ロケッツ ~原点回帰は正解なのか~

リーグ最強だったはずのロケッツ。ほんの少しのボタンの掛け違いがもたらした敗戦は方針をかき乱していく。

◉優勝できないと言うこと

 

ウォーリアーズとロケッツのどちらが強いかは別にして、十分に勝つチャンスがありながら、それを逃した事でロケッツには変革が訪れました。この現象はよくある話で、優勝してしまえば多少の問題は水に流され、負けた方は大きな変革を求めていきます。そして変革の多くは失敗で終わります。

1年前のプレーオフを思い出すと戦力を落としたと思われていたロケッツは、ダントーニの就任によりオフェンスチームとして大復活し、高い期待をされたもののプレーオフではハーデンを止められたことでスパーズに負けました。直後のダントーニは「来シーズンはディフェンスを強化する」と話し、その通りのチームを作り上げました。

 

〇ロケッツのディフェンスレーティング

16-17シーズン 106.4(18位)

17-18シーズン 103.8(6位)

 

オフェンス面は111.8→112.2とあまり改善したわけではなく、ロケッツが勝率を上げたのはディフェンスでの改善が大きかったのです。特にハーデンなんていうお荷物を抱えながら、そして時に気を抜いているにも関わらず、エースキラーを複数備え、少ない人数で高いヘルプ能力を発揮するシステムは6位という順位以上に強烈であり、何よりも安定していました。

それはハーデンとクリス・ポールで合計34試合も欠場がありながら65勝まで辿り着いた成績が物語っています。ダントーニ1年目で作り上げられたオフェンスに、2年目で加わったディフェンス力は驚異的であり、チャンピオンリングを手に入れてもおかしくない強さを誇り、プレーオフのフォーマット見直しの話まで挙がっているほどです。

しかし、勝てなかったのだからロケッツは変革を求めるのでした。

◉敗戦の理由

 

ロケッツのプレーオフの最大の問題は

「クリス・ポールのケガ」

でしたが、長きにわたる信頼と実績から問題視されておらず、大型契約を手にしました。短いプレータイムと多すぎるケガにより「マックスの価値はないだろう」というのが正直な見解ですが、アリーザやバーアムーテといったサポートメンバー達を残すよりも主役を残すことを選択しました。これにより(獲得できたかは別にして)アンソニー・トリバーをはじめとしてFA市場から選手を集める方向性も失われました。

それ以外の敗戦の主な理由は次の2つです。

 

①主役のいないウイングの得点力不足

②vsウォーリアーズに対する層の薄さ

 

①は重要な働きを続けたアリーザとPJタッカーですが、ハーデンのシュートが決まらなかった点も含めて3Pを外し続けました。そもそもバーアムーテも含めてスポットシューターであり、主役の働きを求めることが間違っています。「ハーデンが何とかする」にも限界があり、「ならばクリス・ポール」ではケガ問題も含めて悩ましいわけです。

もう1人ハンドラーに主役を連れてきてもダボつくだけなので、ウイングに主役を増やすしかありません。もちろんデマーカス・カズンズという選択肢もありましたが。

 

②に関しては非常に難しい問題があり、あくまでもウォーリアーズ相手には層が薄いのであり、多くのチームに対しては有効なメンバーを揃えています。それでも目指すのが優勝であれば避けては通れない道なのです。

 

〇オフに獲得したウイング

カーメロ・アンソニー

ジェームス・エニスⅢ

マーキース・クリス

 

凄いメンバーを獲得したものです。特に最後のクリスについてはライアン・アンダーソンの対価で得られるポテンシャルではありません。不合理すぎるトレードを成立させたマクドノーの手腕が光ります。えっそれはサンズのGMだって・・・。

アリーザとバーアムーテを失った代わりに得たのはオフェンシブな選手達でした。そして地味に若返りも実現しています。その働きぶりは読めないのですが、少なくとも個人で打開する力は前任者達よりも上です。戦術理解度は劣るよ。

 

ロケッツのウイングの重要な役割は3Pになるわけですが、「シュート能力は伸ばせる」という確信をもっているのであれば働く可能性は高いです。そもそもロケッツは3P40%を求めているわけではなく、しかもムービングしての難しい3Pではなく、スポットシューターとして正しいポジショニングとフリーで決める能力を求めているだけです。

