なんだか毎シーズンのように書いているデローザン特集。その理由は1月2月あたりに止めようがないプレーをするから。ついでにいえば、その割にプレーオフで結果を残せないから、二重に書くチャンスが訪れます。そしてブルズで迎えた今シーズンはMVPに相応しい「結果」を残しているのでした。
ということで過去の流れを考えると、オールスター前に触れておくのが適切なので、シーズン終盤に調子を上げていくことを期待しながらも、チャンスを逃す可能性を否定できないので触れていきましょう。
◎スーパーなのか?
今シーズンのデローザンは何がすごいのか?
実はこのクエスチョンは非常に難しい。特にスパーズファンならば難しい。実はスパーズ時代と大した違いはないんじゃないかっていう疑惑があるのです。実際にスタッツを比較してみましょう。
〇得点 21.6 → 28.1
〇FGアテンプト 15.1 → 19.9
〇FG成功率 49.5% → 51.7%
得点を大きく伸ばしているので、問答無用に今シーズンの方が素晴らしいです。ただし、FGアテンプトを大きく増やしたことが要因で、成功率そのものはデローザン的には平均的。昨シーズンからは2%伸ばしていますが、その前は53%あったんだよね。EFGとTSも3シーズンを観てみるよ
〇EFG
53.5% → 50.5% → 53.3%
〇TS
60.3% → 59.1% → 60.1%
うん、2シーズン前と同じくらいですね。ってことで、実はスパーズ時代と比較して劇的に向上したわけではなく、FGアテンプトが大きく増えただけってことでもあります。プレーメイカーとしてハンドラーしていたスパーズ時代に比べて、ブルズではフィニッシャーに徹することが出来ているのが、純粋な得点増に繋がっています。
とはいえ、この変化はチーム事情を考えると不思議なもので、唯一のエースキャラだったスパーズから、ラビーンとブーチェのいるブルズに来てアテンプトが増えたわけです。普通ならば逆の現象が起きるのに、スパーズでパスを出すことを意識づけられていたことが問題だったように見えてしまいます。
〇パス数
38.0⇒38.1⇒33.8
〇アシスト
5.6 ⇒ 6.9⇒ 5.1
昨シーズンと比較し、パス数が4.3本減っています。これに伴ってアシストも減りました。面白いことにFGアテンプトは4.8本増えているので、ほぼパスの分がシュートになったとみることが出来ます。
デローザンはパスを減らしてシュートを打つようになった
傾向としては明確にこんな状況です。スーパーなようでいて、プレーチョイスを変えただけにも見えるデローザン。ポテンシャル的には昨シーズンと大差ないと捉えることも出来るでしょう。
◎そうでもない
では、実際にブルズの選手別のパス数を見てみましょう。デローザン以外でボールムーブしていることがわかります。
〇ブルズのパス数
ロンゾ 58.3
ブーチェ 53.4
カルーソ 38.4
ラビーン 37.5
ホワイト 34.3
デローザン33.8
ホワイトとカルーソは試合数、プレータイムの違いがあるので微妙なのですが、単純に比較してデローザンのパス数はチームで6番目です。マレーに次ぐチーム2位だったスパーズ時代と4~5本程度しかパス数の違いがないけど、その意味合いは異なります。デローザンがボールを持ってチャンスを作っていたスパーズに比べて、パッシング担当が多いブルズです。
一方でパス数に反して、ブルズでデローザンのアシストはチームトップです。パス数が6位でアシスト数が1位ってすごい話だよね。だから、スパーズ時代よりも周囲の考え方が変わっている感じなのです。
デローザンのパスを待つスパーズと、デローザンへパスを出すブルズ
平たく言えば、こんな状況なのですが、実はいうほど昨シーズンまでとスタッツは変わっていない現象もあるから不思議だったりします。チームで6番目のパス数のデローザンなのだから、さぞかしブルズのパス数は多いと感じるのだけど、そうでもない。
