渡邊雄太は変わり者?

HCがトム・ホーバスに代わる日本代表。女子は「世界最高のアジリティでサイズに勝つ」という方針でしたが、それって「運動量とスピード」ではないことも面白いですが、オリンピックでは明らかに運動量が光っていました。スピードとは違うんだよな。

では男子ではどうするのか。そもそも何が他の国よりも勝っているのか。そんなことをホーバスは考えていくことになるわけですが、そんな中でNBAで渡邊雄太が残しているスタッツはなかなかにファンキーです。今回はそんな数字を紹介していきましょう。

「運動量」という項目について言えば、渡邊はNBAの中でもエリートです。500分以上プレーした選手における平均移動速度をみてみましょう。要は試合中の「運動量÷プレータイム」なので、動き回った選手が誰かがわかります。

◎平均移動速度 
マグダーモッド 4.70
渡邊雄太    4.68
TJマッコネル 4.65
ダミアン・リー 4.58
ウィンドラ―  4.58
ケイレブ・マーティン 4.57
マクラフリン  4.56
コディ・マーティン 4.55

1位はシューターのマグダーモッド。オフェンスで動き回るのがよく表れており、オフェンスだけなら2位以下を大きく引き離すトップでした。その次に来たのが渡邊雄太ですが、実は上記の中でディフェンスだけなら4位であり、マグダーモッド同様にオフェンスで動き回ったタイプです。

3位のマッコネルがPGとして動き回り、4位のリーはシューター兼PGだったことを考えると、そのどちらでもない渡邊は奇妙なタイプです。キャブスのウィンドラ―とホーネッツのマーティンツインズは渡邊と似たタイプといえなくもないですが、この3人はディフェンスで足を動かしているのが特徴で総合順位を上げています。

シューターでもPGでもないのに、オフェンスで動き回っている

15分というプレータイムの短さはあれど、渡邊雄太の運動量は立派にして謎。どうしてそんなに動き回っているのか、ビッグマンなのか、ウイングなのか。よくわからない選手なのでスタッツを見てみましょうの回になります。

〇渡邊の平均移動速度
オフェンス  5.18
ディフェンス 4.19

〇ラプターズの平均移動速度
オフェンス 4.61(9位)
ディフェンス 3.87(17位)

試合のペースがリーグ14位だったラプターズは、そんなに運動量が多いチームではありません。渡邊だけでなくギレスピあたりのロスターギリギリの選手はよく走っていましたが、主力たちはそんなに走ってはいない。トランジションでの得点が多いので、効果的なランニングをしている中で、渡邊は特に走っていたことになります。

ただ、トランジションについては全員が走るのも事実だし、渡邊が特徴的に走っているわけではないです。必ず参加してはいるけど、渡邊の得点数も少ないしね。

〇トランジション
得点 1.0
FG 0.8

5.2点取ったパウエルや4.1点のシアカムと3.7点のアヌノビーと比較すると、プレータイムを考えても渡邊の方が少なく、あるいはセンターのバーチでも2.1点なので、渡邊の走力はトランジション増にはさほど繋がっていませんでした。

だからハーフコートオフェンスでの運動量が目立つことになるのですが、そこまでの印象もないしね。まぁトランジションに関しては課題として「もっとフィニッシュに絡め」ってのが出てきます。それは単純に選手の能力かもしれないけどさ。

◎タッチ数

では、それだけ動き回っている渡邊のタッチ数を見てみましょう。動くってのはいろんな目的がありますが、ボールに対してのアプローチが基本です。シューターやPGの運動量が多くなるのは、そういう理由だし、それ以外の選手はポジショニングの重要性が高まるから、動きすぎるのもNG。

タッチ数    953回

50試合に出場した渡邊は、1試合平均19回のボールタッチがありました。ではボールに触る回数が多いかというと、そうでもありません。プレータイムとポジションが近いスタンリー・ジョンソンなんかと比較してみると

〇1試合平均タッチ数
渡邊    19.1回(14.5分)
スタンリー 25.5回(16.5分)
アヌノビー 45.1回(33.3分)

アヌノビーはかなりタッチ数が少なくなっていますが、スタンリーと渡邊を比べると大きな差があることがわかります。ラプターズの中で見ても、渡邊をボールが経由することは少なく設定されていました。動き回るんだけど、ボールタッチは多くない。

次にボールタッチしている時間を見てみると、50試合で27分しかボールを持っておらず、1試合に30秒もありませんでした。極めて短いボールタッチです。動き回ってボールを貰って、すぐに捌くわけだ。シューターのようなタッチタイムです。

タッチタイム   27分
平均タッチ  1.67秒

なんか報われないというか、誰よりも走り回っているけど、パスが回ってくることも少なければ、ボールを持ってもすぐに手放しているんだよな。「1試合に30秒しかボールを持たない」けど、そのためにトレーニングではどれだけの時間ボールを触っているんだろうね。ある意味でロールプレイヤーにとって重要なことをしているし、ボールを持たないところで必要なことを鍛える方が重要にも見える。

