さようならルーク・ウォルトン

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・・・うーん、これといって書くことがない。かつて、これほどまでに書くことがないHC解任劇があっただろうか。それくらい困ってしまうよ。

ウォリアーズのACとして活躍したルーク・ウォルトンは、レイカーズの救世主として長期政権を期待されて就任したものの、その内容は極めて悪く、酷評の嵐でした。次のHC職を見つけるのは難しいと思われていたものの、デビッド・イェーガー政権で勝ち切れなかったキングスが5年契約で迎え入れました。

キングスがウォルトンに期待していたのは、スロースタイルを基本としていたイェーガーから、選手の個性に合ったトランジションゲームへの移行にありました。唯一、この点ではウォルトンを選んだ理由としては正しいものがあります。しかし、それ以外はウォルトンを選ぶ理由に乏しく、正直言ってウォルトン以上にキングスのフロント(当時はディバッツ)に問題があったと言えます。

フォックス&ヒールドを中心とし、期待のバグリーにシックスマンでボグダノビッチを揃えていたキングスは、リーグで最も期待される若手チームとしてイェーガー2年目に飛躍を果たそうとしていました。それこそ当時エイトンを1位指名したサンズと比較したらキングスの方が圧倒的に上でした。

しかし、スタイルの違いがもたらすイェーガーと選手の確執に加え、シーズン後半になると失速してしまったこと、つまりは「勝ち切れない」ことを解決する必要がありました。カリー前の時代に生きているようなイェーガーでは、試合中に発生する局面の変化に対応しきれなかったのも事実です。戦術的には整理されていても、変化と調整が下手だったため、試合中だけでなくシーズン後半に失速していく風潮がありました。

実際、18-19シーズンのキングスはオールスターまで30勝27敗と健闘したものの、そこから9勝16敗と失速し、結局39勝43敗で終わっています。ちなみにこのシーズンのウエストはプレーオフラインが48勝なので、追い付けないことが失速の原因だったかもしれません。

そんなわけでイェーガーが解雇され、ウォルトンに白羽の矢が立ったわけですが、トランジションはともかく、「試合中のアジャストによって勝利をもたらす采配」なんてウォルトンにはムリなことは、レイカーズで散々証明しています。ウォリアーズ時代は圧倒的なパフォーマンスで勝っていたわけで、そもそもウォルトンに求めるものが間違っていたキングスでした。

つまるところ、そもそもの問題でしかなかったルーク・ウォルトンとキングス。新HCとして迎えた19-20シーズンの開幕1試合を見ただけで「これは絶対にムリだ!」と見放したことは記憶に新しい管理人でした。マジで、あれはどうしようもなかったよ。

ところで今シーズンの開幕前に「HCランキング」なるものが出ていましたが、下位には実力未知数の新人HCの名前が並ぶ中で、唯一ウォルトンだけが下から3番目くらいにいたんだよね。実績ゼロのHCよりも評価が低かったんだよね。

◎ココスコフとカラミアン

当時のレイカーズファンはウォルトンだけでなく、ウォルトンが連れてくるACがオフェンス・ディフェンスとも構築できない問題にも触れていた気がしますが、キングスのフロントはACに関しては面白い取り組みをしたともいえます。

まずトランジション大好きのウォルトンに対して、厳密な手法でチームとしての連携を重視しハーフコートオフェンスを組み立てていくココスコフを加えたことは、イェーガーがいなくなる不安を取り除く試みでした。ジャズでACを務めた後、サンズのHCになったココスコフはエイトンを地味な合わせ役として徹底し、選手が好き勝手やっていたサンズに規律をもたら・・・・したかと思ったら、選手と折り合いが悪くて崩壊しました。人間性には問題があったみたいだね。それでも選手同士の適切な距離感、タイミングとポジショニングを重視した連動性、身体能力ではなく戦術で崩していく論理性というのは、今のサンズにも受け継がれている気がします。どうなんだろ。

期待していたココスコフですが、開幕の時点で前年にキングスがもっていた規律が全て崩壊しており、明らかにウォルトンの色が強くなっていました。管理人がキングスを追いかけなかったので詳細は知らないのですが、それでもシーズン中盤くらいになるとココスコフ風なハーフコートオフェンスも増えてきたそうで、自由と規律が混ざったチームになる匂いもしたとか。