〇パス数
昨シーズンのスパーズ 262.4本
今シーズンのブルズ 274.6本
一応、12本多いですが、ブルズは下から6番目とパスが少ないチームです。ビリー・ドノバンらしくボールを動かすよりもドライブ中心なので、パッシングチームにはなっておらず、デローザンのタッチ数やら、ボール保持はあまり変わっていません。
〇フロントコートタッチ数
32.2回 → 29.7回 → 33.8回
〇平均ボール保持(秒)
4.95 → 5.49 → 5.46
フロントコートでボールを持つ回数は増えていますが、パスを貰ってシンプルに仕掛けまくっているわけではなく、普通に時間をかけてシュートまで辿り着いています。フィニッシャーとしての得点が増えたのだから、ハーフコートでチームメイトがボールを動かし、デローザンのフィニッシュが増えたのだと思ったら、そうでもなかった。
ってことで、引き続きの疑問はラビーンとブーチェのチームに来たのに、FGアテンプトが増えたって事です。エースキャラが多くなって平均28点取るようになったデローザン。
◎ブーチェとパートル
チームとしてパスが少ないとか、デローザンがボールを持つ時間が長いとか、思ったよりも違いがないスパーズとブルズですが、明確に違うのはブーチェビッチとパートルというセンターの違いです。前述の通りブーチェのパス数はロンゾと共に多く、チームのパッシングで中心的な存在です。
〇パス数
ブルズ 274.6本
ロンゾ+ブーチェ 111.7本
実にチームの40%以上のパスが、この2人でした。スパーズではデローザンより多いのがマレーだけだったことを考えると、ブーチェの存在こそが最大の違いであり、同時にブルズというチームはパスの観点で言えば2人で構成されていると言えます。
インサイドがプレーメイカーであることは
・・・うん?
・・・デローザンに何を与えたんだ?
これが3Pシューターだったら「ブーチェと組んだから点を取りやすくなったぜ」といえますが、デローザンってそういうタイプじゃないどころか、3P問題の選手だもんね。ちなみに今シーズンは34%決めていますが、アテンプトは1.8本なので、劇的に得点を伸ばした理由にはなりません。
〇スクリーンアシスト
昨シーズンのパートル 5.5
今シーズンのブーチェ 5.0
一方でドライブに対してスクリーンで助けてくれる回数は似たようなものです。うん、だからパートルの方がデローザンは点が取りやすそうじゃん。
〇パス数
デローザン⇒パートル 3.5本
デローザン⇒ブーチェ 8.6本
パートル⇒デローザン 7.6本
ブーチェ⇒デローザン 8.8本
ただ、2人の関係性を見ると明らかにブーチェの方が機能しています。特にデローザンがパスを渡す回数が段違い。インサイドとのパス交換はアングル変更に繋がるので、ディフェンスを抜きやすくなる面があります。また、ブーチェはデローザンのパスから1.6本の3Pも打っており、この点でもパートルとは違うよね。
〇デローザンのパスから3P
昨シーズン 8.7本
今シーズン 7.5本
〇チームの3P
スパーズ 28.4本
ブルズ 29.8本
デローザンのパスから3Pを打つ本数は減りました。パスそのものが減ったからね。チームとしてみた時にブルズの方が3Pは多いですが、大した違いではありません。ブーチェがいる割には少ないよね。なので、割と変な構図になっているのがブルズだったりします。まぁスパーズも4ガードなのに3P少ないから変なチームだけどね。
〇ドライブ
得点 10.6 → 10.9
FG 52.7% → 55.7%
FTA 3.5本 → 2.6本
パス 8.2本 → 5.8本
インサイを空けてくれるブーチェの存在によって、デローザンのドライブは効果的に・・・なったのかな?
