフトで連れてくる手法をとっているように、サンダーの若手が育っていくのは楽しいけれど、それが未来に向けての成功とは限りません。

だから複数の小さな成功よりも、1つの大きな成功の方が大事。

ポク、ベイズリー、マラドンあたりが、頼りになるベンチメンバーになっていれば、話も変わってきたけど、どうしてもプッシュしきれないレベルにとどまっているよね。悪くはないどころか、良い活躍なんだけど、それはあくまでも「年齢を考えたら」ってことだ。

特にポクとベイズリーがどこまでレベルアップできるかはサンダーの戦力を左右します。このシステムにはウイングビッグの仕事は重要であり、非常に多い。それこそバックス戦でいえばヤニス・ポーティス・ミドルトンとマッチアップ相手を変えながらディフェンスでハードワークし、オフェンスではヤニスを攻略するためにプレーチョイスを変える必要があります。

・相手エースとマッチアップ
・インサイドカバー

・3Pでストレッチ
・オフェンスリバウンド
・トランジションアタック

特に3ガード時は「ハンドラー仕事以外のすべて」って感じです。目立たないことを必死で頑張らないといけないので、スーパースター1人ではなく、ハードワーカーが2人の方がベターかもしれません。だから2人が本物になれば、それで成立するのも事実だ。

◎ビッグマン

小さな成功がいくつあっても、大きな成功1つには勝てない。といいつつも、ハードワーカーを多く揃え、チームを支えるのは大事なことだし、特定の武器を持っている選手を育てるのも大事だよね。

サンダーのシステムではロビンソン・アールやサーのように、動けるビッグは重要で、インサイドをしっかりと空けておいてドライブを促し、何度もスクリーンに行ってドライブを促し、カッティングでディフェンスのギャップを作ってドライブを促し、時には自分がスペースを使ってアリウープをぶちこんだり、コーナーに開いて3P決めるのも大切だね。

これらの役割は今年のドラフトで有望なビッグマンを獲得することで解決もします。そういう選手が多くエントリーしてきそうなので、狙いとしては理解も出来る。主役のビッグをドラフトに求め、わき役のビッグをこのまま育て、ベイズリーとポクの成長に期待しておこう。

ところで、サンダーのシンプルなシステムはドライブ&キックアウトで構築されることが多く、ビッグマンは動き回りながらパスを受け、そしてエクストラパスで展開していく必要もあります。

ダグノートになって2年目ですが、選手が育っている理由の一つは、それぞれの判断力が上がっている事にあります。それこそバックス戦は大敗しているけど、実はボールの動かし方はかなりスムーズ。止まってから考えることは少なく、次にどこが空くのか理解が進んできました。

ただし、フィニッシュ力に欠けるから良い展開でも決められないし、「良い展開」をしすぎるから怖さが足りないって事もある。時にはムチャクチャでもツッコんで決めてしまうスター性がないと勝つのは難しい。

小さな成功といったものの、個人の判断力が上がり、それがチーム全体に波及していることは極めて重要です。共通ルールがチームの中に根付いてきたし、それはかつてのビリー・ドノバン時代とは一線を画す新たなカルチャーの構築でもあるので、この点については高く評価しましょう。

◎ジェローム、クレイチ、ウォータース

小さな成功であってもチームにとって重要なケースもあります。それはわかりやすくいえばダンカン・ロビンソンやジョー・ハリスといったシューターを作り上げる事。明確なオプションとして機能し、それでいてチームディフェンスや戦術を理解するロールプレイヤーという貴重な存在に昇華させることです。

サンダーはこの2年間で何人かのシューターを連れてきましたが、これがどうもスリーガードに合わない。ハンドラーアタックを求めているから、そこにシューターを置いても上手くいかないってことなのか、プレーコールが足りないのか。ダンカンもジョー・ハリスも明確なプレーコールの中で力を発揮しているしね。

そこでハンドラーも出来るタイプとしてタイ・ジェロームを獲得したのが昨シーズンでしたが、そこそこの活躍はすれど、これだったら普通にハンドラー能力の高いトレ・マンの方がいいかなー、となってしまいました。

最近ではウォータースがジェロームのような役割を試されており、やっぱりシューター系は欲しそうに見えます。似たようなハンドラーアタックばかりじゃ手詰まりになるしね。

そんな中、こちらも最近登場したのがチェコから来たクレイチ。203センチのビッグガードはシューターというほどは打っていない代わりに、サンダーに足りなかったオフボールムーブも持ち合わせており、パスアウトの判断も的確。ウイング的に振舞えるガードであり、ディフェンスポジションも変更可能なので、戦術フィットしそうなタイプです。あとは3P決めまくってくれれば特殊武器の戦力になれそう。

サンダーは良い意味で自分たちに合う選手を捉まえてきましたが、さすがに2年も経つとパターンの固定化も出てきてしまいます。ちょっと違いを作れそうな新キャラは面白く見えてくるわけで「小さな成功」も次のステップへと進む段階に見えてきました。

シンプルながら一貫した戦術で、個人の成長を促してきたのはポジティブ。ちょっと似たような選手ばかりになって特殊な武器が足りないのはネガティブ。それを打ち破ってくれそうな選手を試しているのでした。

◎最強ケンリッチ

これらのことを踏まえた上で、今シーズンもケンリッチ・ウィリアムスは輝いていました。小さな成功の代表例みたいな選手ですが、その小さな成功もチームに勝利をもたらすキーマンになれる事を身をもって示しています。なお、チームで3番目に高齢な27歳。