しかし、シーズン終了後にココスコフはユーロに新天地を求めたように、結局は何もうまくいくことはなく、既に忘れ去られた存在になっています。サンズには残り香があるのに、キングスにはないもんな。

20-21シーズンの開幕前には、弱点であるディフェンスにスペシャリストとして名高いカラミアンをACに加えました。ACながらHCよりも前に出て猛烈な指示を飛ばすカラミアンは、ドゥエイン・ケーシーやドック・リバースを支える重要なピースでした。相手のプレーを読むのが上手く、選手の個性を使って、相手の強みを消すべくゲームプランを練ってくるのが特徴です。

ベンチにホワイトサイドを加えるなど、ちょっと偏った編成になったキングスでカラミアンは苦労します。選手もディフェンスにゲームプランを持ち込まれるのに慣れていない空気もありましたが、こちらもシーズン中盤くらいには形を織りなそうとしていたらしいです。詳しくは知らない。

しかし、管理人が観たシーズン終盤には、カラミアンはヤル気がないかのように激烈な指示を飛ばさないACになっていました。たまたまカメラが抜かなかっただけかもしれませんが、期待されていたディフェンスの改善はなく、リーグ最低のディフェンスレーティングを記録したのでした。

そしてカラミアンはオフになると、かつての上司であるケーシーのピストンズへと旅立っていきました。いろんな話がありそうなカラミアンにもかかわらず、ドアマットのピストンズを選んだのは「仕事をするには上司が大事」と悟ったようにすら見えました。

何がいいたいかというと、レイカーズ時代の不評もありつつ、キングスで起きたことは「ACの戦術やアイデアを融合できないルーク・ウォルトン」という現実でした。コーチングスタッフもチームとして機能することが重要になっている現代NBAにおいて、致命的な欠陥を抱えているように見えたわけです。

フィル・ジャクソンやスティーブ・カーはオフェンス(ディフェンス)担当ACに戦術を任せっきりに見えることもあるだけに、その2人と仕事をしてきたウォルトンがバランスを取れないとは意外でもあります。レジェンドの父親の下でエリート街道を走ってきたプリンスが、仕事の仕方を理解していなかったとは思えないだけに、なかなか衝撃的な結果でした。スーパースターがHCになったならともかくロールプレイヤーだもんね。

◎フォックスとヒールド

個人的にはラッキーなことに(?)ウォルトン最後の試合となるジャズ戦を見ていたのですが、気が付いたらPGは完全にハリバートンとなり、スマートなゲームメイクを見せていました。ウォルトンがHCとなった時に中心選手だったフォックスは、オフボールだけでなく起点としてもムリのあるプレーが増え、ヒールドはシックスマンになっている今シーズンです。

もっといえばウォルトン就任時にドラフト2位で迎え入れたバグリーは完全に戦力外となり、交代を指示されても断ったことで話題にもなっています。ウォルトンは「彼も他のメンバーもチームに必要で、それぞれが自分に何を期待されているのかを理解し、前に進むことが重要だ」とコメントしていますが、その言葉にバグリーが納得していないんじゃ意味はないよね。

HCでありがちなのは「自分が育ててきた選手を重用する」パターンです。それはNBAというプロの舞台ではあってはいけないのですが、戦術理解の高い選手を優先して起用したい気持ちは、わからなくはないよね。ところがウォルトンの場合は長くいる選手ほど、次第に中心から離れていく傾向があります。ある意味で「ウォルトンにより劣化していく」かのようだ。

「ウォルトンと信頼関係がある」といったフォックスの言葉がHC職を延命させた気がしますが、実際に昨シーズンのフォックスは得点もアシストも素晴らしい成績を残しました。その一方で今シーズンのゲームメイク力に困っている姿は、プレーを制限されてチームをコントロールできていたイェーガー時代のフォックス2年目からは考えにくい姿です。PGしていたフォックスがPGできなくなってしまったウォルトン3年目。

ハリバートンのような柔らかいフローターやオフボールでの貢献はなかったものの、起点としてタメを作ってパスを供給し、センター(コーリーステイン)とタイミングを合わせたコンビプレーをしていたフォックスが、3年後には個人での仕掛けを繰り返しているのは奇妙にも見えます。