FG%が向上し、パス数が減ったので、わかりやすく今シーズンなりの効果が出ています。この点ではスパーズからブルズに来ての大きな変化でした。一方でルール改正の問題もあってか、あるいはインサイドからビッグマンをどけたからか、フリースローの本数が減っており、結果的にドライブの得点は0.3点しか増えていません。
ってことで、ブーチェの存在は明らかにデローザンを変えました。変えたんだけど、それにしては変わりすぎというか、いくらなんでもFGアテンプトが増えすぎだよね。そんな印象もあるのでした。
◎アテンプト
もっとドライブでの得点が増えていると思ったのでビックリ。じゃあ何を増やしてどうなったのかって話ですね。
デローザンといえばミドルですが、このミドルのアテンプトが明確に増えました。ビックリするくらい増えました。現代オフェンスでは非常識なくらい増えました。5フィート毎のアテンプト数を見てみましょう。
〇FGアテンプト
5フィート 4.2 → 4.2
10フィート 2.7 → 2.5
15フィート 3.6 → 4.8
20フィート 2.8 → 5.3
ブーチェでインサイドプレーが増えたのではなく、10~20フィートほどのミドルレンジで打ちまくるようになりました。もともと多かったアテンプト数ですが、10フィート未満が6.7本に対して、ミドルが10.1本だと考えれば、ダントーニに怒られそうです。
〇10~20フィートの成功率
47.3% → 51.5%
そもそも47%が出来過ぎなのに、さらに51%まで伸ばしています。ここまで来るとゴール下である必要性を感じなくなります。打ちすぎだし、決めすぎだし。
〇ハイポスト近辺のアテンプト
3.2本 → 6.0本
その中でも目立つのはハイポスト近辺でのアテンプト増です。両ウイングから仕掛けていくのは大きく変化はなく、ただハイポスト近辺を空けてくれるようになったことがデローザンのアテンプトを大きく伸ばしました。これの面白い所はデローザンではなくて、ラビーンのスタッツです。
〇ハイポスト近辺のアテンプト
ラビーン 1.6本
マレー 2.6本
そもそもミドル系統を打っていないラビーンという事もありますが、デローザンが使っているゾーンをラビーンは全く使っていません。チームとして打たせているよりも、個人として打っているわけだ。そしてマレーはラビーンよりも、このゾーンで打っています。
実はブーチェとパートルの違いだけでなく、ラビーンとマレーの違いも関係している感じです。スパーズでのデローザンはプレーメイカーでしたが、インサイドへのドライブから大きく広げることが仕事の1つだったのに対して、ブルズではラビーンがスピードドライブする中で、デローザンはハイポストで打ち切ることが特徴という差が生まれているのでした。
ただただ得意技のミドルを大きく増やし、それがチームメイトと被らない武器だった
意外とシンプルな理由なのかもしれませんが、それにしてもミドルを増やしすぎ。「多様性の話」で触れたように、今シーズンはミドルレンジの攻略がキーなので、最も効果的に攻略しているデローザンをMVPに選ばないのはナンセンスです。
◎ビリー・ドノバン
チーム全員で攻めているけど、パッシングゲームではないオフェンス。ミドルレンジの増加によるエースキャラの躍動。これらは丸っきりビリー・ドノバンらしさであり、思い出すのはロケッツでキャリアが終わりそうだったクリス・ポールの復活であり、シックスマンとして開花したシュルーダーのいたサンダーです。
それまでのサンダーはラス&ジョージのエースアタックと、そこから展開される3Pというわかりやすい形だったのに対して、2人がいなくなると全員がアタックしてはいるけど、オフェンスの形としては個人技仕様が強まる変化をしていました。セオリーから外れて上手くいくっていうドノバンスタイル。
クリス・ポールはサンズに行ってもミドル連発なので機能していますが、シュルーダーはチームが変わって輝きを失っています。まぁそもそも普通にPGやらせるのが間違いだから、ミドルの問題ではないんだけどね。