「ダントーニはカーメロを改造できるか」で触れたように、それぞれの選手を改造する計画と捉えましょう。

ダントーニはカーメロを改造できるのか

 

エニスは良い選手ですが、納得いくパフォーマンスに辿り着けるか境界線上の選手です。ただ、インサイドでのプレーはアリーザを上回るでしょう。

一方のクリスは荒すぎる素材型であり、素材が多すぎるサンズは敬遠したことになります。まだ21歳と若く6-10のサイズがあるので、場合によってはカペラの代役も受け持つ可能性があります。なお、そちらの方が仕上げるのは簡単でしょうが、あくまでも代役止まりになります。

クリスに関しては実力には疑問符がつく反面、これまでのロケッツに不足してた「伸び代」を新たに与えてくれます。同じチームで2年連続で勝つことが難しく、かといって有能な若手を得ることも難しかったチームにもたらされた大きな異分子は少し楽しみでもあります。

 

いずれにしてもアリーザ、バーアムーテ、ライアンを失って得たのは、より自分でプレーメイク出来るタイプの選手です。その一方で安定感を欠くことになります。それは言い換えれば可能性を秘めてもいます。

狙いは前述の通り、ウイングからの得点パターンの構築ですが、その先にあるのは昨シーズン実現しなかった

オフェンス力のアップ

だと睨んでいます。それは本質的なダントーニ方式であり、実はクリス・ポールのスローダウンによって失われた要素でもあります。ハンドラー以外からのプレーメイクを新たに加えることになるロケッツは、+アルファを求めたのでありつつ、オフェンス力への原点回帰でもあります。

ひとつだけ間違いないのは適切なプレーメイカーと戦術に囲まれることでクリスは、そのポテンシャルをサンズ時代以上に発揮するでしょう。クリスが大ブレイクするのがロケッツの理想的なシナリオです。もちろんコーチ陣とケンカする可能性もあるよ。

 

◉ハンドラー達の思惑

 

一方で強かだったのはハンドラーの強化でした。それはクリス・ポールのケガ対策であり、プレーメイクの多様化を目指しています。

マイケル・カーター・ウイリアムス

ブランドン・ナイト

ともにネームバリューはありながらも昨シーズンはケガにも泣かされました。そしてロケッツお得意のプルアップ3Pへの信頼が低い選手でもあります。サイズのあるMCWはウイング兼任でディフェンス面での貢献も考慮されていると思われますが、極めてシュート力のない選手です。

https://youtu.be/hF1Sn1HMCCw

 

自分で打開できるウイングの獲得

シュート能力に疑問のあるハンドラーの獲得

つまりは従来の「ダブルPG+ゴードン」という3人のハンドラーに集中していたプレーメイクを分散させることになります。3&Dを揃えたウイングからの脱却を目指すと言うことであり、プレーオフの反省点をウイングからの打開に求めている証拠でもあります。

よりゲームメイカータイプのPGを加えて、カーメロを中心にしたウイングからのプレーメイクを増やす

このトライアルがシーズン前半を通して続くことが予想されます。その間の勝率は落ちるでしょうが、そもそも昨シーズンは圧倒的な力を発揮しており、特に後半戦の強さは高い完成度に裏打ちされたものだったので、一旦リセットして作り直すことはプレーオフを見据えれば悪いことではありませんし、勝率を落とすと言っても5割まで落ちるわけではない。

 

結論的に言えばロケッツが目指す方向性は「オフェンスの立て直し」というわかりやすいものです。正直言って、メンバー構成を考えると「昨シーズンよりも強い」とはお世辞にも言えません。それどころか普通に考えると弱くなります。

オフェンスレーティングは110を超えると、その先の向上が難しくなります。ターンオーバーなしでもEFG55%を超えるわけですから当たり前です。しかし、ウォーリアーズのカリー&デュラントは115を超えてきます。そのオフェンス力への対抗を目指しているのです。

 

ダブルPG+トータルゲーム

それが昨シーズンのロケッツの戦術的な面白さであり、試合トータルで常に上回り続けることを目指しました。一方でプレーオフのvsウォーリアーズに限ればお互いにスターター酷使の中では、特定のユニットにおける一瞬の火力でウォーリアーズが上回っていたのです。

