さようならリバース

クビになったリバースですが、その責任をどう捉えるかは非常に難しいものがあります。ゲーム7に弱いことやクリッパーズ時代からカンファレンスファイナルへ進めないことなど、采配面ではプレーオフに馴染まないことは事実であり、今シーズンも払しょくできなかったのだから致し方ないともいえれば、リバースだろうが誰だろうが今シーズン「も」には何も変わらないので、責任を取らせるのも違うだろ。

実際、明確な采配ミスがあったのかといえば微妙です。ロースコアを勝ち切れなかったゲーム6と大敗したゲーム7でしたが、もはや采配よりも「エースの差」としか言いようがないので、セカンドラウンドが限界であることを単なるスケープゴートにしただけで、リバースを変えるだけで前に進める気はしません。

一方でリバースは3年目のシーズンであり、その3年の間に解決できなかった課題でもあるので、これ以上続けても出てくる結果は変わらないよね。だから他のHCに変革を促すことは正しい処置に見えます。リバースに感謝こそすれ、批判することはなく、でも評価することも出来ないっていうことかな。

では、3年間を振り返ってみましょう。

1年目のリバースは問題を解決する気概に満ちているように見えました。ACデビッド・イェーガーのゴリゴリなポストムーブ作戦に引っ張られるかのように、エンビードを「ローポストアタックさせるために」プレーを構築していました。エンビードのためにスクリナーが用意され、コーナーまでスペーシングする選手とカットプレーでディフェンスを動かす選手がいて、パスアウトから展開するのも整備されていきました。

当時はベン・シモンズもいたので逆サイドのエンドライン合わせにオフェンスリバウンドもありました。マジで、この1年目はプレーオフで勝てるんじゃないかと思いましたが、シーズン後半になるにつれ、解決に向かっていた戦術を忘れるようになり、そしてプレーオフではハイポストアタックするエンビードがコリンズ&ガリナリに潰されて負けたゲーム7となりました。

関係ないけど、以降の2シーズンで沈んだホークスを考えると、安定してセカンドラウンドに進んだのだから、そこまで否定されることもないよね。

2年目以降、エンビードは得点力を増していき、そしてオフェンスリバウンドを減らし、チームはハードワーカー不足になっていきました。足りないからPJタッカーを補強したけど、ベースにあるのは楽してしまったチームの変化にあります。よくいえばスマートですが、スマートなだけでもハードなだけでもプレーオフで勝ち切るのは難しいのです。

ACにはイェーガーが残りましたが、1年目のプレーコールが消えていったのは非常にもったいない変化でした。インサイドファイトを嫌い、ファールドローばかりのエンビードのプレーは改善しそうだったのにね。

一方で、ここからエンビードのアウトサイドは安定感が出てきます。それは得点力を増すことに繋がり、個人としてのレベルアップを果たしました。ハーデン加入によりプレーメイク力が上がったことが大きく関係しており、エンビードへのアシストは半分近くがハーデンによるものでした。よりイージーに打てるシーンが増えたことで、エンビードの得点力は向上したことになります。

途中加入で20試合程度だったリバース2年目のハーデンに対して、プレーオフになるとコーナーに設置し、シュートが決まらないことを批判されました。その間、エンビードとマキシーが個人技アタックしますが、当然のように効率は悪く、困ってしまいました。しかし、3年目となる今シーズンは初めからハーデンがいたため、これまででは考えられないほどにエンビードはスクリーンに積極的になり、自信を持ち安定したシューティングを使ってツーメンゲームをフィニッシュしていきました。

同時にシクサーズというチームにおいても、チームオフェンスの意識は強まりました。戦術理解に乏しいマキシーでしたが、以前のように戦術を無視したプレーはなく、悪く言えばおとなしいものの、よく言えば「自分がやるべき時間」を捉えることが出来ていました。もっとムチャクチャな印象だったので、エンビードだけでなくマキシーまでチームオフェンスの中に入れたハーデンのプレーメイクでした。

選手任せなのはリバースの悪い部分ですが、選手の長所をとりこむのはリバースの良い部分です。その点ではハーデンの長所が存分に取り込まれたうえで、エンビードの得点力も増しており、マキシーの融合も含めて、この3年間でオフェンスは良い方向に変化しました。

一方で当初の改善事項であったはずのエンビードにインサイドファイトさせる形は減っていき、同時にシモンズやサイブルがいなくなることによるハードワーカー不足も際立ってきました。長所を発揮できていないトバイアスだけが、弱点もあまり発揮しないという構図はリバースらしさなのかもしれません。

少なくとも今シーズンのゲーム7はセルツの守り方に対するアンサーを用意し、ハーデンもマキシーもエンビードもキックアウトを繰り返していきました。それは唐変木なプレーの繰り返しとは異なるわけで3年間の成果です。一方で打ち切らなかったタッカーと、決められなかったトバイアスと、そして「シュートを打つ」までは綺麗に作れても、「外れてもリバウンドで押し込む」というリスクヘッジが足りませんでした。

それをリバースの責任にするのは可哀そうですが、ハードワークのカルチャーが構築できなかった3年間でもありました。テイタムに決められてから、ピヨってボールをもらいに来なかったエンビードについては、さすがにリバースの責任ではないしさ。

さようならリバース” への2件のフィードバック

  1. 必要なのはエンビードを輝かせないHCかもしれない
    シクサーズファンとしてすごく納得させられる記事でした
    できるなら、エンビードをチームシステムの一部に落としこめるHCを希望したい
    でも結局無理で揉めてHCが辞める未来しか見えません
    いっそ髭が出て行ってエンビード売って再建のが良いのではと思うのですが
    それも難しいという
    先行きは暗いですね

    1. トバイアスも契約が終わったところで、いったんどうするかってのもあるので、来オフに真剣に考えることになりそうですね。

      それにしてもリバースに何を求めていたのか。外から見ると予想通りの内容だったし、こうしてみると仕事はしたんですよね。

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