平均タッチタイムの1.67秒はガードよりも極めて短いのは当然として、ウイングのアヌノビー(2.25)やスタンリー(2.44)と比べても短く、ブシェイ(1.60)やバーチ(1.46)らのセンターに近くなります。ビッグマン扱いだったことを考えれば、当然の数字かもしれません。

じゃあ今度はインサイドの中継点的な扱いになっていたのかを、ペイントタッチやエルボータッチの回数で見てみましょう。なおポストアップは1回しかなかったよ。

フロントコート 541回
ペイントタッチ  51回
エルボータッチ  23回

全タッチ数の半分ちょっとがフロントコートでした。それだけハーフコートオフェンスの中でパスを受けた計算になりますが、ペイントタッチは10回に1回程度です。例えばセンターのバーチは566回のうち145回のペイントタッチ、89回のエルボータッチがあり、渡邊の3倍インサイド側でボールを持つ機会が増えてきます。

渡邊はビッグマン扱いではあるものの、センター陣のようにインサイドでの経由役にはなっておらず、ベンブリーらSGやウインガーと同様に、アウトサイド中心のボールタッチになっているわけです。

かといってシューターではないし、プレーメイカーのようにボールを長く保持することはありません。極めてよくわからない仕事をしていることになり、リーグでも屈指の変わり者に見えてきます。

◎シュート

渡邊は50試合で90本のFGアテンプトがあり、4.4点をとりました。得点数は少ないですが、そこはロールプレイヤーだしね。728分で180アテンプトなので4分に1本程度と、これも少ない。なお、そのうち3Pが半分を占めています。

〇FGアテンプト
2P 90本47.8%
3P 90本40.0%

3Pの確率は渡邊の成長ポイントでしたが、同時に問題にも満ち溢れています。特に「動き回っている」ことを考えると、なおさら問題がありそうに思えます。

〇3P
コーナー 41本29%
その他  49本49%

明確にコーナー担当に振り分けられていたのですが、その確率は悪く、コーナー以外から決めまくっています。ネッツで出場したサマーリーグ時代からコーナーでの確率の悪さが目立っていましたが、その問題は未だに解決しておらず、本来はもっとも確率良く決まるところから決まらないっていうさ。

一方でコーナー以外は決めすぎ。この確率はすごいんだけど、これだとキックアウト3Pになるかどうかは微妙だし、キャッチ&3Pしか打っていないことも含めて、コントロールしにくいよね。動き回ってフリーになるポジションを見つけたといえば、その通りだけどさ。

〇ディフェンダーとの距離別
タイト(2-4FT)  1本100%
オープン(4-6FT)27本41%
ワイドオープン   62本39%

こんな感じなので「3P40%」と聞くとすごく思えるけど、「オープンショットのみしか打たず40%」なので普通でしかありません。コーナーをしっかりと決めていれば、45%は上回っただろうから、非常にもったいなかったとも言えます。スネルのようなチョイスしているな。

ネガティブな物言いをすれば「動きすぎてフリーのコーナー3Pを外している」のが渡邊です。もう少し賢くポジショニングして、堅実に決めなければいけません。

ポジティブな言い方をすれば「動いてコーナー以外でもフリーの3Pを打って決めている」のが渡邊です。これでシューター的に打ちまくれるならば、話は急激に変わってきますが、今のところはオープンショットを打っているだけなので、多くのチームからすれば「コーナーを決めてくれ」になってしまいます。

3Pの改善が大きかったシーズンだけど、役割として重要なコーナー3Pは30%を割っていた

うーん、さすがに3年目を迎えて、ここまでコーナーの確率が伸びないとは予想外。よっぽど苦手意識があるのかな。現代NBAの常識から考えると、変わり者。伸ばすところが何か変なんだけど、一応トータルでは生き残れるだけの成功率を残したんだよね。

3ポイントシュートについて「試投数を増やしつつ40%は確実にキープしていかなければならない」

渡邊自身もメディアデイでこんな発言をしています。これだけ動き回っている割にはアテンプトの少なさが目立ちました。何のために動いているのか。それをシュートに設定するのはステップアップのためには悪くありません。動きすぎずに正確なプレーを求めるのか、動いてアグレッシブに狙っていくのか。難しいラインだけど40%はキープしようってことだね。

◎ハッスル

コーナー以外のワイドオープン3Pを打っているという事は、スクリーンからポップしての3Pが多いという事でもあります。じゃあ渡邊がどれくらいロールマンプレーで決めているかというと・・・少なすぎてデータの統計外でした。ピック&ポップの回数もトラッキングに加えて欲しいな・・・。

データとして残っているのはスクリーンアシストの回数くらいです。これをラプターズと渡邊の回数を調べてみると

【ラプターズ】平均
〇スクリーンアシスト   8.8回(25位)
〇スクリーンからの得点 21.6点(19位)