成功したトータルゲームに留まらず、この「一瞬の火力」を求めるために、3Pが特徴だった従来の構成を保ちつつ、よりインサイドにも強い選手を加えたのでしょう。

 

博打のような部分もあるけど、やっぱり計算も含まれているのがダントーニ&モーローコンビの優れたところであります。そしてそれは最後のライアン・アンダーソンのトレードで初めて形になりました。「大逆転のデローザン」ではないですが、最後までしっかりとプランを実行に移せる凄さがロケッツを支えています。

◉シーズンを通したウォーリアーズ対策

 

ロケッツが加えたメンバーはカーメロも含めて未知数です。アリーザのように安定感や計算できる部分はないし、エースキラーはPJタッカーのみになりました。だからチームとしては非常に不安定であり、弱くなると予想しています。

ただし、大きく人数を増やしました。そうプレーオフのvsウォーリアーズで明らかに足りなくなった選手層への改善も含まれているはずです。

 

とはいえ、現時点で使えそうな選手はギリギリでMCWくらいです。それはディフェンス力の問題であり、オフェンス面は課題しかないけどね。なので、この部分でもシーズン通して選手を戦術的に鍛え上げ、そして使える選手の見極めをしていくことになるはずです。

バーアムーテが使えなかったのが痛かったプレーオフでしたが、それはディフェンス面の欠点を補うほどのオフェンスでの貢献が出来ない選手ばかりだったからでもあります。カーメロ・エニス・クリス、そしてケガ明けのナイトがどれだけオフェンスで貢献し、ディフェンスのリスクを減らすことが出来るのか。

 

①主役のいないウイングの得点力不足

②vsウォーリアーズに対する層の薄さ

ロケッツがプレーオフで反省点に挙げたであろう2点は、割とわかりやすい形でオフの補強に繋がっています。弱くなったと思うけど、それを悲観するよりも次の可能性を考えている前向きなチームとも捉えることが出来るのです。

 

割とポジティブな見方をしてきたけど、優勝できるかといわれたら結構悩んでしまうよ。何故なら、昨シーズンのハーデンの活躍っぷりがあまりにも凄くて、さすがにあのレベルのプレーはしない気がするから。

 

攻撃力 ☆☆☆☆☆

これが落ちたらシャレにならん。が、ハーデン次第では落ちるかもね。多少の3Pの不安は関係ないよ。

 

守備力 ☆☆☆

うーん、超不安。

 

勝利の美酒度 ☆☆☆☆

5つ☆はあげられない。

 

先行投資度 ☆☆☆

戦術的な面白さは意外とある気がするよ。ただまぁ原型が出来上がっているので標準。それでも強豪チームで標準って凄いことさ。

 

スター選手度 ☆☆☆☆

ハーデンは凄いぜ!クリス・ポールとカーメロもいるよ。ヤングスターだけがいないよ。

 

若手有望度 ☆☆

クリスがいなければカペラしかいなかった。

 

戦術期待度 ☆☆☆☆☆

良く出来ているし、方向性を変えようともしている。ダントーニは単純明快なくせに面白すぎるよ。

 

チーム成熟度 ☆☆☆

うーん、結構不安。これが高いのが昨シーズンの特徴だっただけに、ウイングの入れ替えがどう響くのか。とはいえ、昨シーズンのメンバーも多く残っているけどね。

 

スーパープレー度 ☆☆☆☆

ハーデン、ハーデン、ハーデン、カペラ、クリスという感じ。連携の美しさと意外と豪快なフィニッシュがあるよ。

 

+アルファ度 ☆☆☆☆

どんな変化をするのかは注目すべきチームです。

 

 

◉不安要素の拡大

 

この記事を書いた後に、ブランドン・ナイトの再手術に加えて大きなニュースとして、ディフェンス担当ACのビズデリックが引退することになりました。正直、これは大きい。ロケッツのディフェンスを作り上げてきた参謀の引退が何をもたらすのか、というかこのメンバー達のディフェンス力がしっかりと向上するのか不安要素です。

ロケッツのディフェンスはこの2年間で大きな改善を果たしました。その概論は後任のACも理解していて説明できるでしょうが、新加入が多いウイングにディティールをたたき込むことが出来るのかどうか。