サンダーはレーティング△7.5で、主力は軒並みマイナスです。ところが、平均21.9分プレーしているケンリッチだけは+1.7です。本人は7.4点、4.5リバウンド、2.2アシスト程度のスタッツだし、フリースローなんて55%を下回っているというのに、プラスを叩き出す変人です。

「本気を出すと強いサンダー」ともいうけれど、本気出すってのが「ケンリッチを出場させる」にも近いんだよね。

そんなわけで小さな成功達がケンリッチレベルまで上がると、それでも勝つチャンスは大きく広がりそうです。万能であることを突き詰めたような選手であり、ただただハードワーカー。ペリカンズでのルーキー時代から輝いていたけど、これもまた才能だよね。ちなみにベインと同じ大学だ。

◎SGAは何が変わったのか

話はガラッと変わりますが、SGAはスタッツを落としました。ギディ加入の影響でリズムが崩れたのか、それとも単なる不調なのか。NBAにきての3年間で濃密な時間を過ごしていたSGAにとって停滞の1年になってしまいました。

ルーキー時代はクリッパーズのスターター末席として、ディフェンスを中心にチームメイト達を優先したPGとして経験を積み

2年目はクリス・ポールとのダブルPGエースとして、自らも主役へとステップアップし

3年目はエースとして独立し、サンダーはSGAのチームとなりました。

迎えた4年目だけに次のステップへ進みたいところでしたが、チーム自体も勝ちに行くわけじゃないし、ギディを試すことも多ければ、そのほかも若手だらけだし。劇的なブザービーターで勝利をもたらすこともあったSGAは「雰囲気」はもっているけど、なんだかダラっとしたシーズンでもありました。それはSGAの責任ではないね。

SGAを見ていて思うのは「これ以上、再建チームとして勝たなくても良い状況を続けても、選手は成長しないのでは」ってことでした。結果的に勝率が5割を下回ってもいいけど、勝つための最大限の努力をすることで見えて来るものだってあるじゃん。

◎さようならサンダー

ということで今シーズンの感想でした。やっぱり主役キャラが1人足りなかったね。足りなかったことを他の選手の経験値に変えることができたかどうかは、来シーズン次第だ。その来シーズンになる前にやっぱりインサイドの要は獲得しないといけません。

指名権が大量にありますが、全部使っていたら、手元にいる選手は放出しまくることにもなる。かといって、最近はトレードアップは難しいから、指名権がだぼつきそうでもある。なんとかしたいよね。

チームとしても個人としても成長はみられたけど、それは未来へとどう繋がっていくのか。それが見えないから不安でもあったシーズンでした。

さようならサンダー” への4件のフィードバック

  1. ケンリッチとドートは契約延長してもっとサラリーをもらってください…
    SGAもギディーも十分な核だと思うので来シーズンからPO目指すチームに変わっていってほしいですねぇ
    溢れるほどの指名権をどう使うかは見ものですね

    1. 年々サラリーが下がっていく契約をぶっ放せば、その2人に向いてそうですけどね。ケンリッチは素晴らしいけど、かといって高いサラリー払ったら負け。
      プレスティは誰か欲しい選手はいるんですかね。ネッツが大失敗するのを願って、やつを取り戻すとか。

  2. 今季のOKCの記事はこれで最後ですかね笑?更新楽しみにしてました、ありがとうございます。仰る通り、「期待できる若手」が「チームのコア」になりきれなかったシーズンという印象です。最近ではポクがNBAプレイヤーらしくなってきたり、マレドンやベイズリーも光るプレーを見せることはあるのですが、今一つ未来を託すには力不足なように感じます。厳しい目で見れば、OKCが勝つために残すべきはSGA、ギディ、ドート、ケンリッチと来季以降の期待も込めてウィギンス、マンとJREといった感じでしょうか?やはりもう一枚コアになる選手が足りない気がしますね。プレスティがスパーズ王朝を手本としてコアにした選手が、ウェストブルック・KD・イバカだったことを考えると、次にOKCが狙うのはビッグマンだと思います。しかしここがまた難しいところで自前ピックがトップ3に入らないと、下位3チームの状況的にドラフトピックをいくら積んでもトレードアップが狙えそうにないというのも苦しいですね。そこで個人的にドラフトで目当てのビッグマンが取れたら良し、ダメならダメ元でエイトンやバンバのようなRFAにオファーするのは一つの手だと考えているのですがどう思われますか?また来季以降のOKCがこうなったら面白そうといった点(選手、戦術など)があればお聞きしたいです。長文失礼しました、これからもブログの更新楽しみにしています。

    1. まだサンダーを見るかもしれませんが、見たところで印象は変わらないと思うので、まとめでした。

      ビッグマンを育てるのは時間もかかるし、外から連れてきた方が汎用性があっていいんですよね。エイトンにはオファーだけでも出しておきましょう。
      他にはFAでヌルキッチあたりに手を出してもいいし、意外と指名権を積み上げてADってのは、レイカーズが再建になるならあるのかも。

      またホーネッツに眠っているウイングが結構いるので、指名権1つで奪い取るのも面白そう。ウルブズからマクダニエルズかバンダービルドをとるとか。

      そんでまぁ3ガードの一角にウエストブルックを連れて来るってのもありなんですが、これは1年早い感じがします。

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