より苦しいのはヒールドで、リーグトップクラスのシューティングスコアラーとして、スプラッシュブラザーズに対抗しえる存在だったのが、ウォルトン就任から出来の悪いハンドラープレーを増やすことになりました。オフボールムーブから高確率のシュートを決めるから怖かったヒールドですが、ハンドラーならば個人突破に過ぎず、状況判断やパス能力を考えれば、怖さが半減しています。ボールを持っているフォックスを警戒している中で、ヒールドが動き回って打ち切るからこそ怖かったのにね。

こうしてウォルトンによってハンドラー寄りにされた結果が、スターターではなくベンチにいかされることになりました。さすがにワラエナイ。使われ方としては昨シーズンよりも効果的ではあるのですが、いいかえれば「スターターに混ぜてチームオフェンスさせるのは厳しい」ということでもあり、『チーム戦術の中核をなすシューター』として輝いた3年後に『戦術的に問題があるシューター』になったヒールドです。個人としては使える武器を持っているからシックスマンだけど、チームで絡めることが出来ないらしいよ。

コントロールPGから、個人技担当になったフォックス
戦術の中核から、戦術外のシューターになったヒールド

チームの中心であったはずの2人はウォルトン就任から次第にズレていき、3年目はチーム戦術の外でプレーする担当へと姿を変えてしまいました。

また、ジャズ戦ではメトゥがスターターになっていました。自分たちが選んだ18年ドラフト2位が干されて、スパーズがウェイブした49位が期待される世界観。もちろん、良くある話ですが、明らかに完成度が低く、FG成功率38%のメトゥに期待し、バグリーが戦力外なのは不自然であり育成の大失敗にしか見えません。3年の間で自身の戦術を教え込めなかった責任を選手個人のパフォーマンスに押し付けているようにも見えます。

変な話、ウォルトンはウォルトン流に慣れた選手ほど使えない状況に持ち込んでしまっています。そもそも戦術があったのか、って話ですが、少なくとも今シーズンは少しまともになり、そしてフォックスまでもが困ってしまったのでした。

ところで1人だけウォルトンに染まらず(?)クレバーなプレーをしているハリバートンですが、個人的に印象深いのはサマーリーグで試合を見ているハリバートンの横にウォルトンが座り、あーだこーだと一生懸命しゃべっているのですが、ハリバートンは「オレ、試合みたいんだけど」みたいな表情をしていた事です。ウォルトンは試合観てんのか状態だったな。なお、他のチームメイトは会場にいたけど・・・。

ウォルトンが辞めたらハリバートンがルビオのように称賛されるPGになったりして。いや、もっと高い評価を受けて「クリス・ポールの後継者」になったりして。

◎メンタルコントロール

ネガティブな印象しかないウォルトンですが、ディバッツのいなくなったキングスがクビにしなかったのは5年契約がまだ3年も残っており、新しいHCに支払うサラリーを捻出できないからだと言われていました。しかし、実際には開幕16試合でクビにしており、おそらくアルビン・ジェントリーが引き継ぐことになります。それはサラリーアップにならないからOKなのかな?

さて、そんなウォルトンを新たなフロントがオフの間にクビにしなかった理由がTwitterのタイムラインに出ていました。シンプルに言えば「何回かの連勝があったから」だそうです。あるいは「酷い連敗さえしなければ成績は上向いたはず」かもしれません。全文読んでないから間違っているかも。

昨シーズンのキングスは5連勝の後に9連敗しています。連勝と連敗を繰り返すチームであることは間違いなく、安定感が必要になります。一方でものの見方は視点を変えれば違ってきます。

・チームを盛り上げ勢いを出せる
・落ち着いた采配で安定感をもたらす

両方を実現するのは難しいわけで、ウォルトンに後者の要素はなかったものの、前者の要素を持っていたのかもしれません。「かも」だけどね。実際、若いチームであり、ヒールドのシューター能力はアップダウンが激しい。バーンズなんかも似たようなところがあるよね。

だからHCと選手のタイプとしては似ているといえば似ていました。連敗はダメだけど、連勝は良いわけで、後任のHCはただただ安定すればOKではなく、合計して勝ち越せるメンタルコントロールが期待されます。果たしてウォルトンはやる気を引き出すのが上手かったのか、それとも下手だったのか。特にフォックス関連でどうだったのか気になるところです。