そんなわけでデローザンはスパーズ時代と比較してスーパーになったわけじゃないけど、ボールを動かすPGとインサイドのプレーメイカーを得て、自分と違うゾーンを使う対角エースとの共演があり、ポポビッチ以上に「ミドルOK」のHCによって、大きく得点を伸ばしました。
これらのことは偶然なのか、必然なのか、あるいはデローザンの心の変化なのか。いまいちわからないのですが、スパーズのチームオフェンスと比較して、個人技中心にハードに戦う事を推奨するドノバンの違いはデローザンのテンションをあげている気がします。同時にそんなドノバンにロンゾやカルーソ、ブーチェを組み合わせた事で生まれた効果ともいえます。
シーズン前にデローザンがここまで活躍するとは思わなかったし、ディフェンス問題が大きくなると思われたブルズですが、全く違う結果が待っていたのは驚きです。唯一、予想に沿っていたのはドスンムやデリック・ジョーンズを使ったハードワーク軍団と、主役たちという組み合わせが機能している事です。前述のパス数も考えようによっては主力たちでボールを動かし、わき役はハードワークに徹しているという捉え方も出来るような気が。
さて、デローザンの話はスタッツ面で捉えると「ドノバンと仲間たちの組み合わせ」の成功ですが、キャリアで考えてみると違う話も出来そうです。でも、長くなったので今回はおしまい。続きは別途にしましょう。
面白い考察をありがとうございます。
ウィングやコーナーからのシューティングに比べて明確にハイポストの方が良い印象はありましたが、こうやって数字を見ると、チームに恵まれてデローザンが得意な仕事ができていたのだと、実感できました。マレーとの相性が悪かったですね。
ブルズのディフェンス問題は勝率には反映されていないものの、プレーオフを考えると根が深い問題かと思います。特に、対エンビードが無策っぽく見えるので怖いです。
ホワイトやフォーブスとのプレーは良かったんですが、マレーと組むのにガード過多になりすぎましたね。ハードワーカーで囲んであげるのが正解だったのか、ポイントセンターと組むのが正解だったのか、よくわかんないデローザン です
そんなに難しい問題ではなく、単にスパーズと比べてブルズのメンバーは守る的が絞りづらいってだけかと思う。
笑
出直してどうぞ
みんな休んでてもデローザンは活躍しちゃう
>これらのことは偶然なのか、必然なのか
ファンの贔屓目っぽいですが、偶然にしては噛み合いすぎてるので
必然だと思ってます。
AKME信者になりました笑
ナゲッツを作った男
DFの指標もいいみたいな話がシーズン序盤にはありましたが、離脱者が増えて以前のように悪くなっちゃいましたね。
ただ今期のDeMarvelous DeMVPであれば、プレイオフでも守備の悪さに目を瞑れるくらい攻撃での貢献をしてくれると信じられる。かもしれない。がんばれロンゾカルーソ。
ブーチェはいいのですが、やっぱり助けてくれる選手がもっといないと。ロンゾとカルーソはその役割ですね。カバー上手いガードは大事!
いつも楽しく拝見してます、記事をみてスター達の役割とプレイエリアが被らないようにする重要性は高いんだと感じました。
これは近年、3Pによってプレイエリアが拡大したことも影響してるのか気になります。
話は変わりますが、同じミドルを撃つスターとしてKDやエンビード、ブッカーCP3ミドルトンなど増えてきたなと感じます。これからミドルが撃てることの需要はより高まると思います。
そこで、ミドルを撃つ選手でも点が欲しいときに点をとってくれる以外の役割や分担などは多くなる、細分化されるのでしょうか?
オルドリッジやウエストなどは上記の選手とは違う気がしているので気になります。
これからのミドル事情がどうなるかお聞かせいただけると幸いです。
長文失礼しました。
3Pとゴール下 対策が進んだので、ミドルレンジの出来が左右してますね。そこは点を取らなくてもクリス・ポールみたいにパス攻略もありますし、ヨキッチなポストもありです。
今後の重要性はそれを活用しまくれるコーナー担当だと思うので、MPJです!MPJ!
エースではないのに点取りまくるウイングが欲しい。