【渡邊雄太】(トータル)
〇スクリーンアシスト   0.3回(14回)
〇スクリーンからの得点  0.7点(36点)

そもそもスクリーンアシストが少ないのがラプターズであり、渡邊も動き回っている割には少ない回数に留まっています。なお、ラプターズの特徴としてスクリーン後に3Pを打つことが多く、それが回数に対して得点が多いことに繋がっていますが、言い換えれば成功数が少ないからスクリーンアシストが少ないって事でもある。

いずれにしても渡邊は徹底したスクリナーになれているわけでもありません。ハッスルスタッツを稼いでいるわけでもないんだ。じゃあ同じくハッスルの中でオフェンスリバウンドの数字を見てみましょう。

〇オフェンスリバウンド 36本
 コンテステッド    23本

36本のオフェンスリバウンドを取った渡邊ですが、意外にも半分以上がコンテステッド(競り合い)の中で奪ったリバウンドでした。運動量系統だと誰もいないところに飛び込むことが多いけど、そうではなくて競り合いで奪っています。

〇リバウンドチャンス 72回

一方でリバウンドをとれるチャンスがあった回数は72回と以外にも少なくなっています。もっと何度もボールに飛び込んでいき、ただ高さやフィジカルのところで奪えないのだと思っていましたが、実際には予想外にリバウンド参加が少なくなっています。

例えばアヌノビーだと渡邊の倍のプレータイムで153回のチャンスがありましたが、54本しか取れておらず、確率は悪くなっています。アグレッシブにインサイドに飛び込むけど、取り切れないって事だ。アヌノビーって意外とオフェンスリバウンド弱いんだね。19-20シーズンのプレーオフが平均2.4本もとっていたので、イメージと違った。

渡邊はリバウンドに良く飛び込んでいますが、特別な回数ってわけではありません。スクリナーになったり、リバウンダーになったり、コーナーシューターになったりと忙しいのは事実だけど、それにしても運動量に見合っていないから変な感じでした。

◎長所か短所か

運動量の多さは間違いなく長所である一方で、その運動量がどのようにオフェンスに生かされているのかが、いまいちわからないという短所がありました。「動き回っている」というのは「適切なポジショニングをしていない」という可能性もはらむので、何とも言い難い。

ラプターズにおいて運動量は大事な要素だし、走り回れる選手は渡邊以外も重用されています。ただ、そこには動いた結果としてのフィニッシュ力だったり、ハッスルプレーが混ざってこそ価値があるので、渡邊ももっとスクリーンアシストが増えるとか、パスの本数が増えるなど、プレーに絡む形を増やさないといけません。

新シーズンはまず「生き残る」ことが必要になりますが、そのためには明確な得点や堅実なスクリーンになるのでしょう。既に武器を持っていることはわかっているけど、2年目なんだからより効率的に武器を使ってくれないとマズいぜ。

一方で日本代表の事を思い出すと、さすがにチームの主役になったのでオンボールプレーが大きく増えました。その上で運動量は落とさず、誰よりも走っていたし、誰よりもボールに顔を出していました。そこはポジティブに観れるし、バテバテだったし。

ただ、ある意味で主役だからボールが回ってきたけど、「効果的なオフボールの合わせ」については、そこまで多くはありませんでした。ハンドラー側の問題が大きいので見過ごしていたけど、渡邊自身もより的確なタイミングで動いていく必要があるのかも。

もしくは、ここにきてシューター的にムービング3Pを増やせるかどうか。こっちの方がNBAでも武器として使えるけどね。NBAで2番目に動き回っている渡邊雄太。それを武器として扱える形にもっていけるのかどうか。

普通は武器を生かすために「もっと動け」というけれど、「十分に動いているけど、何を武器とするのか」という点で考えてしまう変なキャラクターかもしれません。

渡邊雄太は変わり者?” への2件のフィードバック

  1. それは見ていて凄く感じました。
    とにかく動き回っているけどボールは来ない。
    オープンでも来なかったりポジションが適切でないから来なかったり。

    とにかく人一倍動いているけど、動きすぎじゃ?と思うことも多々ありました。
    それでディフェンス混乱させられるといいんですけど、そうでもなかったり。

    見た感じとしては効率よく適切なポジションを見つけるというより、走り回っているうちに「ここ!」を見つけて飛び込んで合わせているように見えました。
    だから通り過ぎてオフェンスリバウンドに絡めなかったり。

    渡邊ってハッスルプレイヤーなイメージしかないですけど、スタッツには出てこないんですね。

    今年もう少しチームからの信頼が上がれば渡邊もフィニッシュのターゲットとして認められ、動きも落ち着くかもしれませんね。

  2. イメージ、コーナー専だったグリズリーズの時は抜きにしても、デビューからバタバタしているのですが、最近は自信を持ってバタバタしていると思うので、ラプターズの評価、考えが気になりますね。チームに無理矢理動きを作らせてたいのか、もっと効率的にカット動いてほしいのかみたいな。

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