◎後任に求めること

シーズン前に触れたように、キングスのロスターはいびつで、ガードとビッグマンばかり多くなっています。ハークレスをベンチにしてメトゥをスターターにしたから、その傾向はさらに強まりました。こんなロスター構成で結果を出せるHCを探さなければいけません。

直近でガードを多く使っていたのがサンダーとクリッパーズですが、前者は勝ちに行っていないし、後者は勝つためにはウイングが大事でした。ウイング仕事するマンもね。ともにガードは上手く使うけど、ビッグは1人か0人ってチームです。

ならばビッグマンを2人つかって、ガードオフェンスしていたチームといえばペリカンズです。当時のHCはアルビン・ジェントリー。つまり、そのままじゃん。

現時点でロスター改革が出来ない以上は、経験豊富なジェントリーは適任なのかもしれません。チーム全体のメンタリティを改善させ、モチベーションをあげる。特に主力の気持ちがバラバラにも見えるだけに、なんとかしないといけません。若くて戦術的なHCにするのはオフになってからで十分かな。っていうか、半年前にやっとけば・・ねぇ・・・。

ガードとビッグを活用した戦術整理
モチベーションの改善

もしも現実的に考えにくいならば、デッドラインに向けてトレードに動き、再建するのも一手です。それこそシーズン前には考えられなかったフォックスとベン・シモンズのトレードを実行し、(シモンズは今シーズン休ませて)ドラフトで上位指名権を目指すってのもあります。

ハリバートンとダビオン・ミッチェルとホルムズ(と、まさかのバグリー)以外はバーゲンセールすることで、ディフェンス中心かつ戦術的なチームを作り直すわけです。

ある意味で、これぞNBAの面白さかもしれません。シーズン前には考えられなかったことが開幕1カ月で考えたくなってしまう。あまりにも大きな失敗の2年間+1ヶ月ならば、いっそのこと過去を忘れてしまうわけだ。うーん、怖いね。

本来はフォックスを昨シーズンのような活躍度に戻せば、やるべきことが変わってきますが、新HCは再び上昇気流に戻せるのか。難しいミッションにも見えるし、ウォルトンの後任なんだから良い方向にしか進まないようにも思えるのでした。

さようならウォルトン、もう戻ってこなくていいよ。

この終わり方って初めてじゃないかな。

さようならルーク・ウォルトン” への5件のフィードバック

  1. いやマジで戻ってこなくていいですわ。ホントに地獄でした。戦術的進歩が何もなくて、時たま観るセルティックスやヒートで「あれこれNBA だよね?キングスってどこの素人?」ってレベルに差がありました。
    2年前の開幕戦でNBA史上最低の試合をしましたね。あの試合でデドモンにアデバヨやガソル弟をやらそうとしてたキ◯ガイHC。本人がそんなの無理だわとキレて出場拒否。でたまたま出場することになった誰も期待してないホームズ君がたまたま活躍。デドモンは今ヒートでのびのびやってますよね。そして仰る通り全員ハンドラー化でヒールドもビエリツァもアリーザも潰しました。フォックスは個人で成長。タイリースも個人で成立。はい、HCの功績はゼロです。いやむしろマイナス。
    彼の元で活躍するのはバスケIQの高いハリバン先生やタイリースだけ。ヒールドとハリバン先生が好調なのでその2人でいいアセット組めればそれはそれで良し。まぁしばらくはジェントリーで様子見ですけども(こいつもロンドいなかったらなんも出来てなかった感ありますが)

    1. ほんとね・・・試合内容の差が酷かったですね。対抗できたのはスコット・ブルックスくらい。
      みんな他のチームに行ったら活躍するから、ある意味で良い育成担当なのかもしれませんが・・・

  2. これでキングスがプレイオフレースに加わるかもしれないと思うと怖いです。
    ま、あそこは、個人はよくてもウォルトンだしな。と思っていたのに・・・

  3. 久しぶりのほのぼのニュースでほっこりしました。
    MIN,SAC,NOPのぐだぐだトリオがんばえー(真面目に今シーズンの西をもうちょい面白くしてほしい)。

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