ヘルプディフェンスやポジショニングの上手さもあっただけに、単にディフェンダーがいなくなった異常のダメージがあるかもしれません。それとも一発大逆転でバトラーを獲得するのか。でもヘルプが上手い印象はないしな。

 

 

ロケッツ ~原点回帰は正解なのか~” への12件のフィードバック

  1. カズンズを加えたウォリアーズをディフェンスで抑え込むのは、もはや不可能と判断したのでしょうか
    それならギャンブルですがオフェンスで…
    うーんやっぱり無理なのでは?
    カズンズが怪我前の30%ぐらいまでしか回復しないのを祈るしかない(不謹慎)

    1. まずはオフェンス改革に手をつけて、シーズン中のトレードで調整する計画なのだと思います。ライアンよりは放出しやすい選手が増えましたし、アリーザ やバーアムーテも狙うのかも。

  2. カズンズが予想以上に使い物にならなくてケボンルニーしかいないGSWのインサイドをカペラがリバウンドで荒らすなんてことないですかね….
    マギーもパチュリアもいないし

    1. カペラに対してはグリーンやデュラントを起用してくるので、難しいかな。

      その時にクリスやカーメロがルーニーやベルを倒せるかの方がポイントになりそうです。

  3. もしバトラーが今のロケッツにトレードで来たらどうなるのかというのと、また誰がトレード要員になるのかを教えて下さいm(_ _)m

    1. サラリーの問題があるのでゴードン、タッカー、ナイトのうち2人を放出するイメージですが、ナイトは欲しがらないでしょう。
      ウルブズはジェンも放出したいので、そこにプラス要素が必要になりますが、ロケッツだけでは処理できないので3つ目のチームを探さなければいけません。

      バトラーはボールを止めたがるので、3人目のハンドラーになって、オフェンス面はそんなに機能しない。
      ディフェンスの方はエースキラー不足なので、そこで大いに役に立つもののスイッチの多いロケッツのディフェンスは肌に合わず、FAになって出て行くと思います。

  4. 最後に管理人さんが書かれたように、ビズデリックがシーズン前に引退するという報道を聞いた時の衝撃が大きかったです。
    この報道を聞く前はシーズン中にディフェンスをアジャストしてくるだろうという期待を持っていましたが、ビズデリック不在でどうなることかディフェンス面は不安しかありません。
    まあポール、ハーデン、カペラの契約中にモーレーの実験をいくつも試しながらGSWに挑戦していくのでしょうから、しばらくは楽しめるのかなという目で見ていきます。

    1. 予想以上に未知の部分が多い開幕になりました。ディフェンス力が怪しいメンバー達が増えても、何とかしそうなACだったのが変化がやってくるとは。
      ダントーニの収去も含めて来オフも動きそうなモーレーです。

  5. こんにちは ロケッツファンです
    ディフェンス力の衰退がカーメロの加入、そしてアリーザとムーテの離脱によって予想されてますが、カーメロがいてシーズンの半分ロバーソンを欠き、エースキラーがポールジョージしかいなかった前シーズンのサンダーがディフェンスレーティング10位に位置しているのを見ると、今期のロケッツのディフェンス力はそこまで不安視する必要があるのかと疑問に思ってしまいます。 PJ タッカーは未だ健在だし、エニスも入ってきて、ライアンがカーメロに変わりました。

    Why notさんは今期のロケッツはディフェンスレーティングを何位でフィニッシュすると思いますか?

    1. ロケッツのディフェンスはレーティング以上に接戦だと引き締まるイメージです。
      特に3Qまでのどこかで3Pが爆発する前提で、そこまでディフェンスで耐えているだけのような。
      点差が離れれば気を抜くシーンも多いので、数字以上のつらさがあるかと思います。

      サンダーは全体がディフェンスの出来る選手だったので、エースキラーが1人でもそんなに問題なかったです。
      そんなわけでロケッツのレーティングは13位くらいかな。あとはカペラのリムプロテクト次第。

  6. クリスのDFはどれほどのものなんでしょう?ブロックが派手という印象くらいしかないんですが

    1. ブロックが派手なくらいの印象しかないで正解だと思います。
      クリスに限らずサンズがね・・・。

      機動力があってインサイドまで守れる点では評価して良いですが、スキル的に優れているわけではありません。

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